(小佐田)「上方落語の会」本日のゲストはこの方です。
(春輝)初めまして。
春輝です。
よろしくお願いしま〜す。
何でも伺いましたらアジアスーパーモデルコンテストで受賞されたという。
はい。
ね。
すばらしいな。
お美しい。
ありがとうございます。
ところで落語会なんか来はった事あります?実は一度もないんですよ。
そやろな。
いやあのねこんだけの人来てたらねまず大騒ぎになりますから。
いえそんな事ないですから。
ほんまでっせ。
あんまりお笑いお好きやないんですか?いやでも私大阪出身なのでお笑いは大好きで新喜劇だったり漫才とかは見に行ったりしてましたよ。
あそうですか。
はい。
これを機会にまあ見て頂きまして面白けりゃまた上方落語の方にも来てやってくれますかな?はい。
もう漫才とかとまたどう違うのか今回見比べてみたいと思います。
お願い致します。
今日みんな頑張らなあかんでほんまにね。
そういうところでまずは桂鯛蔵さんの「つる」からお楽しみ下さい。
どうぞ。
(拍手)え〜ありがとうございます。
まずは桂鯛蔵の方でよろしくおつきあいのほどを願っておきますが。
最近我々学校公演といいましてね小学校中学校高校そういうとこへお伺いして生徒さん方子どもさん方に落語を聴いて頂く。
こういうお仕事が多ございましてね。
まあやりやすいとこやりにくいとこたくさんあるんでございますが。
こないだも寄せて頂きました大阪市内の某中学校でございますけどもね視聴覚室いうんですか?生徒さん方100人ぐらい集まって頂いてやらしてもうたんですけど。
まあこれがザワザワザワザワしましてねちょっとも聴いてくれへんのでございますよ。
ええ。
そうしますと先生も先生でなんとかせなあかんと思うたんでしょうね。
なんと私がしゃべっております舞台のここへ立たはったんでございますよ。
ええ?先生が。
で「お前らな静かにせえ静かに。
失礼やろ!これでも一生懸命やってんねんで」。
ちょいちょいちょいちょい。
かえって傷つけられたりなんかしましてね。
ええ。
またそんな先生に限って気ぃを遣うてくれてね。
終わってからこう声かけてくれはるんでございますけどもね。
「いや〜鯛蔵さん先ほどはもう失礼致しました。
すいませんでした」。
「いやいやお気になさらずとも結構でございますよ」。
「そうですか。
鯛蔵さんこれからもプロ目指して頑張って下さい」言うてもうね。
もうボロカス言われて帰ってきたりなんかするんでございますよね。
でもまあ学校の先生はねやっぱり人に物を教えるというこれもなかなかね苦労が多いと思います。
まあ落語の方にもそういう人に物を教えるまた知らん事を教わるというそういう話があるんでございますがね。
まあ落語の方はええ加減なもんでございまして。
「こんにちは。
いてはりますか?」。
「お〜お前か。
まあこっち入んなはれ」。
「上がらしてもらいます。
どっこいしょっと!」。
「相変わらず元気な男やでほんまにええ?え〜今日はまた何の用事や?」。
「え?何です?」。
「いやいや『何の用事や?』ちゅうてんねん」。
「『何の用事』?『何の用事』て用事があったらその用事してまっしゃないかいな。
用事がないさかい来たんや」。
「そんなおかしな挨拶するやつがあるかいな。
『用事がないさかい来たんや』て。
まあ遊びに来たんなら遊びに来たんで構へんわいな。
お茶でもいれようか」。
「お茶ねえ。
あんたんとこのお茶はいつもうまいさかいなあ。
お茶の当ては何です?」。
「『お茶の当て』ちゅうやつがあるかいなおい。
お茶受けと言いなはれ。
せやなあ〜羊羹があるが羊羹でも切ろか?」。
羊羹ねえ」。
「え嫌いかえ?」。
「いや〜あら3本も食うたら胸悪なりまっせ」。
「当たり前やがな。
誰がそない食わすかいな。
相変わらずおもろい男やでほんまに。
今日はもう仕事はないのんかい?」。
「ええ今日はもうおまへんねん。
せやから最前まで散髪屋で遊んでましたんや」。
「お〜散髪屋な。
人寄り場所ちゅうてな。
いろんな話が出てたやろ?」。
「そうそう。
いろんな話が出てました。
中にはあんたの噂もちょっと出てましたで」。
「お〜私の噂がな。
『噂』というのは『口偏に尊ぶ』と書くがあんまり尊ぶような事は言うてないな。
どういう事を言うてござった?」。
「『どういう事を言うてござった』て落ち着いてる場合やおまへんで。
皆あんたボロカスみたいに言うてまっせ」。
「ん?私人さんにボロカスのように言われる覚えはないねやが。
どういう事を言うてござった?」。
「そらあちょっと言えまへんわ」。
「何で言えん?」。
「『何で言えん』て言うたらあんた怒るがな」。
「怒りゃせん。
怒らへんさかいに言うてみなはれ」。
「さよか?『大体この横町に住んでなはる甚兵衛さんというお方は…』ちゅうな事をね皆が」。
「悪口にしては言葉がえらい丁寧だな」。
「いやいやほんまもっとえげつのう汚うど汚う言うてましたんやけどやっぱりあんたの前で気兼ねして…」。
「いや気兼ねはいらんちゅうてるやろ。
おまはんが言うた訳やない。
聞いたとおりに言いなはれ」。
「さよか?ほな言いますけども怒りなはんなや。
『大体この横町に住んでけつかる甚兵衛とぬかすガキは…』」。
「ほんに汚いな。
それより悪うは言えんなほんまにもう。
へえへえ。
『甚兵衛とぬかすガキは』?」。
「『このせちがらい世の中にこれというて定まった商売もなしにのほほ〜んと暮らしてけつかる。
あんなやつに限って知れんで』て一人が言うとな皆が『そら分からんそら分からん。
分からんな知れんな』ちゅうて」。
「何が知れんねん?」。
「『盗人かもしれん』ちゅうて」。
「何を言うんやいな。
お前うちへちょいちょい来て知ってるやろがな。
それ聞いて黙ってたんか?」。
「なんの。
あほな事言いなはんな。
『おいお前ら何ちゅう事ぬかしてけつかんねんちっちゃ。
世の中には言うてええ事と悪い事があるぞ。
あの甚兵衛さんというお方がそういう事をするお方かせんお方か向こ先見て物言え!』と」。
「お〜お〜。
『皮引きゃ身ぃ引く』じゃ。
よう言うてくれた」。
「言おうと思うたけどわたいも男だ。
腹に持ってて口には出さん」。
(笑い)「それでは何にもならんがな」。
「そのかわりね相手の胸にこたえるようにひと言だけバ〜ンとかましたりました」。
「偉い!男というものは余計な事は言わいでもええ。
ひと言をどない言うた?」。
「そのとおりやな」。
「お〜い!それやったらわしの胸にこたえてあんねやがな。
しゃあないやっちゃな」。
「いやけどねあんたの事悪口言うてるやつばっかりでもおまへんねんで。
中にはあんたの事を褒めてるやつもいてまんねんで」。
「は〜私の事を褒めてる御仁もいてなはんのか?」。
「ええ。
『おまはんら一体どない思てるか分からんがなあの甚兵衛はんというお方はこの町内にはなくてはならんお方や。
平生はええ。
平生はええけどもいざという時には出ていってもらわないかんねん。
あのお方はこの町内の生き地獄や!』。
あんた生き地獄でっか?へえ〜。
そういうとどことなしに顔が閻魔はんに似てまんなあ」。
「何を聞いてきたんや。
それも言うなら『生き字引』とおっしゃったんじゃろ」。
「『生き字引』?生き字引って何でんねん?」。
「まあ字引という書物には世の中のありとあらゆる事が載ってあるな。
わしが世間の事をよう知ってるもんやさかいに生きてる字引『生き字引』とこないおっしゃったんじゃろ」。
「あなるほど。
ほなあんた世の中の事やったら何でも知ってなはんの?」。
「『何でも』という訳にはいかんがなまあお前らの聞く事ぐらいやったら大概答えられるわい」。
「おっ『お前らの』!あんたわてばかにしてなはんの。
あさよか。
ほなわたいの聞く事やったら大概答えられまんなあ」。
「返答に困る事はないわい」。
「あさよか。
ほな聞きますけどもねまず第一に南京虫はかっけ患うか?」。
「何の話やねん。
んなあほな事聞きない」。
「こら冗談やこら冗談ですけどね。
いや今も言うように最前までは散髪屋で遊んでましたんやけども散髪屋の衝立にず〜っと鶴の絵が描いてありまんねん鶴の絵が。
それ見て徳さんがね『お前ら一体どない思てるか分からんがなこの鶴というのは日本の名鳥やで』とこない言いよりまんねん。
偉そうな顔して。
あれ何ですか?日本の名鳥ですか?」。
「お〜こら徳さんえらい事知ってなはる。
あら日本の名鳥に違いないな」。
「あさよか。
ほんならね『どういう訳で日本の名鳥やねん?』ちゅうたら『え?いや…そら日本の名鳥や』。
『いやそやから何で日本の名鳥やねん?』ちゅうたら『いや〜そら〜こらあの…有名な鳥でな。
いや〜え…あの…え…。
あっちょっと用事を思い出した』。
シュ〜ッ。
去んよりまんねやがな。
知りよりしまへんねんあの男。
あれ何で日本の名鳥ちぃ言いまんねん?」。
「お〜そういう事を聞いときなはれな。
ちょっとこの屏風を見てみなはれ」。
「え?わ〜何やぎょうさんけったいな絵が描いてありまんな」。
「あ〜まあ私ちょっと手慰みに描いた絵がだいぶんとたまったもんやさかい貼交屏風にしてあんねんな。
ここに描いたあるこれが鶴や」。
「え?あそれが鶴でっか!へえ〜。
何やぎょうさん鶴が飛んでまんなあ」。
「ああこら千羽鶴ちゅうてな」。
「何です?」。
「いやいや千羽鶴ちゅうてな」。
「せんば鶴!なるほど。
これ大体わたいにもよう分かりますわ。
は〜。
やっぱり何でんなあ。
船場の鶴は上品でんなあ。
阿波座の鶴は柄が悪い」。
「何を言うてんねや。
こら所の船場やあれへんがな。
千羽いてるちゅうねん」。
「え〜っ?24〜25羽より飛んでまへんで」。
「もう勘定しないなおい。
ぎょうさんいてる事の例えを『千羽』とこない言うねん。
ちょっとこの身なり形を見てみなはれ。
一面真っ白で頭には丹頂という赤いもんを頂いて羽の先の方には黒々とした毛が生えたある。
姿形がまことに美しいところへさして一旦雌雄雄雌のつがいが決まるとほかの鳥へは見向きもせんというぐらいにまことにもって操の正しい鳥や。
こういうところをもって鶴は日本の名鳥とこない言うんやろな」。
「あなるほどね。
けどこいつえろう首が長うおまんな」。
「お〜こらまた面白い事を言うたな。
せやからこら昔は鶴とは言わなんだんや。
『首長鳥首長鳥』とこない言うてたんや」。
「あなるほどね。
それはよう分かんのにほな何でこれ鶴ちぃなけったいな名前になりましたんや?」。
「何を?」。
「いやせやからね首長鳥なら首長鳥のこうようしますがな。
首が長いねんさかい。
何で鶴ちぃなけったいな名前になりましたんや?」。
「え?ああ…。
いや〜まあ…それにはまたあ〜いろいろと訳があるな」。
「ええ。
その訳ちょっと聞かしておくんなはれ」。
「あ〜聞かしたってもええねんけどなあ…。
あっちょっと用事を思い出した」。
「嘘言いなはれ。
あんたお茶飲んでたばこ吸うてるがな。
あ!あんた知らんねやろ?」。
「あほな事言えお前。
これぐらいの事知ってるわい」。
「ほな教えておくんなはれ」。
「ほなまあ教えたるけどもやな。
何でこの首長鳥が鶴と言うようになったかというとやな昔一人の老人が浜辺に立ってはるか沖合を眺めてござった。
と唐土の方からまず首長鳥の雄が一羽ツ〜ッと飛んできて浜辺の松へポイッと止まった。
後へ指して雌がル〜ッと飛んできたさかいにツルやな」。
「何です?」。
「聞いてへんのんか?昔一人の老人が浜辺に立ってはるか沖合を眺めてござった。
と唐土の方からまず首長鳥の雄が一羽ツ〜ッと飛んできて浜辺の松へポイッと止まった。
後へ指して雌がル〜ッと飛んできたさかいにツルやな」。
「どう?」。
「分からん男やなあ。
つまりな首長鳥の雄がツ〜ッと飛んできて雌がル〜やさかいお前ツ〜ル〜やないかい」。
「え?な…何です?ツ〜ル〜?ハハハハハハなるほど。
ツ〜ル〜ね。
アハハハハなるほど。
あさよか。
いや分かりました分かりました。
ほなおおきに。
ごめんやす」。
「あこれこれこれ。
ちょっと待ちんかいな。
どこ行くねん?」。
「早速ねこの鶴の因縁を町内言いに回ろうと思いまして」。
「お…おいおいおい。
やめときやめとき。
おい。
あほな事しな!今のは嘘や」。
「分かってるわ」。
(笑い)「真面目な事ぬかしたな。
けどおもろいがな。
ツ〜ル〜やなんてな。
アッハハハ!よっしゃ。
わしもこの鶴の因縁をどこぞで偉そうに言うたろやないか。
なあ!ついでわしの事あほやとかばかやとか言うてんねん。
ちょっと見返したらんといかんわい。
あそや竹やんとこ行たろ。
お〜い竹やんいてるか?」。
「お〜誰やと思たら町内のあほやないかい」。
「いきなりやなお前。
お前鶴て知ってるか?」。
「え?鶴て鳥の鶴か?」。
「せや」。
「んなもん鶴ぐらいお前子どもでも知ってるがな」。
「そら鶴は知ってるわいな。
あれ昔は鶴とは言わなんだんやで。
『首長鳥首長鳥』てこない言うてたんやで」。
「ああ首が…長いさかいな」。
「せや。
それが何で鶴て言うようになったか知ってるか?」。
「知らん」。
「教えたろか?」。
「教えていらん」。
(笑い)「職人はそんなん知らいでもええねんな。
今忙しいねん。
もう去んだらどない」。
「もうそんな事言わんとなあ。
これ聞いたら笑うさかい。
なあちょっとお願いするさかい聞いてぇな」。
「やかましいやっちゃなおい。
もうどないやっちゅうねん」。
「あれな何で首長鳥が鶴と言うようになったかというとやね昔一人の老人が浜辺に立ってはるか沖合を眺めてござった。
とも…唐土の方からまず首長鳥の雄が一羽ツル〜ッと飛んできて浜辺の松へポイッと止まったんや」。
「ああ」。
「後へ指して雌が…」。
「さいなら〜」。
「何しに来よったんやあいつ」。
「あれ?おかしいなあ。
途中までうまい事いってたんやけどなあ。
おかしなってしもうたな。
甚兵衛はんあれ何で鶴て言うようになりましたんかいな」。
「どこぞでしゃべってきよったかなこいつ。
うかつになぶりもでけんなこの男は。
もうそんな事言わんともうこっちおいでな。
ほらこのとおりお前の大好きなほらほら羊羹3本つけるさかい」。
「もうそんな事どうでもよろしいねん。
あれ何で鶴て言うようになったかもういっぺん教えておくんなはれ」。
「あんな事あほらしいてよう言わんやないかい」。
「もう頼んますわ」。
「あれはやなあ昔一人の老人…」。
「そんなとこどうでもよろし。
ほら何で鶴て言うようになったかそのさわりんとこ」。
「『さわり』ちゅうやつがあるかいな。
あ〜つまりやなまずあの〜唐土の方から首長鳥の雄が…」。
「ちょ…ちょっと待った!ちょっと待ったちょっと待った。
へえへえ。
首長鳥の雄が一羽?」。
「ツ〜ッと飛んできて」。
「なるほど!ツ〜ッや。
あツ〜ッ。
あツ〜ッやな。
ツ〜ッ。
あこれを忘れてたんや。
ツ〜ッやな。
もっぺん行ってこ」。
「やめときっちゅうのや!」。
「あ〜何か言うてけつかんねん。
ツ〜やツ〜や。
それ忘れたんやなあ。
お〜い竹やん!あれ昔は鶴とは言わなんだんや」。
「また入ってきよったがなこいつ。
今日は仕事さしよらんなおい。
もうどないやっちゅうねん」。
「あれな何で首長鳥が鶴と言うようになったかというとやね昔一人の老人が浜辺に立ってはるか沖合を眺めてござった。
と…。
ちょっと竹やんもう仕事の手休めて聞いてぇな。
こっからいいとここっからいいとこ。
と唐土の方からまず首長鳥の雄が一羽ツ〜ッ。
最前のちょっと違うやろ?違うやろ?違うやろ?違うやろ?違うやろ?ツ〜ッ。
ク〜これやこれや。
ツ〜ッ。
ク〜これに違いない。
ツ〜ッ。
ク〜ええなあ」。
「もう何がええねや?おい」。
「ツ〜ッと飛んできて浜辺の松へル〜ッと止まったんや」。
「ああ」。
(笑い)「後へ指して雌が…」。
「あれ昔は鶴とは言わなんだ」。
「どないしたんや?何同じ事言うてんねん」。
「あれ?何でこないなんねん。
あれ?ツ〜ッと飛んできてル〜ッと止まって後へ指して雌…あれ?後へ指して雌が…」。
「おい。
雌がどないしたっちゅうねん!」。
「いや〜黙〜って飛んできたんや」。
(笑い)
(拍手)桂鯛蔵さんの「つる」でございました。
いかがでした?この「ツ〜ッ」て言ってるのがすごい気持ちよさそうで私もまねして言いたくなりました。
ええこってすそれは。
ただねあれ嘘ですから全部。
あっ本当ですか?私おっちょこちょいだからちょっとほかの人の前でやるところでしたよ。
あかんあかん。
あれは落語の中であんな事言いまんねん噺家は。
そうなんですね。
だから落語で聞いた事をほんまと思うて言うとねあっちこっちで恥かく事ありますから。
よかった聞いといて。
是非ともご自分の考えでやって頂きますようによろしくお願い致します。
というところで後半は笑福亭呂鶴さんの登場です。
出し物は「植木屋娘」です。
(拍手)
(拍手)いっぱいのお運びでございますが私の方もどうぞしばらくの間おつきあいを願いたいと思います。
世の中には一風変わった親子というのがたくさんいてるようでございますが落語の中にはそういう変わった親子というのが出てまいりますんですが。
「ねえお母様。
私18になったしもうブラジャーしていいでしょ?」。
「まだそんな事言うてんのんかいな。
もう頼むさかいあほな事言いな。
あんたは男の子やろ?」。
(笑い)「まあこういう変わった親子というのは世の中にはいてないようでございますが。
最前も言いましたとおり変わった親と子というのが出てまいりますのが落語でございまして。
ここにございました商売が植木屋さん名を幸右衛門と申しまして今年18になるお光という娘と嫁はんとの3人家内でございます。
近所に木菟念寺というお寺がございましてそこの和尚さんとはごく懇意。
今日も今日とて幸右衛門お寺へやって来よってからに。
「和尚さんこんにちは」。
「お〜誰やと思たら幸右衛門じゃないかいな。
ささこっちへ上がんなされ」。
「おおきに和尚さんありがとはんで。
ええ。
和尚さんまた節季よろしゅう頼んますわ」。
「幸右衛門わしゃお前さんとこに何ぞ借りがあったかいな?」。
「忘れてもうたらどんなりまへんな。
いっつも月末になったら書いてもうとるあの書き出し頼んまっさちゅうてまんねん」。
「あ〜書き出しかいな。
いやいやお前さんが『節季よろしゅう頼む』と言うでわたしゃまたお前さんとこに借りがあったんかいなと思た。
またついでがあったら書いときますで持ってきといてくなされ」。
「そんな事言うてもうたららち明きまへんねんええ。
うちはもう月末になったら得意先の方から取りに来てくれまんねん。
すぐに書いてもらわんと具合悪なりまんのんで。
和尚さんねちょっとね勉強してもらわんと困りまっせ」。
「『勉強してもらわんと困る』てどういうこっちゃ?」。
「いや〜あの和尚さんの書いた書き出しね得意先で受けが悪うおまんねんがな」。
「『受けが悪い』ちゅうと?」。
「得意先の連中が皆言うてまっせ。
『この書き出しの字はこら戒名書く字や』ちゅうて」。
(笑い)「ハハハ。
坊主のわしが書く字じゃによってそう見えるのじゃろ。
先さんなかなか目が高い」。
「『目が高い』て喜んでる場合やおまへん。
すぐに書いておくんなはれ」。
「いやいやすぐという訳にはいきゃ…。
あんなこうしようかな。
うちの寺にいております伝吉あれに書かせましょかな」。
「伝吉さん?伝吉さん字を書きまんのんで?」。
「これこれ。
おまはんが字が書けんというて人も字書けんように思たらいかんで。
ええ?あの伝吉はわたしゃ口でこそ『伝吉伝吉』と呼んでますが心の中では『様』をつけて呼んでます。
というのがあの男は500石の家督を相続する身じゃうん。
字ぐらいは書けえでかいな」。
「あさよか!それやったらちょうどよろしわ。
あの…伝吉さんにすぐ来てもうとくなはれ。
わたい家帰って待ってますさかい。
さいならごめん」。
「これこれこ…。
どもならんなほんまにもう。
あの男はいつもあの調子じゃ。
言うだけ言うたら帰ってしまいよんのじゃ。
どもならんで。
伝吉。
伝吉はいておりますかな?」。
「はい。
和尚さんお呼びで?」。
「いや今もな植木屋の幸右衛門が来ましてな。
『書き出しを書いてくれ』ちゅうて帰りましたんじゃ。
そなたよかったら植木屋行って書いてやってもらう訳にはいかんじゃろかな?」。
「はい今のところお寺に用事もございませんのですぐに行てまいります」。
「行てやって下さるかああ。
言うておくがなかなかあの男口豪輩な男。
お前さんの気に障るような事言うやもしれんがあんまり気にせんようにな」。
「委細承知致しました。
それではすぐに行てまいります。
あの〜お寺から参りました伝吉でございます」。
「伝吉さん伝吉さん!もう来ておくなはった!早いがな。
いやいやいやこない早い事来てくれるとは。
さあさあ一服せんとはよ書いて」。
最初に荒肝取られてしもうた。
「あの書きますにも筆も帳面もない…」。
「いやいやもうちゃんとちゃんと墨もすったるわね。
紙も用意して筆もちゃんと用意してありまんねん」。
「あの帳面の方…」。
「あっそれ…ハハハ。
わたい慌て者ですさかいにそれ出すのコロッと忘れてまんね。
これがうちの帳面でんねん」。
「いっぺん拝見させて頂きま」。
「あの〜この帳面には字が書いてないように思いますねやけども」。
「ええわたい字あきまへんやろ。
そやからわたいとこの符丁で書いてありまんねん」。
「何やちょぼや三角や丸ばっかりでおますが」。
「ええそれがうちの符丁でんねん」。
「と申しますとこの丸は?」。
「丸一つが1両でんな」。
「あ〜なるほどね。
丸一つが1両でおますか。
ほなこの三角は?」。
「1分でんな」。
「ほなちょぼは?」。
「一緒でんがなあ。
それぐらいの事あんた分からんか?」。
「いやお宅に分かりましてもこっちの方には一向に。
お名前の…?」。
「いや名前はわたい心覚えしてまんねん。
そこへ言いますさかい書いておくんなはれ」。
そこは手の早い方でございますので瞬く間に200本ほどの書き出し。
まあ今で言う請求書でございますな。
書き上がってしまいます。
「あの出来ましたが」。
「出来た?出来た?もう出来た!?こんな早い事出来る…。
あのお寺のど坊主ごてくさごてくさぬかして書きさらさんねん。
おいおい嬶あんじょうせんかい。
伝吉さんあんじょうせんかい。
ささ伝吉さん何にもおまへんけどどうぞ飲んで帰っておくなはれ。
食べて帰っておくなはれ」。
まそこはあるお宅でございますので伝吉さんに酒肴をごっつぉう致しまして帰ってもらいます。
これがきっかけになりまして伝吉さんもう毎日植木屋に遊びに来るようになりまして。
伝吉さんも来たら来たで「おとっつぁんあそこはこうした方がよろしございます。
ここはああするよりこうした方が得でございましょう」と何かにつけておとっつぁんの手助けをするもんですさかいおとっつぁんの方は伝吉さんを心から底から爪の垢までほれ込んでしまいよってからに。
ある日の事。
「嬶!嬶!ちょっとこっち…ちょっとこっちこっち。
大事な話があるさかい。
ちょっとこっち来い」。
「何なんね?今私洗濯してまんねやないかいな。
大事な話やったら洗濯終わって…」。
「いや洗濯は後で洗濯は後でええねんええ。
大事な話があるさかいそこへ座れ。
実はうちのお光のこっちゃねん」。
「お光坊がどないぞしましたんか?」「うちのお光な今年18来年19ちゅう世間で専らの評判や」。
(笑い)「わたいやっぱ洗濯してくるわ」。
「洗濯後でええ言うとるやろ!」。
「そうかて今年18やったら来年19当たり前でっしゃ…」。
「当たり前や当たり前やな。
俺と…われとは…こないしておもろい顔してるけどうちのお光は美し者じゃ別嬪じゃ。
うまい事産んだるわい。
町内の若いやつはあわよかったらいがめよか蹴倒そかまるで火鉢か小便たんごみたいに思てけつかるけど俺はそんな事はささんなあ。
植木に虫がついたら俺商売直すわ。
けどもお前お光娘に虫がついても俺よう直さんがな。
そこでやそこでやなお光に虫のつかん間にええ養子をもうてわれと俺とが隠居しようと考え。
どや?この考えは?」。
「まあ結構な話やおまへんかい」。
「結構結構。
ハハハハ。
われが結構やったら俺も結構やねん」。
「ええどこのどなた?」。
「『どこのどなた』てお前大概気ぃ付くやつがなええ?あのお寺の伝吉さん。
あれ養子にもろう事に決めた」。
「ちょっと待ちなはれあんた。
あんたが勝手に決めたかて肝心のお光がどないよ?」。
「お光?お光が嫌とでもぬかすか!」。
「そんなもん聞いてみな分からんし」。
「よ〜しよし。
今すぐ呼んで聞いたろ。
おいお光お光ちょっとこっち来いちょっとこっち来い。
大事な大事な…おとっつぁん大事な話や。
用事は後でええ用事は後でええ。
そこへ座れそこへ座れ。
あのなお光なお前な養子もろたるか。
なあ。
『うん』か?『うん』ちゅえ。
『うん』か?『うん』ちゅえ!『うん』か?嬶嬶見てみぃ。
『うん』ちぃ言いよったがな。
いいねやいいねや。
心配せんでもお前も気に入るええ養子見つけたで。
お寺の伝吉さんでんね伝吉さん。
伝吉さん伝吉さん…。
嬶嬶見てみぃ。
赤い顔してうつむいとるで。
ええねやがなええねやがな。
よしおとっつぁんすぐに寺行てもうてきたる」。
何じゃ猫の子もらうようになってきよってからに。
「和尚さんこんにちは」。
「お〜誰やと思たら幸右衛門じゃないかいな。
ささこっち上がんなされ」。
「ええ。
和尚さんちょっと今日は折り入ってお願いがおまんので」。
「おお?改まってどうした事じゃ?何じゃな?」。
「ちょっと何でんなうちのお光のこってんねん」。
「お〜お〜お光坊がどないぞしたんか?」。
「へえうちのお光ね今年18来年19ちゅう世間で専らの評判でしてなええ。
親おもろい顔してますけどお光は美し者だ別嬪だええ。
町内の若いやつはあわよかったらいがめよか蹴倒そかまるで火鉢か小便たんごみたいに思てけつかんねん。
わたい『そんな事させん!』ちゅうもんね。
植木に虫がついたらわたい商売直しますけどお光に虫がついてわたいよう直しまへんが。
そこでだんなそこでだんなお光に虫のつかん間にええ養子さんをもうてええ養子さんをもうてわたいと嬶とが隠居しようと考えてま。
和尚さんどうです?この考えは」。
「お〜なるほどな。
お〜。
そらめでたいこっちゃな」。
「めでとうおますか?あ〜やった!和尚さんがめでたかったらわたいもめでたいんで」。
「おまはんは年がら年中めでたい男やさかいにな。
まあまあしかしお前さんとこは身代いかほどあるかもしれんがあ〜かなりの身代やそうなうん。
そういうところへ養子さんに入れるというのはこら幸せなお方じゃなうん。
その幸せなお方というのはどこのどなたじゃ?」。
「『どこのどなたじゃ』…。
あんたんとこの寺にいてる伝吉さんあれ養子におくれ」。
「え…あ…これこれ。
何ちゅう事を考え出しよったんじゃ。
ええ?おまはん何や…こらいかん。
いやいつぞやも言うたとおりあの男は500石の家督を相続する身じゃ。
いや他家へ縁づきのでけん体。
うん幸右衛門せっかくじゃがこの話はなるような話やないな」。
「んな事言いないな。
和尚さん頼むわさ!わたい頭下げてお願いしても。
いや大体わたいふだんね人に頭下げた事ないねん。
下げた事ないねん。
下げた事ない人間がこないして頭下げて…。
頼んますわおくんなはれな。
和尚さん頼んますわ。
おくんなはれな。
なあ和尚さんおくんなはれな」。
「いやいや何とあってもこらあかんもんはあかん」。
「んな事言いなはんな…和尚さん!あんたもねいつも死人の仲人ばかりしてんとたまには生きてる者の仲人もしなはれやあんた」。
「何ちゅう言いぐさじゃそれは。
どうあっても首を縦に『うん』と振る事はでけん!」。
「さよか!分かりました。
さいなら!あほらしいでほんまにもう。
あのお寺のど坊主がごてくさごてくさぬかしてくれさらさんねん。
ほんまにもう腹立つなもう。
嬶ただいま」。
「どうやったんや?」。
「あけへんあけへんがな。
あのお寺のど坊主!ごてくさごてくさぬかしてくれさらさんねんほんまに。
俺にええ考えええ考えがあんねうん。
今度伝吉さんうちへ遊びに来たらないつものように酒肴ごっつぉう出せうん。
出すだけ出したらわれあの風呂行くような顔して表へパッと飛び出せ。
風呂行くような顔して表行け。
おらあ得意先へ植木持っていくような顔して表へ出て裏手へ回ってな裏の黒板塀に節穴にこれぐらいの節穴が開いたある。
そっからジ〜ッとのぞいとく。
お光と2人っきりにしろ。
2人っきりにしとくねがな。
伝吉さん酒飲んだ勢いやお前。
お光の手でもグ〜ッと握らんかい。
おらそれ見るなりツカツカッと後ろへ飛んである。
『伝吉さんうちの大事な娘にあんた何ちゅう事しなはんねん』。
『こらおとっつぁんえらい失礼を…』。
『失礼で事が済みますかいな』。
『ほたらどうしたらよろし?』。
『うちの養子においなはれ』てこれどや?これどや?」。
(笑い)「ようそんなあほな事考えなはったな。
もう頼むさかい近所に恥さらしやさかいそんなあほな事やめとき」。
「いや〜おらなんとあってもやったんねん」とえらい事を考え出しよった。
そんな事知らん伝吉さんこそ暗剣殺に向こうたようなもんでございまして。
「おとっつぁんおはようさんで」。
「伝吉さんちょ…ちょっといやいやいやいや…ちょっと…もっとずっとずっと奥へ奥へ奥へ上がって」。
「おとっつぁんそれではあまりにもたかが…」。
「高上がりも低下がりもおまへんがな。
いずれはあんたのうちになる…。
いえ何でも何でも何でも…。
ええ。
え〜どうぞゆっくり…ゆっくりできまんねやろ?ほなお座布団を…。
おい嬶嬶!伝吉さん来てもらった。
あんじょうせんかあんじょうせえ。
あほんだら。
ほんまにもう。
いつでも同しもんばっかりやないかお前。
ちょっとたまにはお前変えたらどないやねんほんまにもう。
伝吉さんえらいすんまへんな。
いつ来ても同しようなもんばっかりでえらいすんまへんなええ。
どうぞゆっくりしておくんなはれ。
お光どこ行ったええ?奥に?お光お光!ちょっとこっち来い。
伝吉さん来とくれた。
こっち来い。
あほお前。
風呂上がりで赤い顔すんなやあれへんがなお前。
風呂上がりで赤い顔したら色が黒う見えるわほんまにもう。
伝吉さんの横手座れ伝吉さんの横手へ。
伝…。
あほ!おかんの横手へ座ったら…どないしまんねん。
伝吉さんの横手へ座らんかいお前。
嬶!われもお前出すもん出したら行てこんかい」。
「どこへ行くねや?」。
(笑い)「『どこへ行くねや』て…。
風呂行てこい風呂へ。
ああ。
あすぐ帰ってくんな。
少々のぼせてもええさかい長い事入ってこい。
分かっとるな!伝吉さんお待っ遠さんでええ。
今あんたうちの嬶『どうしても風呂行きたい』ちゅうて行きよったええ。
うちの嬶また風呂行たらなかなか帰ってけぇしませんで。
あっちでベラベラこっちでベラベラしゃべりたくてなかなか帰って…。
実は何だんねんわたいも今思い出しましてな。
得意先へ植木一本届けなあきまへんねん。
ええ。
いや〜あの…今日どうしても今日中に納めてくれ言われてまんのでなちょっと遠方だんので時間かかると…いや大丈夫大丈夫ええ。
あんた一人にしときまへん。
お光お光残しておきますさかいお光残して…。
ここ伝吉さん大事なとこでよう聞いといておくんなはれ。
ほかの男やったらお光よう残しときまへんで。
あんたやさかいお光残しときまんねんで。
今あのねあのよう聞いといておくんなはれ。
今嬶風呂行てまんねんで。
わたいこれから得意先へ植木持っていきまんねん。
家の中2人っきりでんねやで。
分かってまんな。
ここよう聞いておいておくんなはれや。
嬶今風呂行てまんねんで。
わたいこれから得意先へ植木持っていきまんねん。
2人っきりでんねんで。
ほかの男やったらよう任しまへんで。
分かってまっしゃろな!お〜熱〜っ!」ておやっさん一人で汗かいとる。
裏手へ回りまして裏の黒板塀にこれぐらいの節穴が開いてございます。
そっからおとっつぁんず〜っとのぞいとる。
「あっわ〜アハハハハ…。
いや〜あ…あないして並んでたらお…お雛はんの夫婦みたいやな。
きれいだな〜ええ?アハハハ。
え何や何や?お光何や言うとるでええ?『伝吉さんうちのおとっつぁんはキョトの慌て者』。
ほっとけあほんだら!何をぬかしよんねん。
まあまあ親はキョトの慌て者でも子はええ子産んだんのじゃ。
今日は何言うても構へんのじゃ。
な。
え?何何?何や何や?何や言うとるで。
え?『伝吉さんお一ついかがでおます?』。
おうまい事言いよるがなおい。
お光はどこであんな事覚えてきよってんな。
そやそやな。
勧めないかんで。
何何?え?伝吉さんも何や言うとる。
『お光ちゃんもお一ついかがでおます?』。
伝吉さんもなかなか隅に置けんがなおい。
ええ?ええ調子やええ調子や。
そやそやな。
え?何?お光言うとる。
え?『私は不調法で頂かれしまへん』。
そこでそんな事言うたらあけんがなお前。
そいでまた男だけ飲んでもいかんがな。
今日はお前も飲まなあかんねがな。
飲んでお前ちょっと飲んでやな『伝吉さん私酔っちゃったわ』とこういかなあかんねがなおい。
違うがな…。
お前も飲めっちゅうとんねんこら。
飲まんかいこら!飲めこらほんまに!飲まなあかんがな!」ておやっさん一生懸命黒板塀に顔こすりつけるもんですさかい顔半分真っ黒けになってしまいよってからに。
「えろう長居を致しまして程のうおとっつぁんもおかはんもお帰りでございましょう。
私もお寺に用事もございますのでこれで失礼をします」。
「おいそれ何をすんねんなおい。
そのまま帰らしたんではわいの出番があれへんがなほんまにもう。
どもならんであのお光はほんまに。
こらお光!」。
「プッおとっつぁん面白い顔」。
「ほっとけあほんだら!親はおもろい顔でも子はええ子産んだんのんじゃ」。
「そうやおめへんがな。
いっぺん鏡見てみぃと…」。
「鏡!?このクソ忙しいのに鏡なんか見てられる…。
何やこれおい!見てみぃ。
親は子の事になったら顔まで黒うしとんのじゃ。
ほんまに。
そやないやろ?そやないがな。
われもちょっとは今日は飲まなあかんねがな」。
「そうかておとっつぁんわたいお酒なんかよう飲ま…」。
「よう飲まなんでも飲まなあかんねやないかい。
は〜いらだつな。
なんとかならんのんかいな!」。
「ただいま。
ええ湯やったわ」。
(笑い)「こら嬶!われこのクソ忙しいのにどこ行ってたんじゃい!?」。
(笑い)「まあ嫌やの。
『どこ行ってたんじゃい」てわてお風呂屋へ行てたんやないか」。
「風呂!?風呂!?所帯人が日に何べん風呂行ったら気ぃ済むのんじゃい!」。
「あんたが『行け』言うたやないかいな」。
「なんぼ俺が言えど頃合い見て帰ってこい!ほんまにもう。
あほんだらほんまにもう。
おいおい嬶。
われもなお前娘をどういう育て方したんじゃ!われの育て方悪いやないかい」。
「ちょっと起きなはれやお光ちゃん。
おとっつぁんに私叱られよんの。
あんた何ぞ行儀の悪い事でもやったんやないか?」。
「行儀がよすぎるちゅうてんねや!」。
「あほかこの人は。
行儀がよすぎるっちゅうて怒る人がおますかいな」。
「あ〜もう何とあっても諦める事ができんがなあ」。
これがあってからというもんは「あの植木屋の娘は男嫌いや」という評判が立ってしまいます。
そうこうしてある日の事嫁はん風呂から慌てて帰ってきよってからに。
「ちょっとあんた落ち着きなはれや。
あんた慌て者やさかい落ち着きなはれや」。
「嬶…火事か!?」。
「もう慌ててなはるこの人は。
わたい今お風呂屋行てた。
角の海苔屋のおばんに聞いたんやけどもうちのお光『乳の色も変わってる。
腹帯もせんならん。
おなかが大きい』とこない言うやおまへんか」。
「え?お光おなかが大きい?これ…母親のわれの責任…わ…われの育て方が…われの責任不行き届きというやっちゃ。
われが悪い」。
「謝ります。
どうぞ堪忍しとくんなはれ。
母親のわたいが一番…堪忍しとくんなはれ」。
「そやから言うたるやろ!何やかんや言うとまだ子どもやねんさかいに飯食う時はちゃんと給仕したる言うてんのにお櫃ごとあてごうと思うやさかいむやみに食うて腹大きなったやないかい!」。
「な…何を言うてまんねんこの人は。
そんな大きなったんと違いまんがな。
子どもができてまんねやないか」。
「え…えっ!?あの…男嫌いのお光に子ども…?だ…誰の子や?誰の子けぇ!」。
「そんなもんお光に聞いてみな分からん」。
「いや…すぐ聞け。
ここへ呼んですぐ聞け!」。
「『すぐ聞け』てあんたがそんなとこで目むいて怒ってて怖い顔してたらお光怖がって何もよう言えしまへんがな」。
「え?そしたらどないすんねん」。
「わたいがまた内緒で聞いときますさかい」。
「そんな殺生な…そんな殺生な事ないでお前。
肝心のええとこだけお前が聞けて俺が聞けんてお前そんな殺生な事はないで。
俺にもちょっとはご聴聞を」。
「お説教やないかまるで。
またわたいが内緒で聞…」。
「よしよしこうしよ。
俺がいたらあかんねやったらここの段梯子段梯子上がったとこ2階で俺聞いてるさかいにここへ呼べ。
お光呼べ。
ここへ呼んでお光に聞け。
で名前が分かったら2階に俺に聞こえるように大きな声で『ほたら何かいなあんたのおなか大きしてやったんはどこそこの誰かいな』と大きな声で言うてくれ。
分かったな?うれしなってきたな。
うちのお光ボテレンか。
ハハッ!・『うちのお光はボテレンじゃ』」ておやっさん踊りながら2階へ上がりよってからに。
「お光ちゃんこっちおいなはれ。
おかはんちょっと大事な話がおますさかいちょっとこっちおいなはれ。
いや用事は後で。
大事な話がおますさかいちょっとこっちへ」。
「おかはん大事な話やったら奥の座敷で…」。
「いやここでよろし。
うちは先祖代々大事な話は皆この段梯子の下でやるようになってる。
ここで。
お座布団当てなや。
お光ちゃんあんた何ぞ隠してる事…。
いや隠したかてあけしまへん。
角の海苔屋のおばんにお風呂屋はんで聞いたけどあんた『乳の色も変わってる。
腹帯もせんならん。
おなかが大きい』とこない言いまへんか。
さあ言うてみなはれ。
あんたのおなか大きしてやったん一体誰?」。
「おかはんあて…あておとっつぁんに叱られる…」。
「いや叱られしまへん。
おとっつぁんにおかんの方からあんじょう言うたげますさかい言うてみなはれ。
あんたのおなか大きしてやったん一体誰?」。
「おかはんあての…あてのおなか大きしてやったんはあのお寺の伝吉さんでんねん」。
よもやと思う伝吉という言葉を聞いたもんですさかいおかんの方はウロが来よった。
けれども2階でちょっとでも早う聞きたがってるおとっつぁん楽しみにしてるおとっつぁんに早い事知らせないかん。
けれどもウロが来てるもんですさかい頭のてっぺんからおかん声出しよってからに。
「ほたら何かいな。
あんたのおなかを大きしてやったんはあのお寺の伝吉さんかいな〜!」。
その声聞くなりおとっつぁん2階からころこんで落ってきた。
「おとっつぁん怖い!」。
「よう取った!よう取ってくれた。
あんな取りにくい伝吉をよう取ってくれた。
おい嬶あの取りにくい伝吉取ってくれたんや。
すぐにかつ節かけてじゃこ載したれ」。
「あんた猫が鼠捕ったように言いなはんなや」。
「よしこりゃ任せとけ!おとっつぁんが今から行て…」。
「ちょっとあんたどこ行くん?」。
「『どこ行く』ったら伝吉を養子にもらいに行くねん」。
「それやったらおめでたでっしゃないかいな。
羽織の一枚も引っ掛けて行きなはれ」。
「よう言うた。
よう言うた!」。
「目むきなはんなそんなとこで。
羽織を…」。
「分かってら!あのお寺のど坊主が何と言おう…。
嬶この羽織のこのひもはえらいまた長いな」。
「そらわたいの腰巻きでっしゃないかいな!何をしてなはんねんな!」。
おとっつぁんは嫁はんの腰巻き頭からかぶってお寺へやって来よった。
「和尚さん。
伝吉さん養子にもらいまひょか。
頂きまひょか」。
「しばらく来んので助かったと思てたが。
幸右衛門何べん来ても同じ事じゃ。
あの伝吉はお前さんとこへ養子にやる訳にはいかんのじゃ」。
「あきまへんあきまへん。
うちのお光ボテレンじゃ。
伝吉さん養子にもらいまひょ。
頂きまひょ」。
「何?すると妊娠じゃと言うのんか?」。
「ニシンもボウダラも数の子もおまへんわい!うちのお光はボテレンじゃ。
伝吉さん養子にもらいまひょ。
頂きまひょか」。
「えらい事しでかしてくれたな。
分かりました。
すぐに伝吉に問いただしましていずれ改めて返事…」。
「あきまへんあきまへん!すぐに返事おくんなはれ。
わたい今から家へ帰って待ってますさかい。
夕方までに色よい返事をおくんなはれ。
返事のしようが悪かってみなはれ。
わたいここの本堂へ油かけて火つけますさかい。
分かってまんな!さいならごめん」。
「あっあ…。
どもならんな…。
『返事のしようが悪かったら本堂へ油かけて火つける』ちゅうとったがな。
あの男はつけかねん男やさかい。
どもならんでほんま。
伝吉。
伝吉はいておりますか?」。
「和尚さんお呼びで?」。
「『お呼びで』はないぞ。
そなたは口と心とば表裏のあるお方…。
いや隠してもうては困ります。
あの植木屋の娘…」。
「恥ずかしい事ながらたった一度…」。
「ささその一度がいかんのじゃ。
妊娠じゃと言うぞ。
こうなってしもた限りにはあらああんたが養子に入ってもらわなしかたがないな」。
「身保証のある私をさようなほどに仰せ下さりありがたき幸せでございますが私は500石の家督を相続せねばならん…」。
「さあさあさあさあそれを言うてもうてはうちの本堂が危ななってんのじゃ。
頼むで檀家を助けると思うてそなたさえ納得して植木屋へ養子に入って下さったら話はまるうに収まるのじゃ。
頼むで私からのお願いじゃ。
養子に入ってやっとくんなされ」。
「私はどうあっても行く訳にはまいりません」。
「そなたも強情なお方じゃな。
私がこれほどまでに頼んで行けんというのには何か訳あっての事か?」。
「はい相手が植木屋でございます。
根はこしらえものかと存じます」。
(拍手)笑福亭呂鶴さんの「植木屋娘」でございました。
いかがでした?もういかにも大阪の街にいそうな陽気なおじさんの話だなと思って聴いてました。
陽気すぎますな。
自分の娘さんがえらい事になってるのに踊ってました。
でも娘さんもすごい真面目な子だなと思って聴いてたのに最後意表をつかれました。
落語はこういう意表をつくとこが楽しみでございます。
というところでまた次回もおつきあい願います。
よろしくお願いします。
では「上方落語の会」今日はこれでお開きです。
さよなら。
2015/10/09(金) 15:15〜15:58
NHK総合1・神戸
上方落語の会 ▽「つる」桂鯛蔵、「植木屋娘」笑福亭呂鶴[字]
▽「つる」桂鯛蔵、「植木屋娘」笑福亭呂鶴▽第354回NHK上方落語の会(27年7月2日)から▽ゲスト:春輝▽ご案内:小佐田定雄(落語作家)
詳細情報
番組内容
第354回NHK上方落語の会から、桂鯛蔵の「つる」と笑福亭呂鶴の「植木屋娘」をお届けする。▽つる:鶴という鳥の名前の由来を教えてもらった男、だまされているとも知らず、納得して友達に教えようとして失敗してしまう…。▽植木屋娘:植木屋幸右衛門は近所の寺預かりの伝吉を娘のお光の婿にと申し込む。寺の和尚は伝吉が五百石の家督を継ぐ身であると明かし説教をするが、諦めきれない幸右衛門は…。▽ゲスト:春輝
出演者
【出演】桂鯛蔵,笑福亭呂鶴,【ゲスト】春輝,【案内】小佐田定雄
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