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産経新聞奈良版【奈良 移住物語】より奈良・山添村に一目ぼれ 移住して自転車づくりの夢をかなえた竹内弘昭さん

2015/10/12 06:00更新

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 好きな自転車を作るという夢を、移住した奈良県山添村でかなえた―。自転車の製造や修理を手がけながら、ヒツジとふれ合える観光スポット「めえめえ牧場(まきば)」に勤務する竹内弘昭さん(52)。神奈川県相模原市から妻と幼い娘の一家3人で村に移り住み、約15年になる。縁もゆかりもない土地だったが、不安よりも自転車づくりにかける情熱や期待のほうが強かった。(産経新聞奈良支局 有川真理)

竹内弘昭さんが製作したスポルティーフ車 (写真は竹内さん提供)竹内弘昭さんが製作したスポルティーフ車 (写真は竹内さん提供)

「なんとかなるわ」と妻も応援

 「自分で自転車を作ることができるなら、日本中どこでもよかった」

 竹内さんが移住を決めたのは田舎暮らしへの憧れや土地へのこだわりではなく、自分のしたいことができるかどうか。原動力となったのは、「自転車づくり」という強い目的意識だ。

「自転車を作りたい」と奈良県山添村に移り住んだ竹内弘昭さん。スポルティーフ車の製作を得意としている (写真は竹内さん提供)「自転車を作りたい」と奈良県山添村に移り住んだ竹内弘昭さん。スポルティーフ車の製作を得意としている (写真は竹内さん提供)

 高校生のころは自転車競技のプロを目指し、大学時代は自転車競技部に所属した。大学卒業後、自転車部品メーカーなどを経て、念願の自転車製作所で働き始めたのは26歳のとき。だが、次第に「自分の自転車を作りたい」という気持ちが強くなり、独立を決意。6年間勤めた製作所を辞めた。

 早速、自転車を作るために長野県などで土地探しを始めた。妻の弘美さん(53)は「あんたがやりたいと思うなら、やれば。なんとかなるわ」と応援してくれたが、なかなかよい場所は見つからない。「僕にとってはベストでも、妻からは買い物や病院など、子供との生活を考えて『気がのらない』といわれたこともあった」と竹内さんは振り返る。

ネットで出会った“新天地”

 そんな中、山添村との「出会い」が訪れた。インターネットでたまたま村の小学校のホームページを見た弘美さんが、風景や村の雰囲気に一目ぼれ。当時幼稚園児だった長女の美乃(よしの)さん(21)が小学校に入学するまでに〝新天地〟を決めたかったこともあり、「ここに通わせたい」と思うように。「移住して娘をこの学校に通わせたい」と手紙を小学校に出すと、学校や村側も協力。移住する空き家を探してくれた。

 知人も友人も全くいない中、村人とどう付き合えばいいのか。不安もあったが、「無理にがんばってもよくない、自然でいい」と気負いはなかった。

 美乃さんも田舎暮らしにごく自然になじんでいった。バーベキューをしたり、ニワトリを飼ったり…。「自然と共生する楽しさを娘には味わってほしくて、なるべく自然とふれあう生活を送らせた」と竹内さん。今は、家族ぐるみで付き合う村人もいる。

牧場の勤務と両立

 竹内さんが取り組む「ものづくり」の姿勢に影響を受けてか、美乃さんは京都の伝統工芸を学ぶ専門学校を卒業後、村に帰って漆の仕事に励んでいる。竹内さんは自転車製作のかたわら、約5年前から牧場での仕事も始めた。

 自転車は、自宅から少し離れた2階建倉庫のガレージ部分を工房として利用。牧場の勤務とうまく時間をやりくりし、両立させている。

オリジナリティーの高いシートステー。ブレーキのアウターケーブル受けと、泥よけを留めるブリッジが優雅な曲線を描いている (写真は竹内さん提供)オリジナリティーの高いシートステー。ブレーキのアウターケーブル受けと、泥よけを留めるブリッジが優雅な曲線を描いている (写真は竹内さん提供)
ラグは手作りで、ヘッド周りはシンプルなデザイン。ブレーキのアウターケーブルはフロントキャリアで受ける (写真は竹内さん提供)ラグは手作りで、ヘッド周りはシンプルなデザイン。ブレーキのアウターケーブルはフロントキャリアで受ける (写真は竹内さん提供)
シートステーの二本巻き加工は穴が空いた独特のデザイン (写真は竹内さん提供)シートステーの二本巻き加工は穴が空いた独特のデザイン (写真は竹内さん提供)

 竹内さんは「最近は、牧場での仕事がけっこうおもしろい」と笑顔をみせる。飼育しているヒツジは56頭ほど。休日には、大阪などからも家族連れやカップルがドライブがてら立ち寄るという。

「35歳までは自分のやりたいことに飛び込んでみよう」と考えていたと話す竹内弘昭さん =奈良県山添村「35歳までは自分のやりたいことに飛び込んでみよう」と考えていたと話す竹内弘昭さん =奈良県山添村

 「山添村のおおらかな気質や雰囲気がなにより魅力」と話す竹内さん。「妻が選んだ土地でもあるし、愛着がある。移住は何よりも、妻の理解があったことが一番よかった。感謝している」と、幸せそうな笑顔を見せた。

産経新聞奈良版より)

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