北朝鮮の朝鮮労働党がおととい、創建70年を迎えた。平壌では過去最大規模の軍事パレードがあり、国を挙げて祝った。

 パレードでは移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)の改良型とみられる兵器や、核保有国であることを誇示するかのような物々しい隊列が続いた。

 約25分間にわたって演説した最高指導者の金正恩(キムジョンウン)・第1書記は、経済と国防の両方を追い求めるという「並進路線」の意義を改めて強調した。

 だが現実をみわたせば、だれも核に執着する北朝鮮との関係改善など望まない。正恩氏が人民の生活向上を願うのなら、並進路線を捨てるしか道はない。

 大規模な軍事パレードに踏み切ったのには二つの狙いがあったとみられる。国内向けの威信高揚と国際社会への威嚇だ。

 発足して3年が過ぎても新政権には、誇れるような実績はない。大仰な兵器を示すようなことでしか国内の結束を高められないのだろう。

 パレードを通して北朝鮮は、とりわけ米国に強いメッセージを放った。米西海岸にも到達可能とされるICBMの披露に加え、正恩氏は「(米国との)いかなる形の戦争にも応じられる」と述べた。

 一方で北朝鮮は党創建日の直前、米国に秋波を送っている。朝鮮戦争の休戦協定をやめて、平和協定を結ぼうと公式に伝えた。久しぶりの対米融和の意思表明の方が、強気の威嚇よりも本音に近いのではないか。

 中朝関係も動き始めている。今回の式典には中国共産党序列5位の劉雲山(リウユンシャン)・政治局常務委員が参席した。正恩氏との会談で「血で結ばれた関係」を確認し、中国の北朝鮮政策の本質に変化はないことを強調した。

 主に米国や中国向けに微妙に軟化の兆しがみえるとはいえ、北朝鮮は相変わらず、長距離弾道ミサイルの発射実験を示唆している。無謀な行動を控えさせるためには引きつづき、中国の役割が欠かせない。

 今回、劉氏は正恩氏に対し、日米韓ロを加えた6者協議の再開を呼びかけたという。北朝鮮問題を話し合う大切な会合だが、7年近く中断している。

 周辺国が北朝鮮を核保有国と認めて、協議を再開させることはありえない。ただ、南北朝鮮では関係改善のための当局者会談を開くことで合意しており、対話の芽も生まれつつある。

 決して容易ではないものの、日米韓は中ロと連携して6者協議の枠組みを再び動かし、北朝鮮を交渉の席に着かせる努力を強めるべきだ。