2015年9月28日月曜日

NPO法人POSSE事務局長らが大学で偽装勧誘の“お手伝い”

POSSEへの「誹謗中傷」を報じる産経新聞の記事(写真はPOSSE・今野晴貴代表)
ブラック企業など若者の労働問題に取り組むNPO法人として、しばしばメディアに登場する「POSSE」。最近1年間で「ブラックバイトユニオン」など様々な関連ユニオンが発足され、労働問題の現場に一大ムーブメントを作り出しています。ところが、このPOSSE。関係者が都内の複数の大学で素性を隠した勧誘活動を行っていました。労働問題においては功績の大きい団体かもしれませんが、学生にとっては要注意です。


■「誹謗中傷」に対して刑事告訴

今年6月26日、POSSEの関係者の氏名を挙げて「POSSEはカルト法人だ」「オルグ(勧誘)される前に学生は逃げろ」「今野晴貴 新左翼カルト POSSEに注意!」などとする内容のメールを東大教授ら52人に配信したとして、横浜市の男性が書類送検されました。POSSEの今野晴貴代表理事らが、メールの内容は事実と異なり名誉毀損にあたるとして刑事告訴していました。産経新聞社の『ZAKZAK』は〈「新左翼」「カルトだ」ブラック企業専門家を襲ったネットの中傷まとめサイトの暴力的威力〉などと報じています。

POSSEは7月16日付けで声明文を発表し、この事件の存在と容疑者が書類送検された事実を公表。〈POSSE及び今野と、それらメール又は書き込みに記載されている特定の政治団体・セクトとの間には何らの関係もありません」とした上で、その他に確認されているPOSSE、今野及び本田を誹謗中傷する書き込みについても、今後、適切な措置を講じていく予定です〉と、ネット上で流布されている情報について、さらなる措置を宣言しています。

■多面展開するブッラク企業対策NPO

POSSEに関連する各ユニオン
POSSEの公式サイトによると、設立は2006年。東京都によれば、NPO法人として認証されたのは2007年です。2008年に雑誌『POSSE』を創刊し、労働問題などに取り組んでいます。

POSSEが公式サイトで「関連団体」として明示しているものはありません。「他団体との連携」として「ブラック企業対策プロジェクト」(POSSE・今野代表が共同代表の1人、所在地はPOSSEと同じ)と「ブラック企業被害弁護団」が記載されているだけです。

しかし2014年以降、POSSEは「ブラックバイトユニオン」「個別指導塾ユニオン」「エステ・ユニオン」「総合サポートユニオン」「仙台学生バイトユニオン」といった調子で、関連団体を増やしています。それぞれ、代表者やスタッフをPOSSE関係者が務めていたり、事務所所在地が同一であるなどの関係が見られます。

■“左翼セクト”との噂

POSSEについては以前からインターネット上で、左翼セクト「京大政経研グループ」「都立大グループ」との関係を指摘する情報が出回っていました。他のセクト関係者やノンセクト活動家などに「POSSEのことを取材している」と言うと、当たり前のように「京大政経研でしょ」という答えが返ってきます。あるセクトの活動家A氏は、こう語ります。

「POSSEが京大政経グループあるいは都立大グループだというのは、私自身、京大政経研を脱退した人から直接聞きました」

A氏によると、京大政経研グループは80年代に関西の複数の大学で勢力を伸ばしたといいます。母体となる党派名は不明で、京大政経研が中核派と対立するなどして有名になったことから、部外者たちが便宜的に「京大政経研グループ」と呼ぶようになりました。その後、東京都立大(すでに廃学)での同グループの活動が有名になりました。都立大では、サークル名が次々と変わったため、まとめて「都立大グループ」と呼ばれるようになりました。

しかし本紙では現時点で、両グループとPOSSEを結びつける物証や直接証言までは得ていません。さしあたっては、噂や都市伝説の域を出ない話として扱わざるをえません。

本紙はPOSSEに対して、「京大政経研グループ」のほか、「都立大グループ」と呼ばれる都立大の各サークル等の名称を挙げ、POSSEとの関係を問い合わせました。POSSEは直接回答せず、代理人弁護士を通じて、以下のように回答しました。

〈POSSE及び今野は、インターネット上に情報があるという諸団体とは無関係であり、POSSEスタッフも同様に無関係です。〉

〈ご質問にあった東京都立大学(現・首都大学東京)の「アジア研究会」、「現代社会研究会」、「都立大新聞会」、「都立大反戦ネットワーク」については、今野及び理事らには関係者が居ないことを確認しました。それ以外の所属メンバーの過去の所属団体等については、POSSEとして把握をしておりません。〉

■チラシを渡さない怪しい勧誘

2010年4月、都内のある大学で一般の学生サークルに混じって、新入生に連絡先を書かせ個人情報を収集しているグループがいました。全員が、バインダーに挟んだチラシを持っているのに、それを新入生に渡そうとはしません。チラシには「ポリティカ」というサークル名のほかは勉強会のテーマとしている項目が並んでいます。しかし代表者名や連絡先等は記載されていません。

統一教会のアンケートを装った偽装勧誘に似ています。しかしサークルの学習会テーマとして掲げている項目が、統一教会とは少々、趣が違うようです。

本紙・藤倉善郎総裁(当時は主筆)が、声をかけられていた新入生に尋ねると、「社会問題について考える団体」と説明されたといい、団体名すら聞かされなかったとのことでした。

藤倉総裁は連絡先を書き込んでいる最中の新入生に、「素性を明かさない相手に連絡先なんか渡したらダメだよ」と声をかけ、勧誘していた女性メンバーに、「なんというサークルですか?」と尋ねました。

勧誘員「『ポリティカ』という、ニュースとかになっているいろんなことを勉強するサークルです」

藤倉総裁「なぜチラシを手渡さないんですか?」

勧誘員「印刷が間に合わなかったからです」

藤倉総裁「一昨日もここで勧誘活動をしていたのに?」

勧誘員「え?していませんよ」

藤倉総裁「していましたよ」

勧誘員「あ、そうなんですか? 私はいなかったのでわかりません」

これはウソで、この女性メンバーも2日前の勧誘活動にも参加していました。

藤倉総裁「で、なぜチラシを配らないんですか?」

勧誘員「チラシは効率悪いんで」

しれっと、先ほどまでとは違う説明を始めます。「印刷が間に合わなかった」という説明がウソであると自白しているようなものです。

もっとも、チラシにも代表者名や連絡先は記されていないので、この会話で正直に正体を語ろうがチラシを配ろうが、学生に対して素性を隠していた事実に変わりはないのですが。

■学食に陣取るPOSSEの事務局長

POSSE事務局長・川村遼平氏
しばらく観察していると、勧誘にひっかかった学生が学食へと連れて行かれます。学食内で1人の男性が席に座って待ち構えており、新入生を連れてきたメンバーと2人がかりで勧誘を始めました。

藤倉総裁は隣の席に座ってしばらく観察してから新入生に声をかけ、不用意に個人情報を渡さないように注意。その上で、その席にいたポリティカのメンバーに話を聞くと、やはり「社会問題を勉強するサークル」とのこと。藤倉総裁は名刺を手渡し、代表者を名乗る男性は氏名とメールアドレス、そして電話番号を伝えてきました。

その人物の名前は、川村遼平氏。当時もいまもPOSSEの事務局長です。

そして当時もいまも、この大学の名前と「ポリティカ」「politica」「川村遼平」といったワードでGoogle検索を行っても、サークルのウェブサイトはおろか関連情報も見当たりません。ポリティカの勧誘方法では、新入生が団体の素性を確認するすべが全くありません。

POSSEに「ポリティカ」との関係を尋ねたところ、このような回答でした。

〈POSSEの事務局長である川村は、過去、POSSEとは別に、在籍する東京大学で複数の人権問題の学習系サークル(大学公認の自主ゼミ)にも中心的に関わってきており、また、学外でもそういったサークルに参加しておりました。ご質問にある「ポリティカ」もそのようなサークルの1つです。川村がサークルの学生に頼まれて、当該サークルへの勧誘を手伝ったことはありますが、当該サークルを介してPOSSEへの勧誘を行った事実はありません。「ポリティカ」については、川村個人が関与していただけであり、POSSEとしては関係がありません。〉(代理人弁護士)

統一教会の偽装勧誘と似たような勧誘活動を「手伝っ」ていたのは、POSSEではなく「川村個人」だという主張です。

藤倉総裁が居合わせた際、新入生が連れてこられた学食で待ち構えていたのは川村氏1人でした。「手伝っ」ていたという割には、傍目には、勧誘の仕上げを担当する責任者然とした関わり方に見えました。

■密接な関係にある東大「SWARM」

2013年版『槌音』(46号)
東京大学にも、POSSEとの関係を指摘されている学生サークルがあります。「SWARM」という団体です。これについても、POSSEは本紙の取材に対して、団体としての関係を否定しました。

〈東京大学の「swarm」については、川村が講演に呼ばれたことはありますが、同団体のメンバーではありませんし、POSSEとしては関係がありません。〉(代理人弁護士)

ところが、SWARMの勧誘を受けたことがある東大生は、本紙の取材に対してこう語ります。

「2011年の新歓期に東大駒場キャンパス内でSWARMの勧誘を受け、ついていくと、学食内に席がとられており、数人の勧誘員が複数の新入生を相手に話をしていました。チラシで見たのか、その場で聞かされたのかは忘れましたが、活動の一環として機関誌を発行しているというので、機関誌を見せてほしいと言ってみました。すると後輩らしきメンバーが席を立ち、5分か10分ほどして、雑誌『POSSE』を何号分か持ってきて見せてくれました」

冒頭で紹介したとおり、雑誌『POSSE』は、2008年にNPO法人POSSEが創刊した、労働問題等を扱う雑誌です。

POSSEは本紙の取材に対してSWARMとの関係を否定しています。しかしSWARMが機関誌だと称して部外者に提示したものが『POSSE』である以上、明らかに両者は密接な関係にあります。

前出の東大生は、こう続けます。

「その席では、先輩らしきメンバーから、数十分にわたって日本や世界の経済と再分配政策の歴史について話をされました。サークルがいつどこで活動しているのかとか、そういう説明は全く記憶に残っていません。ひたすら社会や政治の話をされた記憶しかない」

例年、東京大学オリエンテーション委員会は駒場学生生活情報誌『槌音』を発行しています。2012年版である『槌音』45号にSWARMが掲載されており、I氏という人物の氏名と連絡先が掲載されています。

I氏は『槌音』に掲載された翌年の2013年以降、POSSEメンバーとして記者会見を行うなど公の場に登場しています。また2013年版である『槌音』46号にSWARMの連絡先として掲載されていたK氏は、これ以前からPOSSEメンバーとして講演活動などを行っていました。

川村氏以外にもPOSSE関係者が関わっており、SWARMメンバーが後にPOSSEメンバーとして公の場に登場するようになるケースもあるというわけです。雑誌『POSSE』の件と合わせて考えれば、両団体が深い関係を持っていることがわかります。

東大構内で勧誘活動中のSWARM
SWARMの勧誘手法は、前出の「ポリティカ」とよく似ています。

「SWARMは概ね新歓期にしか姿を見せません。私が勧誘された年以降も、新入生の諸手続やサークルオリエンテーションの日に、学内でA4サイズの簡単なビラをバインダーに挟んで新入生を勧誘する姿をよく見ます。ビラはバインダーに挟んであるだけで、新入生に渡したりはしません」(前出の東大生)

別の東大生は、こう語ります。

「東大で新入生にチラシを渡さずに勧誘するという手法をとっているのは、SWARMのほかは摂理とヨハン早稲田教会、そして近年はほとんど見かけませんが革マル派くらいですね。共産党であることを明示せずに勧誘している民青ですら、ビラは配っています」

いわゆるカルト団体と共通する勧誘手法です。

■POSSEのコメントは信用できない

大学での素性を隠した勧誘活動にPOSSE関係者が関わっていることは間違いありません。またPOSSEは、学生サークルとの関係について、本紙に対し事実と異なる回答を行いました。

このことから本紙としては、左翼セクトとの関係を否定するPOSSE側の回答も鵜呑みにすることはできません。

POSSEを「カルト」呼ばわりして書類送検された男性は、動機について「学生に注意を促したかった」と語っていると報道されていました。

POSSE関係者が行っている学生サークルの勧誘手法が団体の素性を隠したものであることは、本紙の取材からすでに確認されています。POSSEをカルトと呼ぶかどうかはともかくとしても、学生に注意を促す必要はありそうです。

本紙は今後もPOSSE及び関連団体・人物について取材を進め、学生に注意を促していきます。情報をお持ちの方がいましたら、ぜひ本紙daily.cult@gamil.comまでご一報下さい。

【取材:本紙POSSE取材班】

9 コメント:

匿名 さんのコメント...

左翼嫌いの産経が左翼を応援?
朝日の記事をEM菌教授の無断引用の件といい、ドラマにブルーリボンを付けた人を出演したらダメだとイチャモンを付けたり、産経って本当にどうしようもないな。

匿名 さんのコメント...

週刊金曜日より マトモな記事

いわゆる"セクト"も"カルト"だから
違和感を感じないけど

じゅん@元ブラック企業社員w さんのコメント...

ブラック企業を告発する存在をよしとしない勢力の妨害工作の可能性がなきにしもあらずのようなきがしないでもない。
いずれにしても入念な取材調査を求む。

匿名 さんのコメント...

つか、記事の趣旨とちょっと離れた話題になるけど
ブラック企業とカルト宗教ってよく似てるよね
ワタミと統一教会とかマジそっくり

それとも極左と極右は見えないところで繋がったひとつの輪という話なんだろうか

匿名 さんのコメント...

>労働問題においては功績の大きい団体かもしれませんが、


そうかな?

ブラック企業なんて、諸外国のように余計な規制をなくして、
労働市場が機能すれば自然に淘汰されていくわけで。

「ブラック企業をやっつけろ」みたいな階級闘争的運動は、
売名や勧誘の方便でしかないと思います。

匿名 さんのコメント...

小林香代 @dotanbar 3月12日
先日出会った、カルト系「労働運動」団体の青年たちのことを考えています。
こちらを見ているようで、実は何も見ていない、あの目。オウム事件の同時代人として、切なさがつのります。
この団体は今、人権擁護の旗手として、メディアで称賛されている。私たちはあの事件から、何も学ばなかったのか、と。
ttps://twitter.com/dotanbar/status/575980996429918209

同感ですな。

じゅん@元ブラック企業社員w さんのコメント...

>ブラック企業なんて、諸外国のように余計な規制をなくして、
>労働市場が機能すれば自然に淘汰されていくわけで。

そうかな?

規制なくしたところで、企業の採用が新卒偏重で中途採用の門戸が狭いうちは
労働市場は機能不全に陥るし、失業者救済の制度がザルなので簡単に辞められないという
事情も相当にある。
あと、労働法制の違反ペナルティも相当大甘なので「守ってたらやってられない」という
ブラック経営者をのさばらせてる原因にもなってる。

それを考えたら、安易な規制緩和で労働市場が機能するっていう前提から疑ってかからんと…

匿名 さんのコメント...

メールアドレスをしれっと間違えんなよ。

匿名 さんのコメント...

ブラック企業とカルト宗教はほとんど構造というかは同じ。
企業と宗教の違いは本人が悪いことをやろうとしてやってるか、
初めは求道心を持ってやっていたのに自分は偉いんだと思い上がって精神的に落下してしまったか、
の違いだと思う。
政治もそうだし、ブラックとかカルトっていうのは人間そのものの状態で誰でもなってるんだよ。
時間的に長いか強いか他人の影響が大きいか?ってだけで。