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【お金は知っている】
「TPPで日本再生」とは笑わせる 対米追随でやせ細った日本
ブラックマンデー後、米国は日本など外部の資金に依存する世界最大の債務国となり、対外債務を膨らまし続けていく。対照的に、日本のほうは世界最大の債権国として債権を増やし続けていく。
一般社会では通常、カネの貸し手のほうが豊かで、借り手が貧しいはずだが、日米の国家間となると逆である。債権国日本はやせ細り、借金国米国が太る。名目国内総生産(GDP)でみると、85年に比べ2014年の日本は1・5倍にとどまり、米国は4倍になった。米国は日本のカネのおかげで株式市場が活性化し、株価が先導する形で景気を拡大させてきた。
国内でカネが回らない日本はデフレ不況。財政赤字圧力が増す。それを理由に財務官僚は増税、歳出削減という緊縮財政を政権に飲ませて、デフレを慢性化させた。カネはますます米国に向かう。
12年12月に発足した第2次安倍晋三政権は「アベノミクス」によって、円安株高を誘導してきたが、14年4月からの消費税増税によって再びマイナス成長軌道に引き返してしまった。
円安のおかげで企業は利益を大幅に改善させたが、国内向け投資には慎重で、代わりに米国での企業買収に血道を上げる。今回、大筋合意したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)も対米追随路線の延長上だ。「TPPで日本再生」とは笑わせる。 (産経新聞特別記者・田村秀男)