熊の当たり年
[ 1、熊による被害 ]
[ 2:ブラキストン ・ ライン ]「 月の輪熊 」 は本州にいても北海道にはいませんが、逆に北海道の 「 ひぐま 」 は本州にはいません。その理由は津軽海峡があるからです。「 ひぐま 」 は泳げないから?。とんでもない後で説明します。イギリスの軍人で動物学者の ブラキストン ( 1832〜1891 年 ) は、1861 年に函館を訪れそこに 20 年以上居住しましたが、気象観測や鳥類採集を行い津軽海峡の北と南では、鳥類や哺乳動物などの動物相に明白な違いがあることを発見しましたが、後にその境界線のことを ブラキストン ・ ラインと呼ぶようになりました。北海道には月の輪熊だけでなく猿もいませんが、これらの動物は アジア ・ モンスーン地帯に生息する動物です。その反面北海道だけにしかいない エゾシカ、エゾオオカミ ( 当時生息していた大型の オオカミ )、縞 ( しま ) フクロウ、縞 リス、エゾ赤蛙、エゾ雷鳥などは本州のものとは異なり、北方の シベリア地方の動物と共通するものした。
3:熊について九州では既に絶滅したとみなされ、四国でも絶滅の可能性が高い状態の 「 月の輪熊 」 が、本州では今回の 一連の熊騒動から、予想外に生息数が多いのではないかと想像します。月の輪熊はこれまで攻撃性が少ないといわれてきましたが、異常気象による山での エサ不足が原因で里に下りて食料を探し、人との遭遇から危害を加えたのではないかと思います。
[ 4:ひぐま による被害 ]人に危害を加える点で 「 月の輪熊 」 とは比較にならない程どう猛なのは、北海道に住むより大きな 「 ひぐま 」です。明治 11 年 ( 1878 年 ) に 3 名を喰い殺し 2 名を負傷させた、熊害史上 3 番目になる 「 札幌丘珠 ( おかだま ) 事件 」 の 「 人喰い熊 」 の剥製が、札幌植物園に展示してありました。
一頭の 「 ひぐま 」 が 3 日間に延べ 12 戸の開拓農家を襲い、6 名を殺害し、3 名に重傷を負わせるという、世界の熊害史上に例のない大惨事が起きました。この熊は最初に部落に出没してから 6 日後に射殺されましたが、俗に金毛と呼ばれる見事な黒褐色の大物で、頭部には特に金毛が密生していて、推定年齢は 15 才で、体長が約 2.5 メートルにもなる巨大な雄熊でした。 昭和 45 年 ( 1970 年 ) に福岡大学 ワンダーフォーゲル部の学生 3 名が 「 ひぐま 」 に殺された、日高山脈での事件も有名です。 5 名の学生が日高山脈を縦走した際に幕営中に熊につきまとわれ、3 日間にわたり次々と学生が殺されたもので、加害熊は 2 才半の雌でしたが、この年齢の熊でも人を襲い食べるのです。 アラスカで 20 年間野生動物の写真を撮り続けていた 「 星野道夫 」が カムチャツカ半島で野生動物撮影のため幕営中に、ひぐまに襲われて死亡したのは、平成 8 年 ( 1996 年 ) のことでした。彼を襲ったのは テレビ撮影のため、カムチャッカにやってきた カメラ ・ クルーが餌付けをした カムチャツカ 「 ひぐま 」 で、人の臭いから餌にありつけることを学習したからでした。
カムチャツカ半島では頭数に制限があるものの、米国本土の Grizzly ( グリズリー、灰色熊 ) よりも大型の 「 ひぐま 」 の狩猟が許可されていて、毎年米国の ハンターが訪れます。左の写真は アラスカの コディアック ( Kodiak ) 島などに生息する、ヒグマの仲間では最大の コディアック ・ ブラウン ・ ベア ( kodiak brown bear 、茶色熊 ) で、米国 アラスカ州 ・アンカレージの ヒルトン ・ ホテルの ロビーにある剥製です。身長 170 センチの私と比べると分かりますが、立ち上がると 3 メートル近くあり、体重は 300 キロ以上です。
[ 5:熊は水泳が得意 ]
昭和 59 年 ( 1984 年 ) 6 月には津軽海峡に面した渡島 ( おしま ) 半島の福島町で、沖合を泳ぐ 「 ひぐま 」 が発見され射殺されましたが、3 歳の雄でした。 津軽海峡に面した津軽半島の竜飛岬と北海道の白神岬の間は直線距離で20キロメートル、下北半島の大間岬と北海道の汐首岬との間の距離は19キロメートルです。前述の利尻島で示した「ひぐま」の遠泳力からすれば到達可能な距離ですが、強風地帯でもあり、海峡を西から東に抜ける対馬暖流の流れが速いので、これまで泳ぎ渡ることは無かったと思われます。
[ 7:熊による被害を避けるには]明治 37 年以降平成 4 年末に至る 89 年間のうち、 北海道の統計資料 に残る 68 年間の人的被害は、死者146人、負傷者313人、合わせて 459 人でした。年平均の死者は 2.2 人 弱、負傷者は 4.6 人 で、毎年 6.8 人 弱が犠牲になったことになります。
昭和 30 年以降平成 4 年末に至る 38 年間の死者は 40 人で、負傷者は 86 人でした。年平均の死者は 1.1 人弱、負傷者は 2.3 人弱でした。これに比べて本州の 「 月の輪熊 」 による、今年の被害の多さには驚かされます。富山県では昨年の熊による被害は僅か 3 名 でしたが、今年は今日 ( 10 月6 日)現在で 4 倍 の 14 名 を記録しました。 「 ひぐま 」 が人を襲うのは、主に以下の 三つの理由からです。
8:もし熊に遭遇したならば、
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