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himaginaryの日記

2015-10-12

ドイツ経済学の3つの神話

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前回エントリで触れたMichael Burdaフンボルト大学ベルリン教授のVoxEU記事では、エコノミストやFT、クルーグマンやサイモン・レン−ルイス*1といった米英のメディア経済学者によるドイツ経済学者へのバッシングへの反論を試みており、特に以下の3つの論点を「神話」として取り上げている。

  1. ドイツ経済学ケインズ主義の考えを根本から否定している
    • これについてBurdaは、悪名高い一般理論のドイツ語版の序*2を引っ張り出したほか、カール・シラーの戦後の再建計画を持ち出し、ドイツは総需要管理を重視してきた、と強調している。
    • その上で、現在のドイツ政策当局が総需要管理に抵抗しているのは単に国益を優先しているため、という考察を示し、以下の2点を指摘している。
      • 英米は世界経済ないしEU経済におけるドイツの役割を過大視している。ドイツの世界GDPにおけるシェアは5%に過ぎず、EUでも22%に過ぎない。
        • 従って、ドイツが全面的なケインズ的刺激策を採用して経常黒字を減らしても、世界ないしEUの総需要への影響は限られている。
      • ドイツは開放経済であり、輸出入合計がGDPのほぼ9割に達する。他のEU大国(伊西仏英)では55-65%に過ぎない。
        • 古典的な乗数は、輸入の限界性向と逆方向に動く*3。従って、ネアンデルタール時代ないし水力式のケインズ主義においても、ドイツケインズ政策が国内に与える効果は疑わしい。有権者が自国にとっての便益を確信できなければ、各主権国が他国を潤す総需要政策に乗り出すのは難しい。
    • さらに、以下の点を指摘している。
  2. ドイツ経済学者は「秩序自由主義」とサプライサイド政策を信奉している*4
  3. ドイツ経済学者モラルハザードと緊縮に取りつかれている

*1cf. ここ

*2cf. ここ

*3cf. ここ

*4:以下、副項はBurdaの反論。

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