年金制度を考える(9) 「世界標準」に沿う改革を(10月12日日本経済新聞)
一橋大学教授 小塩隆士
(1)どの国でも年金改革が重要な政策課題となっています。
2013年の社会保障制度改革国民会議の最終報告書によると、先進国は年金改革として、
(ア)就労期間の長期化
(イ)公的年金の支給努力の対象の中心を最も脆弱な人々とする
(ウ)進行中または今後必要となる公的給付の削減を補完するため、退職後のための貯蓄を奨励する――という3つの取り組みを進めています。
(2)(ア)は、支給開始年齢の引き上げをする必要性。
政府はこの改革に非常に慎重。
(イ)は、このままでは急増が見込まれる低年金・無年金の高齢者の支援策や、そうした人たちの発生を抑制する改革が必要。
(ウ)は、スリム化せざるを得ない賦課方式の年金を補完するために、積み立て方式のような仕組みの一部導入も有効な選択肢であることを示しています。
(3)年金改革のメリットを受けるのは、これからの世代です。
私たちの世代には、むしろ不利に働く可能性のほうが高いのです。
そのため、改革にブレーキを掛ける主張の方が前面に出てくるのです。
オーストラリア政府は14年、年金の支給開始年齢を35年までに70歳に引き上げる方針を打ち出しています。
(4)他の先進国の平均的な取り組みは最低限クリアしておこうという姿勢で臨んではどうでしょうか。
年金改革も「世界標準」に沿って進めることが重要です。