9月に入ると、記者の耳にも様々な“懸念”の声が入ってくるようになった。
「翁長さんの煮え切らない態度に、反対派市民の不満は頂点に達している。なんとかガス抜きできないものか」(知事選で翁長選対にいたスタッフの一人)
「共産党系の人たちがしびれをきらしているから、翁長は身動きできなくなりつつあるよ。彼らを喜ばせるようなパフォーマンスをそろそろやらなくちゃならないだろうね」(防衛省関係者)
新基地建設の阻止は選挙公約だが、その手法を決めるのは知事である。にもかかわらず現状は、革新系の強硬な姿勢に、翁長氏が押しに押されている。このプレッシャーが、翁長氏が想像していた以上に重くなっているとみていい。
国連演説は「失敗」に終わった!?
翁長氏は、9月21日・22日の両日、スイスのジュネーブで開かれた国連人権理事会に出席し、基地建設反対を訴える演説を行った。翁長陣営からすれば、これは国際社会に沖縄の苦悩を訴える最大のチャンスであり、「見せ場」でもあった。
しかし残念ながら、その狙いが成功したとは言えないだろう。
翁長氏はこの演説で、「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている辺野古の状況を世界中から関心を持って見てください」と訴えた。
ところが、反翁長勢力は、この演説を「失敗」ととらえたのだ。なぜか。
翁長氏の国連演説を主導してきたのは、知事誕生の屋台骨となった「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」。演説の草稿を書いたのも、同会議の「国連部会長」を務める島袋純・琉球大学教授だ。
島袋氏は『沖縄タイムス』(9月21日付)のインタビュー記事上で、「沖縄の人々の権利とは?」という質問に、こう答えている。
「国際法に基づく自己決定権を持つ。憲法を制定したり統治機構を作ったりすることが可能だ。先住民として土地や資源を保全し、利用する権利もある」
この島袋氏の主張と翁長氏の政治信条には、浅からぬ乖離がある。自民党県連幹事長まで経験している翁長氏は自他共に認める愛国者であり、日米安保条約、日米同盟を重んじる保守政治家だ。だからこそ、「日本の安全保障は日本国全体で考えるべきだ」と知事就任前から訴えてきた。
そんな翁長氏のデリケートな立ち位置を、革新系や「島ぐるみ会議」はどこまで考慮していただろうか。
関係者によると、翁長氏は島袋氏が書いた国連演説の草稿に難色を示し、みずから朱入れをして文言調整をしたという。ここにも、翁長氏の苦悩、葛藤が現れている。
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