本当予防できる部分は予防するという事が重要だと思います。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
会場の皆さんもどうもありがとうございました。
(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(三遊亭金馬)ようこそのご来場でありがとうございます。
相変わらずばかばかしいお噺を申し上げますがね。
「善ぴょうや善ぴょう」。
「へ〜い。
ご用でございますか?」。
「用があるから呼んだんだ」。
「呼ばれたからやって来た」。
「何だお前言い方は。
そこへ座れ」。
「さあ〜座った。
殺さば殺せ」。
「誰が殺すって言ったよお前。
ええ?お前はねどういう仕事やってんのか分かってんのかい?」。
「ええ。
え〜私は何でございますあの〜幇間の見習いでございましてな」。
「幇間の見習いを?その前は何やってたんだ?」。
「噺家なんですよ。
談洲楼燕枝っていう人の弟子で変死楼頓死といったんですけども」。
(笑い)「嫌な名前だねどうも。
何で噺家やめたんだ?ええ?」。
「ある晩のねお客さんが寄席のお客さん陰気なお客さんなんですよええいくら何か言ってもクスッとも笑わないんですよ。
だから『今日のお客さんは随分おとなしいお客さん静かですねお通夜みたいですね〜。
じゃあひとついっそのことここで骸骨踊りかなんかやりましょうか?』っつったんですよそしたらご常連がね『引っ込め〜っ』って言われたんでしょうがないから楽屋へ帰ったら師匠が『出てけ〜っ』ってんででやめたんですよ」。
「うん。
それでどうしたんだ?」。
「でここんとこなんです幇間に見習いになったんですがね」。
「見習いになったはいいけどお前幇間ってどういうもんだか知ってんのかい?」。
「ええ。
知ってますよ。
ええ。
お客さんが『歌ってみろ』ってったら都々逸か端唄の一つも『踊ってみろ』ってったらかっぽれかなんかをパッと踊ってお客様のご機嫌を取ってお客様のご機嫌を気持ちよくするのが幇間の仕事です」。
「それくらい分かってんならなぜそれしないんだ。
ええ?何かっていうとお客さんの事逆らう事ばっかり言ってしくじってばっかりいるじゃねえか」。
「いやしくじってなんかいませんよ」。
「じゃあお前なんだ聞くけど神田のなええ?青木の旦那どうした?しくじったんだろ?」。
「ええ?あ〜いや青木の旦那いやしくじりゃしませんよ。
あの旦那いい方ですね〜。
ええ。
ちょっと具合が悪くてお休みになってたんです。
だけど『体が良くなったからこれから湯治に行くんだけど一人で行ったんじゃ面白くないからお前も一緒においで。
うんご祝儀つけてやるから』なんて言われましてねで箱根へお供したんですよ」。
「ほらみろありがたい商売じゃないか。
ええ?自分で温泉へ行ってごらんどれくらい金がかかるか分からない。
その上お前ご祝儀まで頂いて。
何でしくじったんだ?」。
「いやしくじりゃしないんですよ。
ええ。
お風呂へ旦那が入ってたんです温泉のお風呂へ。
ええ。
したらねあの旦那しばらく寝てたでしょ?で色白んとこへもってきて日に焼けてないからまた真っ白になりまして体がプク〜ッとしてきてねお湯の中でプカ〜ッと浮かんでるんでね『あっ旦那のまたお風呂へ入ってるのがもう土左衛門そっくりですね』っつったら…」。
(笑い)「そんなくだらねえ事言うんじゃないよ。
それでしくじったのか?」。
「いえ。
その時は何でもなかったんですけどねお風呂から上がって『さぁ旦那これからお背中流しましょう。
これから湯灌を致しますので…死人は何もしなくてよろしゅうございますよ。
あらあらお喉が渇いたらお水を差し上げます。
末期の水をたっぷり召し上がれ』ってったら旦那が『帰れ〜っ』って言うんですよ。
でしょうがないから箱根から電車賃が無いんで歩いて帰ってきたんですけどね」。
「だからそういうばかな事言うからいけないんだよ。
そうしちゃお客様をしくじってで苦情がお茶屋へ来るお茶屋さんからこっちへ小言を言われる。
ね?お前がそういう事する度に家はだんだんだんだんなお客様減っちまうんだよ。
ええ?お前みたいのを弟子にしておく訳にいかない出てけ」。
「ウウウッじゃあ何ですか?じゃあくびですか?木から落ちた猿ですか?」。
「なぜ猿なんて縁起の悪い事言うんだ。
出てけ」。
「ウ〜ンじゃあすみませんが出てきますけど来月の15日まで待って頂いて」。
「15日になると何かなるのか?」。
「ええ。
今日から数えて三十五日で」。
「何だと?こいつ。
早く出てけ」。
「え〜どうぞ勘弁…。
謝っても駄目ですか?草葉の陰から手を合わせてもいけませんか?じゃあすみません先行ってあの世でお待ちしてます」。
「何だと?出てけ〜っ」。
「ウフハハハハハとうとうおん出されちゃったよな〜。
ええ?どうしてああやって気にすんだろうね?何か言う事必ず気にして。
気にするから面白いから何かからかってみたくなっちゃうんだよな。
俺の悪い癖だねヘッ。
さ〜てあ〜もう家おん出されちゃったしな〜幇間が駄目なら噺家へ戻るって訳にもいかないしな仕事は何にもできないし学問がないからよ〜お勤めもできないしね力仕事もできないし何もする事が無ければ身入りが入らない身入りが無ければお飯が食えないお飯が食べられなきゃ死んじまうとこうものは順にいってるな。
うん。
それならいっそのこと死ぬのは死んじまおうかな。
うん。
パ〜ッと死んじゃったほうがいいかもしんない。
生きてたってくだらねえな。
どうしようかな?首くくって死のうか?首くくって死ぬってぇとなよだれ垂らしたり洟垂らしたりみっともねえってからなよしあの首っ吊りはよそうよな。
もっとこうきれいに死ねないかね?ええ?ウ〜ン列車へ飛び込むとバラバラになっちゃうしなまとまって死にたいね。
うん。
毒薬を飲めば死ねるかもしれないけど毒薬買う金が無えもんな〜。
何かいい方法は無いかな?あらっ?ウワ〜ッ大きな川だ。
これ水がどんどん流れてらこれな。
三途の川かな?あっこら隅田川だこれな。
ウ〜ンすみ…。
そうだよ川へ飛び込みゃいいんだよな。
うん。
そうすりゃお前そんなにひどい格好になんなくて死ねるよ。
そういっそひと思いに死んじまおうかな?」。
「死んじまえ〜っ」。
「何です?誰です?何か言った?何だ気のせいかな?うん。
じゃあ死ぬ事にするか」。
「死ね死ね」。
「おっおっ?何ですよ?誰かいるんですか?そこに。
『死ね死ね』なんて…。
あ〜いけねえこんなお前なんだ隅田川の畔でもって死ぬなんて考えたら死神に取りつかれらぁ」。
「もう取りついてらぁ」。
「えっ?な何です?嫌みな事言って。
ええ?あっあ〜そうか私がさんざん嫌みな事言ったからその仕返しに来たんですか?誰です?顔見せなさい顔を」。
「今見せてやるよ」って声がしたと思ったら暗闇からヒュ〜ッと手が出てね数珠みたいな物を首へピョッと掛けられたんですよ。
途端に世の中の様子がガラッと変わって見ると目の前にね年はいくつになったんですかヨボヨボの爺さん頭の毛がボウボウとして頬が飛び出していて目玉が引っ込んでてね歯がこう欠け乱杭歯でそれで肋骨が全部浮いて着てる物ってぇと鼠色の汚い着物に荒縄みたいな物を帯の代わりに締めてましてねこちら側に渋団扇かなんか持ってこっちに信玄袋を持って…。
「ヘヘヘヘヘ」。
「いやおうおうハッな何?何です?あなた」。
「死神だよ」。
「し死神ですか?」。
「ああ。
お前が死にてえってから傍へついたんだよ」。
「いやじょ冗談言っちゃいけません。
死のうかなと思っただけで別に死ぬつもりはないんですからつかないで下さいよ」。
「分かってるよ〜。
ええ?お前なんだろう?幇間くびになったんだろ?」。
「よく知ってますね」。
「知ってるよ〜。
お前の事随分に贔屓にしてんだから」。
「私の事をですか?」。
「そうだよ〜。
な?あの他の幇間はみんな縁起のいい事言ってお世辞ペラペラ言ってみんな客をいい気持ちにさせてるだろ?お前だけだよ逆らって縁起の悪い事言ってよ〜客から祝儀もらい損なって怒られてばっかりいるの。
『それが面白い』ってんでさ〜死神の仲間でお前評判がいいんだよおい」。
(笑い)「死神でもってお前の事贔屓にしてるの随分いるぜ」。
「アハハそうすかヘヘヘヘ。
まぁありがたいけどね死神さんじゃね」。
「うん。
それでよ贔屓にしたお前が困ってるようだから俺は助けに来たんだよ。
お前はなんだろ?食うに困るんだろ?」。
「ええ。
そうなんですよ」。
「な?だからいい事を教えてやるよ。
例えばだな病人がいる。
この病人は長生きをするかすぐ死んじまうかって事をもし占って当てたってお前商売になるだろう?」。
「ええ。
易者みたいですね。
ええ。
いいかもしれませんね」。
「そうだろ?だからそれを教えてやろうと思って来たんだよ」。
「だって私はそんな事できませんよ?」。
「そんな事ぁねえやな。
今お前に首掛けたろ?その数珠みてえなやつそりゃ死神の仲間に入った証拠なんだよ。
だから見てごらん周りの死神よく見えるだろ?」。
「へっ?周りの死神?あっあっあ〜なるほどみんなそこらにいる人間の傍に1人ずつ死神さんがいますね。
死神さんてなぁどのくらいいるんです?」。
「日本の人口だけいるんだよ」。
「あっそうですか。
ヘエ〜いろんな死神さんがいますね。
あらっ?向こうへ何です?女と男とタクシーに乗っかって行きましたがあのあとを追っかけてく死神さんがいますがあれ何してんです?」。
「あれはな二人で心中しに行ったんだよ」。
「あっ死んじゃうんですか?ああやってくっついてくとヘエ〜。
という事はじゃあ皆さん死神ついてみんな死んだ人あの世へ送ってる訳ですか?忙しいですね?」。
「ところがそうはいかねえんだよこのごろ。
ええ?このごろ人間がさ悪賢こくなってきやがってよ。
昔はな心臓麻痺ってたらすぐあの世へ行ってくれたんだよ。
ところがそうじゃねえんだこのごろは。
うん。
今あの電気ショックってのあるだろ?あれでもってビ〜ンてんで生き返らせちゃうんだ。
余計な事しやがんだよ。
でもう手間がかかってしょうがねえからさどうも死神連中も困り果ててなで今度全日本死神連合会ってのを作ってよ第1回の発足会があるんだよ。
そん時だお前を呼んでよええ?どうだい?そこで景気つけにななんだ余興に踊りでも踊ったらどうだ?」。
「ええええええ。
あ〜そうですか。
じゃあ死神さんなら縁起の悪いほうがいいんですね?じゃあ湯灌場音頭でもって骸骨踊りとかなんとか」。
「ハハハハハそれだよ。
うん。
そういうのやってくれるとみんな喜ぶと思うんだよ。
な〜。
やってくれよ」。
「へえ。
よろしゅうございますがいつの話で?」。
「まだまぁずっと先の話なんだ。
ただお前もそれまで食いつながなきゃ困るだろ?だから教えてやるんだよ。
な?病人が長生きするかしないか。
病人が寝てるとこ覗いてみろ。
病人の頭のほうに死神が座ってたらこの病人は駄目だよ長く生きないよ。
うん。
どんなに名医がいようが薬を山と積んでも生きられない。
ところが布団の裾のほうに死神が座ってればこりゃな水飲ましたって生きるんだよ。
うん。
だから『この病人はああ助かりますよ』と『この病人は駄目ですよ』って言うだけだってお前儲けになるだろ」。
「へえそうですねええええ。
でそれ病気は治す訳にいかねえんですか?」。
「治しちゃいけないよ」。
「だけどだって死神さんがいるからいけないんでしょ?いなくなりゃいいんでしょ?」。
「まぁそりゃそうだけどなうんいなくなりゃまぁ病気は治るけどそりゃ枕元にいる人は駄目だ動かない。
うん。
だがな裾のほうへ座ってたらなまぁその死神退かす方法はあるんだよ」。
「ヘエ〜何?どうやるんです?」。
「ウ〜ン他人に教えちゃいけねえよ。
いいか?だからその死神がな布団の裾のほうにいたら『もしもしお茶の水の六百番ですが交代に参りました。
長々ご苦労さんでございます』って一の二の三と手拍子3つ打つとその死神がスッと退くんだよ」。
「あっ退くんですか?」。
「そりゃ退くという約束になってる。
だからどんな死神でもそう言われりゃ交代が来たんだから交代にあとを任してツ〜ッといなくなっちゃうんだ。
その死神がいなくなりゃ病気はすぐ治る」。
「ヘエ〜。
お茶の水の六百番って何です?」。
「俺の番号だよ」。
「あっマイナンバーですか」。
(笑い)「お早いですなそりゃどうも」。
(笑い)「ヘエ〜お茶の水の六百番?へえそれで手拍子3つ?ワハハハいい事教わったな」。
「そんな事やっちゃいけねえよ。
いいか?そのかわりにな俺が呼びに行ったら必ずな発足会には来てなみんな余興やれよ。
な?それまでまぁ何とか生きつないでろ」。
「へえ。
ありがとうございます。
すみません。
ウワ〜ッいい事教わっちゃったね手拍子3つでもってええ?あれだよ死神がいなくなりゃ病気が治るなんて。
一遍やってみようかな?ええ?そう今度本郷のね松本さん所で病気で寝てるってぇから様子見に行ってみようかな。
え〜こんちはごめんください」。
「ええ?ア〜ッおいだ駄目。
おい善ぴょうさん帰って帰ってくれ」。
「な何ですよ来たばっかりで」。
「来たばっかりってお前の顔なんか見たくねえんだよ帰ってくれよ」。
「何かあったんですか?どうしたんです?」。
「今大変だお前家の中ご親戚からみんな全部そろってんだから」。
「ハア〜旦那が死んだんですか?」。
「なぜそういう事言うんだこの野郎。
ええ?死ぬか生きるかって騒ぎだよお前。
ええ?お前みたいな…。
大体お前が良くねえんだよのべつ縁起でもねえ事ばっかり言うもんだからさ旦那が気にしちゃって気にし…それが病気の因なんだよ。
お前の面なんか見たら死んじゃう。
帰れ」。
「いえちょっと待って下さいよそんな事言わないで旦那にちょっとひと…。
いや別に会わなくてもいいです。
一目旦那の様子を覗かして下さいな。
ね〜。
私が見ればですねこの病人はね助かるとかこの病人は絶対死ぬって分かるんです」。
「絶対死なれてたまるかよ。
嫌だよ」。
「いやそんな事言わず見せて下さいよ〜。
もし治る病気なら私手拍子3つで病気治しますから」。
「そんな事できる訳ねえだろう?ええ?今までなお医者さんだの薬だのいろいろやってんだよそれがお前そんな事できる訳ないよ」。
「そんな事ないですよ私今度死神の仲間へ入ったんですから」。
「また変な事言うよ。
駄目」。
(笑い)「お願いですから覗く…顔だけソ〜ッと拝ませて下さい」。
「駄目だよ。
じゃあ中へ入っちゃいけないよ。
この隣の部屋だ。
な?ソ〜ッと覗いて見て」。
「ええ分かりました。
はいはい。
ええ〜。
あらっあ〜旦那やつれちゃいましたね〜。
え〜死神は…。
あっいたいた。
裾のほうにいるよクックッ。
ええ?ありがてえ」。
「何がありがたがってんだばか野郎。
もう終わったらこっち来い」。
「いいえ。
ちょっと。
旦那の病気手拍子3つで治しますけどねもし治したら10万円くれますか?」。
「何言ってやんだ。
旦那の病気が治りゃ10万だって何だってやるよ」。
「本当ですね?じゃあ治しますからちょっと待って。
黙ってて下さいよ。
え〜もしもしもしもし…」。
「電話かけてんのかよ?」。
「余計な事言っちゃいけませんよ。
もしもしお茶の水の六百番ですけどもえ〜交代に参りました。
長々ご苦労さんです。
一の二の三っと」。
手拍子したもんですから死神がス〜ッと退いちゃった。
途端に病人が病気が治って…。
「アア〜ッウウ〜ッおい。
腹へったな〜。
ちょっと飯の支度してくれ。
ウウ〜ッ手間がかかるようだったら近所からなラーメンでも天丼でもいいから取ってこい」。
「あらっ旦那。
病気はどうなりましたんで?」。
「うん?病気?そうだ俺病気だったんだな〜。
ええ?いや今急にフワ〜って気持ちよくなっちゃって病気が治ったようだな」。
「ヘエ〜恐れ入ったもんですな。
いや実は今ですね善ぴょうさんが来ましてええで『手拍子3つでもって病気治したら10万円くれるか?』ってぇから約束しちゃったんですけど」。
「何?善ぴょうが?10万円で私の病気を治した?カア〜ッ『毒薬変じて薬になる』ってぇのはこの事だね。
あの野郎が…。
よしよし。
10万円じゃ少ないよ。
もうあと5万円足してやんなさい。
うん。
であのな飯でも食わしてゆっくりもてなして。
善ぴょうありがとよ〜」なんて大変な事になりましたな。
さぁこれが評判になりましてねあちらでも「ひとつ善ぴょう先生見舞って頂きたい」。
「善ぴょうさん」「善ぴょうさん」「善ぴょうさん」。
もうまた運のいい事に見舞いに行くというと必ず死神がね布団の裾へ座ってるんでね手拍子3つでパ〜ッと追い払っちゃうと病気が治る。
あ〜もうあっちからもこっちからも「善ぴょう先生」。
お礼がどんどんどんどん増えてくるところへもって生意気な事言って「いや〜私はね30万から50万でなきゃ行かないよ」なんて言い始めた。
(笑い)ええ金が入ってくると人間のやる事はみんな同じですよ。
派手な事します。
豪華なまあ〜マンションかなんかに入ってねああそれから毎晩毎晩クラブ行って女の子を抱えてガバガバガバガバもうブランデー飲んだりいろんな事してるね。
うん。
そらぁ「満つれば欠くる」って言葉がありますな。
運が悪くなるとピョッと悪くなるのね。
ある日の事こう患者を診に行くってぇと患者の所の枕元に死神が座ってんですよ。
「あ〜こらぁ駄目です。
この患者さんは助かりません」って言って帰るとまもなくその病人が死んじゃうの。
ええ。
で行く先みんな同じように死神が枕元へ座ってんで「駄目です」ってぇとすぐ死んじゃうんで「ああ〜善ぴょうはあれはかえって呼ぶと患者の命が短くなるから呼んだら損だ」なんてんでみんなでもってやめちゃったんでねたちまちのうちにもうね懐不如意もいいとこ派手に遊び回ってたんですからねスッカラカン。
ええマンションなんかいられませんよ。
うん。
もう裏の裏のねアパートのね6畳間一間でもってしょんぼりと暮らしてるってようなもんで。
「ごめんください善ぴょうさんこちらですか?」。
「は〜い。
何ですか〜?あ〜すみませんねちょっと電気代待ってよ。
来月払うから切らないでよ。
ね?水道も止めないで」。
「ちょっとみんな…。
いろんな事やってるな〜。
すみませんけどあの〜ちょっとお願いの者ですけど」。
「何だい?」。
「あの〜病人なんですが」。
「駄目駄目もう行った先々病人助からないから駄目」。
「いや〜ちょっと見るだけ見て下さいお願いですから。
あの〜今車用意してお待ちしてますから」。
「そう?そんなに言うんなら行くけどねうん覗いてね駄目だったら諦めて下さいよこれね。
あ〜駄目だ。
ああ。
死神がね枕元へ座ってる。
こりゃ駄目助からない」。
「なんとかなりませんかうちの会長。
あのね来週はねなんです株主総会なんですよ。
会長が生きていられるといられないとじゃえらい事になるんですがね総会が終わるまであとね半月でも生かして」。
「いえ半月どこじゃないよ3日だって危ないよ」。
「どうでしょう?1,000万のお金で」。
「1,000万は欲しいよ。
欲しいけどねお前ねそりゃどうにも…。
ウ〜ン」と見ますとねこの死神3年ごしの病人なんですよ。
そこの枕元へズ〜ッと座っててね看病…。
看病疲れってのはおかしいですなこれはな。
付き添ってたもんだから付き添い疲れなんですかね死神がこうコックリコックリと居眠りをやってる。
「だらしがねえ死神だね。
居眠りしてやがる。
ああ〜っ?待てよ。
眠ってる間にそうだ死神をツ〜ッと布団の…。
いやいや動かしたら死神が気が付いちゃうよな?あっそうだよ。
あべこべに病人のほうの向きをヒュ〜ッと変えてで裾のほうにすればなんと…。
うん。
ちょいと相談ですがねあなたん所に気の利いた若い人力のある人4人いますか?」。
「いやそんなもん何人でも集めますが」。
「いや大勢じゃいけない。
4人4人。
でねその人たちにねソ〜ッと病人の布団の四隅に座らせてで私がフッと合図をしたらですね一斉に4人でもって布団を持つてぇとクウ〜ッとね病人の頭の位置を逆さまにしてもらいたい。
うん。
そうすれば助かるがもし間違うと病人即死だよ」。
「ウウ〜ワッ冗談言っちゃいけませんよ。
なんとか助けて頂きたい」。
「じゃあまぁとにかく4人集めて」ってんで4人の若者が病人のね四隅に座ったんですよ。
といろんな奴が入ってくるから死神も「何だろう」と思って見てたんですが座ったまま何もしないから「あ〜見舞いの人間か」ってなもんでねでまたこうやってるうちにコックリコックリ始まったんでね「よく寝込んだな」と思うその隙をうかがって善ぴょうが膝をポ〜ンと叩くってぇと4人の若者がサ〜ッってんで布団を逆さまにしちゃったんですね。
ええ。
で物音がしたんでヒョイっと死神が目覚ますと自分がいつの間にか布団の裾へ座ってる。
そこを逃さず…。
「エイッお茶の水の六百番ですが今交代に参りました。
長々ご苦労さま」。
パンパンパンと手拍子打たれたもんですから死神は泡くってピャ〜っていなくなっちゃった。
途端に病人が病気が治って…。
「アア〜ッ嫌だ〜なんかおい体がベタベタして気持ち悪いな。
おい風呂へ入りたいから用意してくれ」。
「あっアア〜ッ会長。
お体の具合は?病気は?」。
「うん?あっそうだ病気だったな。
いや今急に体の調子が良くなってすっかり病気治ったようだな」。
「あっそうですか。
実は今善ぴょう先生に100万円の約束でもってね会長の命を助けるようにとお願いしたんですが」。
「何?私の命が100万円?安い安いどうも。
150万円ぐらいあげてなうんご馳走して帰しなさい」なんてんでね善ぴょうの野郎たっぷりご祝儀もらっていいご機嫌で表へ出たら…。
「おいこの野郎ちょっと待て」。
「何です?」。
「この野郎。
俺の面を見ろ俺の面を」。
「ウウ〜ッあなた…。
あっあなた私のあなた初めての死神さん」。
「今の病人には俺がついてたんだ」。
「カア〜ッいや〜」。
(笑い)「そりゃどうも大変な失礼を」。
「何を失礼だばか野郎。
ええ?お前のおかげでな俺は職務怠慢だい。
ええ?この事でもって理事会にかけられて懲罰委員会にかけられるかもしれねえんだよ。
お前がやったって事は分かってんだからなお前も来てなよく理事にもな説明しなきゃ。
この野郎こっちに来やがれこっちに」。
「いえちょっと勘弁して下さいよで私はお金に困って…」。
「うるせえこの野郎金なんか…。
ここへ入ってろ」。
「ア〜アッアイアイアイッワ〜ッチョッちょっと死神さん。
何です?これ。
ええ?広い部屋で蝋燭がいっぱい立ってますね。
何です?どっかの仏壇ですか?」。
「仏壇じゃねえや。
ここはな『人間の寿命の蝋燭の間』ってんだよ。
ああ日本中の人間のな蝋燭が立ってんだ。
この蝋燭が消えた時は人間が寿命が終わりだ」。
「あ〜なるほど。
と蝋燭…『人間の寿命蝋燭の如し』なんて言うけど本当ですねこれね。
ヘエ〜いや威勢よく燃えてる人…。
何だ?あれ蝋燭の芯が真っ黒になってうす暗くなってる蝋燭あれ消えちゃいますか?」。
「ウ〜ンまぁ消えるかな。
あれは癌でなあそこが固まっちゃってんだ。
うん」。
「じゃあ芯の黒い所取ってやれば?」。
「蝋燭の芯が明るくなるから病気が治っちゃうよ」。
「ヘエ〜。
あらっこっちはダラダラダラダラなんですね蝋燭がとろけて流れてますね」。
「それは糖尿病なんだよ」。
(笑い)「とろけてみんななくなっちゃうんだよ」。
「ヘエ〜なら蝋をかき上げて」。
「そんな事しちゃいけないよ病気が治るから。
ええ?とにかくお前まぁここで待って」。
「チョッちょっと待って下さいよ。
これ。
あらっ?随分これ短い蝋燭があります。
これはど…」。
「気が付いた?それお前の蝋燭だよ」。
「へっ?私の?私死ぬ?まだ若い」。
「若いったってしょうがねえやお前ええ?お前あの会長って病人を助けたろ?つじつまが合わなきゃ困るじゃねえかよ。
だからお前の寿命とあの会長の寿命とを取り替えたんだよ」。
「いやここれ…。
じゃあ私のは?」。
「その上のほうに長く伸びてそれまだ燃えてんのあれが今会長の命になったんだ」。
「だ…あれ私の?でこれが私の?でこれ消えちゃったら?」。
「死ぬんだよ」。
「ウハハ〜ッ嫌だよ〜。
ね〜お願いだからちょっと取り替えて」。
「そうはいかないよお前1,000万でもって命売っちゃったんだからもう諦めてろ。
今な理事長の所行ってくるから」。
「だだ…。
ちょっとちょっと。
弱っちゃったな〜。
あ〜消えちゃうよ〜。
消えたらお終いだよな。
どっかの蝋燭他取り替え…。
取り替えるとそう取り替えた人は死んじゃうよなそうか。
あ〜弱ったなあ〜。
あっ何だ?これ。
おっ!これ新しい蝋燭だよ。
ええ?あっ生まれる前の赤ん坊だ。
全くこれなら別に迷惑はかからないだろう。
こいつをひとつつぎ足してなんとかな…。
エ〜トあっとこれで俺の命とこでもって…。
よ〜しつげるかビュ〜ッと。
おっうまくついだ。
カカ〜ッええ?これで50年は長生きするぞおい。
まだどっさりあるからもう少しつないどくかなこれな」。
(笑い)「ウ〜ンエ〜ヘイヘイヘイ。
これで100年は『生き』だな。
そうなったら短いのみんなこうつないどいてやっかなこれな。
これは今度どんどんどんどんいくらでもあるんだサービスしといてやろうじゃねえか。
な?ええ?どんどんこれを全部つないでアハハハハ東京落語会来てる人みんな長生きさせてやろうな」。
(笑い)「いや〜みんな長くなったな。
せっかくここまで来たんだからこれ癌をみんなもぎ取ってやるかこれを。
お〜もう明るくなったこと。
これこの芯をみんな切って明るくしてやろうな。
蝋はみんな流れてる所無くしてな糖尿病はみんな治すようにしてな。
うん。
カア〜ッどうだよみんな日本中病気が無くなっちゃったい元気いいや。
明るくなったね〜本当に。
いやこんな事しちゃいられねえや俺ぁ死神に捕まったらどういう事になるか分かんねえこらぁ逃げ出さなくちゃいけないエ〜トどっか逃げる所無い…。
あっここにここに戸が…。
ここから逃げれば…。
エ〜ト」。
「あっあっ逃げられた逃げられた」。
「アハハハもう表へ出たよもう。
そんな死神連合なんかくそくらえだチクショー。
よ〜しと。
さてこうなったらどっか行ってみてえな。
ええ?そうそうだ中村さん所行ってみようかな。
あの所はご無沙汰してるから。
どうもご無沙汰しまして」。
「あっ善ぴょう先生。
いやお捜ししてたんですよ。
来て頂こうと思ったんですが実は来て頂く前にですね30分ほど前ですか急にうちのね社長の病気がすっかり治りましてね」。
「ヘエ〜社長さんが?」。
「そうなんですよ」。
「あ〜それじゃあ私がね今死神連合という会館の中へ行きましてね『人間の蝋燭の間』という所で蝋燭の芯を切ったりね垂れてる病気をみんな治したりしてみんな何です明るく切り直してきましたからそれで病気が治ったんでしょうね。
あなたの社長の病気何だったんです?」。
「癌なんですよ〜。
それでこれはとても駄目だなと思ってたんですがねそれがね急に何か変なふうになったってんでそれからお医者が飛んで来てね内視鏡を覗いたらですなもう胃袋から喉ん所へさかんにいっぱい生えてたのがその癌がみんな消えちゃったってんですよ。
本当にありがたい事ですな。
もうあの社長がね亡くなったらもうどうしようかとうちの会社は闇だと思ってましたがね」。
「いや〜闇にはなりません。
今芯の切りたてでございます」。
(拍手)2015/10/10(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「死神」[解][字][再]
落語「死神」三遊亭金馬▽第674回東京落語会
詳細情報
番組内容
落語「死神」三遊亭金馬▽第674回東京落語会
出演者
【出演】三遊亭金馬
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
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