相棒season13 2015.10.10


(熊のうなり声)
(銃声)
(熊が倒れる音)
(市役所職員)これで被害者も浮かばれる事でしょう。

(御堂黎子)かわいそうな気もする。
だって人を殺したくて殺したわけじゃないでしょ?
(鮎川珠光)人を殺せば罰を受けるのさ。
裁判もなしにいきなり射殺。
ハハハハ…確かに熊にしてみれば理不尽この上ない仕打ちに思えるかもしれんがね。
ハハハ…。
夕食まで書斎でひと眠りするよ。
疲れた。
君は優しすぎる。
おはようございます。
(小松真琴・大木長十郎)うっす。
(甲斐享)おはようございます。
おはようございます。
…いないか。

(杉下右京)おはようございます。
おはようございます。
行かないんですか?君がこれを?ええ。
そこのクズかごに落っこちていたので。
ええ。
すなわち僕が捨てたものですねぇ。
となれば答えは聞くまでもないでしょう。
恩師の古希のパーティーなんですよね?はい?差出人の名前が珍しかったのでちょっと検索してみたんですよ。
鮎川珠光東大法学部名誉教授。
ん…?旧華族の出なんですねこの人。
ひょっとしたら杉下さんの恩師なんじゃないかと思いまして。
ご推察のとおりですが…。
あっ!あまりお行儀がよくありませんねぇ。
人のクズかごを漁って勝手にあれこれ調べるのは感心しません。
前はこんなに好奇心旺盛じゃなかったんですけどね。
一緒にいたらうつったかな…?どうして行かないんですか?他に予定があるんですか?いいえ特には。
あっもしかしたら顔を合わせられない事情があるんですか?ただ単にこういう類いのものに興味がないだけです。
ふーん…でも古希でしょ?ええ69歳ですねぇ。
数えで70。
ほらもういいお年じゃないですか。
これがお目にかかる最後の機会かもしれませんよ。
日本人の男性の平均寿命はついに80を超えました。
つまり今君の言ったお目にかかる最後の機会というのは説得力に欠けますねぇ。
まあ無理強いはしませんけど。
当然です。
はい。
そもそも君にとやかく言われる覚えはありませんよ。
わかりました。
杉下です。
どうぞ。

(黎子)杉下さんがお見えになりました。
よお。
ああ…。
杉下くんよく来てくれたね。
お久しぶりです先生。
この度はおめでとうございます。
ああこれはこれは…。
ありがとう。
杉下右京くんだ。
今は警視庁勤務だったね?ええ。
社くんも警視庁勤務だったね。
2人は面識があるのかな?
(社美彌子)ええ多少ですが。
ええ多少。
(鮎川)そう。
それでは他の連中も紹介しておこう。
江田哲男くんだ。
彼は現在東大法学部教授だ。
(江田哲男)江田です。
はじめまして。
はじめまして。
吾妻義之くん。
彼は今東大法学部准教授。
(吾妻義之)吾妻です。
まだ新米の准教授ですが。
杉下です。
小松崎啓三くん。
彼は我が国を牛耳っている財務省の幹部だ。
(小松崎啓三)小松崎です。
杉下ですよろしくどうぞ。
そして溝口誠くん。
(鮎川)君は元東京高検にいたんだよね?
(溝口誠)今は弁護士です。
いわゆるヤメ検弁護士ってやつだな。
しかも悪徳弁護士ですが…。
(一同の笑い声)溝口です。
どうぞお手やわらかに。
こちらこそ。
以上だ。
さあ君もかけたまえ。
はい。
あなたも鮎川研究室の出身でしたか。
先生が定年退官なさる数年前ですから私は最後のほうの教え子です。
僕は先生が教授になられて間もない頃の教え子です。
そこ私語はやめなさい。
すいません。
すみません。
(一同の笑い声)最初にひとつ聞いてもらいたい。
今日こうして集まってくれた諸君は数多いる私の教え子の中で最も優秀な者たちだ。
君たちは確かに優秀だった。
そして恐らく今も優秀だろう。
(笛吹悦子)お父さんも東大法学部卒?ん?ああ。
そして東大法学部至上主義者。
ん?いいか?享。
東大ならばどこでもいいっていうわけじゃない。
(甲斐峯秋)法学部だ。
法学部こそが真のエリートなんだぞ。
耳にタコが出来るほど聞かされたよ。
アハハ…。
で兄貴は見事洗脳された。
ふーん。
でもさそもそも享はその気になれば東大に入れたの?ん?うーん…。
てかなんでその話になったんだっけ?ああ杉下さんの話からだよ。
今日恩師のパーティー行ってるって。
東大法学部名誉教授の。
ああ…。
何なさってるんですか?ああ…ここ先生の書斎のようですよ。
みたいですね。
だから?はい?無断でしょ?一応道に迷ったという事でどうでしょう?はあ?道に迷って迷い込んだ。
広いお屋敷ですからねぇ。
そんな口実でごまかせませんかねぇ。
本気ですか?まあその口実これまでにも幾度か試してみましたがまるで相手にされませんでしたがね。
行きましょう。
叱られますよ…。
お薬が入っているようですよ。
アスピリン総合感冒薬胃腸薬にステロイド軟膏。
おや?なぜ鍵がかかっているのでしょう。
鍵までかけて保管するような代物ではないと…。
これじゃありません?KCN。
なるほど。
青酸カリ。
保管には施錠が義務づけられているはずです。
ええ。
こんなものもある。
テトロドトキシンですよこれ。
確かに。
こちらも猛毒です。
ニコチンも。
ニコチンも猛毒です。
毒性は青酸カリの倍以上に匹敵します。
しかし毒物にお詳しいですねあなた。
意外です。
昔別れた男を殺そうと思って色々と勉強したんです。
女に似合うのはやっぱり毒殺でしょ?ほほう…。
冗談ですよ今の。
本気にしないでくださいね。
それにしてもどうしてこんなに毒物が…。
ああ…。
しかもこちらには毒物に関する書籍が並んでいますよ。
こちらでしたか。
(美彌子)すいません。
広いお屋敷なもので迷い込みました。
そうですか。
そのように先生におっしゃってみてください。
うわっ!これすっげえ!
(笑い声)どうした?なんか今日しんどそうじゃん。
うん…。
うん?ちょっと遅れてるんだよね…。
えっ?ああ…えっ!?
(一同)おめでとうございます。
(鮎川)ありがとう。
これはね私が撃った猪の肉だ。
遠慮なく召し上がれ。
イノシシですか?これ。
なかなかうまいよ。
まあ豚の親戚ですからね。
(一同の笑い声)しかし天下の鮎川教授が狩りをなさっているとは驚きでした。
まさか自給自足の生活を?
(鮎川)ハハハ…そこまでの覚悟はないよ。
この猪は害獣駆除で仕留めたんだ。
行政に依頼されて猟友会が出動するんだ。
まあ畑を荒らした不届き者を成敗したってわけだな。
(鮎川の笑い声)
(吾妻)美味しいですとっても。
そうだろう?君は若いんだからどんどん食べなさい。
(吾妻)はい。
食べながらで構わないが我が優秀なる教え子諸君にひとつ質問があるんだが…。
なんでしょう?なぜ人を殺してはいけないんだろうか?教えてくれないかな?どうしたんですか?そんな子供じみた質問…。
子供じみているかな?確かにある意味そうかもしれん。
…が非常に純粋で素朴な疑問だと思うがね。
やめません?そんな消化が悪くなるような話題は。
(一同の笑い声)
(鮎川)ハハハ…。
ならば食後ゆっくりとやる事にしよう。
答えが出るまで君たちを帰さんよ。
(溝口)ええ…?
(一同の笑い声)どうだった?えっ?どうだった?陽性だった。
陽性?陽性って事は…。
できちゃった。
うん…。
ああ…。
おお〜っ!お前…!ちょっと享…!悦子!杉下くんは確か一敗だったからその気になれば大学に残れたのにねぇ。
僕ごときが生涯研究を続ける資格などないように思いましたから。
嘘を言っちゃいかんね。
助手になって大学に残るように強くすすめた時君はこう言ったよ。
「こんな退屈きわまりないところで人生の大半を過ごすのはごめんだ」と。
そんな生意気な事を言いましたか。
だとしたら若気の至りというやつですねぇ。
(小松崎)しかし一敗とは素晴らしい。
僕なんか十敗近くしてましたからもとより大学に残れるはずもなくこうして財務省がやっとでしたよ。
(小松崎)吾妻さんは成績どのぐらいだったの?よかったんでしょう?僕も一敗です。
(吾妻)民事訴訟法だけがどうしても「優」を取れずに「良」でした。
(あくび)失礼。
(溝口)なんだかここにいると劣等感を感じてしまうな。
ちなみに社さん。
あなた成績はどうだったんですか?
(鮎川)彼女は確か三敗だったはずだ。
違うかね?そうです。
なのに警察庁へ?一敗でも警察庁へ行く方もいらっしゃいますよ。
(溝口)まあ確かにそうだ。
しかし杉下さんも社さんも変わってるな。
それだけの好成績を修めながら大学にも残らず法曹界へも行かず警察庁なんて…。
ねえ江田さん。
あれ?寝ちゃってる…。
行儀悪いな…。
先生…これ…。
これ…。
ああ…。
杉下さん。
杉下さん!ここは…?先生の娯楽室ですかね?どうやら地下室のようですねぇ。
電波がありません。
バッハですねぇ。
先生がお聴きになっていたのでしょうか?
(大音量の音楽)この音量で聴いていたとなると防音も完璧のようですねぇ。
鍵がかかってますねぇ。
(小松崎)どういう事なんだ?これは。
先生は何考えてるんだ?昔から茶目っ気のある人でしたからね。
茶目っ気?おふざけでこんな真似をしたと?だっておふざけ以外何があります?杉下さん。
(美彌子)こんなものが…。
「優秀なる我が教え子諸君へ」「設問なぜ人を殺してはいけないのか?」
(美彌子)「経験と知識を総動員し考察して述べよ」マジかよ…。
どうやら先生は本気だったようですねぇ。
正気とは思えないな。
まあしかしこうなった以上しばらく先生のお座興に付き合うしかないでしょう。
やれやれこの歳になってまで試験を受けるとは…。
とにかく朝になれば解放されるでしょう。
それまでの辛抱ですよ。
私たちはどうします?デザートに混ぜ物をして眠らせた事は傷害罪。
こうして地下室に閉じ込めている事は逮捕監禁。
れっきとした犯罪。
ええそのとおりですねぇ。
今まさに犯罪が行われているのですからその早期解決と犯人の検挙を優先しなくていいですか?それとも犯罪行為に目をつむって試験を受けますか?警察官の立場としては犯罪の早期解決犯人の検挙に当たるべきでしょうねぇ。
まあそう杓子定規に考えなくても…。
しかも相手は恩師ですよ。
恩師である事が犯罪の立件を妨げる要素と考えますか?女性はこれだから…。
女は融通が利かないとおっしゃっているんですか?あ…ごめんなさい。
差別的発言でしたね。
撤回します。
社さんひょっとして試験を受けたくないからそんな事言ってるんじゃないの?小松崎さんよしなさいよ!今謝罪したばかりなんだから。
フッ…わかります?あれれ図星ですか?
(一同の笑い声)それじゃああなた方は警察官としての職務を全うしてください。
脱出経路でも発見してもらえると助かります。
試験のほうは我々が担当しますから。
そうですか。
それではお言葉に甘えて。
実は僕も試験は大の苦手なんですよ。
(一同の笑い声)改めて入り口の扉を調べてみましょうか。
あなたも来てください。
ええ。
あの書斎を見たらこれが単なるお座興とは思えなかったもので。
少なくとものんびり試験を受けている場合ではない気がします。
僕も同感です。
なかなか見事な誘導でしたよ。
どうも。
(江田)今何時?午前6時56分。
まもなく7時です。
(小松崎)もう朝か…。
お手上げ?部屋中くまなく調べましたが出入り口は上の扉だけのようですねぇ。
残念ながらびくともしません。
ならば最悪はみんなで力を合わせてぶち破りますか?ぶち破らなくともいずれ答案の回収に扉が開くでしょうからそれまで待ちますよ。
(江田)先生が回収に見えるかな?
(吾妻)女性かもしれませんね黎子さんっていう。
(小松崎)彼女先生とどういう関係でしょうね?お嬢さんではないとおっしゃってましたよね。
(小松崎)かといって結婚もしてないと。
(溝口)内縁関係に決まってるでしょう。
彼女甲斐甲斐しく先生の世話焼いてたじゃないですか。

(解錠音)あっ…。
おはようございます。
この時を首を長くして待っていました。
おはようございます。
先生色々とお聞きしたい事…。
まだ出てきていいとは言っていない。
戻りなさい。
みんなもだ。
早く戻るんだ。
先生また子供じみた真似を…。
それ本物の銃でしょ?もちろんだよ。
(銃声)このように実弾もこめてある。
さあ下りなさい。
社くんみんなの答案を回収してもう一度上がってきてくれ。

(鍵をかける音)なんなの!?一体!
(吾妻)今の銃声ですよね?先生完全に…。
上がったら扉を開けたままにしておいてください。
出来るだけ長く。
わかりました。

(ノック)
(解錠音)お待たせしました。

(鮎川)彼女に渡しなさい。
はい。
あっ…。
すいません。
ええ…。
折り入って話したい事があるんでちょっと時間作ってもらえませんか?
(甲斐)なんだ?こんな朝早くから。
どんな話だ?愉快な話ならいいんだがね。
私の目が確かなら白紙が2枚あったが…。
私と杉下さんの2名は試験をボイコットしました。
どういう事かね?
(携帯電話)
(呼び出し音)
(携帯電話)
(米沢守)あ〜もう!もしもし。
我ながら今人のよさにあきれ返ってるところです。
おはようございます。
今日はどういうご用件でしょうか?私今立て込んでおりまして出来れば…。
黙って聞いてください。
僕は今監禁されています。
か…かんきん?かんきんというのはつまり…。
捕らわれの身という事です。
つまりその監禁ですか。
朝っぱらからご冗談を…。
お願いですから黙って。
ああ…失敬。
どうぞ。
詳細は省きますがとにかく今…。
ですから意図のわからない課題には…。
もう言い訳は結構だ。
戻りなさい。
さあ戻るんだ。
鮎川教授の屋敷の地下室に?もしもし?杉下さん?杉下警部?杉下警部?もしもし?すいません。
これが限界でした。
いえ。
最小限の事は外に伝える事が出来ました。
親父との事はちゃんとケリつけるから安心して。
ちゃんと結婚を祝福してもらえるようにするからさ。
うん。
でもできちゃった結婚だなんてちょっと叱られちゃいそう。
叱られたら素直に詫びるよ。
状況が変わったんだからさ。
だって俺…パパになるんだぞ。
そうね。
(携帯電話)ん?米沢さんからだ。
ん?もしもし。
もしもし米沢です。
「どうかしました?」監禁ってどういう事ですか!?杉下警部から電話がありまして…。
でも途中で切れてしまったんで詳しい事はわかりませんがとにかく鮎川邸の地下室に監禁されているという事と猟銃で脅されているという事だけで…。
それから杉下警部の携帯がどこからかけられたのか今基地局を探しているところですよ。
猟銃で脅されて監禁されているという事はのこのこ出向いていくわけにはいきませんよね。
対応を誤れば最悪の事態を引き起こしかねませんからね。
(角田六郎)おはよう。
早え…。
なんだ米沢か。
休み?はい。
釣り?…はい。
(中園照生)監禁だと?杉下がか。
はい。
それは困ったなぁ。
猟銃で脅されてるみたいなんで特殊班の出動を要請してもらえませんか?証拠を持ってこい。
はい?監禁事件が起きてるという確たる証拠だ。
証拠もなしに特殊班が出せると思ってるのか!?馬鹿者が!広報課の社がですか?
(内村完爾)ああ。
何かと話題の女広報課長だよ。
早朝会議を無断欠席したらしいな。
女なんか出世させるもんじゃないな。
特に警察においてはだ。
ごもっとも。
社の部下が小耳に挟んだところによると東大法学部時代の恩師…え〜なんて言ったっけ…。
あっ鮎川名誉教授だよ。
ゆうべはそこのホームパーティーにお呼ばれされていたらしいが…。
失礼!今なんとおっしゃいました?
(伊丹憲一)監禁事件は特殊班の担当だからな。
(芹沢慶二)確認してきたらいいじゃない。
場所わかってんでしょ?1人で?フフッ怖いの?いやそうじゃなくて…。
猟銃で脅されて監禁されてるんですよ。
万が一の場合1人じゃ対処出来ないじゃないですか。
なぜそれを早く言わないんだ!まさか杉下と一緒とは…。
(内村)とっとと確認しろ!監禁事件が確かなら直ちに対処するんだ。
はっ!俺が社の事をやっかんで事件発生を知りながら対処する事を怠ったと思われたらどうするんだ。
馬鹿者が!はっ!まあ他を当たってくださいよお坊ちゃま。
すまん。
健闘を祈る。
(携帯電話)ああ中園参事官だ…。
はい伊丹です。
おはようございます。
(中園)「大至急東大名誉教授鮎川珠光の自宅に向かってくれ」鮎川?カイト…。
はい。
撃った事あるのか?えっ?訓練以外で。
ありませんよ。
俺もだ。
(医師)おめでたです。
あっそうですか。
しかしそれとは別に気になるところが…。
えっ?深刻な状況です。
し…深刻って?ありがとう。
本当に撃つとは思わなかったわ。
ああでもしなきゃ彼ら本気にならん。
いくら教え子だからって度が過ぎている。
皆さん笑って許してくれるとでも思っているの?白状しようか。
えっ?実は人を殺したくてたまらないんだ。
狩りで獲物を仕留めた時…。
(銃声)
(鮎川の声)これが人間だったらどうだろう?同じように撃ち殺してしまいたい…。
そんな衝動に駆られるんだ。
私の中に眠っていた悪魔が目を覚ましたとしか思えん。
正気!?それでも私にはまだ理性が残っているようだ。
その理性がなんとか悪魔を抑えつけている。
私はね彼らにすがっているんだよ。
彼らならきっと私を納得させてくれると。
人を殺してはいけない明確な理由を教えてくれると。
それを教わればこのままずっと悪魔を抑えつけておく事が出来る気がする。
だから邪魔しないでくれ。
わかったわ。
そう…君ならわかってくれると思ったよ。
(伊丹)この辺りだな。
(芹沢)ですね。
ありましたね。
(伊丹)ああ。

(芹沢)でけえ家だな。
(伊丹)おい。

(物音)やはりね…。
君ならそうすると思ったよ。
どうでした?わかんねえな。
人の気配がありませんね。
どうします?考えてても始まりませんね。
お前…!
(チャイム)
(扉が開く音)反応なしか…。
どこか侵入出来るところがないか探しましょう。
えっ?
(伊丹)侵入するのかよ。
入んなきゃ確認出来ないでしょうが。
おいちょっと待て…待て!それぞれ力のこもった解答だった。
…が及第点には程遠い。
それもこれも君たちに真剣味が足りないからだと思う。
そこでだ1人犠牲になってもらいたいと思う。
犠牲って…?誰か1人を選びなさい。
その人物を私が撃ち殺す。
嘘だろ!?いいえこの人は本気です。
彼女を選んでくれても構わんよ。
おっ…。
どうですか?さあ早く選びなさい。
もちろん犠牲的精神を発揮して立候補してくれてもいいが…。
誰か1人を決めたところで君たちには緊急避難が認められる可能性がある。
(笑い声)まあこんな事は釈迦に説法だがね。
さあ誰にする?
(伊丹)クソッ地下室どこだよ?おいそこは?暖炉です。
さあ早く決めなさい。
あっ…。
猟銃!本物ですよね?本物だろう。
よろしい。
決められなければ私が決めよう。
ちょっと…。
待って頂けますか。
待ってください。
立候補かね?しかも2人。
とりあえず1人でいいんだがね。
ハハハハ…困ったねぇ。
どうしようか?とりあえず2人で話し合うか?早まらないで頂けませんか。
僕は先生に撃ち殺されるために手を挙げたわけではありません。
追試をお願い出来ないかと思いまして。
私もそうです。
追試によって学生を救済する。
その手法を先生も大学で長年とっていらしたと思うのですが…。
駄目ですか?よろしい。
君たちの答案にも興味がある。
あと3時間時間をあげよう。
社くん用紙を取りに来なさい。

(鮎川)さあ。
すいません。
(鮎川)戻ろうか。
(伊丹)おい地下室なんかねえぞ。
ええ。
人を殺したい衝動…。
抑えられなくなってると言ってました。
眠っていた悪魔が目を覚ましたと。
悪魔?ふざけて人を驚かすのが好きな人です。
でも今回は戯れで言ってるとも思えませんでした。
だから私ここから皆さんを逃がさなきゃと思って鍵を持ってこっそり開けにきたんですが…。
(扉が開く音)どうぞ。
ここは先生のお宅じゃないですよね?
(黎子の声)ええ。
皆さんが眠ってる間に移しました。
窓から見える景色が青梅のお宅とはどこか雰囲気が違ったものでひょっとしたらそうかと。
(溝口)じゃあここどこよ?救援は?せっかく杉下さんが外と連絡とったのに…。
どうやら簡単にやって来そうにはありませんね。
何しろ見当違いの場所を伝えてしまったようですから。
まさか…この屋敷じゃなくて地下室は別の場所?はあ?どこにいるんですか?杉下さん。

(小松崎)答案書くんですか?応援が到着するまでの引き延ばしのつもりで追試を申し出たのですがどうやら制限時間までにここを発見出来るかどうかわかりませんからねぇ。
その時に答案がありませんでは申し開きが出来ません。
先生は覚醒した悪魔を抑えつけるために我々にこんな事をさせてるんですよね?ええそう言ってました。
つまり今度お二人が及第点を取れればこの馬鹿げた状態を終わりにする事が出来るという事かな?先生の言葉どおりならばそういう事になりますが…。
そりゃ無理だ。
なぜ人を殺してはいけないのかそんなものに明確な解答などありませんから。
ですから先生は明確な解答などありえない事を今改めて確かめているのかもしれません。
…というと?恐らく悪魔を抑えつけるのではなく逆に解き放つためにこんな事をしているのではないかと。
これは人を殺してはいけない理由などないと確信するための試験だとおっしゃるんですか?ええ。
それで心置きなく…人を殺せます。
(鮎川珠光)なぜ人を殺してはいけないんだろうか?
(銃声)
(甲斐享)猟銃で脅されて監禁されてるんですよ。
どこにいるんですか?杉下さん。
(社美彌子)人を殺してはいけない理由などないと確信するための試験だとおっしゃるんですか?
(杉下右京)ええ。
それで心置きなく…人を殺せます。

(芹沢慶二)先輩。
(伊丹憲一)あ?
(伊丹)ああ女房の部屋か。
(芹沢)でしょうね。
奥さんじゃないかも。
(芹沢)え?名字が違います。
(芹沢)「御堂黎子」?
(サイレン)
(米沢守)取り急ぎ杉下警部の携帯通話がどの基地局を経由したか通話記録から調べてみたところ西多摩の基地局でした。
西多摩?
(米沢)ええ。
守備範囲はこの辺りです。
(医師)深刻な状況です。
(笛吹悦子)深刻って…?紹介状を書きます。
早急に精密検査を受けてください。
はい…。
(携帯電話)もしもし。
(甲斐峯秋)こんな事前調査じみた事がバカげてるのはわかってる。
しかしね今回の電話はいつもと様子が違ってたんだ。
妊娠しました。
妊娠と言った?はい。
ですから享さんその事をお父様に報告して2人の結婚を…。
結婚…。
あっ勝手にしろではなくて結婚式にもちゃんと出席して頂けるようなそんな親子関係に戻ってもらいたくて…。
あ…そういう事か。
はい。
とにかく享に会ってみるよ。
はい。
それでは私は…。
わざわざすまなかったね。
いえ。
では失礼します。
(甲斐)どうした!?
(悦子)あっ…。
お客様!?
(甲斐)君救急車頼む。
はいただ今!立ち入った質問で恐縮ですがあなたは先生とどういうご関係ですか?
(御堂黎子)私は家政婦です。
今では娘のように扱ってもらってますが。
家政婦。
そうでしたか。
それは意外でした。
はい。
はい。
(米沢)この範囲に該当する住所はありませんね。
ナビは外れか。
確認しました。
鮎川教授の車に間違いありません。
別宅とかありませんかね?この範囲内で。
別宅ですか?ええ。
(携帯電話)ちょっと失礼します。
もしもし。
(甲斐)「ああ私だ。
今実は病院にいるんだ」「悦子さんが倒れてね」えっ!?「いやいや心配はいらない。
貧血で倒れたようだ」なんで親父が悦子と一緒にいるの?「いや…。
もし心配だったらお前こっちへ来たらどうだ?」「御茶ノ水の三楽病院だ」ちょ…親父…。
あなたいつから先生のところへ?3年前の暮れからです。
2012年の暮れですねぇ。
どういう経緯で?
(吾妻義之)おしゃべりしていて平気ですか?残りあと1時間ですよ。
ご心配なく。
お聞かせ願えますか?きっかけはネットです。
(黎子)仕事が終わって帰宅してから気晴らしによくネットサーフィンをしていて。
facegoodの先生のページが目に留まったんです。
ほんの軽い気持ちで投稿記事にコメントしました。
そしたらそのコメントにすぐ先生から返事が来て。
そうやって何度かやり取りするうちに携帯で直接話すようになって食事に行くようになって。
しかし恋愛には発展しなかった。
はい。
ところがあなたはどちらでもない家政婦として先生と暮らすようになった。
いささか特殊なケースですねぇ。
あっ家政婦というのは先生の要望ですか?それともあなたが希望して?先生から身の回りの事を世話をしてくれないかと言われたんです。
それを了承した。
お仕事をお持ちだったのに?お給料を頂けるという事でしたので。
ああ。
なるほど。
(月本幸子)電話で病院に問い合わせたらしいんですけどでも個人情報だから教えられないって突っぱねられたらしくてもうカイトさんとても取り乱してて。
すみません。
幸子さんにまでご心配かけて。
いいえ。
こうして元気な顔が見られて私も安心しました。
なんか心配事?えっ?あ…なんでもありません。
えっ!?これ早く診て頂かないと。
でも怖いんです。
せっかく享とお父さんの和解のきっかけになると思って喜んでたのになんかそれが全て台無しになってしまいそうで…。
あ…それも大事だけどまずは自分の体でしょう。
悦子さん。
はい…。
お待たせしました。
該当する地区に鮎川珠光名義での登記物件はありません。
また外れか…。
うまくいかないもんですな。
すいませんもう一度調べてもらえませんか?御堂黎子で。
タイムアップだ。
社くん答案を持ってこっちに来なさい。

(鮎川)そこでいい。
ここに置いて戻りなさい。
杉下くん素晴らしい答案だった。
「なぜ」という問いの意義殺してはいけない「人」とは何か。
「殺す」とはどういう事か「いけない」とはどういう事か。
そして法的正義と法的責任まで考察し短時間でよくまとめあげた。
力作だと思う。
恐れ入ります。
社くん君のも負けず劣らず素晴らしい答案だった。
さすが私の見込んだ教え子だけの事はある。
ならば及第点を頂けますか?フフフッ…残念だが及第点はあげられない。
ちょっとすごい屋敷ですね。
すごいなこれ。
大きいよこれ。
元華族。
ああ…。
おい鍵穴がねえよ。
え?本当だ。
本当だ。
(扉を叩く音)あっちょっと…。
あっちに階段がある階段。
あーあーあー!
(芹沢)こりゃ駄目か?どうします?中確認しねえで帰るわけにはいかねえだろう。
じゃあどこか入れそうなところ探しますか?それには及びません。
ここは私が…。
あっ!お前…。
(芹沢)はあ?
(開錠音)
(開錠音)ちょっとすいませんね。

(芹沢)うわっ!だいぶ使われてないみたいですね。
(米沢)あっあの奥の部屋。
え?
(米沢)窓開いてますね。
本当だ。
(伊丹)行くぞ。
はい。

(溝口誠)やっぱり杉下さんの言うとおりか。
先生はどうしても人が殺したくてしょうがないんでしょう?どんなに優秀な頭脳が揃っても人を殺してはいけない理由なんて提示出来ない。
その事を免罪符に殺人を実行しようとしてるんだ!フフフッ…。
(吾妻)どうかしてるよ…。
(江田哲男)確かに法律にも「人を殺すなかれ」という条文はありません。
しかし殺せば相応の罰を与えると規定されておりそれをもって一種の抑止としているけれど…。
人を殺したいという純粋な欲望を与えられる罰だけで止める事など出来んよ。
(小松崎啓三)大多数の人間はそれによって人を殺さないでいられます!大多数はね。
だが覚悟した者己の欲望に忠実な者はもはや罰など恐れない。
不毛な議論はこれぐらいにしてさあ私の獲物を選んでくれたまえ。
全員立候補ときたか。
くだらん時間稼ぎだな。
誰のアイデアかね?よろしい。
ならば私が決めよう。
誰にしようかな?伊丹さん。
ここで間違いないみたいですね。
君だ。
ありました。
おい所轄に応援要請だ。
(芹沢)はい。
行きますか。
鍵が開いてます。
やめなさい!
(銃声)一体何があったんですか?
(伊丹)つまり鮎川教授は返り討ちにあった?
(小松崎)殺そうとしたのは先生で彼女は身を守ったんですよ。
待ってください。
なぜ御堂黎子さんなのですか?ええ。
そもそも彼女はこのくだらないゲームの参加者ではありません。
彼女は私を裏切った。
そういう理由でどうかね?2年も一緒に暮らした女性を撃ち殺すんですか?
(鮎川)ついにこの日が来たね。
さあ覚悟したまえ。
感心だね。
私が渡した銃をちゃんと身につけていたんだ。
君には私が撃てん。
君は優しすぎるからね。
さようなら黎子。
やめなさい!
(銃声)
(溝口)殺害については正当防衛が妥当だと思う。
これは鮎川教授から手渡されたものなんですね?そうです。
(鮎川)護身用だ。
いりません。
こんなの。
もし襲われたら君はこれで身を守るんだ。
襲われるって何に襲われるんですかって尋ねたら先生こう言いました。
私は動物をたくさん撃ち殺している。
いつ動物たちが復讐にやって来るかわからないって。
先生はなぜ彼女を家政婦に誘ったのでしょうねぇ。
家政婦が必要ならば普通は紹介所に頼みます。
どうしても一緒に暮らしたかった。
でも相手は自分に恋愛感情はなくて一緒に暮らしてもらえそうにない。
だから苦肉の策で家政婦という口実で誘ってみたとか。
なるほど。
つまり先生は彼女に恋愛感情を抱いていた。
しかし先生は…俗な言い方になりますが一緒に暮らしても彼女に手を出していないようですよ。
恋愛から離れましょうか。
ええ。
いずれにしても彼女がすんなり家政婦という申し出を受け入れて一緒に暮らし始めた事がずっと腑に落ちないんですよ。
あっここでしたか。
カイトくん。
はい。
時間ありますか?えっ?あっ。
青酸カリテトロドトキシン。
鮎川教授はずっと御堂黎子さん殺害を計画していたとか?その可能性はありますがしかし一方で護身用として拳銃を手渡していますからねぇ。
ちょっとこの写真を見てもらえますか。
この部屋ですね。
ええ。
君同じように座ってくれますか。
えっ?何か気づきませんか?あっ保管庫がない。
ええこの写真にはあの保管庫が写っていません。
日付は2013年1月。
少なくともその時まではこの部屋に毒物がなかった事になります。
御堂黎子さんが家政婦としてこの屋敷に来たのが2012年の暮れでしたねぇ。
つまり彼女がここへやって来てのちに毒物が揃えられた事になります。
つまり?さあ…?いずれにしても気になりますねぇ。
(携帯電話)失礼。
はい。
(携帯電話)杉下です。
(角田六郎)御堂黎子の件超特急で調べてやったぞ。
あんたの興味を引きそうな事実があった。
御堂黎子は御堂家の実子じゃなく養女だ。
養女?
(看護師)笛吹さんお待たせしました。
(悦子)はい。
笛吹さん。
はい。
直ちに入院してもらいます。
え…?ご主人に連絡して入院中の着替えとか持ってきてもらってください。
…どういう事ですか?こちらをご覧ください。
ここに異常が見られます。
(医師)詳しい検査をしたいので直ちに入院してください。
(御堂純一)どうぞ。
(純一)さっきニュースで見たばかりなんです。
とにかく驚きました。
まさか姉が人を…。
早速ですが…。
姉の出自についてですね。
確かに姉は…黎子はうちの養女です。
どういう経緯でお宅に引き取られたのかご存じありませんか?私の知ってる限りでは姉の実の母親は姉を産んですぐに亡くなったとか。
産んですぐに?命がけの出産だったようです。
黎子さんの本当のお母様のお名前はわかりますか?御堂好子と言います。
だけど父親はどうしたんでしょうか?当然黎子さんには父親がいたはずですよね。
そんな状況ならば普通父親が黎子さんを引き取りますよね?叔母は未婚の母だったそうです。
え…。
ただその辺りの事は私も詳しくは知りませんが。
ちなみに御堂好子さんのお顔がわかるような写真などありませんかね?ああ。
父の遺品のアルバムにあったと思います。
ありがとうございます。
助かりました。
あの…享さんには知らせました?まだなんですね?でも知らせないわけには…。
赤ちゃん…。
無理かもしれないって…。
えっ!?悦子!
(悦子)享…。
どうしたんだよ?入院なんて…。
急性骨髄性白血病だって。
え…白血病…?うん。
病状は…深刻なのか?まだわからない。
ねえ享。
うん。
お父さんとちゃんと仲直りしてよ。
えっ?もし赤ちゃんが駄目になったとしても…。
お前何言ってんだよ。
そっちまで駄目にしないで。
わかったから。
すいませんでした。
大丈夫なんですか?ええ。
あっ全然大丈夫です。
これは?君が病院へ向かったあと例のアルバムを届けてくださいましてね。
ああ。
じゃあこれが御堂好子さんですか。
ふーん。
確かに目元なんかは黎子さんにそっくりですね。
黎子さんが似てるんです。
確かに黎子さんがですね。
えっ?好子さんは東大生だったんですか?驚くのはまだ早い。
これがアルバムに挟まってたんです。
恋人ですか?
(美彌子)鮎川教授です。
えっ?その写真を見る限り御堂好子さんと先生は昔顔見知りであった事は確かです。
そしてその御堂好子さんの娘黎子さんが先生の家政婦に。
とても偶然の仕業とは思えませんねぇ。
2人は明日黎子さんに会ってきてもらえませんか。
確かめたい事があります。
わかりました。
僕はこの辺りの事情を知っている鮎川教授の同級生を探してみます。
探すってどうやって?幸い警察OBに東大法学部卒はゴロゴロいますからねぇ。
先生の同期を当たって同窓会名簿を入手出来ればなんとかなりますよ。

(美彌子)どうですか?眠れましたか?あまり…。
実はひとつ確かめたい事があります。
鮎川教授のお屋敷はあなたがお掃除なさっているんですか?ええ家政婦ですから。
書斎も?もちろんです。
それが何か?どうぞ。
どうも。

(双葉春榮)そう鮎川くんと御堂さんは恋仲だった。
その頃僕はまだ童貞だったもんだからね。
恋人のいる鮎川くんを随分うらやましく思ったもんだよハハハハッ…。
ところがね卒業間際鮎川くんは御堂さんを捨てたんだ。
捨てた?一方的に振ったんだよ。
僕はやっかみもあってね鮎川くんに抗議したからよく覚えてる。
どうしてあんないい彼女を捨てたんだ。
君は随分ひどい男だなって。
その時鮎川先生はなんとおっしゃってました?童貞の君に男女の仲はわからない。
僕はねぐうの音も出なかったよ。
だが後悔してた。
いつだったかな。
あっ2年前か。
同窓会で会った時しきりに悔やんでた。
若気の至りとはいえ私はひどい事をした。
「落花枝に返らず破鏡再び照らさず」だよ。
まさしく万死に値する。
私は有罪だ。
同窓会は2年前とおっしゃいましたねぇ。
2年前のいつ頃ですか?2年前の正月だ。
新年会を兼ねてたからね。
2年前の正月というと黎子さんが来て間もなくの頃ですね。
そしてその頃先生は万死に値すると思うほどの後悔を感じていた。
うん。
どうやら我々は大きな誤解をしていたようですねぇ。
えっ?検察が不起訴処分を決定しました。
銃刀法違反については起訴猶予です。
災難でしたね。
(ため息)お待ちしていました。
どうぞ。
(伊丹)何が起こるんでしょうかね?我々はじっくり見学させて頂きますよ。
実は今回の一件いくつか釈然としない点があるものですから御堂黎子さんあなたにその点を確かめたいと思いましてね。
なんでしょうか?ずばり鮎川教授はあなたの父親ですね?えっ?その事については疑いの余地はありません。
鮎川教授の遺体から採取した毛髪とあなたの髪の毛をDNA鑑定したところ間違いなく親子関係が立証されました。
私の髪の毛って…。
ええ…。
(美彌子)ごめんなさい。
あなたに面会している間彼がこっそり頂きました。
すいません。
それはさておきあなたは鮎川教授が自分の父親である事をご存じだったのですか?ご存じなかったとするとフェイスグッドで偶然会った事もない親子が出会ったという事になりますが果たしてそんな偶然ってあるものでしょうかねえ?ないとは限りませんよ。
なあ。
(芹沢)うん。
もちろん僕は偶然を否定するつもりは毛頭ありません。
今はただ御堂黎子さんが本当に偶然父親だと知らずに鮎川教授と知り合ったのかを尋ねているだけです。
どうですか?父親である事はわかってました。
つまり偶然ではなく意図的に接触した。
その後の状況を見ても自分が娘である事を名乗り出るためではありませんねえ。
一体どういう意図があったのでしょう?いいでしょう。
その質問はひとまず置いておく事として先生の側から見てみましょうか。
あなたはコメントに先生からすぐ反応があったとおっしゃいましたね。
恐らく先生は御堂という名字に反応したのではありませんかね?昔交際していた女性…すなわちあなたのお母様御堂好子さんと同じ名字ですからね。
初対面の時先生はどんな反応でした?驚いた様子でした。
なぜ先生は驚いたと?恐らくあなたの中に御堂好子さんの面影を見たのではありませんかね?拝見しました。
お母さんの写真。
目元なんか本当よく似てますねあなたとお母さん。
いずれにしろ先生の中ではある種の確信が芽生えたはずです。
名字が同じだけでなくその面影が一致するとなればそれはもう…。
でもあなたは娘であると名乗り出なかった。
ええ。
もしその時点で娘である事を名乗り出ていたとしたら先生から家政婦の申し出はありえませんからねえ。
つまり住み込みの家政婦というのはあなたを娘と確信しあなたとなんとか一緒に暮らしたいと思った先生の苦し紛れの申し出だったんですよ。
すっかり娘のように扱ってもらっているとおっしゃっていましたね。
先生からすれば最初からあなたは家政婦ではなく娘だったんですよ。
さてここで先ほど保留した質問に繋がります。
娘である事を告げぬまま家政婦の申し出を受け入れて先生と一緒に暮らし始めたそのわけは?なんらかの意図がない限りそんな真似はしないと思いますがね。
私昔鮎川珠光に殺されかかったんです。
殺されかかった?
(芹沢)昔鮎川教授に会った事があるんですか?いいえ。
それはあなたがお母さんのおなかの中にいる頃の事ですか?母の妊娠を知った鮎川は強硬に堕ろせと迫ったそうです。
お互いまだ学生なのに子供なんか作ったら将来に関わるからって。
そういう意味の「殺されかかった」ね。
なるほど。
我が国においては出生前の胎児が独立して殺人罪の客体となる事は否定されていますが胎児の身になればまさしく殺されかかったという表現になるのでしょうねえ。
結局母はそれが理由で鮎川と別れました。
子供は堕ろしたと嘘をついて…。
しかしそういう背景があったとなると娘である事を告げぬまま家政婦という申し出を受け入れて先生と一緒に暮らし始めたわけについてはいささかきな臭い想像を禁じえませんねえ。
えっ?復讐って事ですか?職業病でしょうかねえ。
どうでしょう?殺されかかったんです。
恨みに思ってもおかしくないと思います。
代わりに母が死んだんです。
敵を討ちたいと思っても不思議はありません。
でも命がけの出産はお母さんの選択ですよね?その事で鮎川教授を敵討ちの対象にするのは…。
理不尽かもしれませんけど…。
話を聞いてずっと先生に恨みを?まさか…。
具体的になったのはフェイスグッドの彼の写真を見た時でした。
ああ…人は殺さないまでも多くの動物の命を奪って人生を過ごしているんだな…と抑えようのない怒りが込み上げてきました。
初めて具体的に殺してやりたいと思いました。
でも実行に移す事は出来ませんでした。
それが普通です。
簡単に人殺しなど出来ませんよ。
しかしあなたのそういう思いは恐らく先生に伝わっていたと思いますよ。
えっ?あえて言うならば殺意。
それを先生は敏感に感じ取っていたんです。
だからあなたと暮らし始めてしばらくすると様々な毒物を書斎に置き始めたんです。
それって殺される前に殺そうと計画したって事?ところがそうじゃなかったんです。
殺される前に殺そうと計画していたのならばあんなふうに目立つ形で毒物を置いたりしませんよ。
何しろ部屋は黎子さんが掃除をなさっていたのですから。
つまりいつでも黎子さんが鮎川教授を殺せるように毒物を揃えあえて目立つところに置いていたんです。
鮎川教授は彼女に殺されようとしていた…。
わざわざ毒物関連の書籍まで揃えて黎子さんの復讐を促していたんですよ。
護身用としてあなたに拳銃を渡したのももちろんその一環です。
より具体的に強くあなたの殺意を喚起しようとしたのだと思いますよ。
しかしあなたは実行に移す事が出来なかった。
先生の言葉を借りるならばあなたは優しすぎた。
そこでしびれを切らした先生はついに強硬手段に出た。
大掛かりな仕掛けで強引に目的を遂げようとしました。
それが今回の監禁事件でした。
我々を監禁し脅し猟銃まで撃ち…。
(銃声)そのあとに人を殺したい欲望が抑えきれないと告白すれば当然黎子さんは我々を逃がそうとするでしょう。
そこを捕らえてあなたを獲物に指名する。
(伊丹)返り討ちにあうように誘導したって事?そもそもあなたは襲われた時にはこれを使えと拳銃を渡されたんですよね?そう考えると先生が私たちに強要した課題も実は黎子さんのためのものだった事がわかります。
私の?なぜ人を殺してはいけないか…。
明確な解答などない事を示す事によってあなたの心の中の枷を少しでも取り払おうとしたんですよ。
そして計画どおりに事が進み互いの望む結果が得られました。
おおよその事件の真相がはっきりしたところでさてここからが本題です。
(伊丹・芹沢)えっ?今回の一件果たして正当防衛だったのでしょうか?あなたが引き金を引く瞬間殺意はありませんでしたか?純粋に身を守るため自己防衛のためにのみ引き金を引きましたか?あの状況で黎子さんに殺意があったと?あってもおかしくないと思いますよ。
そもそもが復讐のために鮎川教授に近づき実行には移せなかったものの常に殺意を抱いていたわけですから。
常に殺意を抱いていた?…と思いますよ。
肌身離さず拳銃を持っていたのですから。
まさか動物たちが復讐にやって来るという先生の言葉を真に受けていたわけではありませんよね?いやでも今回の状況から考えれば相手が撃たないとわかっていればまだしも黎子さんは鮎川教授の計画を知らなかった。
つまり実際に銃口を向けられたその瞬間まさに自分が殺されると思って反撃したわけですよね?どうですか?あなたはここで撃たなければ殺されると思って引き金を引いたのでしょうか?それともここで撃てば殺せると思って引き金を引いたのでしょうか?同じ行為でも意味合いは全く違ってきます。
前者は正当防衛後者はまさしく殺人。
さあ…その瞬間を思い出してください。
あなたは一体どちらの思いで引き金を引いたのか。
さようなら黎子。
やめなさい!
(銃声)ああ…。
どちらですか?黎子さん。
おっしゃるとおりその瞬間…殺意はありました。
…とするならばあなたの行為は正当防衛ではなく立派な殺人ですよ。
なぜ人を殺してはいけないのか。
その問いに明快に答える事は不可能です。
しかし人を殺せば罰を受ける。
それは極めて明快なルールです。
人が人として生きるために定めた万人が等しく従うべきルール。
それはあなたもおわかりですね?はい。
依頼を受けたからには弁護人として最大限の力を発揮出来るよう努力は惜しまないつもりです。
よろしくお願いします。
しかしなあ…正気?正当防衛をひるがえして殺人罪で裁かれたいなんて…。
間違いなく殺意があったんです。
ねえ真利愛に代わって。
(真利愛)「ママ…」真利愛…ママだよ。
検察が一度下した不起訴の判断をやすやすと撤回するとは思えませんけどね。
だって殺意なんて心の中の事。
確たる証拠でもあれば別ですけど現状では公判を維持出来ないと判断するでしょうね。
たとえそうであっても人は犯した罪と向き合う必要があります。
うやむやのままであってはいけません。
しっかりと罪の意識を持つ事でその後の人生が大きく変わるはずですから。
お待たせしました。
赤魚の煮付けです。
はいどうぞ。
俺は…どんな事があってもお前に無事でいてほしい。
大丈夫だよ。
先生もちゃんと治療すればよくなるからって。
ああそうでした。
あなたにひとつお礼を。
書斎でのあなたのあの言葉がずっと耳にこびりついていましてね。
女に似合うのはやっぱり毒殺でしょ?結果それが先生の意図を見抜くヒントになりました。
どういう形であれお役に立てたのであれば何よりです。
あっ…あれは一種の暗示だったと思います。
はい?引き金を引いた瞬間の彼女の殺意です。
恐らくその瞬間彼女の頭の中は空白だった。
つまり彼女自身殺意があったかなかったかはわからないというのが本当のところだったのではないでしょうか?それを僕が暗示にかけてその瞬間の殺意を認めさせたと?彼女は杉下さんの追及でその瞬間に殺意があったと気づいた気になってしまったのではないでしょうか?僕は彼女の心の真実に迫っただけですがねえ。
もちろん正しいのは杉下さんかもしれませんけど。
2015/10/10(土) 12:00〜13:50
ABCテレビ1
相棒season13[再][字]

「鮎川教授最後の授業」
「鮎川教授最後の授業・解決篇」

詳細情報
◇番組内容1
右京(水谷豊)は享(成宮寛貴)の後押しもあり、大学時代の恩師の古希を祝う会に出席する。参加者は恩師の鮎川(清水紘治)のほか特に優秀だった元教え子たち。その中にはなんと社美彌子(仲間由紀恵)の姿も。会で鮎川は突然、疑問を投げかけてくる。「なぜ人を殺してはいけないのか?」…次の瞬間、参加者たちは強烈な睡魔に襲われ意識を失い、気がつくと地下室に閉じ込められていた。そこには猟銃を手にした鮎川の姿が——。
◇出演者1
水谷豊、成宮寛貴、真飛聖、仲間由紀恵、石坂浩二
川原和久、山中崇史、六角精児、山西惇、片桐竜次、小野了
【ゲスト】清水紘治、石野真子
◇番組内容2
右京(水谷豊)と美彌子(仲間由紀恵)が大学時代の恩師・鮎川(清水紘治)に監禁されていることを知った享(成宮寛貴)は必死に行方を追っていた。一方、悦子(真飛聖)は享との間に子供を授かった事を峯秋(石坂浩二)に告げる。その頃、鮎川は一同を監禁し「なぜ人を殺してはいけないのか」という命題に満足のいく回答が得られなければ誰かを撃ち殺すと宣言。右京は享が助けに来てくれることを信じ、大きな賭けに出るのだった。
◇出演者2
水谷豊、成宮寛貴、鈴木杏樹、真飛聖、仲間由紀恵、石坂浩二
川原和久、山中崇史、六角精児、山西惇
【ゲスト】石野真子、清水紘治

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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