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空き部屋利用窃盗:不正アクセスで不動産業者の鍵情報入手

毎日新聞 2015年10月14日 14時30分(最終更新 10月14日 15時17分)

 他人になりすましてネットで商品を買い、マンションの空き部屋に配達させた窃盗事件で、中国人グループが不動産業者の専用サイトに不正アクセスし、鍵の隠し場所など空き部屋に関する情報を入手していたことが捜査関係者への取材で分かった。サイト接続にはIDとパスワードが必要で、グループは何らかの方法でこれらを入手していた。福岡、山口両県警は新たに20代の元中国人留学生の男について、窃盗ほう助容疑で逮捕状を取得。14日にも別の中国人留学生の男女も邸宅侵入容疑などで逮捕する。

 事件は(1)他人のクレジットカードを使って、家電量販店のオンラインショップで商品を購入(2)空き部屋に商品を配達させる(3)空き部屋に侵入して商品を受領する−−という構図。両県警は昨年10月以降、8人を逮捕し、空き部屋の場所や鍵の置き場所に関する情報の入手方法について解明を続けてきた。

 その結果、グループが不動産管理業者の運営するサイトから、空き部屋のある賃貸マンションの住所や号数などのほか、賃借目的の顧客への内覧用に備えられた鍵の隠し場所に関する情報を入手していた事実を突き止めた。鍵は目立たない場所にあるキーボックスに保管されていたが、キーボックスの場所やキーボックスを解錠するための暗証番号も入手していた。

 サイトへの接続にはIDとパスワードが必要。不動産管理業者だけでなく、賃借希望客を案内する仲介業者もIDなどを知らされている。両県警は元留学生が何らかの手段でIDなどを入手し、窃盗目的と知りながら中国人の無職、劉金龍被告(27)=窃盗罪などで起訴=らに伝えた疑いが強まったとして、窃盗ほう助容疑で逮捕状を取った。元留学生は既に中国に帰国しているが、日本滞在時に不動産関係の仕事をしていたという。

 劉被告は中国にいるメンバーに空き部屋に関する情報を伝達。中国にいるメンバーが商品を不正発注していた。両県警はマンションに侵入して商品を受け取ったとして、別の中国人留学生の男女2人を邸宅侵入容疑などで逮捕する方針。マンションなど人の住む住宅に侵入すると住居侵入、空き部屋に忍び込むと邸宅侵入罪に問われる。法定刑はいずれも3年以下の懲役または10万円以下の罰金。【吉住遊】

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 不動産管理業者が専用サイトにデータを入力し、仲介業者がアクセスし、このデータを参考にして客を案内する−−。利便性の高さから、業界ではサイトの利用が広がる。しかし、捜査関係者によると悪用への危機感が薄く、セキュリティーが十分とは言えないのが実態という。

 サイトが使われ始めたのは十数年ほど前から。それまでは管理業者と仲介業者とのやり取りは電話やファクスが中心だったが、ネットの普及に伴いサイトにシフトした。これに伴い、賃借希望者に部屋を内覧してもらうために備えられた、空き部屋の鍵の隠し場所まで入力する業者も現れた。

 サイトのセキュリティー対策は管理業者によってまちまちだ。仲介業者の実態を確認せずにIDなどを知らせる業者もあるといい、ある業者は「かつては悪用されるという発想自体がなかった。今は鍵の置き場所はサイトに掲載せず電話などで伝えている」と話す。

 空き部屋を巡っては、今回のような盗品の送り先に使われるだけでなく、電話でうそを言って現金をだまし取る「特殊詐欺」の現金の送り先になることもある。警察庁は全国の警察に、空き部屋への警戒の強化を指示している。

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