そもそも、遥か遠い福島で起こった原発事故で、日本人以外でこれほど大騒ぎした国民はドイツ人の他にはいません。ドイツではガイガーカウンターまで売れたのです。
その挙句、'11年6月に、2022年リミットでの脱原発を決め、政治家も国民も一丸になった。彼らの心は、自分たちは自然を愛し、拝金主義とは一線を画す気高い国民であるという誇らしさで満たされました。
しかし、です。
政府は、原発の電気を再生エネルギーで賄うつもりでしたが、再エネはいくら増えても一大産業国の電力を安定供給することはできません。何しろお天気次第ですから。そのため、再エネは急増していながら、結局、原発の減る分は火力で賄っています。ですから今、ドイツでは、再エネの買い取りのための賦課金で電気代が高騰するばかりか、CO2も増えています。
さらに、北ドイツの風力電気を南ドイツの電気消費地に運ぶ送電線は住民の反対で進まず、とにかく問題山積みです。2022年までにCO2をこれ以上増やさず、どうやって原発を止めれば良いのか。これもすべては、政治家と国民の一時の自己陶酔の結果なのです。
非難されるとすぐ攻撃する
最近、欧州全体を移民問題が騒がせています。この移民問題へのドイツ政府の対応を見ていても、ドイツ人の悪い癖が出ていると感じます。
9月初旬、シリアやアフガニスタンからの移民が漂流し、本当に気の毒なことになっていました。それを見たドイツのメルケル首相は「政治難民の受け入れに上限はない」と大見得をきって、難民のドイツへの移送を決めた。
国民の多くもそれを支持し、それをドイツメディアが人道的と褒め称えた。ドイツはいっぺんに、ウェルカム・トゥー・ジャーマニー一色になりました。
しかし、まもなくバイエルン州のミュンヘン中央駅に続々と難民が到着し始めると、ドイツはパニックに陥ります。そして、一時的にドイツ—オーストリア間の国境を閉めるという事態にまで発展。主要道路でも国境での検問が始まり、あちこちで大渋滞も起きました。
9月だけでバイエルン州には、17万人の難民が入ったようです。ドイツ全体では、今年1年で100万人近くになるだろうと言われています。メルケル首相の人道主義が難民に希望を与えたからです。
しかし、すぐに破綻するこの善行は、本当に「英断」だったのでしょうか。他のEU諸国ではメルケル首相のスタンドプレーに対する批判が続出しています。それに対してドイツは、他国にも難民の引き取りを促す。非難されるとたちまち攻撃に転ずるのも、ドイツ人の特徴です。
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