続・続・セカンドチームについて考える
はじめに
日刊スポーツ:来季J3にG大阪など4球団のセカンドチームが参戦
東京、G大阪などJ3参戦を実行委員会で協議
明治安田生命J3リーグ(※以下J3リーグ)にJ1、J2のクラブがセカンドチームを参加させることが報じられ話題となっている。弊ブログでは以前からセカンドチームに注目してきたところもあるので、今回はこの話題に触れてみたい。
現在でもアンダーカテゴリーには多くのセカンドチームが存在するが、チームによって意義や目的は様々で、Jリーグクラブのセカンドチームを見てみても、ファジアーノ岡山ネクスト(※以下ネクスファジ)のように育成目的のチームもあれば、FC岐阜セカンドのような受け皿として設立されたチームもある。組織的な結びつきはともかくとして浦和レッズやザスパクサツ群馬にもセカンドチームは存在する。アルビレックス新潟と北信越リーグのJAPANサッカーカレッジや横浜F・マリノスと関東リーグの日本工学院F・マリノスの関係もセカンドチームとして位置付けることができるのかもしれない。
J3設立前からJクラブのセカンドチームがJ3リーグに参入する話はあって、昨年FC東京やガンバ大坂の具体的なチーム名でセカンドチーム構想が報道された時も、アンダーカテゴリーのファン、サポーターからは様々な反応がみられたが、今回の件でも、様々な意見を目にすればするほど、何となくぼやけた感じになるのは、既に多く存在するセカンドチームと新規参入セカンドチームを一括りにして考えているところに一因があると思われる。今回Jリーグが行おうとしているのは、日本サッカー界が抱える18-22歳世代の出場機会を増やすという大義名分のもと、「育成を目的としてJ1、J2所属クラブが新規にセカンドチームを立ち上げる」ということなので、まず最初に、ここにしっかりとピントを合わせておきたいと思う。
参加適正
今回のセカンドチーム立ち上げはJリーグの施策なので、管轄内で最も下のカテゴリーであるJ3リーグからスタートということになったと思うが、まず「J育成セカンドチーム」がJ3リーグのレベルで試合をすることが力量的に適切なのかというのをポイントにして考えてみたい。
現在J3リーグに参加している同世代のJリーグ・アンダー22選抜の順位は17位(2015年10月11日現在)。今季のJ22はオリンピック代表をベースにメンバーが編成されたりして話題を集めたが、本来はトップで出場機会の無い選手達が試合経験を積むために招集されるチームである。昨季から数試合見ているが、個の主張や小規模での連携も少なく、試合を見ていて首をかしげるような場面も多い。試合直前で招集されるデメリットはあるにしても、今シーズンの負け方やスコア等を含めて考えてみると「このカテゴリーで試合をするのがきついのでは無いか?」と最近は思い始めている。「そういう場所が無いよりまし」とさえ感じる場当たり的な育成の施策が、招集される選手達を苦しめているのではないか?それが覇気の無さ等々に繋がってやしないか?とさえ思うのだ。
Jリーグクラブのセカンドチームであれば、ある程度メンバーを固定できると思うので、チームとしての戦術練度は上がるかもしれないが、それだけでJ3リーグのレベルで戦えるかは未知数だ。位置付けとしてJ3リーグと並列なJFLに所属するネクスファジや同世代である流経大ドラゴンズ龍ケ崎は残留争いをしている。ネクスファジの後半戦の巻き返しを見ていると、降格の無いJ3リーグで強化を継続できれば、、と可能性を感じることができるが、近年指導者の充実や上位リーグの選手の加入で、レベルの底上げが囁かれるこのカテゴリーで、逆にあまりに力量差がある場合には、今季のJ22でも見られるように、何もできずに大敗し続けて結局何も得られないということもあり得るのではないか。
管轄が同じなので、何かとやりやすいところはあるかもしれないが、育成ということを考えた時に力量差を含めた参加適正を考慮しないと、せっかくの金の卵達を潰してしまうことにもなりかねない。仮に複数チームの参加が見込まれる状況なのであれば、それらのチームでサテライトリーグの復活というのも視野に入れるべきではないかと思う。
特別ルール
今回の新規参入セカンドチームがJ3リーグに参加する場合は、昇格無し、財務審査なし(維持費用はトップ持ち)、トップとの選手流通等々について、他のJ3リーグクラブとは異なった様々な特別ルールが設定されると思うが、特別ルールで私が一番気になるのは、トップチームがJ3に降格した場合や経営悪化で維持できなくなった場合のセカンドチームの処遇のところだ。
トップチーム救済のためにJ3リーグが存在するが、セカンドチームの救済はどうなるのか。簡単にとり潰すような事は、あってはならないけど、トップの事情でそういったリスクが発生する可能性がある事も踏まえて、特に育成目的のチームなのだから未来ある若者達を救済する措置や対策はとって欲しいと思う。
アンダーカテゴリーだと、クラブが無くなるという状況に接する機会は少なくない。セカンドチームで言えば、ジェフリザーブズや愛媛FCしまなみ(現FC今治)の例もある。当事者は本当に大変だったと思うが、それを応援し支えたファン、サポーターも本当につらい思いをした。私は自己経験として、パナソニックエナジー洲本が活動停止を発表した年のKSL AWARDSに参加した時に、関西リーグサポーターが式典の最中に三洋洲本コールを行う場面に出くわしたことがあるが、悲しくもあり、切なくもあったあの響きは一生忘れないと思う。
そして、もう1つ、セカンドチームのスタート位置は県リーグから始めるべきだという意見があるが、私は「不公平だから」という意見には賛成しないが、力量差をはかるというところと、救済措置という面を考えると、それもありかなとは思ってしまう。ネクスファジや流経大ドラゴンズ龍ケ崎は、県リーグ→地域リーグ→地域決勝→JFLと、現在の正当な昇格ルートでJFLに辿り着いたチームだ。JFLで戦う権利を勝ち取った分けだし、これならそこに立つ資格について文句を言われる筋合いはあるまい。また、仮に救済措置でJFLへ再編入されるにしても、元々辿ってきた道なので「Jリーグから押し付けられる」といった心情的なしこりは少ないのではないかとも思う。
さいごに
私は、FC岐阜セカンドのサポーターが、チームの事を「セカンズ」と呼ぶのが大好きで、サポーターに寄稿して頂いたコラムのタイトルも「愛を込めてセカンズと呼ぶ」とさせて頂いた。チームに対する愛着を感じる素敵な呼称だと思う。国体優勝の時は胸が熱くなったし、ファンの笑顔は本当に嬉しかった。
ネクスファジは集客に苦労しながらも、トップとの共同開催やJFL仕様のファジフーズの展開、グッズの販売やチケットの優遇措置等々、様々なやり方を模索しながら進んでいる。セカンドチームという活動を通じてクラブと地域とのを繋ぐ存在になっているところもあると聞く。サポートのために全国各地に応援に駆けつけたり、情報発信に熱心なファンもいる。クラブを支える次の世代の成長を肌で感じながら、結果に一喜一憂しながらも素敵な週末を送っていることだろうと思う。
セカンドチームができれば、きっとそこには支える人や、チームを愛し、共に歩もうとしてくれる人が現れる。
できれば、今回のセカンドチーム参入はリーグ主導という大きな力でやるのだから、試験的要素の強い「場当たり的なもの」ではなくて、長期的なビジョンを持ってセカンドチームを運営し、育成をメインにしながらもトップチームができない事を補足したり、セカンドチームにしかできないことを実現しながら、ファン、サポーターに身近な活動を通じて、他のクラブと同様に、それが人と人を繋ぎ、地域とクラブの架け橋になるような存在になってくれたらと思う。
ファン、サポーターが愛を込めてセカンズと呼べるような、そんな存在になってほしいと切に願う。
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