名作です!
おそらくご覧になった方のほどんどがそう思われるであろう作品です。
ジョン・グリシャムの原作をジョエル・シュマッカー監督、マシュー・マコノヒー主演で1996年に公開された法廷劇。
ディープ・サウスと言われるミシシッピ州を舞台に黒人差別を題材にした作品にはジーン・ハックマン主演、アラン・パーカー監督の「ミシシッピーバーニング」。
陪審員制度に正面から切り込んだ作品にはヘンリー・フォンダ主演、シドニー・ルメット監督の「12人の怒れる男」があり両作品とも名作ですが、本作もそれに勝るとも劣らない作品に仕上がっています。
二人の人種差別主義者の青年が、10歳の黒人少女をレイプし大怪我を負わせ川に投げ捨てるという事件がおこるところから物語は始まります。
やがて二人は逮捕されますが、被害少女の父親であるカール・リーは裁判所に自動小銃を持って乗り込み犯人2人を射殺、護衛の警官も左足切断の重症を負わせます。
逮捕されたカール・リーの弁護を担当するのは以前カール・リーの兄を弁護したマシュー・マコノヒー演じるジェイク。
対するはケビン・スペイシー演じる次期州知事のポストを狙っている野心家の検事バックリー。二人の法廷でのやりとりはこの映画見どころのひとつになっています。
裁判が始まると街ではKKKや白人と黒人の対立が激化、ジェイクは自宅を放火され秘書が襲われるなど数々の嫌がらせを受けます。
心神喪失を主張する弁護側の証人の精神科医も、検察側によって過去の罪が暴かれジェイクは窮地に陥ります。
陪審員の意見も有罪に流れカール・リーには「ニガー、ニグロ、ブラックどう呼ぼうとあんたと人種が違う、あんたも陪審員と同じ目で俺を見ている」と言われたジェイクはいよいよ最終弁論に向かいます。
ここからネタバレです!
最終弁論の日ジェイクは全員白人の陪審員に向かって、「目を閉じてハートで受け止めて下さい」と言って静かに語りかけます。
「小さな女の子が買い物を抱えて家路を急いでいました。想像して下さい。
突然トラックが追って来て2人の男が飛び降り、彼女を畑に引きずり込み縛り上げ、服を剥ぎ取って押し倒した。
ひとりが終わると次、彼女を犯した…。酒臭い息と汗の臭い、少女の小さな子宮の命は奪われ命を受け継ぐ子供を産むことは出来ない。
男たちは彼女にビールの缶を投げつけ彼女の肌は骨に達するまで裂けた。
小便を掛け次は吊るし首、ロープが乱暴に引かれ少女の足は宙を蹴ったが地面は見つからない。
しかし木の枝が細かったので少女は地面に落ちた。男たちは少女を橋から投げ捨てた。少女は10メートルの高さから下の川に落ちた。
見えますか?レイプされ殴られ傷だらけ、男たちの小便と精液にまみれ血にまみれて死を待つ少女。見えますか?想像して下さい。
その少女は・・・・・白人でした」
最後のひと言は陪審員はもちろん、検事や裁判官を驚かせました。
ジェイクの話す物語を全員がカール・リーに娘トーニャのことだと思っていたからです。
この弁論によってカール・リーは無罪の判決を受けます。ジェイクは裁判の中で証人への質問でこう問いかけます「もしあなたならどうしますか?」
この最終弁論は白人の陪審員にこれが「もしあなたなたなら?」つまり今回の報復殺人を引き起こした事件の被害者が「もし白人少女なら?」と問うことによって無罪を勝ち取ったとも言えると思います。
その辺りの陪審員の心象風景は映画の中では明らかにされていませんが、もし自分ならと考え無罪判決を出したのなら、黒人による報復殺人は罪を負うべきではあるが、自分つまり白人なら無罪であると取れなくもない判決です。
これが日本であれいくら動機に同情すべき点があっても、2人の人間を射殺して無罪はありえないですね。
白人に置き換えるならという主張で無罪を勝ち取ったジェイクは、それによって彼らの差別意識を許容したのか?
やはりカール・リーの言うようにジェイクも陪審員と同じ目で見ているのか?
そして報復による殺人なら許されてもいいのか?感動の名シーンだと言われている最終弁論の場面ですが、私には違った意味でいろいろ考えさせられる作品でした。
無罪になり裁判所の出たカール・リーに娘のトーニャが走り寄って抱き合う親子の後ろに星条旗が大きく映しだされていたのも、シュマッカー監督のメッセージだっったのかも知れないですね。
とにかく必見の作品であることは間違いありません!
- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 新潮社
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