今回は,この記事を書くかすごく悩みました.でも,記事を書くことによってこのことへの理解が進めばと思い,書かせていただくことにしました.
CASを聞いてくださった方の中にはもううすうすわかっている方もいるかもしれませんが,僕は「吃音」です.(といってもCASではあまり吃音の症状が出ていませんが)
吃音っていうのは,言葉を発するときにつっかえてしまうことです.
例えば,「良かった」というときにうまく言えず「よ,よ,良かった」となってしまうのです.
あなたのまわりにもいるかもしれませんね.
吃音を持っている人が描かれている作品は割と多いです.村上春樹さんの「ノルウェイの森」の序盤にも出ていますし,三島由紀夫さんの「金閣寺」や自らが吃音を持っている重松清さんの「きよしこ」や「青い鳥」,さらには「英国王のスピーチ」という映画にも登場します.
僕に初めて吃音の症状が出たのは小学校高学年の国語の本読みでした.どうしても「や行」の言葉が言えないのです.当時は吃音なんていうものがあることも知らず,自分だけがこんなことになってしまったのだと思いただただ絶望しました.ちなみにひとそれぞれ「○行が言いにくい」とか,「この前は○行が言いにくかったけど今日は○行が言いにくいな」なんてこともあります.
学校では当然みんなの前で発表することも多いです.僕はその度に恐怖じみた緊張を味わっていました.「つまってしまったらどうしよう」とかそういうことを気にし始めたら止まりません.そしてその緊張が吃音を加速させます.
時々吃音を馬鹿にする人もいてそのたびに僕は凄く傷つきました.
みんなで談笑しているときにも,言いたいことが言えずにもどかしい思いをしたことも多かったです.そして飲食店で注文するときに困るときもありました.
つまりそうな言葉を,なんとかして言いやすい言葉に言い換えられないかと頑張るのは吃音をもている方に共通することだと思います.
高校の時に進路を決めた時も,吃音は少なからず影響しました.医学部に興味がなかったわけではなかったですが,「吃音の僕に医者は無理だ」と思い医学部はやめ,結局工学系,理学系の学科に進む理科Ⅰ類を受験しました.研究者か技術者になればしゃべることも少ないと高校生の僕は思っていたのです.実際はそんなことないのですけどね.
僕にとって幸いだったのは,吃音がそれ程重度ではなかったことと,僕が吃音でも仲良くしてくれる友達が多いことです.そして何故か面接とか大事な場面では吃音が出たことがないのも僕にとっては幸運でした.中には,吃音であることによって人とかかわれなくなってしまう人のことも聞きます.自殺を考えてしまうほど悩む人もいます.
そして,カウンセラーさんと一緒にトレーニングしたことで吃音は大分改善されました.今では調子がいい時にはほとんど吃音が出ません.体調が悪いときとかに軽く出る程度です.
先ほども言いましたが,吃音は時として引きこもりの原因にもなりうるほど,人生に大きく影響を与えうるのです.しかし,それほど理解が進んでいないと感じる時もあります.
吃音への理解がもっと進めば.吃音に対してもっと寛容な世の中であれば.そう思います.