日本人が知らない「EUの盟主」ドイツの正体 ~VW事件を生み出した「傲慢」「自賛」体質とは独在住作家が分析

2015年10月13日(火) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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たとえば、ドイツの成功をねたんで陥れようとする国=米国、ドイツの不幸を利用しようとする姑息な国=日本、といった風に、です。

不正が発覚した後の9月22日のこと。ドイツの公共放送ZDFのニュース番組に経済専門家が登場し、いかにも憎々しいといった風に次のように語っていました。

「今回の事件で我々の車の品質に傷がつけば、他国のメーカーの力が増す。そうなれば、『ワンダフル!』と言いながら、他国のメーカーがその隙間に入り込む。たとえば、トヨタだ!」

ドイツの公共放送がトヨタを名指しで、ドイツの災いを喜ぶ「敵」として扱っているわけです。彼らは惻隠の情という言葉を知りません。

他にも「おやっ?」と思うことはあります。不正発覚当初、野党の緑の党が、「国交大臣は、この不正を知っていたのではないか」と指摘したのに、与党にさりげなく否定されたまま、以後、その話が一切出ないことです。

ドイツでは、産業界と政界は非常に関係が深い。言い換えれば、産業界と政界が協力し合っているから、ドイツ経済はここまで順調に発展したのです。ただ、「協力」はときに、限りなく「癒着」に近づく場合も多い。

ドイツの自動車関連産業は7人に1人が働くまさに基幹産業で、ドイツ政府と手を取り合って進んできた歴史があります。中でもフォルクスワーゲンは、本社を置くニーダーザクセン州政府が同社株の20%を保有する大株主で、監査役会には州知事が加わっています。

しかも、新たに分かってきた情報では、不正ソフトは'07年あたりから、すでに問題になっていたというのです。知っていた政治家がいたとしても、不思議ではありません。なのに、それを追及する声が一切出てこないのは、かえって不自然です。

フォルクスワーゲンはこれまでずっと、政界の全面的バックアップを享受してきたはずです。しかも、ドイツ経済の強化に貢献してきたのは自分たちとの自負もある。だから、自分たちの不正が摘発されるわけはないという思いあがりがあった可能性はないでしょうか。

戦後、何もないところから始めたドイツと日本は、両者とも経済大国として蘇りました。そして、ドイツはこの15年、政治大国としても軍事大国としても急激に伸びてきました。その間に、どこかに歪みも生まれたのでしょう。今回の事件を見ると、驕れる者は久しからずという言葉が、ふと頭に浮かぶのです。
 

「週刊現代」2015年10月17日号より


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