「収入がない」「貯蓄がない」「頼れる人がいない」
「路上の生活は厳しい。何をされるかわからない恐怖がある。中学生や高校生が、飲みかけのペットボトルや火のついたタバコを投げつけてくる。そのタバコの火で私のダンボールの家が燃えて、消防車が来たこともあります」
反貧困ネットワーク埼玉で貧困者の支援をしている高野昭博氏(60)は、こう振り返る。
彼は6年ほど前までホームレスだった。19歳~45歳まで大手百貨店の正社員として働き、年収は最高で1200万円もあった。それがいつの間にかホームレスにまで転落した。キッカケは、両親の介護だった。
「99年頃、父にガンが見つかりました。病気がちの母に父の世話はとてもムリ。それで、私が会社にお願いして、しばらくは休職扱いにしてもらっていたんです。でも、だんだんいづらくなって....悩んだ末、45歳で退職しました。でも、その時点ではまさかホームレスになるなんて夢にも思いませんでした」
高野氏のように、貧困にあえぐ65歳以上の人が増えている。NPO法人・ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏は、
①収入が著しく少ない。
②十分な貯蓄がない。
③頼れる人間がいない。
という3ない状態にある高齢者を「下流老人」と名づけ、6月に同名の新書、『下流老人』(朝日新聞出版)を上梓した。
「近い将来、高齢者の9割がこうした生活困難者になる可能性がある」
と藤田氏は警鐘をならす。
「下流老人とは『あらゆるセーフティネットを失った、生活保護基準相当のお金で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者』のことです。国が定める『健康で文化的な最低限度の生活』さえ送れない高齢者は年々増大しているのです」
生活保護の支給額は、たとえば首都圏で一人暮らしの場合、月額13万円程度になる。つまり、これが国が考える「健康で文化的な生活」の最低ラインだ。厚労省の調査では、今年3月時点で生活保護を受けている家庭は約162万世帯。うち約79万は65歳以上の高齢者世帯だ。
これに、年金生活者でも生活保護レベルの収入しかない高齢者や、その予備軍も含めると、現時点で下流老人は600万~700万人になるというのが藤田氏の試算だ。高野氏の話に戻ろう(以下、発言は高野氏)。
「45歳で会社をやめたとき、貯金は500万円強あり、退職金も800万円ほど受け取りました。株も約600万円分持っていましたので、金銭的には余裕があると考えていました。
しかし、父の葬儀代金が350万円、お墓の代金が500万円ほどかかってしまい、退職金が消えてしまいました。それでハローワークに通うようになり、運よく、元の職場の取引先の社長から声をかけていただきました」
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