安倍政権が安全保障関連法制を成立させた国会が終わり、野党に「自民1強政治」への対抗をめざす動きが出てきた。

 ひとつは、民主党と維新の党を軸とする野党結集だ。両党は外交・安全保障、経済、行財政改革など6分野で共通政策の原案をつくることで合意。来夏の参院選での候補者調整を進めたい考えだ。

 もうひとつは、共産党が提唱する「国民連合政府」構想だ。安保法制廃止で一致する野党が選挙協力し、連合政府をつくろうというものだ。

 ともに実現には壁がある。民主と維新には、政策だけでなくひとつに合流して参院選を戦うのか、合流するにしても対等合併か民主による吸収合併かという難問もある。

 一方、共産の働きかけに民主の岡田代表は、選挙協力はいいとしても、政権をともにすることには抵抗感を隠さない。

 一部の議員が民主を離れ、維新に加わった過去のいきさつ。あるいは共産のイデオロギーに対する警戒が、ハードルを高くしている。

 だが、ここは自民、公明の与党体制に代わりうる政権の選択肢づくりを掲げ、大きな目的に向け結集を図るべきだ。

 与党が「安倍一色」ならば、これを逆手に「多様性」を旗印とする。そんなしたたかさがあっていい。

 先の国会は、最後は与党による採決強行に終わったが、野党は集団的自衛権行使の典型例などに関する政府答弁の矛盾を突いた。また、法案成立を前提とした自衛隊の内部資料もつぎつぎと暴露した。

 こうした野党の努力が政府の姿勢や法案に対する国民の不信を呼び覚まし、世論を喚起する原動力のひとつになったのは間違いない。

 ただ、当選者が1人に限られる小選挙区中心の選挙制度では、多様な民意を国会に反映させるのは難しい。安保法案の審議を通じ、そのことに歯がゆい思いをした多くの国民が、各地で集会やデモに集まった。そうした新たな民意の受け皿を用意する責任が野党にはある。

 政策が異なる党の結集には、「野合」批判もあろう。消費増税をめぐる分裂で瓦解(がかい)した民主党政権の姿は記憶に新しい。

 それでも、批判をおそれるあまりにまとまることができなければ政権を利するだけだ。

 もちろん、全てがばらばらでいいわけではない。政策の方向や政権運営の手法などできる限り一致点を探る努力を重ね、国民の信頼を得ていくしかない。