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 ユネスコ(国連教育科学文化機関)が、世界記憶遺産に中国の申請した「南京大虐殺の記録」を登録したことに対し、安倍政権内から反発が出ている。菅義偉官房長官は13日、分担金支払い停止を検討する考えを示した。日本は財政難のユネスコに最も多くの資金を出しているが、こうした「揺さぶり」が国際社会にどう受け止められるかも問題になりそうだ。

 「我が国の(ユネスコへの)分担金や拠出金について、支払いの停止等を含めてあらゆる見直しを検討していきたい」。菅義偉官房長官は13日の記者会見でこう述べた。

 同様の発言は、自民党などからも相次ぐ。自民党の二階俊博総務会長は11日の講演で「ユネスコの経費を日本は納めるな、と言ってやった。お人よしで金を出しているが、主張を通さないと」。政府高官の一人は「日本が支払いを止めたら中国が肩代わりしかねない」と自制を求めた外務省幹部に対し、「(中国に)出させればいいじゃないか」と強気だったという。民主党の細野豪志政調会長も13日、記者会見で「いきなり停止することがいいのか考える必要がある」と述べつつ、「削減そのものは検討していい」と理解を示した。

 これらの発言の背景には、「中国が『南京事件』を政治利用している」(日本政府関係者)との不満がある。

 南京事件については、犠牲者数などで日中間に見解の違いがある。日本がユネスコに対し、登録への懸念を何度も伝えたのも、中国が自らの主張に国連機関のお墨付きが与えられたとして、政治利用しかねないという懸念からだ。菅氏の表明を受け、中国外務省の華春瑩副報道局長は13日の定例会見で「今回の一連の日本の言動は歴史問題で依然として誤った歴史観が凝り固まっていることを暴露したもので、憂慮している」と牽制(けんせい)した。

 日本政府が懸念するのは南京事件だけではない。

 今回、中国は慰安婦に関する史料の登録も申請していた。韓国でも政府の支援で元慰安婦の支援団体が登録を目指しており、中国政府も連携に関心を示す。日本政府内には「放置すれば同じことが繰り返される」との焦りも出ていた。

 そこで日本は、ユネスコの財政基盤を実質的に支えている実態から強気に出た。