前回頭出しした『日本郵政3社のIPOの件』について、3連休で調べてみたことをまとめてみた。
日本郵政グループの上場まで
生い立ちから書くと長くなるので、2005年の郵政解散総選挙から。
2005年の小泉内閣で俗に言う『郵政解散総選挙』が行われ圧倒的な国民支持のもとで新体制が敷かれ、同年10月4日に『郵政民営化関連法案』が採決、民営化へ歩み始めることとなった。
途中で自民党が野党になり、民主党政権化で民営化への見直し(事実上の凍結)が行われたり、東日本大震災で復興財源が不足する中で再度日本郵政グループの上場が検討されたが、2012年に与党に自民党が返り咲き、2015年9月に東京証券取引所で上場承認、同年11月の上場が決定した。
日本郵政3社の関係性
↑ 株式売出届出目論見書より
日本郵政グループは、持ち株会社の日本郵政、完全子会社のゆうちょ銀行(銀行業)、かんぽ生命保険(保険業)、日本郵便(運輸業)からなり、今回上場するのは持ち株会社の日本郵政、そしてゆうちょ銀行、かんぽ生命保険で完全子会社となっている方の日本郵便は上場しない。
赤字の日本郵便を支えるゆうちょ銀行とかんぽ生命保険
日本郵便は本業である郵便事業が不振で、窓口の代理業務手数料としての収入が収益の大半を占めている模様。
自前の店舗網が小さいゆうちょ銀、かんぽ生命は、全国2万4000局の郵便局ネットワークに販売を依存している。2013年度、2社は日本郵便に代理業務手数料として合計1兆円近くを支払っている。郵便局事業の営業収益の8割以上を占める。この手数料が親会社である日本郵政によって恣意的に決められた場合、2社の少数株主の利益が損なわれるおそれがある。
(中略)
日本郵便は成長事業の一つに「ゆうパック」の小包事業を掲げる。アマゾン などのEコマースの普及で宅配便需要はさらに伸びるとみるからだ。中小口営業の取り組みの成果もあり、ゆうパックの取扱量は過去5年間で6割以上増え、2013年度は4億2800万個になった。中計では2016年度に5億個の取り扱いを目指す。
ただ、同時に人件費などのコストも大幅に増え、2013年度のゆうパック、ゆうメールを含む「荷物」の収支は332億円の営業赤字となった。高コスト体質からの改善がいまだ道半ばで増収が増益に結びつかない構造が続く。
宅配便事業の拡大が急務か
メール便市場は日本郵便がシェアトップで53%あるが、宅配便事業についてはヤマト運輸の42%、佐川急便の38.5%に続く第3位でシェアは11.3%しかない。
http://www.yuseimineika.go.jp/iinkai/dai97/siryou97-1.pdf
また、ヤマト運輸も佐川急便も値上げ要請をして一時的にシェアは落としたものの、あまり大きくは動いていない。
2015年1~3月は消費税前の駆け込み需要の反動減が大きく、「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」でも流通額を減らしている。こうしたネット通販のマイナスが響いた。また、各社の値上げも影響したとみられる。
宅配便の取扱個数ではヤマト運輸が16億2204万個で前年比2.6%減。佐川急便も前年度割れとなり、同1.9%減の11億9600万個だった。そのようななか、宅配便の取扱個数を伸ばしたのは日本郵便。4億8504万個で同13.2%増となった。
その他の課題
日本郵便の課題を2つ上げたけど、このペースでゆうちょ銀行とかんぽ生命保険もやるとキリがないのでこの辺にして、あとはリンクで…
親子上場での利益相反 、銀行業界との軋轢。
収益性、グローバル展開、M&A、人員整理。
などなど。
盛大なビジョンを持ってIPOする会社が多い中で、この3社はそこが上手く描けていない感じ。政府が株を持ってると「民業圧迫だ!」と言われるのはわかるが、投資家として「この企業のビジョンに投資したい!」と思わせて欲しいな…と。
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日本郵政IPOの初値売りは
IPOは実施された年の景気動向にもよるが、ここ3年では8割以上が初値売り(IPOで購入→上場直後に売却)で売却益が出ており、騰落率では+50〜110%にもなっている。(4年以上前は東日本大震災、リーマン・ショック等の要因があってか成績は芳しくない)
ただ、今回のIPOは1987年のNTT上場に匹敵し、この規模の政府放出株はこれが最後となる。前回も書いたがこれまでの政府放出株では8社中7社が初値売りで売却益が出ており、今回の日本郵政IPOも期待値は高い。
また、統計的な話しとは別に今回のIPOでは一気に市場売却せず、
↑ 株式売出届出目論見書より
- 日本郵政株の政府放出は政府の保有割合が3分の1超まで段階的に行われる
- ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険株は保有割合が50%程度まで段階的に行われる
- 放出による売却益は東日本大震災の復興財源の一部として充てられる
とあることから、第1次での公募割れ、次回放出までに公募価格を大きく下回るともなれば、この算段が狂ってしまうのでは…と。
日本郵政IPO購入について
IPOは証券会社によって割り当てがマチマチだが、主幹事となる証券会社に対する割り当てが多いので相対的に当選率は高くなる。
また、この9社とは別に引受証券会社が数十社あり、現在自分が口座開設している、SBI証券、楽天証券、松井証券の3社もすべて入っている。
※クレジットカードの読みものさんの記事では未反映だが楽天証券も取扱中
どこを買うか
前回の記事では、
としたが、色々と検討した結果としては、
となった。
かんぽ生命保険を下げた理由
かんぽ生命保険と日本郵政の順位が入れ替わったのは、民営化以前の簡易生命保険の契約者数の減少分をかんぽ生命保険の新契約者数が追いつけていないことで、かんぽ生命保険全体の契約者数が年々減少傾向にある。
↑ 株式売出届出目論見書より
好調と言われている「はじめのかんぽ」は、これまでは返戻率が元本割れしていたのがプラスに改善されたが、他社(S社やF社など)と比べれば依然として低水準である。(余談だが、親が自分に学資保険を掛け大学進学後のアテにしていたのが、元本割れして戻ってきたのに驚いていた)
あくまでも予想だが、これまでは「国が後ろにいるので潰れない」的な安全性(信用)重視で多少利率が悪くても契約するタイプの人がいたが、上場し完全に日本郵政からの独立・政府の後ろ盾がなくなった後は他の民間企業と同じ土俵に立たされ、厳しい戦いを強いられる可能性はある(生保再編も盛んだし…)。
ただ、このレベルの課題は他の2社もあるのでそこまで致命的でもないけど。
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今回は全力で!
個人的にはこのIPOに勝機を見いだしており、日本郵政とゆうちょ銀行に資金余力の全力を投入するつもり。
…と言っても、既に保有している現物株式と先物取引の証拠金で全金融資産の70%を占めていて、この為に保有株式の売却予定はないので、大した金額にはならないが。
松井証券とSBI証券で申込む
前述の3社で口座開設をしているが、資金の大半がメインのSBI証券にある。
SBI証券は今回主幹事でなくIPOチャレンジポイントもほとんど貯まっていないので、あまり当選確率は高くないと見ている。
松井証券はこれまでの取引回数や資金力は関係なく、然るべき手続きを踏んでいれば公平な抽選に参加できるので当選確率はそれなりかなと。
残る楽天証券は3つに分けるほど資金余力がなく、特別旨味もないので使わない。
そんな訳で、松井証券とSBI証券の2つを使うべくSBI証券にある余力の半分を松井証券に移す。
本命のゆうちょ銀行、次点の日本郵政
日本郵政グループ3社は上場日こそ同じだが、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険が先行で抽選が行われ、落選となっても日本郵政で再チャレンジするだけの猶予がある。
そこで、松井証券とSBI証券で『ゆうちょ銀行』と『日本郵政』へ全力投入で需要申告を行い、『ゆうちょ銀行』で両方当選すれば資金はすべて拘束されて終了。
一方のみや両方落選した場合には、『日本郵政』で再チャレンジとなりここで当選すれば、その資金も拘束される。
『ゆうちょ銀行』で両方一部が当選となった場合には、口座間での資金移動でうまくやれば『日本郵政』にもチャレンジできるかもしれないけど、そこまでは面倒でやらないかも…
最後に
日本郵政上場初値よりも、今月中〜下旬にかけての換金売りの方が怖い。
投資は自己責任で!
以上。