2015/10/13
先月11日、このような報道があった。
携帯通信事業者が3社体制で固定化し「競争政策が働いていないとの指摘もある」として、携帯料金の引き下げを検討するよう安倍総理が総務大臣に指示を出した。iPhone6sの発表翌日の報道であり、大手携帯キャリア3社の株価は下がり、iPhone商戦に水を差された形だ。
携帯業界は3社寡占状態?
まず疑問なのは、携帯業界には本当に競争原理は働いていないのだろうか?
確かに3社横並びの金額となっている。端末代金・各種キャンペーンなど若干の違いはあるが、これでは競争していないと言われても仕方ないように思える。
携帯電話事業は免許が必要なため新規参入が難しく、3社独占と言われてきた。
続々と増えるMVNO
しかし2001年にPHSの回線網を借りた日本で初のMVNOが出てくる。
MVNO(仮想移動体通信事業者)とは、独自の回線網を持たずにMNO(移動体通信事業者)の回線網を借りて通信サービスを提供している事業者である。
大手キャリアのように端末代金と通信費を併せておらず、SIMカードのみを提供しているところが多い。
SIMカードというのは携帯電話やスマホなどに入っている、通話や通信をするのに必要な小さいチップのことだ。
MVNOは独自の回線を持たず、さらに大手キャリアのように端末代金と通信費を併せていないため月々の通信費が安く、近年需要が高まっている。
このMVNOを後押しするのは通信費の安さに惹かれる消費者だけではない。ガイドラインを策定するなど、ここ数年で総務省はMVNOの参入を推し進めてきた。まだ規制が多く、料金やプランにキャリアごとの特色があまりないが、携帯業界に競争の波が押し寄せてきたのは間違いないだろう。
日本の携帯電話料金は高いのだろうか?
「東京の7022円に対し、最安のストックホルムで4424円、最高のニューヨークでは1万601円だ。スマホユーザーにとって、日本は取り立てて高くもなければ安くもない、という結果になった」
日本のケータイ料金は国際的には高いのか、安いのか
この記事で指摘されてるように、日本の携帯の通信料は特別高いわけではない。
さらに、端末代金と通信費が切り離された諸外国と違い、日本は通信費の中に端末代金も含まれるため実質はもっと安くなる。
なぜ携帯電話料金が高いと感じるのか?
安倍総理は「携帯料金が家計を圧迫している」と話している。それはおそらく事実であろう。しかし携帯料金は上がっていないのに、なぜそのようになってしまったのか?
理由は3つ考えられる。
1.家庭における携帯電話の保持数の増大
まず理由の一つは、老若男女問わず携帯電話を保有するようになり、家庭が持つ携帯電話の台数が増えたからだ。日本では携帯電話はもはやインフラのひとつであり、携帯電話がなければ仕事に就くことも働くことも友人と遊ぶことでさえも難しい。
携帯電話の契約数は1億5千万を超え、日常生活の必須のツールとなっている。以前はビジネスマンくらいしか持っていなかった携帯電話を皆が持つようになった結果、1台あたりの料金が下がっても総額では家計を圧迫してくる。
2.下がり続けたARPUを保つため
ライトユーザーによる不満・負担感も大きい。
LINE、Skype等の普及に伴い携帯電話の通話料は頭打ちとなり、ARPU(加入者一人あたりの月間売上高)はここ数年下がっていった。そこで携帯事業者大手3社は、ARPUが下がらないよう通話料定額といったプランを標準のプランとした。
この通話料定額プランは3社ともに月額2700円(税抜)と、電話をSNSで代用してきた層にとってはかなり高くなっている。
3.家計の所得の低下
家計の所得が下がっているのも大きな要因だ。
「失われた20年」と言われるように、日本は20年もの間デフレとゼロ成長に悩まされてきた。
平成6年をピークに家庭の名目所得は下がり続けているし、ここ2年は実質賃金も連続で下落している。
非正規雇用の割合も20年前より10%ポイント以上も上昇した。
このように余裕のない世帯が増えているのだ。
「経済優先」「アベノミクス」と言うのなら、法的根拠もなしに民間企業の営利活動を邪魔するのではなく、国民の所得が増えるような施策を採るべきであろう。