ダーウィンが来た!「サバンナの珍獣!岩山のバレリーナ」 2015.10.08


軽やかに舞うバレリーナ。
この優雅な踊りを支えているのはピーンと伸ばしたつま先です。
今日の主人公は動物界のバレリーナ。
見て下さいこの見事なつま先立ち。
まるでバレエのステップを踏んでいるみたいでしょ。
サバンナに暮らす珍獣クリップスプリンガーです。
小鹿のようなかわいいお顔とは裏腹に…。
暮らしているのはなんと険しい岩山。
つま先立ちで…。
岩の上を軽やかに跳ね回ります。
天敵が現れても大丈夫。
逃げ足は世界最速級。
時速100キロもの猛スピードで岩場を駆け抜けます。
こんなことができるのもつま先立ちのおかげ。
岩山のバレリーナクリップスプリンガーのスゴ技に迫ります。

(テーマ音楽)アフリカ東部タンザニアのセレンゲティ平原。
見渡す限りの大草原が広がっています。
草原の中に島のように浮かぶ岩山が今日の舞台です。
セレンゲティ平原にはこうした岩山があちこちに点在しています。
そんな岩山を住みかにしているのが今日の主人公クリップスプリンガーです。
体長およそ80センチ。
体重は10キロほど。
しば犬を一回り大きくしたくらいの体つきをしています。
2本の角大きな耳そして短い尻尾。
まるでシカのように見えますがウシの仲間です。
「岩山のバレリーナ」とも呼ばれるクリップスプリンガー。
最大の特徴は足元にあります。
ヒヅメがとがっていてまるでつま先立ちをしているみたいでしょ。
バレリーナのようなこの足先が岩山での暮らしには欠かせないんです。
得意技はジャンプ!自由自在に険しい岩場を移動します。
背の高さの3倍は軽々と跳ぶこともできるんですよ。
サバンナでこんな岩に登れるウシの仲間はクリップスプリンガーだけ。
この身軽さを支えているのがあのとがったヒヅメです。
岩山に適した特別仕様になっているんです。
(鳴き声)普通のウシと比べるとヒヅメの先端だけが地面に接しているのがわかります。
普通のウシはヒヅメが平らでゴツゴツした岩の表面に密着させることができず斜面では滑ってしまいます。
一方クリップスプリンガーはヒヅメの先端だけで立っているので岩肌のわずかな凹凸でもとらえることができるんです。
こんな急な岩壁でも決して滑り落ちることはありません。
険しい斜面だってこのとおり楽々と登っていきます。
岩山専用の足を持つクリップスプリンガー。
1日のほとんどを岩山の上だけで過ごします。
おや?こちらのクリップスプリンガー何だか様子が変です。
微動だにせず1点を見つめています。
何かを警戒しているようです。
(鳴き声)天敵のヒョウです。
まだクリップスプリンガーには気付いていないようです。
あっ走りだしました。
ヒョウに見つかる前に逃げる作戦です。
それにしても見事な走りっぷり。
詳しく見てみましょう。
体の向きを変えてすかさず…ジャ〜ンプ!着地の時とがったヒヅメが岩場をしっかりととらえています。
そして一気に加速。
最高速度は時速100キロにも達するといいます。
今度は大ジャ〜ンプ!4メートルもの距離を軽々と跳んでいきます。
この驚異的な逃げ足のおかげで天敵に気付きさえすればまず襲われることはありません。
クリップスプリンガーにとって岩山はいち早く天敵を見つけるための見張り台。
ここからなら遠くの敵でも見つけることができます。
岩の上で見張り敵が来ればいちもくさんに逃げる。
これこそがクリップスプリンガーの生き残りの秘策なんです。
仲よく並ぶこちらの2匹は夫婦。
セレンゲティ平原のクリップスプリンガーは群れを作らず夫婦で暮らします。
朝は食事から始まります。
主食は岩場に生えた草や木の葉っぱです。
おいしそうに食べていますね。
こちらがオス。
食事が終わるとオスが立ち止まりました。
今度はメスの食事の時間です。
その横でオスは見張りの態勢。
天敵から身を守るため食事の時は必ずどちらかが見張り役になるんです。
オスは子どもを産むメスにたくさん食べさせるため自分のほうが長い時間見張り役を買って出ます。
優しいですよねぇ。
食事を終えた夫婦。
何だか奇妙な行動を始めました。
かわるがわる枝先に顔をこすりつけています。
これは自分たちのなわばりを主張するための行動。
よく見ると目の下の黒い部分をこすりつけています。
この部分は「眼下腺」と呼ばれる器官。
ここから強いにおいを持つ液体が分泌されます。
そのにおいを植物に付けることでなわばりを主張しているんです。
におい付けは夫婦の大事な日課です。
食事とにおい付けが終わり岩山の上に座り込んだ夫婦。
休憩の時間でしょうか。
あれ?何だか口をもぐもぐさせていますね。
あっのみ込んだ!あれ?戻った。
またもぐもぐし始めました。
実はこれ「反すう」というウシやシカの仲間特有の行動。
食べ物をいったん胃に送って微生物に分解させそれをもう一度口に戻してかみ直します。
何度も反すうを繰り返すことで硬い木の葉でも消化することができるんです。
朝のうちに食事を終えあとはほとんど一日中岩の上で反すうしながら夫婦で見張りを続けます。
でもここはサバンナ。
昼間の気温は40度を超えることもしばしばです。
多くの動物たちにとって耐え難い暑さです。
この時間ほとんどの動物は水辺や木陰で体を休めます。
でも岩山の上のクリップスプリンガーだけは別。
炎天下でも岩山の上でじっと我慢。
生き残るためどんな時もひたすら見張りを続けるんです。
ちょっと待った!どうしたんですか?ヒゲじい。
いやいくら見張りが大事でもこんな所にずっといたら天敵より前に暑さにやられちゃいますぞ。
あ〜それはね大丈夫なんですよ。
クリップスプリンガーは暑さにとっても強いんです。
そうなの?その秘密は毛にあります。
クリップスプリンガーの毛は中が空洞になっています。
さらに空洞の毛が重なり合う事で毛の間にも空気が蓄えられて全身が空気で包まれているような状態なんです。
ほう。
この空気の層がバリアーの役割をしてくれるので体に熱が伝わりにくくこんな炎天下にいても体温が上がり過ぎることはないんですよ。
そうなんだ。
でもいくら暑さに強いとは言ってものどは渇くでしょ。
こんな岩山に水なんてあるんですかね?確かにそう思いますよね。
でもねヒゲじい岩山はとっても水が豊富な場所なんですよ。
えっどういうことなんですか?はい。
岩山にはたくさんの亀裂が入っています。
雨が降るとそこにしみこみ水が蓄えられます。
いわば自然のタンクのようなものなんです。
なるほど。
そのおかげで岩場に生える木の葉っぱは水分をとっても多く含んでいるんですよ。
こうした葉っぱを主食にする事で必要な水分をとっているんです。
へえ岩山ってうまくできてますな。
でしょ。
それにね岩山の葉っぱは水分だけでなく栄養も豊富なんです。
例えば岩山に生えるイチジクの葉。
草原に多いイネ科の草と比べるとタンパク質は2倍近くリンはなんと4倍以上にもなるんです。
へえ!ですからクリップスプリンガーは岩山から離れなくても生きていけるんですね。
なるほど。
岩山をフル活用したクリップスプリンガーの見張り生活。
ホント目を「みはる」ものがありますな。
第2章では岩山を巡ってクリップスプリンガー同士の戦いが勃発。
さらに大事ななわばりにヒヒの大群が侵入。
幼い子どもが大パニックに。
大丈夫?セレンゲティ平原に点在する岩山。
ここを住みかにしているのはクリップスプリンガーだけではありません。
ハイラックスです。
う〜んかわいいですねぇ。
ハイラックスは運動能力抜群。
なんと垂直の岩壁も一気に駆け登ることができるんです。
クリップスプリンガーのようなヒヅメはありませんが足の裏がとっても柔らかく岩の凹凸にぴったりと密着し滑らないんです。
忍者顔負けの軽い身のこなしで岩山の隙間を移動することができます。
天敵のワシが来ても…。
隙間に隠れればもう安心。
天敵もここまでは入れません。
さらに驚きの光景も目撃しました。
よく見て下さい。
目がトロ〜ンとしてきましたよ。
なんと垂直の岩壁で眠っちゃうことも。
岩山は安全で快適な場所なんです。
クリップスプリンガーのとがったヒヅメ。
ハイラックスの柔らかい足の裏。
険しい岩山を巧みに登ることができる者だけが岩山の住人になれるんです。
ある日のこと。
クリップスプリンガーの夫婦が岩山から草原に降りてきました。
草原は見通しが悪いためどこに天敵が潜んでいるかわかりません。
小さな岩に登り夫婦交代で見張りをしながら少しずつ進んでいきます。
やってきたのは別の岩山。
木の葉を食べています。
実はここもこの夫婦のなわばり。
この辺りのクリップスプリンガーはなわばりの中に3〜4個の岩山を持っています。
十分な食べ物を確保するためいくつもの岩山が必要なんです。
なわばりに複数の岩山を持つ理由はもう一つあります。
それは天敵対策。
こちらのクリップスプリンガー岩山のてっぺんで見張りをしています。
しかし別の日。
今度は同じ岩山でライオンが昼寝していますね。
ライオンは岩山が大好き。
こうしてしばしば休みに来るんです。
こういった場合の避難場所としてなわばりの中に複数の岩山を持っておく必要があるんです。
でもなわばりを守るのは簡単ではありません。
そのことがよく分かる事件が起きました。
こちらの夫婦何かを見つめています。
天敵でも見つけたんでしょうか。
その目線の先には別の夫婦です。
実はここお隣とのなわばりの境界線。
赤は夫婦が主張するなわばり。
青はお隣夫婦が主張するなわばりです。
この真ん中の大きな岩山を巡って今争いが起きているんです。
大きな岩山は見晴らしが良くたくさんの木が茂っています。
クリップスプリンガーにとっては一等地なんです。
お隣の青の夫婦が岩山の近くにやってきました。
におい付けをしてなわばりを主張しています。
そしてその場を離れる青の夫婦。
赤の夫婦はその瞬間を見逃しませんでした。
すかさず岩山へ近づいていきます。
そして…なんと同じ枝ににおい付けを始めました。
それに気付いた青の夫婦すぐに戻ってきました。
カンカンに怒っています。
「こら出ていけ!」。
赤の夫婦はたまらず逃げ出しました。
再び青の夫婦が同じ場所ににおい付けを始めました。
「ここは我が領土」と言わんばかり。
一進一退の攻防。
結局青の夫婦が岩山を勝ち取ったようです。
翌日。
争いに勝った青の夫婦は岩山のあちこちににおい付けをしています。
一方こちらは負けた赤の夫婦。
なわばり争いに疲れてしまったのか岩の上で休んでいます。
しばらくすると青の夫婦は別の場所へ食事に出かけました。
その時です。
赤の夫婦が意外な行動に出ました。
そうっとそうっとあの岩山に近づいていきます。
岩山に駆け上がりました。
そして青の夫婦と同じ場所ににおい付けを開始。
諦めたわけではなかったんですね。
さらに右側のメスにご注目。
フンをしています。
実はフンにもなわばりを主張する意味があるんです。
クリップスプリンガーにとってなくてはならない岩山。
条件の良い場所では日々しれつな争いが繰り広げられているんです。
ある日のこと。
3匹で暮らすクリップスプリンガーを見つけました。
親子です。
クリップスプリンガーは年に1回1匹の子どもを産み夫婦で大切に育てます。
こちらは子ども。
生まれて1年ほど。
角の大きさはもう親とほとんど変わりません。
間もなく独り立ちの時期です。
お母さんと子どもが食事をしています。
食べ終わったお母さんの向かった先にはお父さん。
前足で合図です。
「お父さん見張り代わりましょうか?」とでも言っているんでしょうか。
今度はお母さんが見張りをする番です。
子どももお母さんの横に並んで見張っています。
こうして親から見張りのしかたを学んでいくんです。
しばらくすると岩山から草原に降りてきました。
一緒に歩きながら行動範囲を広げていきます。
子どもは親が始めたにおい付けに興味津々の様子。
親のまねをしながらなわばりを守ることの大切さを学んでいきます。
ある日のこと3匹の移動中に事件が起こりました。
行く手に群れているのはたくさんのヒヒ。
どうやら親子のなわばりで休憩中のようです。
お父さんは気にせずヒヒの群れの中を突っ切っていきます。
そしてあとに続くお母さん。
おや?お母さんが後ろを気にしています。
子どもです。
何とか歩きだしたその時。
おっと!ヒヒがちょっかいを出してきました。
子どもは驚いて大パニック。
心配そうなお母さん。
「うわお母さん怖いよ!待ってよ助けてよ〜」。
何とか逃げきることができました。
よかったよかった。
サバンナを生き抜くため親に連れられて経験を積む日々が続きます。
2週間後。
3匹の家族です。
いつものように食事をしています。
岩の上で見張っているのは…子どもです。
お父さんもお母さんも安心して食事をしているようです。
もう1匹で見張りを任されるようになったんですね。
疲れたのか子どもがお母さんに近づいてきました。
でもお母さんはつれないそぶり。
それどころか思いもよらない行動に出たんです。
なんとお母さんが子どもを攻撃。
全身で子どもにぶつかります。
実はお母さんは子どもに独り立ちを促しているんです。
見張りも1人でできるようになった子ども。
今度は自分の力で生きていかなければなりません。
いつまでも親のそばにいることは許されないんです。
お母さんは力を緩めることはしませんでした。
それからしばらくしてのことです。
草原であの子どもを見つけました。
ついに両親のなわばりから旅立ったんです。
子どもは草原をさまよいながら新たな岩山を探します。
無事に生き残れるのは運よく自分の居場所を見つけた者だけです。
アフリカセレンゲティに広がる大草原。
バレエのような華麗なステップと軽やかな身のこなしで駆け回るクリップスプリンガー。
小さなバレリーナは今日も岩山からサバンナの大地を見つめています。
2015/10/08(木) 16:20〜16:50
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「サバンナの珍獣!岩山のバレリーナ」[字][再]

タンザニアの岩山に暮らすウシの仲間、クリップスプリンガー。最大の特徴は、とがったヒヅメ。バレリーナの「つま先立ち」のような足で、険しい岩山を縦横無尽に駆け回る。

詳細情報
番組内容
タンザニアの岩山に暮らすウシの仲間、クリップスプリンガーが主人公。小鹿のような愛くるしい顔立ちの珍獣だ。最大の特徴は、とがったヒヅメ。まるで、バレリーナがつま先立ちをしているような姿から「岩山のバレリーナ」とも呼ばれる。鋭いヒヅメが、岩山のわずかな凹凸をとらえるため、険しい岩場でも足を滑らせることはない。軽やかな身のこなしで岩山を縦横無尽に駆け回る、クリップスプリンガーのスゴ技に迫る!歌:平原綾香
出演者
【語り】中山準之助,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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