1976年2月6日夕刊記事より。「歌謡界」
===以下、新聞記事===
一月に新しい出発をしたことしの歌謡界。当分の間は昨年の傾向が残っている。
昨年の暮れからことににかけてのヒット曲から話題を拾うと...。
最近のヒット曲から
「たいやきくん」はねる。
着実に売れる”大賞組み”
ひとつの”異変”を起こしたのが「およげ!たいやきくん 」。フジレテビ系の幼児番組「ひらけ!ポンキッキ」の中で歌われているうち、子供たちから大人までの共感を呼んだもの。三年ほど前にやはり幼児番組から「ピンポンパン体操」が大受けしたことがある。今回の方が異変度が大きそうで、本家のタイ焼きまで急に売れ出している。今月十日には山本リンダの歌で「私の恋人!たいやきくん」というアンサー・ソングが出る予定。果たしてもう一匹タイが釣れるかどうか。
なぜこんなに売れるか、いろいろ原因究明がされているようだが「結局、レコード業界でメシを食っている人たちでは予想のつかなかったこと」とお手あげ。幼児パワーに振り回された形だ。
昨年は当たり年だった布施明。歌謡大賞、レコード大賞、あなたが選ぶ全日本歌謡音楽祭グランプリほか多くの賞を獲得した。「シクラメンのかほり」「傾いた道しるべ」など、シングル、LPともによく売れた。
新人では「ロマンス」「センチメンタル」の岩崎宏美、「心のこり」の細川たかしなど。
賞の獲得とレコードの売り行きが互いに増幅作用を起こした例だろう。
ほかに「白い約束」の山口百恵、「千曲川」の五木ひろし、「俺たちの旅」の中村雅俊などが安定している。
しかし、どの歌手も、年替わりとともに新しい歌が要求されている。回転の早さはびっくりするほどだ。
ことしも、ニュー・ミュージックと呼ばれるものが勢力を持っている。
「青空、ひとりきり」の井上陽水、「めまい」の小椋桂、「あの唄はもう唄わないのですか」の風など。
「あの日に帰りたい」ほか多くの曲を自作自演して人気上昇した荒井由実。
昨年ラジオのディスク・ジョッキーをやめ、コンサートに専念、たちまち「なごり雪」のヒットを出したイルカなどもその例。
「”いちご白書”をもう一度」のバンバンは四十七年デビューでようやく花が咲いた。
一人異色がいる。浪曲歌謡のベテラン二葉百合子。「岸壁の母」は四年前に発売されたものだが、今になってまた火がついてきた。
「おもいで岬」でデビューの新沼謙治(写真=コロムビア)。岩手県大船渡市出身でもうすぐ二十歳。まだ都会に毒されていない魅力をもつ。演歌で、五木ひろしが好きで、自慢だとか。
平田満「愛の狩人」(キング)▽長谷川ゆき「悲しみをポケットに」(ビクター)▽高島久美子「私だって女」(RCA)▽西田加奈子「泣きまくら」(東芝EMI)▽瀬戸内まゆみ「空港ブルース」(ユニオン)▽藤小夜子「竹芝桟橋船が出る」(ポリドール)▽山口そういち「にねん坂さんねん坂」(ミノルフォン)▽石川セリ「ひとり芝居」(フォノグラフ)▽神代みや子「北の岬」(クラウン)▽東郷由紀「想い出を消さないで」(ワーナー・パイオニア)▽森谷泰章「とまどい」(エレック)▽因幡晃「わかって下さい」(ディスコ・メイト)
===以上、新聞記事===
山本リンダさんのアンサー・ソングでは、タイは釣れなかったようですね。
別の記事で「およげ!たいやきくん」のヒット要因に触れているものがありますので、そちらもご覧下さい。
記事の終わりに上げられている歌手、曲。
有名な方も入っていますが、レアな感じでいいですね。