【巨人】阿部「久しぶりに脚が震えた」右手1本で貴重な適時打!
◆セ・クライマックスシリーズ第1S ▽第3戦 巨人3─1阪神(12日・東京ドーム)
アウトローへのスライダーにフォームは大きく崩れ、最後は右腕1本だった。バットの先でとらえた打球は、弱々しく転がった。それでもよかった。貴重なタイムリーが右前へ抜けると、阿部はバチンと両手を叩いた。「次の1点が大事になると分かっていた。前に飛ばせば何とかなると思っていた。食らいつけたね」
百戦錬磨の阿部をもってしても、重圧に押しつぶされそうだった。1点リードの6回1死一、三塁。「こういうしびれる試合は、なかなか経験できない。久しぶりに、脚が震えた。でも、恥ずかしいとは思わないし、緊張感あってこその結果だったと思う。いい意味で楽しんで、いい意味で緊張していたのがよかった」。カウント2―2。岩田に対して、狙いは内角シュートだったが、極限まで高めた集中力が体を動かした。とっさの反応で外角スライダーをはじき返し、原監督も「技術プラス、気持ち。そういうものがヒットにした。見事」と絶賛した。
勝利を義務づけられた一戦。なりふり構ってはいられなかった。CS初戦、2戦目と得点圏で3打数無安打。この試合、阿部は普段よりも指1本分、短くバットを握っていた。初回1死一、三塁では、能見の外角スライダーをコンパクトにとらえて先制の中犠飛。「昔、大道さん(現ソフトバンク打撃コーチ)に『バット短く、息長く』という名言をいただいた。大事な時に、できてよかった」。07年から10年まで、巨人の一員として共に戦った先輩の助言が生きた。
激闘を制した直後、勝利の余韻に浸るはずのお立ち台で、阿部は真っ先にライバルをねぎらった。「関本選手は同級生なんですけど、引退するということで、本当に19年間お疲れさまでした」。捕手として攻略に手を焼いた。もう数少ない同年代の選手。抑えた記憶、打たれたシーンがよみがえり、目を真っ赤にして言葉を詰まらせた。その思いに阪神ファンも、総立ちの拍手で応えてくれた。
13日の全体練習をはさみ、14日からヤクルトとのCS最終S(神宮)に臨む。「東京Dに戻ってくるには、日本シリーズしかない。神宮で思い切り暴れてきます」。今季は、まだまだ終わらせない。(尾形 圭亮)