東京
丸の内の三菱一号館美術館では三菱一号館美術館開館5周年記念、
「プラド美術館展―スペイン宮廷 美への情熱」が開かれています。
会期は2016年1月31日(日)までです。

スペインのプラド美術館の所蔵する作品の内、約100点が展示されています。
今回は親しみやすい小品を中心にしていて、小部屋の多い三菱一号館美術館に
ふさわしい展示です。
ヒエロニムス・ボス 「愚者の石の除去」 1500-10 年頃

オランダでは、頭の中の小石を取り除かないと愚か者になってしまうと
思われていたそうで、怪しげな医者が患者の頭に穴を開けています。
被っている漏斗は愚者を意味するとのことで、何とも怪しげな場面です。
偽ブレス(ブレシウス)
「東方三博士の礼拝」(中央) 「12 部族の使者を迎えるダビデ王」(左)
「ソロモン王の前のシバの女王」(右) 1515 年頃

部分

縦58 cmの小さな祭壇画で、旧約聖書と新約聖書の場面です。
ダビデ、ソロモンからイエスにつながる系譜を表しているのでしょうか。
人物たちも廃墟のような建物も細密に描かれています。
エル・グレコ(本名ドメニコス・テオトコプロス) 「受胎告知」 1570-72年

グレコの初期の作品ですが、振り返っているマリアの姿は後のグレコを思わせます。
エル・グレコ(本名ドメニコス・テオトコプロス) 「エジプトへの逃避」 1570年
聖母子を乗せたロバが石橋を渡るのを嫌がり、聖ヨセフは背を反らせて手綱を
引っ張っています。
「エジプトへの逃避」はよく描かれる題材ですが、グレコの作品は説明風ではなく、
動的なものがあります。
ディエゴ・ベラスケス 「フランシスコ・パチェーコ」 1619-22 年

フランシスコ・パチェーコは画家で、ベラスケスの師であり、義父です。
横からの光りと白い襟飾りによって、人物の顔を際立たせています。
ディエゴ・ベラスケス 「ローマ、ヴィラ・メディチの庭園」 1629-30 年
スペイン王室の役人でもあったベラスケスが公務でイタリアに赴いた時の作品です。
庭園の一角の木々と木戸、数人の衛兵を抑えた色調で描いただけの地味な絵ですが、
その何気なさが近代的で魅力があります。
クロード・ロラン 「浅瀬」 1644 年頃
夕暮れ近く、ゆるやかに流れる川を牛が渡り、牧童が木陰で休んでいます。
向こう岸には古代の建築の廃墟の立つ、一種の理想郷が描かれています。
ルトロメ・エステバン・ムリーリョ 「ロザリオの聖母」 1650-55 年

ムリーリョがまだ、もやのかかったようなやわらかな描き方をする前の時期の作品で、
聖母マリアがドメニコ修道会の創始者聖ドメニコにロザリオを与えたという伝承に
基いています。
縦166㎝の大きな作品で、こちらを見つめる聖母子のみを描いています。
赤の衣服と青のマントの色合いにも品があり、気高さを感じます。
アントン・ラファエル・メングス 「マリア・ルイサ・デ・パルマ」 1765 年

マリア・ルイサ・デ・パルマ(1751-1819)はスペイン王カルロス4世の王妃で、
ゴヤの有名な「カルロス4世の家族」では、いかにも性悪そうに描かれています。
この作品ではまだ少女時代なので、美化されている点はあるにしても、
愛らしい顔立ちです。
頬や唇、首飾りの赤が効果的に使われ、どうやって結い上げたのだろうと思うような
凝った髪型をしています。
大型の肖像画のための習作らしいとのことで、衣装の部分は簡略化されています。
フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス 「レオカディア・ソリーリャ?」 1814-16 年
ゴヤの内縁の妻だった女性を描いた作品と思われる肖像画です。
つつましやかにこちらを見ていますが、生きた表情が表されています。
フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス 「トビアスと天使」 1787年頃

旧約聖書のトビト書の、チグリス河畔でトビアスが巨大な魚に食われようとして、
大天使ラファエルによって救われる場面です。
世俗を鋭く描いた画家としてのイメージの強いゴヤですが、宗教画にも
優れていたことが分かります。
フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス「アルバ女公爵とラ・ベアタ」 1795年
ラ・ベアタとは信心深い女と言う意味とのことです。
アルバ女公爵は当時のスペイン宮廷で美貌と機知を詠われた女性で、ゴヤとも
私的な関係があったと伝えられています。
小品で、後ろ向きのアルバ女公爵がいたずらで信心深い老召使に珊瑚の魔除けを
押し付けて、怖がらせています。
召使は片手に十字架を握って身をのけぞらせています。
女公爵の長い黒髪、衣装の白、装飾品のきらめきなど、色彩も調和しています。
ルイス・パレート・イ・アルカーサル 「花束」 1780 年頃

部分

ルイス・パレート・イ・アルカーサル(1746-1799)はゴヤと同じ頃のスペインの
宮廷画家で、細密な表現を得意としています。
繊細な筆遣いと色彩による優美な静物画です。
マリアノ・フォルトゥーニ・イ・マルサル 「日本式広間にいる画家の子供たち」 1874 年

部分

マリアノ・フォルトゥーニ・イ・マルサル(1838-1874)は異国趣味の絵をよく描いています。
横93㎝の横長の画面で、画家として名声を得た後に、自分の描きたいものを描いた
作品とのことです。
ジャポニズムの入った絵で、屏風らしい調度の前の長椅子に寝ている少女は
扇を広げています。
36歳で亡くなったフォルトゥーニの未完成の作品とのことですが、色彩は明るく、
描写に力強さがあります。
ビセンテ・パルマローリ・ゴンサレス 「手に取るように」 1880 年

ビセンテ・パルマローリ・ゴンサレス(1834-1896)はスペインの画家で、ローマや
パリでも活動しています。
パリからの鉄道が通じ、多くの観光客が訪れるようになったノルマンディーの
情景でしょうか。
淡い色調で、双眼鏡を覗く当世風のファッションの女性を描いています。
海岸で遊ぶ都会の人たちというテーマは色々な画家が採り上げており、
印象派の画家たちも描いています。
小品が多いだけに、どの作品も味わい深く、じっくり時間をかけて観たい展覧会です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は「PARIS オートクチュール ― 世界に一つだけの服」展です。
会期は 2016年3月4日(金)から5月22日(日)までです。

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丸の内の三菱一号館美術館では三菱一号館美術館開館5周年記念、
「プラド美術館展―スペイン宮廷 美への情熱」が開かれています。
会期は2016年1月31日(日)までです。
スペインのプラド美術館の所蔵する作品の内、約100点が展示されています。
今回は親しみやすい小品を中心にしていて、小部屋の多い三菱一号館美術館に
ふさわしい展示です。
ヒエロニムス・ボス 「愚者の石の除去」 1500-10 年頃
オランダでは、頭の中の小石を取り除かないと愚か者になってしまうと
思われていたそうで、怪しげな医者が患者の頭に穴を開けています。
被っている漏斗は愚者を意味するとのことで、何とも怪しげな場面です。
偽ブレス(ブレシウス)
「東方三博士の礼拝」(中央) 「12 部族の使者を迎えるダビデ王」(左)
「ソロモン王の前のシバの女王」(右) 1515 年頃
部分
縦58 cmの小さな祭壇画で、旧約聖書と新約聖書の場面です。
ダビデ、ソロモンからイエスにつながる系譜を表しているのでしょうか。
人物たちも廃墟のような建物も細密に描かれています。
エル・グレコ(本名ドメニコス・テオトコプロス) 「受胎告知」 1570-72年
グレコの初期の作品ですが、振り返っているマリアの姿は後のグレコを思わせます。
エル・グレコ(本名ドメニコス・テオトコプロス) 「エジプトへの逃避」 1570年
聖母子を乗せたロバが石橋を渡るのを嫌がり、聖ヨセフは背を反らせて手綱を
引っ張っています。
「エジプトへの逃避」はよく描かれる題材ですが、グレコの作品は説明風ではなく、
動的なものがあります。
ディエゴ・ベラスケス 「フランシスコ・パチェーコ」 1619-22 年
フランシスコ・パチェーコは画家で、ベラスケスの師であり、義父です。
横からの光りと白い襟飾りによって、人物の顔を際立たせています。
ディエゴ・ベラスケス 「ローマ、ヴィラ・メディチの庭園」 1629-30 年
スペイン王室の役人でもあったベラスケスが公務でイタリアに赴いた時の作品です。
庭園の一角の木々と木戸、数人の衛兵を抑えた色調で描いただけの地味な絵ですが、
その何気なさが近代的で魅力があります。
クロード・ロラン 「浅瀬」 1644 年頃
夕暮れ近く、ゆるやかに流れる川を牛が渡り、牧童が木陰で休んでいます。
向こう岸には古代の建築の廃墟の立つ、一種の理想郷が描かれています。
ルトロメ・エステバン・ムリーリョ 「ロザリオの聖母」 1650-55 年
ムリーリョがまだ、もやのかかったようなやわらかな描き方をする前の時期の作品で、
聖母マリアがドメニコ修道会の創始者聖ドメニコにロザリオを与えたという伝承に
基いています。
縦166㎝の大きな作品で、こちらを見つめる聖母子のみを描いています。
赤の衣服と青のマントの色合いにも品があり、気高さを感じます。
アントン・ラファエル・メングス 「マリア・ルイサ・デ・パルマ」 1765 年
マリア・ルイサ・デ・パルマ(1751-1819)はスペイン王カルロス4世の王妃で、
ゴヤの有名な「カルロス4世の家族」では、いかにも性悪そうに描かれています。
この作品ではまだ少女時代なので、美化されている点はあるにしても、
愛らしい顔立ちです。
頬や唇、首飾りの赤が効果的に使われ、どうやって結い上げたのだろうと思うような
凝った髪型をしています。
大型の肖像画のための習作らしいとのことで、衣装の部分は簡略化されています。
フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス 「レオカディア・ソリーリャ?」 1814-16 年
ゴヤの内縁の妻だった女性を描いた作品と思われる肖像画です。
つつましやかにこちらを見ていますが、生きた表情が表されています。
フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス 「トビアスと天使」 1787年頃
旧約聖書のトビト書の、チグリス河畔でトビアスが巨大な魚に食われようとして、
大天使ラファエルによって救われる場面です。
世俗を鋭く描いた画家としてのイメージの強いゴヤですが、宗教画にも
優れていたことが分かります。
フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス「アルバ女公爵とラ・ベアタ」 1795年
ラ・ベアタとは信心深い女と言う意味とのことです。
アルバ女公爵は当時のスペイン宮廷で美貌と機知を詠われた女性で、ゴヤとも
私的な関係があったと伝えられています。
小品で、後ろ向きのアルバ女公爵がいたずらで信心深い老召使に珊瑚の魔除けを
押し付けて、怖がらせています。
召使は片手に十字架を握って身をのけぞらせています。
女公爵の長い黒髪、衣装の白、装飾品のきらめきなど、色彩も調和しています。
ルイス・パレート・イ・アルカーサル 「花束」 1780 年頃
部分
ルイス・パレート・イ・アルカーサル(1746-1799)はゴヤと同じ頃のスペインの
宮廷画家で、細密な表現を得意としています。
繊細な筆遣いと色彩による優美な静物画です。
マリアノ・フォルトゥーニ・イ・マルサル 「日本式広間にいる画家の子供たち」 1874 年
部分
マリアノ・フォルトゥーニ・イ・マルサル(1838-1874)は異国趣味の絵をよく描いています。
横93㎝の横長の画面で、画家として名声を得た後に、自分の描きたいものを描いた
作品とのことです。
ジャポニズムの入った絵で、屏風らしい調度の前の長椅子に寝ている少女は
扇を広げています。
36歳で亡くなったフォルトゥーニの未完成の作品とのことですが、色彩は明るく、
描写に力強さがあります。
ビセンテ・パルマローリ・ゴンサレス 「手に取るように」 1880 年
ビセンテ・パルマローリ・ゴンサレス(1834-1896)はスペインの画家で、ローマや
パリでも活動しています。
パリからの鉄道が通じ、多くの観光客が訪れるようになったノルマンディーの
情景でしょうか。
淡い色調で、双眼鏡を覗く当世風のファッションの女性を描いています。
海岸で遊ぶ都会の人たちというテーマは色々な画家が採り上げており、
印象派の画家たちも描いています。
小品が多いだけに、どの作品も味わい深く、じっくり時間をかけて観たい展覧会です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は「PARIS オートクチュール ― 世界に一つだけの服」展です。
会期は 2016年3月4日(金)から5月22日(日)までです。
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