「初恋」などのヒットで知られる歌手村下孝蔵さん(1953~99年)の曲をカバーしたCD「冬物語」を、兵庫県芦屋市に住む村下さんの元妻と長女の2人が制作した。かつて3人で住んだ広島市安佐南区が昨年8月、土砂災害に襲われたことに心を動かされて作った。その思いを、今年6月に迎える村下さんの十七回忌にささげる。村下さんは生きていれば今月28日で62歳。
元妻でアコーディオン奏者のゆうこさんと、長女でシンガー・ソングライターの露菜さん。村下さんとゆうこさんは広島市内で知り合い、79年に結婚。80年から3年余り、安佐南区のアパートで暮らした。昨年の土砂災害で最も犠牲者が多かった八木地区だった。災害で「私たちの思い出も流されてしまったよう」と感じ、CD制作を思い立ったという。
80年、村下さんがデビューし、露菜さんが生まれた。人気が出ない中、村下さんはアパートで、後にヒットする「踊り子」などを書いた。音楽大でピアノ専攻だったゆうこさんも支えた。
妻の名を冠し、82年に初ヒットとなった「ゆうこ」もアパートで作った。その後人気が急上昇したものの、親族とのトラブルにより85年に離婚した。
新たな家族で一時モスクワに住んだ時、ゆうこさんはアコーディオンを、露菜さんはギターを習得。帰国後、ゆうこさんは関西を中心に演奏活動を続ける。露菜さんは、仲間由紀恵さんら主演の映画「LOVE SONG」に挿入歌を提供したほか、ロシアの民芸人形マトリョーシカの絵付け作家としても活躍する。
村下さんとの間柄を2人とも明かさずに活動してきたが、十三回忌が過ぎた翌年の2012年、神戸新聞記事をきっかけに公表した。コンサートでは村下さんの曲を2人で演奏するようになった。
CDは2枚組。1枚目は露菜さんが「踊り子」「初恋」など7曲の弾き語りを披露。2枚目はゆうこさんが露菜さんのギター伴奏で、村下さんのデビュー曲「月あかり」や、安佐南区の喫茶店名が歌詞にある「北斗七星」など8曲を収めた。3千円(税抜き)
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2人が村下さんの曲などを演奏するコンサートが3月6日午後6時半から、阪急西宮北口駅南の西宮市プレラホール(同市高松町)である。前売り4300円、当日4800円。オータムTEL080・3789・8303
(田中靖浩)