クローズアップ現代▽“正しい”アクセント誰が決める?日本語発音辞典 大改訂へ 2015.10.08


こんばんは。
こんばんは、萩本欽一でございます。
欽ちゃんと呼ばせていただいて、きょうはよろしいでしょうか?
いいですね。
ありがとうございます。
きょうは、ことばを非常に大切にしている、この欽ちゃんと共に、ことばについて伝えていきたいと思うんですけれども、特に欽ちゃんといえば、ことばの語尾にこだわりがありますよね。
ああ、ことばの語尾でね、相手に違う意味で伝えるっていう場合がありますからね。
私がデビューした、なんでそうなるの?ってことば、あれ、怒るとなんでそうなるの?って怒ることばですね。
ちょっとね、怖そうなんで、思い切って、なんでそうなるの?って、ことばを変えたら、これが有名になったという。
しかもね、このことば使ったらね、ふっと飛んだんですね。
ですから、まさにことばってのは、使い方によってこんなに人生も変わるっていう意味ではね、ありがたいおことばでございますよ。
今、アクセント、抑揚、これによって本当に雰囲気をがらりと変えられる。
ですね。
それは飛ぶって今おっしゃいましたけど。
そうですよ。
そんなふうに変わるんですか?
ですから、奥さんに怒られた、ああごめんなさいとかいうと、暗くなりますから、そういうとき、ごめんなさいって、こうやるとね、なんとなくね、あっ、そういうふうに笑っていただいたってことは実は、許したよってことの暗号ですから。
よろしいでございましょう。
よろしいですね、本当に。
こうやって今の、一つを取っても、アクセント、そして抑揚っていうのが、いかにそのコミュニケーションで大切かっていうのがみんな分かるかと思うんですけど、正しいアクセントというのは、どんなものなのか、それには多くの人たちに伝えられるというのが、大切な基準になっています。
その基準をもとにした、多くの人に伝えられる、今、1つではなくなりつつあります。
基準?基準があるんですか?
ことしの春、欽ちゃんはもう一度学びたいと大学生になりました。
今の授業はなんですか?
英語。
みんな待ってる、ほら。
若い学生たちと接していて驚かされたのが聞き慣れないことばのアクセントです。
黒ちゃん、これなんて読む?普通に。
クラブ?これは?
彼女に言わせてみようか?これ何?
あれ?音が違うよ。
あれー?
さまざまなアクセントが入り乱れ戸惑う欽ちゃん。
まだあった。
雨じゃね?雨じゃね?何?雨じゃね?何?
かわいくないよ。
言ってみて?なんだって?
雨じゃね?
欽ちゃんも驚くほど多様化していることばのアクセント。
実際、街でも聞いてみると…。
多様化するアクセント。
一方で、読み方は一つに絞るべきと考える人も少なくありません。
視覚障害者のために文字を読んで伝える音訳ボランティアの松本久美子さんです。
日本語は同音異義語が多いため文字が確認できない人に理解してもらうには正確なアクセントが欠かせないといいます。
基準を大切にしている松本さんが最近気になっているのがアクセントの刷り込み現象です。
お待たせいたしました。
NHKふれあいセンターです。
NHKにも連日アクセントに対する違和感の声が寄せられています。
アクセントが悪すぎて聞きづらい。
アクセントが最近乱れきっています。
伝統的なアクセントを守るべきか多様化するアクセントをどこまで受け入れるべきか。
全国の放送や教育の現場で使う共通語の基準を示すとされる日本語発音アクセント辞典。
その編さんをする現場では過去にないほどの大改訂が行われています。
特に違和感があると指摘されている5500語のアクセントに関して言語学者などを交えて集中的に審議します。
そもそも、なぜこうした基準は生まれたのでしょうか。
本来、日本語は語彙やアクセントなど地域ごとの方言の違いが非常に大きい言語でした。
そのため出身地が違う者どうしが意思の疎通を図る際の壁になっていました。
そこで明治以降東京・山の手のことばを基準に標準語教育が急速に進みます。
そこには国家の統一と同胞意識を作り出すというねらいがありました。
背景にあったのは国力の強化です。
南太平洋海戦においてわが海軍、航空部隊は…。
特に軍隊では、正確で迅速な情報伝達が必須でした。
標準語による徹底した統制が図られました。
そして戦後。
共通語という呼び名のもとに全国どこでも通じることばがメディアを通じて広まりました。
3月の商戦の時期に突入いたしました。
ことばの統一がいわば日本の高度成長を下支えする役割も果たしてきたのです。
しかし今ことばの多様性が進む中共通語の基準が揺らいでいます。
中でも議論の的となっているのが地名のアクセントです。

(駅のアナウンス)深谷、深谷。
声優の田中一永さんです。
去年から首都圏の鉄道会社の駅で流れるアナウンスの声を担当しています。
5時13分発普通、高崎行きです。
田中さんは、今回指定されたアナウンスの中で出身地である駅名のアクセントに違和感を抱きました。
今回吹き込んだアナウンスは田中さんたち地元の人が慣れ親しんだアクセントとは異なるというのです。
こうした声を受けて鉄道会社では、ふかや
(頭高)をふかや
(平板)に修正しました。
今回、辞典の大改訂でもこれまでどおり共通語アクセントだけを認めるのか。
地元でよく使われているアクセントも新たに認めるようにするのか。
基準の在り方そのものを見直す議論が始まっています。
議論の末、従来のものに加え地元でよく使われているアクセントも併せて採用するという、これまでにはなかった方針を決定。
来年の春の出版に向けて最終調整が進められています。
大改訂の結果を待たずに独自の基準を作る動きも出ています。
どんな文章でもすぐに音声化できるソフトを開発しているメーカーです。
なでしこ決勝Т1回戦の相手はオランダ。
このメーカーではこれまではアクセント辞典をもとに40万語近い単語を音声ソフトに記憶させてきました。
しかし新たに生まれることばや多様な読み方をされていることばは、独自にアクセントを決めることにしました。
ネット上で最もふさわしい読み方について投票してもらい多数決で決めているのです。
ちなみに、このことばのアクセントは……に決まりました。
改めてご紹介します。
今夜のゲストは、萩本欽一さん。
そして、アクセント辞典の取りまとめを行っている、NHK放送文化研究所、塩田雄大さんです。
欽ちゃん、若い人たちのことばに違和感ありますか?
はい、その会話にちょっとついていけないところありますかね。
それと、今のVTR見てると、なんかきょう、怒られに来たような気もしますが、でも、わりとこれは、もうその土地のね、ことばにしようじゃないかっていう話もあって、最後は楽しみです。
若い人たちのことばがこう、定番化している。
えっ?
ことばが平板化している、例えば、さっきのクラブのように、やっぱり、本当はアクセント違うんじゃないの?っていう気持ちはありますか?
いや、それよりもなじもうとしてますからね、そこでは違ってようがどうしようが、そちらについていくという、今、こうしてこの番組で見ていると、違うんじゃないかって、あしたあたりには言うけれど、できれば、そういうこと言わずに、という気はありますね。
どうして平板化してるんですか?
もともと、日本語のアクセントというのは、平板型が非常に多いんですね。
このアクセント辞典にも、7万語ぐらい出てるんですが、恐らくこれの40%か、50%は実は平板型のアクセント、非常に日本語らしいアクセントなんですね。
その一方で、外来語が日本語に入ってくるときには、最初はあまり平板型では入ってこないんですね。
つまり、外来語らしく、頭高型だとか、ですとか、中高型とか呼ばれる、平板型ではない形で入ってきている、外来語らしくふるまっているわけですね。
それが平板化するとですね、あたかも昔から居座っているような、印象を受けて、つまりその外来語の平板化に対して、違和感を覚える人っていうのは、外来語は外来語らしくしていろという気持ちの表れであることもあるわけですね。
そうするとクラブとクラブでは、どうなんですか?
例えばクラブとクラブで言いますと、伝統的には、ずっとクラブと言ってきているわけですね。
しかし今まである学校の運動のクラブであるとか、あるいはちょっと高級な飲み屋さんのクラブとは違ったもの、クラブというものを今までとは違うものを表したいという意識の表れとして、そういうものが使われることがあるんですね。
自分のなじみが出てくると、平板になっていくということなんですけど、雨じゃね?っていうの、分かりました?
意味が、われわれね、イントネーションでね、違う意味伝えたりしますんでね、ちょっとあれはどう取っていいんだか、つまり心配している雨なの?それとも、ああ、やっぱり雨なんだって、その、どこで理解していいかっていうのは分かります?
私もちょっと分からなかったので。
イントネーションで今、何を言いたいのっていうの、ちょっと…。
そうですよね、
塩田さん、なんですか?
これは、よく使うことばは、こういうイントネーション、つまり、労力の少ないイントネーションにしたいという、自然な流れであるわけですね。
では、なぜこれをよく使うかっていうと、伝統的な、例えば共通語に無理やり当てはめていうと、例えば、やばくね?って今、言うのを、やばくない?っていう形、やばくない?っていう形で、上げて下げてまた上げるっていう、エネルギーが必要なイントネーションなわけですね。
いいじゃないですか。
それに対して、やばくね?っていうのは、あまり疲れない。
では、なぜ疲れないイントネーションが欲しくなってくるかというと、相手に対して、同意を求めてる、やばいよねと、私はやばいと思っているし、あなたもそれに同意するよね?という形で、お互いに質問と同意を繰り返しながら、話をしていきたいという、現代の人間の、現代の若者の特性の表れなんではないかなというふうに私は思ってます。
つまり雨じゃない?ってことですか?
そうですね。
ああ。
雨じゃないですか?という、上がって下がって上がるのは、やっぱり雨じゃね?よりは、疲れるんですね。
疲れるって気が付かなかったですよね。
だとしたら、ちょっと感情がなくなってくるっていう意味では、ちょっと寂しい。
われわれでいうと、ほとんど感情が笑いとして、成り立ってるところあるから、絶対にそっちはいかないですよね。
例えば、どういう、その感情をもっと表すうえでは、例えばどういうこと?
雨が嫌だってときは、ちょっと音程下げて、雨だーっていう、落としますし、雨降ってもなんでもない、きょうは休めるっていうんで、雨だ、雨だっていうことで、きょうは雨降っても嫌じゃないというふうに、伝えるということですからね。
あれだとすると、なんですか、だんだんお笑いで言うと、感情がなくなって、だんだん笑わなくなってきますよ。
恐らく、大人は分からないんですけど、若い人は若い人で、細かいイントネーションの使い分けがあるんですね。
置いてかれてますね。
でも本当にちょっとした言い方で、全く聞こえ方が。
大人の会話ってそうじゃないですか。
その言ってる意味と違う意味を伝えるときあるじゃない、ごめんなさいって言う場合と、ごめんなさい、ごめんなさいって言ってるのは、なんか、本当に悪いんだけど、許してくれるわよねっていうのを足していってるのであって、これがなくなると、ちょっとねぇ、いろいろ男と女なんてのは、わりとこのへんをうまく使ってるなと思いますよ。
もう本当に今、世代、そして時代の中でそのアクセント、そして抑揚ってものが変わりつつあるということなんですけれども、その変化、さらに深くご覧ください。
庄内平野の中央に位置する山形県鶴岡市です。
古くから城下町として栄えたこの町で、戦後70年にわたり言語調査が行われてきました。
ごめんください。
調査員の一人言語学者の阿部貴人さんです。
阿部さんたちは鶴岡市民700人を対象にふだん使っていることばのアクセントや発音について聞き取り調査を続けています。
これはなんでしょう?
これ、最後です、これは?
昭和25年から続けてきた調査の結果です。
戦後は3割近くにすぎなかった共通語の普及率が年を追うごとに上昇。
今やあらゆる年代の鶴岡市民が共通語も使っていることが分かりました。
しかし、共通語の基準が浸透した今、阿部さんはそれとは逆行する動きを発見しました。
若者たちの中で失われかけていた方言やアクセントの新しい使い方が生まれていたのです。
若者たちの会話で多く聞かれる「さ」ということば。
♪「俺ら東京さ行ぐだ」1984年に発表された吉幾三さんの「俺ら東京さ行ぐだ」。
曲のタイトルにも付けられている「さ」という助詞は本来、東北弁で方向や場所を示す名詞のあとに使われていました。
ところが阿部さんたちの調査では方向以外のさまざまなことばに応用して使われていることが分かりました。
実はこうした新たな方言はほかにも次々と生み出されています。
中でも阿部さんが注目したのが地元以外の場所に行ったときこそ独自の方言やアクセントを使うという若者たちです。
若者たちがあえて地元の方言を使うのは自分たちの文化や価値観を強く主張しようという表れではないかと阿部さんは見ています。
おもしろいですね、今、方言をまた新しく作って、そしてほかの県に行ったら、むしろ使いたいっていう若者たち、どうご覧になりました?
いやいや、いいんじゃないですか?ねぇ、ぜひそうして。
だって、みんな一緒だと、個性がなくなるし、ねぇ、ぜひ、子どもたち、若者たちは、そう言ってますが、先生、なんか、怒ったような顔してますよ。
いや、そんな顔してない。
あれー?やっぱり若者って次の時代、次の時代、ことば変化させてますね。
そうですね。
非常に私、健全な流れだと思うんですけれども、昔、例えば戦前はこういうことができなかった、なぜかというと、昔はとにかく日本中でことばが通じなかった時代があったわけですね。
そういった中で、標準語、当時、標準語と呼ばれていたものを全員が習得するというような形で、半ば強制的に教育がなされた時期があったわけですね。
しかし今は、多くの人が、それなりのしかるべき場所に行けば、共通語的なものを話す、そして地元で友達と話すときには、方言的な話をするっていう、使い分けをすることが、多くの人ができるようになってきている。
そうなってくると、別に努力して共通語を習得する必要もなくなっているわけですから、そういったときに、自分のアイデンティティーといいますか、自分がどういう立ち位置で、この会話をするのか、あなたとはどういう接し方をするのか、どういうキャラで話をするのかということを示すために、積極的に方言を資源として使ってるということだと思うんですよね。
そうですよね。
欽ちゃんは方言を、資源として使ったことありますか?
だって個性がないって、私、個性がない人っていうのは、もう国に個性があるんですから、それを大いに利用するってのはいいんじゃないですか?
東京ご出身で?
私、東京にいてなまりがあるって言われてましたからね。
それで、ですから…。
使ってらっしゃったんですか?
ですから、どっちかっていうと、使いますよ、だって、東京でおっさん、これまけてよとかってきついもんですから、おっちゃんさ、負けてくれんかなって、やりますよ。
そうするとね、なんかそっちのほうがね、有利に働くっていうのはありますよ。
なるほど。
使い分けをしてる。
そうやってたから、僕は有名になったとき、お国どちらですか?って、東京?なまりがあるじゃないですかって言われましたから、今でもちょっと音程がおかしいんじゃないですか。
イントネーションがおかしいんじゃないですかね?
塩田さん、一生懸命、そうやってアナウンスの正しいものを、アクセントは何かって、ずっと研究されてこられて、一体誰が正しいアクセントを決めていくのかという問いに直面してるかと思うんですけど、今どう考えてらっしゃいますか?
ひと言で言いますと、正しいアクセントを誰が決めるのか、そうだ、それは自分で決めるんだってことになると思うんですよね。
ですから私たちが作っているこのアクセント辞典というのは、これを守れ、ここに載っていないものは、すべてばつだということではなくて、これをヒントに、これをきっかけにして、自分がどういうことばを使うのか、ある場面ではどういうことばを使うのかということを考えるヒントにしていただけたらと思ってます。
安心したことばがありましたよ、今、ほっとしましたね。
そうですね。
私、これね、守れって話かと思ったら、そうではなくて、なるほど。
だとすると、私ね、どっちかっていうと基準作ってくれたほうがうれしいですね。
笑いって、基準があればあるほど、2015/10/08(木) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代▽“正しい”アクセント誰が決める?日本語発音辞典 大改訂へ[字]

18年ぶりに大改訂される「日本語発音アクセント辞典」。戦中戦後の日本語の「基準」となってきた共通語の変化の背景に何があるのか?言葉の達人・欽ちゃんと読み解く。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】萩本欽一,NHK放送文化研究所主任研究員…塩田雄大,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】萩本欽一,NHK放送文化研究所主任研究員…塩田雄大,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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