世界最悪レベルの原発事故から4年。
4月。
原発の奥深くにロボットを送り込む初めての調査が行われた。
メルトダウンした核燃料はどこにあるのか。
原子炉のすぐそばを撮影する。
生々しい事故の爪痕が姿を現した。
人が死に至る量を僅か1時間で超す極めて強い放射線。
この水の下に最大のターゲット溶け落ちた核燃料があると見られている。
東京電力福島第一原子力発電所で始まった事故の後処理廃炉。
長く険しい道のりの一歩を踏み出しています。
廃炉の最大の難関は溶け落ちた核燃料デブリを取り出す事です。
(アラーム)核燃料デブリは原発の構造物などと混ざり固まったもの。
数万年にわたって強い放射線を発し続けます。
3つの原子炉がメルトダウンした福島第一原発。
核燃料デブリがどこにどんな状態であるのかいまだに確認できていません。
推定600トンもの核燃料デブリの取り出しは人類がかつて経験した事のない事態です。
全てのデブリを取り出し原発を解体するまでに40年ともいわれる歳月が待ち受けています。
NHKは廃炉の最前線にカメラを据え長期にわたって記録。
今回は核燃料デブリに挑む人々の姿を見つめます。
原発事故によって避難を続けている11万人。
元の暮らしと土地をいつ取り戻す事ができるのか。
「シリーズ廃炉への道2015」。
40年ともいわれる長い道のり廃炉。
その最大の壁が核燃料デブリの取り出しです。
今核燃料デブリの位置や状態を捉えるため科学者や技術者を総動員した国のプロジェクトが進められています。
核燃料デブリは数万年にわたって強い放射線を発し続けます。
これは36年前に出来たデブリ。
世界で初めて運転中にメルトダウンしたスリーマイル島原発から取り出されました。
このデブリを取り出す際の貴重な映像が残されています。
核燃料が溶けて周りの金属などと混ざり合い固まってデブリとなっていました。
核燃料デブリの姿を捉えるのに3年。
取り出しに11年の歳月を費やしました。
スリーマイル島で事故を起こした原子炉は1つ。
核燃料デブリは全て原子炉の中にとどまっていました。
それに対し福島第一原発では3つの原子炉がメルトダウン。
核燃料は原子炉の底を突き破ったとされています。
更に放射性物質を漏らさないための最後のとりでといわれる格納容器の下部に達したと見られています。
しかしこれらはシミュレーションによる推定です。
実際に核燃料デブリがどこにどんな状態であるのか確かめられてはいないのです。
核燃料デブリの姿をなんとか捉える事ができないか。
今年2月。
福島第一原発に画期的な方法が導入された。
1号機のすぐそばに設置された特殊な装置。
角度を変えて置かれた2台の装置を使って高い放射線量で近づけない原発の内部を外から透視する。
特に核燃料があった原子炉の内部がどうなっているか確認する事がねらいだ。
国による調査の責任者物理学者の史彦さん。
宇宙から降り注ぐ素粒子を使って物体を透視する技術を研究してきた。
事故当時第一線を退いていたさんは自らの専門分野を廃炉に生かしたいと再び最前線に立った。
宇宙線が大気圏に突入する際ミューオンと呼ばれる素粒子が無数に生まれる。
ミューオンは物質を通過する性質を持つ。
物質の密度によって通過するミューオンの量は異なる。
核燃料は極めて密度が高くミューオンをほとんど遮ってしまう。
さんの装置でミューオンを検知すると原発を通り抜けた所が白く遮られた所が黒く映る。
例えば原子炉に核燃料がある通常の状態ではそこは黒く映し出されるはずだ。
ミューオンによる調査は時間をかけるほど精度が上がる。
測定開始から1か月を超え徐々に内部の様子が見え始めた。
これは…これはあれですか?格納容器や原子炉の構造がぼんやりと浮かび上がった。
ミューオンによる透視画像に構造物の輪郭を重ね合わせてみる。
原子炉全体が真っ白になっている。
この事は原子炉内部に核燃料がほとんどとどまっていない事を意味する。
1号機にあったおよそ70トンの核燃料。
そのほとんどが原子炉から溶け落ちるという事故のすさまじさが改めて浮き彫りになった。
では一体デブリはどこにあるのか。
原子炉内に残されていないとすればターゲットは更にその下。
そこは地下に埋設された格納容器の下部だ。
その1号機の格納容器の下部を探る調査が始まった。
おはようございます。
お疲れさまです。
現場で指揮を執る…事故発生直後から対応に当たりその後廃炉のための調査に携わる事になった。
今回の調査は初めて格納容器内部にロボットを送り込む。
格納容器にロボットを投入できる可能性のあるルートは限られている。
候補の一つは格納容器下部に直接つながっている太い配管。
原発を止めて検査をする時に使われていた。
しかし事故後は極めて放射線量が高く人が近づく事ができない。
ようやく見つかったのが検査のための予備の配管だった。
ここなら防護服を着れば人が近づく事ができる。
しかし配管の直径は僅か10センチ。
その配管を通す事ができるロボットを3年かけて開発した。
まず細長い形で配管の中を蛇のように進む。
格納容器の内部にたどりついたあと走行しやすい形に変形し中央のカメラで映像を撮る事ができる。
配管から投入されたロボットが着地するのは格納容器内の通路。
定期検査の際に人が歩けるよう原子炉を取り囲む形で設置されている。
この通路は原子炉のすぐ下1階部分に位置している。
核燃料デブリは更にその下格納容器の底の部分に溶け落ちていると見られる。
調査を実施するメーカーでは格納容器の一部を実物と同じサイズで再現し訓練を繰り返してきた。
被ばくを抑えるために6チームに分かれ20分交代で作業を行う。
はい前進。
はいストップ。
国と東京電力メーカーが合同で実施するこの調査。
1号機から3号機までの調査に2年で15億円の国の予算が投じられている。
ロボット投入本番の日を迎えた。
清水さんのヘルメットに小型カメラを装着。
調査の様子を撮影する。
清水さんが向かったのは1号機の建物の2階。
ここがロボットを遠隔操作するモニタールーム。
作業員たちの前線基地となる。
ロボットを投入する作業員たちは放射線を遮る重さ10キロの鉛のベストを装着した。
モニタールームを出発した作業員が向かったのは原子炉からおよそ20メートル離れたロボットの投入口。
手作業でロボットを配管に投入し始めた。
ロボットが格納容器内部に押し込まれていく。
配管の出口につけられた別のカメラでロボットを確認しながら慎重に降ろしていく。
ロボットは無事格納容器内部の通路に降り立った。
準備OKです!事故の爪痕をロボットが初めて映像に捉えた。
内部には白いモヤが立ちこめていた。
核燃料デブリを冷やすために注がれている冷却水がデブリの熱で湯気になっていると見られる。
1時間とどまれば人が死に至る放射線量だ。
ロボットが原子炉を支える土台の一部を捉えた。
この土台の壁の向こうを核燃料が溶け落ちていったと見られるが壁に大きな損傷は見られない。
地下にある核燃料デブリを見る事はできるのか。
通路の床の隙間にカメラを向ける。
通路の下およそ70センチ。
水面が見えた。
デブリが出し続ける熱を抑えるための冷却水だ。
改めて冷却水が安定して確保されている事が確認された。
ライトの明かりが足りず水の中の様子までは見る事ができない。
何度も下をのぞくがやはりデブリは見えない。
この場所から格納容器の底まではおよそ3メートル。
デブリはその間にあるはずだ。
デブリの姿を捉えるためには通路よりも更に下格納容器の底に降りるしかない。
ロボットは地下へとつながる2か所を調べる。
その一つ。
地下への入り口に設置されたはしごの手すりを捉えた。
入り口が塞がれている様子はなくはしごに損傷も見られない。
今開発している水中を調査するロボットがここからなら投入できる。
更にもう一つの地下への入り口を確認する。
途中で異変が映し出された。
カメラが映像に捉えたのは画面上縦に伸びる太い配管。
この配管は原子炉に直接つながっている。
メルトダウンの際に発生した大量の放射性物質がこの配管に流れ込んだ可能性がある。
配管に損傷は見られない。
しかしこの配管を覆っていた放射線を遮蔽するための鉛のシートが通路の上に溶け落ちていた。
メルトダウンの際格納容器内の温度は300度を超えていたと見られる。
改めて事故のすさまじさを突きつけられた。
あと少しでもう一つの地下への入り口にたどりつこうとした時だった。
ロボットが溝にはまり動けなくなってしまったのだ。
くるんと。
脱出を試みる事2時間余り。
最後は回収を諦めロボットのケーブルを切断した。
5日後別のロボットが投入され2回目の調査が行われた。
10日間かけてようやく格納容器内部の一つのフロアを確認する事ができた。
調査チームは早ければ今年度中に今回確認した地下への入り口からロボットを水中に投入したいと考えている。
核燃料デブリを捉えるためには地道な作業を重ねるしかない。
1号機に続き2号機3号機の調査も待ち受けている。
それぞれ溶け落ち方は全く異なると見られる。
核燃料デブリの全体像を把握するのは容易ではない。
東京電力で廃炉の指揮を執る増田尚宏さん。
長い時間をかけて核燃料デブリを取り出し原発を解体する廃炉。
最大の難関はデブリの取り出し。
6年後までに始める予定です。
今デブリには水が注がれ安定した状態にあると見られています。
問題は取り出す時です。
現在の計画では事故で壊れた格納容器を補修して水で満たし放射性物質を閉じ込めてからデブリを取り出す方針です。
どうすればデブリを切り出す事ができるのか。
デブリを細かくしたり動かしたりする際リスクはないのか。
取り出す方法を決めるためにはデブリの性質をつかむ必要があります。
原子炉や格納容器の内部にはさまざまな構造物があるためデブリは何が混ざっているかによって性質が異なってくるのです。
今多くの研究者たちがその性質を突き止めようと模擬的に福島第一原発のデブリを作って研究を進めています。
核燃料デブリの取り出し。
成否はこの数年の準備段階にかかっているのです。
今福島のデブリの未知なる性質が次々と明らかになり始めている。
日本がフランスと共同で進めるデブリの研究。
その責任者の鷲谷忠博さん。
これまで新しいタイプの原子炉の開発に携わってきたが事故のあとは廃炉の研究に専念している。
鷲谷さんは福島第一原発でデブリが出来た際の特殊な状況に注目している。
原子炉の底を突き破り格納容器の下部に達したと見られる核燃料。
東京電力のシミュレーションによればその一部は分厚いコンクリートを溶かしたと見られる。
デブリには大量のコンクリートが溶け込んでいる可能性がある。
デブリにコンクリートが混ざるとどうなるのか。
この実験施設では核燃料の材料とコンクリートを溶かし合わせ模擬のデブリを作る事ができる。
2,000度を超えマグマのようになった核燃料の材料をコンクリートの受け皿に流し込む。
これがコンクリートと混ざり合った模擬のデブリだ。
断面には無数の隙間が見られる。
溶ける際コンクリートから発生した水蒸気や二酸化炭素による気泡の跡だ。
隙間があると風化してもろくなりやすい。
長期間放置すると放射性物質が飛散する可能性がある。
29年前に事故を起こしたチェルノブイリ原発。
デブリにはコンクリートが含まれていた。
今放射性物質の飛散をどう防ぐかが問題になっている。
チェルノブイリではデブリは水につかっておらず石棺と呼ばれる建物で覆って放射線量が下がるのを待っている。
福島のデブリにも将来的に放射性物質が飛散する可能性はないのか。
鷲谷さんは更に追究し対策に生かしたいとしている。
福島のデブリに潜む核燃料特有の難しさも浮かび上がっています。
原発事故の解析を続けてきた内藤正則さん。
今回の事故で何が起きたのか科学的に検証する事が自らの役割だと考えてきました。
内藤さんたちが調査するのはコンクリートと混ざり合っていないデブリの上の部分。
核燃料に溶け込んだ物質の成分がスリーマイル島原発とは違うため独自の性質を持っていると見られます。
実験を行うのは…核燃料を溶かしてさまざまなデブリを作り出す事ができる世界有数の施設です。
国のプロジェクトとして行われる今回の実験。
福島第一原発の事故の解析結果を使って核燃料を溶かし模擬デブリを作ります。
用意したのは核燃料を形成するウラン。
それを覆う金属のジルコニウムなど原子炉内にあった5つの物質です。
事故の際のデータに基づきグラム単位でその割合を決めました。
内藤さんが特に注目するのは…これは核分裂反応を抑える物質で原子炉を止める際に核燃料の間に挿入される制御棒の主な材料です。
炭化ホウ素がウランの間に均等に入る事で核分裂が制御されます。
溶け落ちたデブリの中で炭化ホウ素はどのようなバランスで混ざっているのか。
実験が始まりました。
加熱開始から1時間後。
表面温度は2,200度に達します。
内部の温度は更に上昇。
全ての物質が溶け混ざり合いました。
18時間後。
冷えて固まった模擬デブリ。
完全な再現ではないものの福島のデブリの特徴を捉えるためには重要な手がかりの一つとなります。
デブリは2つの層に分かれていました。
金属が集中する上の部分とそうでない下の部分。
それぞれを電子顕微鏡で拡大して調べます。
上の層と下の層ではウランの濃度に3倍もの違いが生じていました。
それだけではありませんでした。
核分裂を制御する役割の炭化ホウ素にも大きな偏りが見られたのです。
デブリを縦に切ってみるとウランが少ない上の層に炭化ホウ素が集中。
ウランが多い下の層には炭化ホウ素がほとんど含まれていませんでした。
この違いは物質の比重や溶ける温度によるものと見られます。
研究者たちはあるリスクの可能性を指摘しました。
今回の実験は小規模で行われたため今後原子炉の一部を再現した大規模な実験を行い更に検証する予定です。
福島のデブリに再臨界の可能性はあるのか。
臨界とは通常原子炉の中で起こっている核分裂反応の連鎖です。
ウランが連続的に分裂し新たな放射性物質を生み出します。
その際に膨大な熱も生じます。
この臨界がデブリの中で再び起きるのが再臨界です。
韓国での実験結果について臨界に詳しい専門家はどう見るのか。
ええそうするとこうなっているという事ですか?もう塊ですよね。
国の廃炉プロジェクトに助言する外部委員の高木直行さん。
ウランと炭化ホウ素のバランスが崩れた状態で水につかったデブリを砕き取り出すと局所的に再臨界が起きる可能性があると指摘しています。
廃炉の作業を進める東京電力。
デブリは現在の状態であれば安定していて再臨界が起きる可能性は極めて低いと見ています。
デブリ取り出しの際は臨界が起きないよう万全の対策をとるとしています。
福島第一原発へと続く国道6号線。
その沿道は4年前から時が止まったままだ。
元の暮らしが戻る日はいつ来るのか。
40年ともいわれる廃炉への道。
その最大の壁核燃料デブリ。
デブリ取り出しに向けた準備を進めるメーカー。
再臨界への対応も検討している。
デブリ取り出しのために開発中の特殊なロボット。
再臨界の兆しをいち早く検知する装置をロボットの近くに置けないか議論を重ねている。
この先デブリを安全に取り出し管理していけるのか。
科学者や技術者たちの模索が続いている。
原発事故がもたらした核燃料デブリとの未知なる闘い。
これから正念場を迎える。
去年とあるお宅のテレビの下からお宝が見つかった!2015/10/09(金) 01:30〜02:20
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル 廃炉への道 2015「“核燃料デブリ”未知なる闘い」[字][再]
未曽有の原発事故を起こした福島第一原発で進む、世界でも例のない「廃炉」の取り組みを記録するシリーズ。今回は廃炉の最大の難関“核燃料デブリ”との未知なる闘いに迫る
詳細情報
番組内容
未曽有の原発事故を起こした福島第一原発で進む、世界でも例のない「廃炉」の取り組みを記録するシリーズ。今回は、廃炉の最大の難関“核燃料デブリ”との闘いに迫る。今なお位置さえ特定できていないデブリ。素粒子を使った“透視”や、ロボットカメラなど、最新の技術を使ってデブリの姿を捉えようという試みが急ピッチで進む。最新の研究ではデブリに潜むリスクも浮かび上がった。未知なる闘いの最前線をルポする。
出演者
【語り】西島秀俊
おしらせ
〜平成27年度文化庁芸術祭参加〜
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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