今回はExcelで作成するレポートのデザインと機能性を高める手法についてご紹介します。
デザインはレポートの「見映え」となり、相手に手渡した瞬間の第一印象を左右し、その後の展開に影響を与える重要な要素です。
機能性とは「分かりやすさ」で、誰が見ても分かるレポートは相手に余計なストレスを与えず、その分あなたの話しに集中して貰えます。
デザインと機能性にこだわれば、商談や会議をこれまで以上に有利に進めることができるようになります。そして、これらは一定のルールに従うだけで誰でも改善できます。ぜひ取り入れてみてください。
デザインと機能性の重要度
「デザイン」で第一印象が決まる
あなたがレポートを作成し、クライアントや上司に提案・報告などを行うとき、その評価は相手がレポートを見た瞬間から始まります。あなたが話し始める前から、すでに勝負は始まっているのです。
見映えにこだわらず、Excelの標準として用意された配色やフォントを使ったレポートは既視感が強く、「どこかで見たことあるような資料だな」としか思われません。レポートを渡した相手が少しでも見映えにこだわる人であれば、その時点でマイナスな印象を与えてしまう可能性もあるでしょう。
一方で、デザインにこだわり普段と違う色遣いやフォントで作られたレポートは相手に新鮮な印象を与えます。それが期待感に繋がり、これからあなたが何を話すのかという興味を掻き立てます。
「機能性」が相手の理解を左右する
あなたが他の人の報告を聞いているとき、「それってレポートのどこに書いてあるの?」と思ったことはありませんか。作った人は自分で分かっているつもりでも、初めてレポートを見る相手はすぐに内容を理解できないものです。
機能性が低い=「分かり難い」レポートは、データがどこにあるかを探すことに労力を使ってしまい、話の内容を十分に聞き取れなくなってしまうのです。
デザインと機能性にこだわれば優位に立てる
レポートにおいて最も重要なのは、その中身である「データや分析内容」であることは誰もが理解しています。しかし、見た目が悪いと読む気が起きず、分かり難いと上手く伝わらないのです。同じ食材を使って同じ調理方法で料理をしても、最後の盛り付けが汚いと美味しく感じられないのと似ています。中身は同じはずなのに、不必要に評価を落としてしまいます。
もちろん内容が伴っていなければ最終的な成果には繋がりませんが、少なくともデザインと機能性にこだわることで、商談や会議を有利に進めることができるでしょう。
その方法について、以下で詳しく説明します。
悪いレポートの例
まずはスタート地点として、簡単なレポートを作りました。
過去1年間の売上および来店客数の推移を表したもので、単純に表を作ってその上にグラフを並べただけの状態です。どこかで見たことがありそうなレポートですね。
これでもデータの意味は理解できますが、決して見映えが良いとも、分かりやすいとも言えません。どこが良くないのかは以下で具体的に解説しますので、このレポートを一つずつ改善していきましょう。
1.配色を変える
レポートの印象を簡単に、しかも大きく変えられるのが配色の変更です。意外と使われていないように思われる機能ですが、簡単な操作でありふれたレポートから脱却できるので、ぜひ使いましょう。
配色の変更方法
Excel2010での解説ですが、他のバージョンでもほぼ同じです。ただし、2003以前では使えません。
- ページレイアウトをクリック
- 配色をクリック
- 使いたい配色を選択(今回は「ウェーブ」を使用します)
これでグラフの色が変わりました。
また、セルの塗りつぶしなどで使用するカラーパレットの配色も変更されています。
あとはこのカラーパレットから色を選ぶだけで、見慣れたExcel標準の色遣いを卒業できます。
配色を選ぶ際の注意点
カラーパレットがほぼ同系色で構成されている配色は避けましょう。例えば「クチュール」や「リゾート」はほぼ同系色のカラーパレットになっているため、この配色で円グラフを作ると、どの色がどのデータを表しているのか分かり難くなってしまいます。
(クチュールで作成した円グラフ)
これでは「めろん」が円グラフ上のどこにあるか、一瞬では見分けがつきませんね。グラフは色分けによって分かりやすくしたいので、出来るだけ多くの色相(色の種類)がある配色を選びましょう。
2.フォントを変える
続いてフォントを変更します。フォントもレポートのイメージを作る大切な要素です。標準の「MS Pゴシック」でも構わないのですが、やはり見慣れた感があるので、違うフォントを選ぶことで新鮮なイメージを与えましょう。
フォントを選ぶ際の注意点
基本的には、読みやすいフォントであればどれを選んでも構いません。ただ、数値の桁区切りとして使用する半角カンマの形には注意が必要です。半角カンマの幅が広すぎたり狭すぎたりすると数値が読みづらくなるため、適切な幅のフォントを選びましょう。
おすすめのフォント
どのフォントにすれば良いか決められない場合、おすすめの一つが「Meiryo UI」です。このフォントが優れている理由としては、まず数字が読みやすく、半角カンマの幅もちょうど良いためデータの可読性が高いです。またカタカナの幅が少し狭めになっているため、「コンバージョン率」のような長くなりがちな専門用語もすっきりとセルに収めることができ、レイアウトの調整がしやすくなります。
それではフォントを「Meiryo UI」にしてみましょう。
【変更前】(「MS Pゴシック」)
【変更後】(「Meiryo UI」)
数字の幅が少し広がって読みやすくなり、文字も若干丸みを帯びて柔らかい雰囲気になりました。
すべて同じフォントにする
レポート上で使用するフォントは出来るだけ統一しましょう。例えばグラフ内部と表で異なるフォントを使っていると気になる人もいます。場合によっては数値と文字列でフォントを使い分けることもありますが、基本的には全部統一しておけば間違いありません。
3.棒グラフのデザインを調整する
続いて棒グラフのデザインも調整しましょう。グラフはレポート上で最も目立つ部分なので、このデザインが全体のイメージを左右します。逆に言えば、グラフのデザインを変えるだけでレポートの雰囲気をガラッと変えることができます。
棒グラフに色を付ける
色の付け方にルールはありませんが、基本的には一つの色で、単色で塗りつぶすか少しグラデーションを付けるのが無難かと思います。
棒グラフの枠線に色を付ける
単色で塗りつぶした場合は枠線「なし」でも構いませんが、グラデーションを使った場合は枠線を付けた方が綺麗です。先程と同じか、少し濃い目の色を付けると見やすくなります。
棒グラフの幅を変える
これは全体のレイアウトによって太くするか細くするか変わってきます。色々と調整してみて、バランスの良い幅を選びましょう。
(グラフの幅は「棒グラフを右クリック」>「データ系列の書式設定」>「要素の間隔」で調整できます)
それでは実際にやってみます。色付けはグラデーション、幅は少し細くし、枠線を追加しています。
4.折れ線グラフのデザインを調整する
棒グラフ同様、折れ線グラフも調整します。「色」「太さ」「マーカー」を変えましょう。
折れ線グラフに色を付ける
棒グラフと重なっても見難くならない色を選びましょう。棒グラフが寒色系であれば折れ線グラフは暖色系など、対照的な色を選ぶと見やすいと思います。棒グラフと同系色にする場合は、濃い目の色を選ぶのが無難です。
線の太さを変える
全体のバランスとの兼ね合いにもよりますが、太すぎると野暮ったい印象になるため、0.75~2.5ptくらいに収めましょう。
マーカーを付ける
マーカーがあるとグラフの高低が認識しやすくなるので追加します。マーカー色と幅は先ほど設定した線と同じものにし、塗りつぶしは少し薄めの色にするとバランスが良くなります。
では、折れ線グラフを変えてみましょう。
棒グラフと対照的なオレンジ系の色に変更し、丸いマーカーを追加しました。線、マーカーともに太さは2.25ptです。
5.表のデザインを調整する
色分けで分かりやすくする
レポート上の表は大きく分けて2つの要素に分類されます。1つはデータ(数値)が記載されている部分で、ここを見てもらうことが最も重要になります。もう1つは「年・月・週」などの期間や「売上」などの項目名の部分です。これらを色分けすることで、最も見て欲しい部分を分かりやすくしましょう。
表とグラフの関係性を色で表現する
先ほど水色の棒グラフとオレンジ色の折れ線グラフを作りましたが、表と見比べたときにどちらが売上でどちらが来店客数なのか、ぱっと見ただけでは判断できません。表の項目名にも水色とオレンジ色の色付けをすることで分かり易くします。
桁区切り・単位を表示する
これは当たり前のことですが、数値には桁区切りの半角カンマを入れ、「金額」「時間」「割合」など、単位があるデータはきちんと単位を表示しましょう。
実際にやってみます。
あとで調整する部分もありますが、表とグラフの関係性が分かりやすくなったかと思います。
6.表の月表示を変える
表示形式を変える
表の月表示(横軸)の全てに「2014年」「2015年」が表示されていますが、すべて表示しなくてもその月が何年か分かるので、不要な部分は取り除きます。「表の左端が何年なのか」「次の1月が何年なのか」という2つが分かれば良いので、他の月は年の表示を消しましょう。また西暦を4桁で表示していますが、幅をとってしまうので2桁に変えます。
表示形式の変え方
- 「左端の月」と「1月」のセルを選択(Ctrlを押しながら各セルを一つずつクリック)。
- 右クリック>「セルの書式設定」>「表示形式」タブから「ユーザー定義」を選択
- 表示形式の入力欄に「yy"年"m"月"」と入力
これで選択したセルが「○○年○○月」の表示形式に変わりました。今度はそのほかのセルの表示形式を変えます。同じ要領で、表示形式の入力欄に「"m"月"」と入力しましょう。「○○月」という表記に変わります。
【変更前】
【変更後】
これで無駄な部分が消えてすっきりしました。
7.表とグラフを揃える
セルとグラフを同じ幅にする
いまの状態だと、表とグラフの各月の位置がズレていますが、例えば5月の棒グラフを見て実際の売上を確認したくなった場合、このままでは表から5月を探すという手間が生まれます。
時間にすれば一瞬ですが、このわずかな手間がストレスに繋がるので、見やすいように調整しましょう。
ポイントはグラフと表の赤い矢印部分の幅を揃えることです。これにより、表の5月の真上にグラフの5月が配置されるため、わざわざ探す必要がなくなります。
なお、実際に幅を揃えると表の右に余分なスペースが生まれます。バランスも悪いですし、せっかくの枠なのでここに年間の合計値を入れました。またグラフの右端にあった凡例は上部中央に移動させています。
グラフの外枠はセルの罫線で書く
図だと分かり難いかもしれませんが、グラフと表の外枠が僅かながら左右にズレています。グラフの大きさを変えることでピッタリと揃えることも出来ますが、それでも印刷するとわずかに位置がズレることがあります。以下の手順で、印刷してもズレないようにしましょう。
- グラフの「塗りつぶし」と「枠線」を「なし」にする
- グラフの後ろ側にあるセル自体に罫線を書く
【変更前】
【変更後】
グラフではなくセル自体に罫線を書いているので、表とピッタリ揃いました。これで印刷してもズレることはありません。
8.線の色を薄くする
表の罫線やグラフの目盛線が濃いため、グラフやデータを見るときに少し気になります。全体的に線を薄くすることでバランスを整えましょう。
罫線を薄くする
表の罫線と先ほどグラフの外枠として使った罫線の色を薄くします。今回は白~黒の中間からやや白よりの濃さにしました。またメリハリを付けるため、表とグラフの外枠は太めの罫線にしています。
グラフの目盛線を薄くする
グラフの目盛線も薄くしましょう。こちらはかなり薄い色にしても構いません。
(目盛線を右クリック>「目盛線の書式設定」)
9.不要な要素を取り除く
消してしまっても問題ない要素は取り除きましょう。その方がグラフとデータに集中しやすくなりますし、見た目もスッキリします。
グラフ縦軸の線を消す
グラフ縦軸の線がなくてもグラフの可読性にはほとんど影響しません。縦軸の数値を右クリックし、線の色を「線なし」にしましょう。
グラフの月表示を消す
グラフの下端と表の上端それぞれに月表示がありますが、二つある必要はないのでグラフ側の月表示は消しましょう。表とグラフの位置を揃えているため、どのグラフがどの月か分からなくなることはありません。
それぞれ取り除くと以下の形になります。
無駄な要素が消え、スッキリしました。これでほぼ完成形です。
10.その他の微調整
最後に、以下の変更を加えます。
- 凡例のデザイン変更
→フォントサイズを大きくし、オートシェイプ(図形)で枠を付けます。
- グラフ縦軸の目盛間隔を広げる
→左軸(売上)の目盛間隔を10万円から20万円、来店客数は200から400に変えています。これにより、目盛線の本数が減ってよりスッキリしました。
- そのほか細かな調整
→セルの幅を少し変えるなど、最終的な調整を行いました。
まとめ
以上で完了です。スタート地点のレポートと比較してみましょう。
【スタート時】
【完成形】
いかがでしょうか。だいぶ印象が変わったかと思います。見た目が綺麗になっただけでなく、グラフと表の関連性も分かりやすくなり、レポートとしての機能性も向上しました。
考え方やルールはどのレポートでも同じ
今回の内容は一つの例ですので、必ずしもすべてを取り入れる必要はありません。デザインによっては、線の色は濃いほうが良い場合もあるでしょう。ただ、根本的な考え方はどのレポートでも一緒ですし、円グラフや散布図など他の種類のグラフを使う場合も変わりません。
色付けや全体のバランス感を整えるには慣れが必要ですが、「グラフと表の位置を揃える」「グラフの外枠はセルの罫線で書く」「不要な要素を取り除く」といった部分はある種の「ルール」のようなものなので、すぐに取り入れて頂けるかと思います。ぜひ、これから作るレポートで試してみてください。
自分のパターンを作ろう
そして、この作業に慣れてきたら「自分のパターン」を確立させましょう。自分が使う配色やフォント、レイアウトのルールを決め、どの資料もそのルールに則って作成します。これによってデザインを考える手間が減りますし、「あなたが作った資料」であることが一目で分かるようになり、社内における自身のブランディング的なものにも繋がります。
あなたが作ったレポートをクライアントや上司に手渡したその瞬間、相手がただ眺めるだけなのか、「おっ」と惹きつけられるように見てくれるのか、また、データを探すのに必死であなたの話しが伝わらないのか、集中して聞いてくれるのか、それらを大きく左右するのがデザインと機能性です。
ぜひレポートのデザインと機能性にこだわって、相手をあなたの資料に惹きつけ、あなたの話に集中させましょう。