古代ヘブライ語ラップでABC!イスラエルのボーカリストVictoria Hannaが女教師に扮して子供達教える秘密の言葉とは?Victoria HannaのMV「Aleph-bet 」 !

2015.10.13 Tue

 

Victoria Hanna「Aleph-bet (Hosha'ana)」
dir: Asaf Korman|ex pr: Lee Kuperman|pr: Roei Zioni, Aviv Ben shlush|DoP: Alon Lutsky|cho: Gal Liberfroind
教師の格好をした女性が教室の前に立ち、中東のアルファベットを歌っていく。身体を大きく使いながら1つ1つの単語にジェスチャーを加える様子は、まるで、秘密の言葉を教えているようだ。

イスラエルでボーカル・アーティストとして活躍するVictoria Hanna(ヴィクトリア・ハンナ)の新曲「Aleph-bet(アレフ・ベート)」のMVが公開された。ボーカル・アーティストとはハンナ曰く、声を粘度のように、捏ねて生み出す音の表現を指し、古代ヘブライアルファベットの様々な発音をヒップホップ調の楽曲に組み込むという新しいタイプの音楽に注目だ!

ハンナは長年アーティストとして活動してきたが、アメリカ進出に向け、初めて公式のMVをリリースした。伝統的なヘブライ語のアルファベットを歌とジェスチャーで表現する本作。ハンナの育ってきた環境が大きなインスピレーションとなっている。子供の頃、どもり症だったハンナは、家中にあったユダヤ教の本やヘブライ語アルファベットを読みあさる“しゃべる”という練習が彼女の音楽のルーツになっていったのだという。

ちなみに、ヘブライ語は、旧約聖書の時代に話されたユダヤ人の言葉だ。紀元70年にローマ帝国によってユダヤ人の国が滅び、ユダヤ人は世界各地に散り散りになってからも、離散した土地でコミュニテイを作り、民族のアイデンティティを守り続けた。宗教用語としてのみ命脈を保ち、日常会話からは消失していたヘブライ語は、約100年前にエリエゼル・ベン・イェフダーというリトアニア出身の男性の研究によって現代ヘブライ語として日常の中に復活した。イェフダーはほとんど独力で失われた話し言葉としてのヘブライ語を再び作り上げ、他に類を見ないその業績は奇跡とさえ呼ばれている。本作「Aleph-bet」の中で歌われるヘブライ語は、彼の研究に基づいている。

ヘブライ語のアルファベットは"アレフベート"と呼ばれ、全部で22個の記号で構成される。「Aleph-bet」では、その22のアレフベートを全て辿っていく。これらのアレフベートは、ユダヤの神秘主義思想カバラでは身体の臓器に結びつけられている。ハンナが見せる動きはその現れであり、女子生徒たちに教えているのは、2,000年以上の伝統を持つまさに秘密の教えだ!

中盤からは、ヒップホップのリズムとインド音楽のスタイルが組み合わさり、登場するハンナも先生、女子生徒とコロコロと役が入れ替わる。黒板には、CGで作ったアルファベットやチョークで描いた絵が現れる。ハンナの動きに合わせて文字が飛び回る様子は、まるで古代ヘブライ語が命を宿しているかのようだ。

「私たちの口は創造の道具であり、全ての文字も特別な道具です。全ての文字を声に出すとき、私たちはこの世界で何かを創り出しているのです」(ヴィクトリア・ハンナ)

本作には、その他にも様々な文脈が隠されている。中盤で女子生徒が持つ草葉はユダヤの祈祷で使われるものだ。蜂蜜は、本に滴らし子供に舐めさせるという昔の風習を再現しており、ユダヤ社会の伝統が息づく内容になっている。さらに、登場人物は全て女性なのも、男性中心のユダヤ社会を示唆しているようだ。

本作を手がけた監督は、ハンナと同じくイスラエルで活動する1982年生まれの映画監督Asaf Korman(アサフ・コルマン)。18歳の時に制作したショートフィルム「End Credit」でデビュー後、映画編集者ととして幅広いジャンルの作品を手掛けてきた。イスラエル国内の映画祭などで活躍の場を広げたコルマン監督は、国内の様々なアーティストとコラボレートしており、本作「Aleph-bet」もそのひとつ。また、2014年には90分の長編処女作となる「Next To Her」を監督し活躍の幅を広げている。

■コルマン監督の初長編映画作品Next To Her(彼女のそばで)

Asaf Korman「Next To Her - Trailer (HEB)」
dir: Asaf Korman
コルマン監督の長編処女作「Next To Her」は第15回東京フィルメックス・コンペティション部門にて、2014年秋に邦題「彼女のそばで」として、日本でも上映されている。イスラエルの都市ハイファを舞台に、障がいを持つ妹と姉の親密な関係を描いた本作は、コルマン監督の妻Liron Ben-Shlush(リロン・ベン・シュルシュ)氏が脚本を書き、さらに姉のヘリ役も演じている。
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