証券会社のブロックトレード(市場外での大規模な相対取引)をめぐる株価操作事件で、証券会社社員に相次いで捜査のメスが入っている。
時価総額ベースで韓国証券業界最大手のKDB大宇証券に勤めるAチーム長(43)は、自他共に認める「スター証券マン」だった。過去3年間で150件のブロックトレードを実現させ、会社の収益に大きく貢献したことから、昨年には営業部門のトップ表彰を受けた。
Aチーム長の専門分野は株式市場の取引時間外に一定価格で上場株式を大量売買するブロックトレードだ。一般に大株主が保有株式を特定の相手に売却する場合に用いる手法だ。それをあっせんする証券会社は多額の手数料収入を得る。
Aチーム長が「黒い取引」の提案を受けたのは昨年半ばのことだ。普段から面識があったKB投資証券理事(取締役)のP容疑者(47)=逮捕済み=が店頭市場コスダック上場のI社の株式30万株、100億ウォン(約10億5000万円)相当をブロックトレードで売却すれば多額のコミッションを支払うと持ちかけた。検察の調べによれば、I社は当時、株価に対する悪材料があり、それが明らかになる前に大株主が高値で株式を売り抜けようとしたとみられている。
提案を受けたAチーム長は昨年7月末、I社の株式35万株の取得を機関投資家に持ちかけ、その見返りとして1億3000万ウォン(約1360万円)を受け取った。ブロックトレードが成立した直後、I社の株価は3万4000ウォン台の最高値を付けた後、10日足らずで2万6000ウォン台に急落した。
問題はAチーム長のように不公正取引に加担し、検察の捜査線に上る証券マンが複数存在することだ。最近、ソウルの金融街、汝矣島では証券会社の本社が家宅捜索を受け、スター証券マンが次々と逮捕されている。
今回の株価操作事件ではこれまでに証券業界の現役と元の役員をはじめ16人が逮捕され、証券会社10カ所余りが検察の家宅捜索を受けた。