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【日曜経済講座】
TPPでの国益忘れた対米協調を憂う 空白30年の愚を繰り返すな! 田村秀男
対米協調優先の考え方の背景には「中国の脅威」がある。ただ、異形の経済超大国・中国と対峙(たいじ)する日米の枠組みとしても、過大評価は禁物だ。TPPはあくまでも自由貿易圏ルールの拡大版であり、対中外交・安全保障への波及効果は未知数だ。
TPPは国際ルールの面で万能ではない。知的財産権保護や国有企業の既得権排除、相手国政府との投資紛争処理などは、党・政府指令がモノを言う中国との相性はよくないはずだ。だがアップル、IBM、デル、マイクロソフト、インテルなど米国を代表するハイテク企業は競い合うように対中投資を増やし、先端技術を国有企業に供与している。米企業は中国市場シェア欲しさの余り、情報技術(IT)の中国標準の普及に協力している。
中国の脅威を考えると、TPPよりも人民元の変動相場制移行や中国金融市場自由化のほうがはるかに重要だ。
北京が執念を燃やす元の国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)構成通貨認定にIMF理事会が同意するようだと、TPPの対中牽制(けんせい)期待効果は吹き飛ぶ。習近平政権は「国際通貨元」を存分に刷ってアジア全域を中華経済圏に取り込むだろう。元でハイテク兵器も石油も買えるようになる。