★アーティスト・マネジメントに使える実践心理学★

エンターテイメントは、感情を刺激するためのもの。
アーティストとは、感情を揺さぶるファンタジスタでありつつも、自らの"こころ"を摩耗しながら闘う孤独な戦士だ。
これからのアーティスト・マネジメントに必要なのは、実践的な"こころ"の使い方の知識と技術だ!!


      

 

アーティストマネジメントの現場において、「悩み」の相談、「クレーム」処理の対応はつきものだ。


それをおろそかにしたり、ないがしろにすることは、お互いの信用を損ねる原因となる。


ただのアーティストの「わがまま」「気まぐれ」「エゴ」といった簡単な言葉では片付けられない。


それこそアーティストが、マネジメントに求めたい仕事である。


ところが、ときに私たちはその問題を置き去りにしたり、迂回することで計画を先に進めようとしてしまう。


問題の解決よりも、言葉のトリックやごまかしで、その場を切り抜けようとする。


ときにアーティストを騙すように、もしくはその「問題」に触れないように論点をすり替えて話を進めていく。


しかし、置き去りにされた問題はたとえ小さなことであっても、いずれ積み重なって「大きな問題」に発展する。


アーティストとマネジメント、各メンバー間の不和、それらは本質的な問題を放置することによって発生する金属疲労のようなもなのである。


彼らが何を求め、どのような結果を望んでいるのか、我々マネジメントはあらゆる問題を整理する能力が求められているのだ。


一つの問題がときに幾重にも絡まり、もはやその悩みの本質が見えなくなるほど様々なものがまとわりつき複雑化することがある。


その絡み合い、硬く固まった問題を紐解き、整理することが必要なのだ。


そのような作業において、その問題が生じたプロセスを、機能的に整理することができたら、どれほど心強いだろうか?


ニューロロジカル・レベルという考え方が、問題を整理するときに役に立つ。


ニューロロジカル・レベルとは、人間の意識を以下の6つの階層に分けて分類する考え方だ。


「環境」「行動」「能力」「信念・価値観」「自己認識(自己一致)」「スピリチュアル」の6つの階層に分類され、最も上位の概念が「スピリチュアル」で最も下位の概念が「環境」に位置する。


下位概念意識的であるのに対し、上位概念にいくほど無意識化され心の中に保存されている。


そして、上位の概念が下位の概念に影響を与える


つまり、「環境」レベルの問題は「行動」という上位概念のによって変化を与えることができる


たとえば「掃除」という行動をとることで、部屋が綺麗になり「環境」が整い気分良い空間が手に入る。


それでは6つのレベルについてそれぞれ説明をしよう。



①環境レベル


五感を通して知ることができる、周囲の状況


つまり、「見る」もの、「聞く」もの、「感じる」ものすべて、自分が収集している外界の情報そのもので、100%意識的なものである。


その名の通り、私たちの周囲の状況のことに関する認識である。


人や時間といった概念もこのレベルに入る。


「今日は月◯日月曜日◯◯さんと◯◯にいる」という状況はこの環境レベルである。


たとえば、「スタジオの設備が悪い」「ギターの音が悪い」「時間に余裕がない」「お金が足りない」という状況はこの「環境」レベルの問題である。


「いつ~」「どこで~」「誰が~」に関する問題はこの「環境」レベルの問題である。



②行動レベル


「~をする」「~をしない」私たちが何をするか、何を考えるか行動だけでなく思考もこのレベルに入る。


自分から起こす行動以外に、外からの刺激に対する反応も含む。


「環境」レベルの問題の解決は、この「行動」を変えることで影響を与えることができる。


「自宅にいる」という「環境」は、「移動する」という「行動」によって「スタジオにいる」という「環境」に変化を与えることができる。


「曲作りをしない」「コミュニケーションをとらない」「ライブをしない」という、「行動」レベルの問題の解決には、この上位概念である「能力」もしくは「信念・価値観」レベルでの変化が影響する。


「曲作りをしない」という問題は、「曲作りができない」という「能力」レベルに問題があるのか、「曲作りをしたくない」という「信念・価値観」のレベルに問題があるのかを確認する必要がある。




③能力レベル


「~できない」「~できる」という発言、「どのように」にあたる問題。


特定の「行動」を行うためのスキル、技術、資質に関する問題


たとえば、ギターを弾くためには「ギターが弾ける」という「能力」が必要になる。


この「能力」レベルの質「どのように」が、「行動」の質を左右し、「環境」のあり方にも影響を及ぼす。


楽器を弾ける「能力」の差が、楽曲の難度や表現力に影響をあたえる。

「能力」は、その人の内部にあるため、行動の結果として外部にあらわれ評価される。





④信念・価値観レベル


「なぜそれを行うのか?」という基本原則。


私たちが信じていることではなく、その人の行動の原則になっていること。


人間の「行動」には必ず理由があるが、今までの経験や学習によって無意識レベルで判断される行動原則のプログラムである。


「信念」は、人間の行動に意味を付け「価値観」は「なぜ」の答えにあたる重要な要素となる。


「信念」「価値観」は、ほとんど無意識レベルでその人の人生の方向性を示し、その人の判断基準となっている。


その「信念・価値観」は本人の力付けになることもあれば、時にそれが足枷となって本人の人生に制限をあたえることもある。




⑤自己認識(自己一致)レベル


個人のアイデンティティー、自分はなにものか、役割使命をあらわす。


「自分は○○である。」と認識している部分。


「私はギタリストである。」「私はいいマネジャーである。」「わたしは優れたディレクターである。」など、自分のことをどのように認識しているかという、自己存在感覚であり、人生の使命を定義する中心的信念である。


経験によって築かれ、変化に適応する柔軟性がある。


「信念」を生み出し、「価値観」を変え、「能力」を身につけ、「行動」を起こし、「環境」を変える。


つまり、その人の個人に内胞されるすべての要素に影響を与える、最も重要なレベルである。


人間の悩みの多くは、なりたい自分になれないジレンマから起こる。


人間は、今の自分なりたい自分自己一致を目指して生きる生き物である。




⑥スピリチュアル・レベル


個人を超越した存在。


個人としてのレベルを超えて、自分は自分を超えた大きなシステムの一部であるという感覚。


社会の一員であるという感覚、バンドの一員であるという感覚、会社の一員であるという感覚、家族の一員であるという感覚。


アドラーの言うところの共同体感覚である。


このような共同体感覚は、自分は社会や組織、環境の中において重要な役割を担っているという幸福感を得ることができる。


自己の存在が「For Whom? (誰のために)」「For What?(何のために)」あるのかの回答となる。


スピリチュアルレベルが変わると、「自己認識」レベルが変わる。


たとえば、バンドと自己を切り離すのではなく、自分はバンドの重要なメンバーだと感じることにより、自己認識が「ドラマー」から「他のメンバーはもちろん、他のバンドやファンにまで良い影響をあたえるドラマー」に変容する。




たとえば、あるメンバーから「メンバーとうまくいかないからバンドをやめたい」という相談があったとしよう。


「バンドをやめたい」理由は、「メンバーとうまくいかない」という状況から生じた彼の気持ちの表れだ。


この時、我々は「なんでうまくいかないのか?」という問題に焦点を当てがちだ。


そして、「今度一緒にみんなでゆっくり飲みに行って話をしよう」などといってその問題点について話し合う。


そこでは、責任の転化、問題のすり替え、ごまかし、権力闘争の駆け引きが行われた後、「とりあえずこれからもがんばろう」などというところに落ち着く。


一見問題は解決したかのように思われるが、根本的な問題の解決には至っていない。


なぜなら「メンバーとうまくいかない」というのは、「環境」に対する認識の問題であるが、「人間関係」という「環境」レベルだけに焦点をあてても本質は改善されないからだ。


そこで、このニューロロジカル・レベルによって以下のように整理することがでできる。


人間関係という「環境」を改善しようとするならば、お互いの「行動」レベルに対しての問題点にも目を向ける。


そこでお互いを思いやるような「行動」を「とるかとらないか」ということになる。


そしてその「行動」をとるためには、そのための「能力」が備わっているかどうかということも問題になる。

相手を尊重することができるかということだ。


そのためには、お互いをメンバーとして「信念・価値観」レベルではどのように思っているかということのチェックも必要だ。

お互いの「価値観」にずれはないのか、それにまつわる「信念」はどうか。

この領域は、日頃意識して認識していない部分である。

それを、意識化することが重要となる。


そして、その人自身が「自己認識」レベルでどのように思っているかの検証も必要である。

もし「私はメンバーとうまくいかない人間だ」という「自己認識」レベルの問題があったとしたら、その人の上位概念である「スピリチュアルレベル」における変化が必要となる。

つまり、バンドにおける「共同体感覚」をその人が感じていないことに問題がある。

細かい不満が積み重なったり、日頃の行動の積み重ねで、この「共同体感覚」が損なわれたことが原因である。

「私はこのバンドにおいて重要な役割を果たしている」という「共同体感覚」は、「わたしはバンドの重要メンバーだ」という自己認識を生み出し、「自分にとってメンバーは重要だ」という「信念・価値観」を生みだす。


そして、メンバーを理解し尊重するという「能力」が身につき、他のメンバーを気遣う「行動」をとるようになる。


すると「人間関係」という「環境」は大きく変容する。


日頃から、ひとりひとりの細かい声に気を配って、大切に思う「こころ」配りが、おたがいの「自己重要感」を育て、「共同体感覚」を育むことになる。


だから、我々マネジメントは、アーティストひとりひとりを重要なメンバーであると認識し、細かいクレームや相談の一つ一つの対応に気を配らなければいけない。



エンタテインメント・ビジネス成功のセオリー⑱ちいさなことからコツコツと…


蛇足であるが、同じような構造で、我々をとりまく社会を見てみよう。


福島第一原発からは今でも、放射性物質が放出されている。


そして、多くの人が未だに避難先で不自由な暮らしを続けている。


「環境」が大きく汚されてしまった。


除染という「行動」により、この汚染を除去しようとしているが、我々は線量を下げることも、事故を収束させる能力もない。


なぜなら、この国の指導的立場にある人にとって、「原発」「価値」のあるものだから。


自分たちには、「原発を推進する立場の人」という「自己認識」があるからである。


もし我々の指導的立場にある人物が、個人の損得や存在を超えて、地球の一部であるという意識を持つことができたとしたら、「原子力」などというデメリットだらけの過去の遺物を手放すことができるようになるはずだ。


確かに、科学は人間に大きな一歩を与えたが、それは使い方によっては破滅への一歩でもあるのだ。


科学や経済に支配されるのではなく、それを正しくコントロールするには、自分もこの世界のシステムの一つであるという意識のなかで、環境に配慮するという「共同体感覚」を身につけることが不可欠だ。


そして、「自分たちは、自然の一部である」という進歩的な「自己認識」が生まれれば、「原発」は生命を脅かす不要なものであるという「信念・価値観」が手に入る。


それにより、我々は原子力を封じ込めるための「能力」を手に入れようと初めて前向きに考える。


そして過去の遺物であり、負の遺産である「原子力」を廃絶するための「行動」を一丸となって起こすであろう。


そして、その時本当の意味で私たちに必要な「環境」が手に入る。

戦争が無くならないのも、貧困が無くならないのも、指導的立場の人間が個人の利益を優先しているからである。

<p class="p3">それを、ニューロロジカル・レベルを使って整理していくと次のように整理することができる。</p>
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功する人と、成功しない人。



人生を意のままに楽しんで生きることのできる人と、

残念な人生を送る人。


夢をカタチにできる人と、

まったく夢のままで終わらせる人。



そこにはどのような違いがあるのだろう。


同じ人間なのに、

なぜこのように結果は違うのか…。



アーティストの中にも楽曲作りの才能やルックスに恵まれていながらも、

望んだような結果を得られない人も多い。



運が悪い、

チャンスに恵まれなかった

…本当にそうだろうか?



物事には原因と結果がある。



原因の積み重ねによって、

ある一つの結果が生まれると考える人は多い。



たとえば、成功者に対して

「努力をしたから成功したんだ。」

と考える人。


このような人は、

ものごとには原因があって結果があると考える。



たとえば、

「私は子供のころ勉強ができなかったから、今も苦労しているんだ。」

と思う人はこのパターンだ。


「あのバンドは、フェスに出たから有名になったんだ。」


「あのアーティストは、アニメのタイアップがあったから売れたんだ。」



果たしてそうだろうか?



アインシュタインは子供のころ、

学校の勉強は苦手だったといわれている。


フェスに出ているバンドは、

すべて人気がでているだろうか?


アニメ番組のテーマ曲を演奏したアーティストは、

すべて売れているだろうか?




すべての物事には原因があり、

その原因が積み重なってその結果を生んだと信じている。




このような人は、

過去の出来事との因果関係に縛られている。



そして、

過ぎ去った過去は変えることはできないので、

自分の欲しいものは永久に手に入らないと思っている。



過去に原因があるから、
今の結果があると信じ込む
タイプ。




これを「原因論」という。




一方で

「成功するために努力をした」

と考える人。



成功という目的のために努力をしてきた」
と考える人は、

自分の人生を未来にフォーカスすることができる。



なりたい自分の未来の姿を先に作り上げ、

それに向かって自分の人生を組み立てていくタイプ。



つまり、人生は

目的に向かって生きていく

ことが重要で、

すべては偶然の積み重ねの結果ではなく、

必然的な行動の結果であると考える。



これを「目的論」と言う。




彼らは常に、

「自分の未来は思い通り」
「自分の意思でなんでもできる」
信じている。




自分を信じると書いて、

「自信」となる。



よく、「根拠のない自信」というが、

自信というのは自分で自分を信じることができれば、
それが立派な根拠になる
のだ。



「自信がない」という人がいるが、

自信というのは「ある」か「ない」で示すものではない。



「自信」というのは

「持つ」か

「持たない」かなのだ!




現在の延長線上に未来があるのは誰しも同じことだが。



現在が過去の積み重ねだととらえるか、

未来のために現在があるととらえるか、

考え方は180度違う。



どちらの考え方が、

成功している人の思考パターンかは言うまでもない。




「未来」のために今やるべきことを為す人が

望んでいる姿を手にいれることができる。



ミュージシャンなら誰しも、

音楽で成功したい、

多くの人に聴いてもらいたい

…と考えるのはあたりまえのことである。



しかし、すべての人が望んだようになるわけではない

…なぜか?






NLPの前提の一つに

誰かができることは、自分にもできる」
というのがある。



どんな偉業であっても、

達成できた人がいたならば、

それは誰にでも可能性があるというものだ。



達成した人を知っているならば、

あとはそのやりかたを同じように真似ればいいというものだ。




ここからが、本当に今回言いたかったこと。




男性であれば一度や二度ぐらいは、

プラモデルを作った経験があるだろう…。



プラモデル店のショウウインドウには、

プロやマニアが作った完成品が飾ってある。



ピッカピカのスーパーカーや、

兵士の表情まで再現された戦争のジオラマ、

そして今にも動き出しそうなガンプラ。



それはそれは細部にわたって見事に作り上げ、

「ああ、こんなの作れるんだ~」と子供の心に火をつける。




バンドを始めたきっかけもそうだと思う。



誰にだって影響を受けたアーティストがいたはずだ。



「ああ、かっこいい!こんな風になれたら…。」



本気でその人みたいになりたいと

「夢」を持ってバンドを組んだに違いない。




ところが、バンドを始めると

練習、ライブ、曲作り、バイトに振り回され、

いつしか年月が過ぎていく。



「ああ、フェスに出れれば、

俺たちも売れるのに~」


「ああ、タイアップが決まれば、

俺たちも売れるのに~」


「ああ、メジャーから出すことができれば、

俺たちもチャンスがあるのに~」


きっかけがないことが、

売れない理由だと思っている人は多い。



プラモデルだって設計図通りに組み立てるだけでは、

ショウウインドウで見たものとは程遠いものになる。



ウインドウに飾られるような作品に仕上げるには、

どうしたらリアルに仕上がるかということを考え、

本物に少しでも近づけていくという作業が重要なのだ。




重要なのは「こうなりたい」から、
今は「こうやりたい」と主体的に考える
ことだ。


自分に選択肢があるということだ。


未来の「こうなりたい」にむけて、

そのために何をやったらいいかを考えることだ。



もう一度

憧れのミュージシャンが

どうやってその地位を築いたか、

それを知ってそれを真似てみる。


「こうなりたい」という欲求は

成功するための大切な資源なのだ。



「学ぶ」という言葉は「真似る」と同じ語源で、

「真に似せる」や「誠に習う」という意味から

「まなぶ」や「まね」という言葉が生まれた。



なりたい相手を徹底的に真似ることが、

その人の成功を学ぶということである。



NLPではこれをモデリングという。



問題点を発見してそれを修正していくよりも、

自分が目標とする完成形を真似ることで、

なりたい自分になる近道を得るというプロセスだ。



明確な目標がないということは、

目指すべき目的地への地図を持たずに冒険をすることに等しい。



モデルという目標を得ることで、

その行動、振る舞い、思考、

イメージできることすべてを自分のリソースにすることができる。



それは「未来」をみて、
「今」を生きる
ことになる。



目標がない場合、

多くの人は問題にフォーカスする。



自分のできていないことばかりフォーカスしても、

すこしは良くなるかもしれないが目指すものには程遠い。



自分の憧れのアーティストがいたとしたら、

その人の価値観、振る舞い、プレイ、すべてを徹底的に真似する。



あたかも自分がその人になったように振舞う。



あたかも自分のなかにその人のすべてをインストールしたようになりきる。



そうすることで、その人にあって、いまの自分に足りないリソースに気づく。



あとはそれを身につければいい。



そう、憧れのアーティストにあって今の自分に足りないものを発見することができれば、あとはそれを手にいれるだけだ。



成功するために、身につけることができるリソースがそこにある!


エンタテインメント・ビジネス成功のセオリー⑰ 憧れろ!そしてすべてを真似るべし!


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夢」を現実のものにする、魔法のイメージ・ワークがあるとしたら、どうだろう?


しかも、「お金」がかからないとしたら、試してみても損はないのではないだろうか?


人間は行動する際に、脳のなかでその行動を事前にイメージする。


イメージできないことは、意識して行動にうつすことはできない。


もし、あなたが将来叶えたい「夢」があったとしたら、その「夢」がどのように叶っていくのかということをイメージしよう。

それは、脳にとって目標を成し遂げるためのリハーサルとなる。


アーティスト・マネジメントにおいて、この「夢」を共有することは非常に重要な手段となる。


一緒に共通の「夢」を追っているということが、お互いの信頼関係につながるからだ。


さて、その「夢」を実現するにあたって、どのようにそれを設定するかということも重要なポイントである。


やみくもに「夢」を打ち立てても、それが叶う可能性は皆無だ。


叶う「夢」には、その構造に重要なポイントがある。


実現可能な「夢」の設定における重要な8つのポイントは以下の通り。



肯定的(ポジティブ)な表現になっている。


「夢」の実現に向けて、脳の力すべてを使うことは非常に重要なポイントとなる。


なぜなら、我々の行動は脳の指令で動き、我々の人生は脳のすべての領域を使って創造されるからだ。


脳には意識と無意識の領域がある。


意識とはあなたの思考であり、認識できている領域である。

無意識はあなたが認識していないすべての領域である。

人間は同時に2つのことに意識を向けることはできない。

つまり、意識はつねに一つのことしかおこなえない。

一方、無意識の領域はマルチタスクでさまざまなコマンドを同時におこなっている。


たとえば、あなたは意識することなしに心臓を動かし、体温や呼吸をコントロールしている。

意識しないと心臓を動かせないとしたら、考え事をしている間に死んでしまうからだ。


無意識は感情をコントロールし、記憶を保存し、生命を維持する、しかも休むことはない。

ところが、無意識は複雑な言語体系を理解することはできない。

否定語さえ、うまく理解することができないのだ。


「汚さないでください」という貼紙のあるトイレより、「いつも奇麗に使ってくれてありがとうございます」という貼紙のトイレの方が汚れが少ないという有名な話は、この人間の無意識の特性に由来している。

「汚さない」という言葉は、無意識にとっては「汚す」と同義語なのだ。

「ピンクの像を想像しないでください」という命令で、「ピンクの像」をイメージしない人はいない。

だから、無意識にコマンドを入力するとしたら、肯定的な文章である必要がある。

たとえば、「失敗しない人生を獲得する」という目標は、「成功する」という言葉に置き換える。


「貧乏から抜け出す」という目標は「金持ちになる」という肯定的な表現に言い換えなければ、あなたの無意識は「貧乏」というイメージに向かって行く。


「夢」は避けたいものをイメージするのではなく、向かって行きたい、手に入れたい状態をイメージすることが重要になるのだ。



②その「夢」は自分自身で達成可能なものであって、 自分の力でコントロールできるものであること。


「夢」はあなたのものでなければいけない。


自分の脳で行動するのだから、他人に自分の「夢」を委ねることは不可能である。


特定の芸能人や有名人が自分の恋人になる「○○が私の恋人になりますように」…などといった「夢」は、自分でコントロールできるものではない達成不可能なものである。

つまり、あなたの叶えるための「夢」としては不適切である。

あえて、それを「夢」にするなら「私は○○の恋人になる」という表現だろうが、相手にも事情があることは変わらない。

自分が主語となる表現で、なおかつ自分でコントロールできることが、叶えるための「夢」の必須条件である。


たとえば、マネジメントがアーティストの成功を「夢」とするのであれば、自分がマネジメントしてそのバンドを成功させるという表現が必要なのである。


「OOというアーティストが成功する」という表現ではなく「私は、OOというアーティストをマネジメントして成功する」という表現が正しい。


他人の「夢」を自分の「夢」にしてはいけないし、自分の「夢」を他人におしつけることも意味がない。


「ウチの子どもを将来一流大学に入れることが、私の夢です」という「夢」はあくまで親の「夢」であり、必ずしも子どもの「夢」とはいえない。


たとえそれが叶ったとしても、子どもが「親の夢」を実現させたに過ぎず、本人の幸福と一致するとは限らない。


もし、その子どもがミュージシャンになるのが「夢」だったとしたら、彼の「夢」はさらに遠のくことになるからだ。


結局は本人が本気で見た「夢」を叶える以外に満足感を得ることはできない。

ここで設定するのは、他の人の「夢」ではない、あなた自身が自分で叶えるものでなければいけない。



③具体的に詳細にわたって表現する。


「夢」を獲得するための設定は、より詳細にすることで現実感を増す。


無意識は、想像と現実の区別を明確につけることができない。


「嘘からでた誠」という言葉がある通り、イメージを抱き続けることで、その人の中で記憶が入れ替わってしまうこともある。


その特性を利用して、より詳細に表現しイメージすることで「夢」を実現可能の目標に変える。


その際に「いつ」「どこで」「誰と」「何を」「どのように」という表現をいれることで、実現までの距離感が縮まる。


無意識は時間の観念がないので、「締め切り」を明確に設定しないといつまでたってもその目標に向けての行動を完了させることはできない。


これは意識して時間的なスケジュールをコントロールするように、かならず「いつ」というフレーズを入れ込むことが重要になる。



④目標達成の証拠を、視覚、聴覚、体感覚を使って確認する。


その「夢」が達成されたということをどのように知ることができるか?

そのとき何が見えて、何が聞こえ、そして何を感じるか?

人間の持つ感覚器官を利用して、その「夢」を獲得したという証拠をインプットする。


そして、その「夢」を達成することで得られるものが、抵抗しがたいほどに魅力的で、どうしてもそれを手に入れたいと思えれば思えるほど、実現欲求が高まりモチベーションもあがる。

その「夢」を叶える気持ちを奮い立たせるような、刺激的な感覚を想像することが重要なのだ。



⑤目標達成に必要なリソースの特定。


リソースというのはその人が「夢」を実現化するために、あなたが持っている資源のことをいう。


それは能力、思考、技能、コネクション、お金、時間、などあなたが持っているすべてである。


もしあなたが、叶えるべく「夢」を設定したとしたら、あなたはすでに必要なリソースを持っていると考えることができる。


もし、足りないリソースがあったとしたら、あとはそれを手に入れればいいだけである。



⑥目標の大きさを適切にする。


もし、あなたの「夢」が限りなく大きかったとしたら、それを段階的に小分けにして「夢」を積み重ねることもできる。


それはパンをちぎって口の中に入れるように、噛みやすいサイズにすればいいだけのことである。


「世界チャンピオン」になる前に「全日本チャンピオン」を目指すように、大きな目標には段階をつけて「夢」を積み上げることで現実化させていくのである。



⑦その「夢」は周囲に悪影響を与えないか?


たとえば、「夢のエネルギー」とかつて言われた「原子力発電」も環境を汚染したり、人体に悪影響を与えるとしたら、それはいくら経済的に潤ったとしても、それは「夢のエネルギー」ではない。


金儲けのための「嘘とごまかしのエネルギー」である。


もし、あなたの「夢」が周囲に悪影響を与えるとしたら、それは考えを改める必要がある。


その「夢」が実現したとしても、あなたは幸せになることはできないしトラブルに巻き込まれるかもしれないからだ。

あなたの無意識は、あなたの命を守るために24時間働いている。

無意識は、あなたが本気で望んでいないことに力を貸してくれることはない。


⑧その「夢」が叶ったあとのことをイメージする。


売れることを目指してたバンドが「夢」が叶ったあとに、解散や仲違いをするのは、「夢」の先に何があるかということをイメージしてなかったからだ。


たとえば、「武道館を満杯にする」という「夢」にひたすら邁進して来たとしよう。


努力が実り、晴れて武道館のステージに立つことになった。


オープニングのSEがかかると、興奮したオーディエンスの歓声が聞こえてきた。


華やかなライティング越しに、満員の観客の姿が見える!


この時間が永遠に続けば…と思うほどの感動に包まれたが、残念なことにあっという間にに最後の曲になってしまった。


ステージを終了したあとに残るのは…喪失感かもしれない。


「夢」を手に入れたあとも、あなたの人生は終わりではない。


だから、そこで燃え尽きたり、「こころ」のエネルギーを使い果たさないためにも、「夢」が叶ったあとのことを想像することも重要なのである。



この8つのポイントを考慮して、「夢」を想像しよう。


そして、この「夢」を叶えるためのリハーサルを脳にすることで、行動力が格段にアップする。


我々は、想像できないことを行動にうつすことはできない、だから「夢」を獲得するプロセスを脳のなかでイメージすることが必要なのだ。



NLPのワークで「チェインプロセス」というのがある、脳にあなたの「夢」が実現可能なものであると認識させる方法だ。


このワークによって、「夢」が実現可能な目標へと変化し、脳が実現化に向けてすべての領域で活動を始めるようになる。


自宅でためす分には、「お金」もかからないので、騙されたと思って試してみることをお勧めする。


そして、本当にあなたの「夢」が実現したとしたら、私のスイス銀行の口座に多額の謝礼を振り込んでいただければすべて完了!


エンタテインメント・ビジネス成功のセオリー⑯実現しない「夢」は、ただの妄想でしかない…すべての「夢」は実現可能なのだ!

 


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赤いスポーツカー

同じ出来事や、経験をしても人それぞれ受け取り方が違うのはなぜだろうか?


同じ趣味や、同じ嗜好を持つようなバンドメンバーでも、違う世界観を持つのはなぜなのだろうか?


サウンドにこだわる人も入れば、見え方にこだわる人もいる、さらにはフィーリングを大切にする人もいる。


我々はどのように、それぞれの世界を構築し、それぞれの世界に生きるのだろうか?


同じライブを見ても、

照明とか衣装美しい見た目派手で良かった!!」

「ギターのが迫力あった、ボーカルのも良かった!」

「ファンの人たちの興奮を、肌で感じた!」

などと違う感想をもつのはなぜなのだろうか?



同じ人間に対しての評価でも、

外見も清楚で、信用できる人のように見える

理論的な説明で、あの人の意見は正しく聞こえる

「雰囲気が優しく、とても真面目な人のように感じる

などと評価するポイントはひとそれぞれ違うのはなぜだろうか。



そして、どんなに一生懸命になって説明をしても、なかなか話が伝わらない人がいるのはなぜなのだろうか?



コミュニケーションによるズレっていうのは、いったいどうしておこるのだろう?


そんな感覚のズレがなければ、コミュニケーションはもっと簡単になるのに…。



我々は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった、いわゆる五感という入力器官を通して、外の情報を自分の中に取り込む


そして、取り込んだ情報に言葉で意味付けをして、記憶の中に保管する


この情報の処理の仕方に、腕に利き腕があるように、情報を処理する時に使う感覚にも優位に働くものと、苦手なものがあり、それは人それぞれ異なる。



この五感による情報処理の方法は、大きくわけて次の3つに分類される。


Visual = 視覚
による情報処理、映像やビジュアルを伴うイメージ


Auditory = 聴覚
による情報処理、音や言葉


Kinesthetic = 体感覚
による情報処理、触覚、嗅覚、味覚による情報


このV.A.Kの3つの情報を使って我々は脳の中で、記憶にアクセスしたり、何かを考えたりしている



そして、この3つの情報処理の仕方の違いが、コミュニケーションにおけるミスマッチの原因になっていると言われている。



視覚的な情報処理
が得意な人は、情報を映像として処理するためたくさんの情報を素早く処理することができる。


彼らは、視覚的なイメージを使って情報にアクセスするため、「雨あがりの路面にが反射する中を、赤くて平べったいスポーツカーが地を這うように走ってくる様子は、とても神秘的で美しかったよ」などのように、あたかもその情景が目の前に浮かんでいるかのように表現することができる。


彼らに、何かを説明する時は、絵や図、写真など具体的にイメージできるビジュアルを使ったり、表やグラフのようなもので説明することで理解度が深まる。


または、外見やデザインにこだわりを見せるのも彼らの特徴だ。



聴覚的な情報処理
が得意な人は、情報を言葉や音で処理する。


論理的
に物事を考え、文章も自分の頭の中で音読するように音に置き換えて処理をすると言われている。


読む速度はそのためあまり早くはないが、理解度や記憶力は高い。


難解な話
や、理論的な話も聞いて理解することができる。


講義を聞いてノートをまとめたり、長時間の電話も苦にならないが、
うるさい場所では集中するのが苦手、といった特徴がある。



体感覚による情報処理が得意な人は、手や体を動かしたり、自分の体験を追体験するように感じ取ることでことで情報にアクセスする。


彼らは洋服を買う時は試着をし、その気心地や肌触りを体感する。


試食をしたり、試飲をしたり、とにかく自分の体で体験してから納得する。


情報を処理するとき
じっくりと感じ返答する時も一度自分のなかで腑に落ちる間を取ってから返事をする


彼らとコミュニケーションをとる時は、一度に大量の情報を伝えるのは避け、話しかけるときはゆっくりと、間をとりながらコミュニケーションをとる。



このように、相手がどのような情報処理の仕方を得意としているかによって、有効なアプローチの方法は変わってくる。


コミュニケーションというのは
、自分が何を伝えたかということではない、相手がどのように受け取ったかということがすべてである。


つまり、コミュニケーション能力の高い人というのは、相手の得意な情報処理に合わせて自分の考えを伝える能力を持っている人ということになる。


我々に求められるのは、相手がどのような情報処理の方法を得意としているのかということを知り、相手に合わせたアプローチでコミュニケーションをとるということである。


では、どのように相手の得意な情報処理のパターンを理解するのだろうか?


彼らの特徴を見極める方法は2つ。

ひとつには使う言葉に注意する。

もうひとつには眼球の動きに注意する。


「言葉使い」に関しては、それぞれ得意な情報処理に準じた言葉を使う傾向がある。


視覚的な情報処理が得意な人は、前述したようにビジュアル的イメージを喚起しやすい言葉を使う。


色、カタチ、明暗、見る、注目する、描く、見晴らし、空白、場面といった単語や、「お先真っ暗」「先が見えない」「見通しが明るい」「希望の光が…」などの表現をする。


彼らはビジュアル的イメージを使って情報にアクセスするので、視覚的要素の含まれた表現を多用する。

聴覚的な情報処理が得意な人は、聴覚的要素を表す言葉を使う。


たとえば、言う、聴く、叫ぶ、静かな、単調な、響き、噂、声、沈黙などの単語や、「噂になる」「評判になる」「話題になっている」といった表現を使う。

彼らは、会話の中に音感を刺激する言葉の使い方を好むので、
「サクっと仕事を終わらせて、スカっとビールでも飲みに行こうよ!」のように擬音語やオノマトペを使うのが好きだ。


体感覚による情報処理が得意な人は、身体感覚を表す言葉を使う。


触る、押す、握る、苦しむ、接する、暖かい、冷たい、滑らか、固いなどの単語や、「表情が固い」「緩やかなカーブ」「暖かいこころ」といった表現を使うのが好きだ。



次に眼球の動きに関しては、会話の時に以下のような動きに注意するといいだろう。


視覚的な情報処理をおこなっている人は、眼球が上の方を左右に行き来することが多い。


聴覚的な情報処理をおこなっているひとは、眼球が水平に左右に行き来することが多い。


体感覚にアクセスしている時は、眼球は下の方を向くことが多い。


NLP(神経言語プログラミング)にはという、眼球の動きで相手がどのような情報にアクセスしているかを知る方法がある。アイ・パターン(アイ・アクセシングキュー)


これは今日のテーマではないので、詳しく知りたい人はまたの機会に説明します。


さて、我々、音楽業界の仕事はコミュニケーションの連続である。


優れたマネジメントは、優れたコミュニケーターである。


数々のミスコミュニケーションは、さまざまな悲劇を産み、取り返しのつかない事態を招く。


質の高いコミュニケーションは、相手の世界観を尊重することからはじまる。


相手が理解しやすい話し方を心がけるということは…
「話の通じる人」になるということである。


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長いバンド活動において、メンバー間で意見が衝突し解決困難な状況に陥ることもある。

同じメンバーであるにもかかわらず、ことあるごとに意見が衝突するのはなぜだろうか?

 
それは、人間の行動や思考のパターンが、何によって動機づけられ、良し悪しの判断をどのようにしているか…ということに関係がある。

 
人間は、どのようにそれを正しいことだと思ったり、それを間違っていると判断するのか…?


ある人にとっては「正しい」行動が、ある人にとっては「好ましくない」行動になるのか…?


同じ人間なのに、何故私たちは違う思考や行動パターンをもっているのか?


ある人はそれをカッコいいと言い、ある人はそれをダサいと言う。


ある人はそれを好きだと言い、ある人はそれが気に食わないと言う。


「トップ・バリュー」というと、あなたは何を想像するだろうか?

スーパーの「お値打ち価格」の格安製品を想像するだろうか?、

「バリュー」とは、人間各人が持つこころの中の「価値」のことを言う。

 「価値(バリュー)」は限りなく無意識に近いもので、行動を起すための重要なモチベーションになったり、判断の基準になったりする。

 
「価値(バリュー)」はその人にとって重要なものから、それほど重要ではないものまで、順番づけられて保管されている。

 
この重要な「価値(バリュー)」から、それほど重要でないものまでの階層を「価値基準」という。

 
さらにこの「価値(バリュー)」の周りに、無数の「信念(ビリーフ)」というものがブドウの房のようにぶら下がっている

 
「信念(ビリーフ)」とはその人にとって真実であると信じられているもので、それはその人の経験や学習によって定義づけられたものであり、「価値(バリュー)」よりも意識に近いところにある。

 「信念(ビリーフ)」は、我々の行動や思考の素となり、ものごとに対してどのように反応するかというプログラムになる。

 
たとえば、ある人にとって重要な「価値(バリュー)」のひとつに「安全」というものがあったとすると、それを意識的な思考や具体的な行動に移すのには少なくとも以下のような4つの「信念(ビリーフ)」が必要になる。

 
①定義 その価値は具体的にどのように定義するか?

「安全とは、私の生命に危害のない穏やかな状態のことをいう」


②原因 なにがこの性質や実態を引き起こすか?

「安全とは、平和によってもたらされるもの」

 
③結果 それはどのような結果を導くのか?

「安全とは、安らぎと永遠の愛をあたえてくれるもの」

 
④証拠 ある特定の行動や経験が特定の価値と結びついているということをどのように知るのか?

「安全とは、こころが穏やかなときに感じることができるもの」


よく私たちが言う「価値観」というものは、このように「価値(バリュー)」の周りにある「信念(ビリーフ)」のシステムを経由して、意識にあらわれるのである。

 
我々人間は「価値観」合う人と居ると、満足感、調和感、親密感を覚えるが、これがあわないと不信感や不満感を抱くのである。


 たとえば、同じ「価値(バリュー)」である「安全」をもった人であっても、


「安全とは、敵がいない状態である」と定義付けている人がいたとしたら、答えはまったく真逆のものになる。

 
この人にとっての「安全」は「闘うことによって得られるもの」もしくは「逃げることによって」得られるものになるのだ。


 国民の「安全」を守るために、武力が必要だという人もいれば、


武力を放棄すれば「安全」な世の中が来る
という人もいるのは、「価値(バリュー)」にまつわる認知システムの違いなのだ。

このように、
人間の思考における大きな要素となる「価値(バリュー)」は、私たちのなかで、いつ生まれてどのように変化をするのであろう。

人間は21歳(人によってはプラスマイナス3年ともいわれている)までに脳のなかにこのような「価値(バリュー)」と「信念(ビリーフ)」のシステムを構築する。

これが、
人それぞれの認知と行動を制御するプログラミングとなる。


社会学者であるモリス・マッセイは、それが形成される段階は次の3つに区切られると述べている。

 

①刷り込み期(インプリンティング期)


生まれてから7歳ぐらい
まで、われわれは身近な人からの情報を疑うことなく、まるでスポンジが水を吸収するように、自分の中に取り入れる。

これは人間としての基本プログラムが構築されて行く時期である。なかでも最も重要なプログラムは2~4歳ぐらいまでのあいだに、親や家族からの影響によって構築されていくと言われている。


 
②モデリング期(8歳~13歳まで)

この時期は、意識・無意識の両面で周囲の人たち(もしくはテレビやアニメのヒーロー)の行動を模倣しながら、そのシステムを構築して行く時期といわれている。

 ほとんどの場合、7歳以下の子どもは両親と自分が一体で、その違いを区別するということを認識していないが、この頃になると自分の存在が、両親とは別のものだということを理解できるようになる。

 そして、周囲の人たちの行動や態度を手本にするようになる。ヒーローに影響を受け、それを手本にし、重要な「価値(バリュー)」を身につける時期だと言われている。



③社会化期(14歳~21歳まで)

自分と社会とのつながりを感じ、外の社会における自分の役割と存在のあり方に対する「価値(バリュー)」を身につけていく時期。

ここで学んだ多くのことは、その後の人生に役立つものが多く、21歳をすぎると、余程大きな感情体験を積まない限り、中核的な価値は変わることはないと言われている。

人間は常に影響を与え合いながら、変化していく生き物だが、
「価値(バリュー)」というものはその考え方の中核にある存在で私たちの思考や行動を生みだす「信念(ビリーフ)」の根源にあるものなのだ。

だから、
我々は相手の「価値観」を尊重し、それをつねに確認しながら共同作業をすることが必要となる。

 
「価値(バリュー)」というものは、そのコンテクスト(文脈、状況や背景)によって変わるとも言われている。

 たとえば、人によっては人生における
「価値(バリュー)」と、遊びというコンテクストにおける「価値(バリュー)」は違う。

だから、われわれはその
都度ごとに「価値(バリュー)」を確認し、共有するという作業を行うことで、より一層重要な体験を共有することができるのである。

たとえば、アーティストが
新しい作品を作るとき、バンドメンバーとそれに関わるスタッフでその作品の「価値(バリュー)」を共有することは、アルバムのコンセプトを作りあげ、それを共通認識とすることになる。

 
バンド活動に対しても、どのような「価値(バリュー)」と「信念(ビリーフ)」をそれぞれが抱いているのかということを認識しておくのは、バンドの解散や、仲間割れといった不毛な状態を生まない便利な作業である。

エンタテインメント・ビジネス成功のセオリー⑭トップ・バリューで吹き飛ばせ!解散危機一発!


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アーティスト・マネジメントの悩ましい仕事のひとつに、「相談」という名の下の「クレーム処理」がある。


アーティストの口から、彼らが今抱えている「問題」が発せられる瞬間である。


この時、話の聴き方、会話の処理の仕方を誤ると、アーティストとの間に深淵な溝ができてしまう。


私は若い頃、この「クレーム処理」を幾度となく誤って、深い溝をアーティストとの間に造ってしまったことがある。


「えっ!そんなつもりで言ったわけじゃなかったのに!」一度傷ついた信頼関係を修復するのは難しい。


表面上の関係性は修復されても、ある日突然、まるで道路が陥没するように、ガラガラと音をたてて「過去の溝」の中に今まで築いてきたものがすべて飲み込まれてしまうようなこともあるのだ。


こちらに悪気がなかったとしても、「相手がどのようにこちらの言葉を受け取るか」「相手にどのようにこちらの意図が伝わるか」ということで事態は180度変わってしまうのである。


あなたが「何を言ったか」ではなく、「相手がどのようにあなたのメッセージを受け取ったか」ということだけがコミュニケーションの結果なのである。


「相談」という名の「問題提起」において、スムーズな解決を見出すためにトマス・ゴードンの「親業」が十分に参考になる。


ここには親子関係におけるメッセージの交わし方が書かれているのであるが、これはアーティストとマネジメントの関係性に置いても大いに役立つ見解である。


たとえば以下のような「相談」があったとしよう。


相談者はリーダーでボーカルのA。


A:「ベースのBが言っていることが、最近ムカツク。なんでも反対意見を言ってみんなを困らせるんだ。」



まずは、やってはいけない「禁じ手パターン」は以下の通り。



①解決策を提示する


「そうなんだ、じゃあゆっくりBの本音を聞いてみたら?」アドバイス


「俺が思うに、お前がリーダーなんだから、もうちょっとまとめた方がいいよ」説教


「Bの言い分もじっくり聞いてやりなさい」命令


「そんなことでムカついていたら、バンド内がまとまらないよ」警告


「Bの気持ちも尊重したほうがいいよ、人それぞれ価値観が違うんだから」道徳的解釈


相手が自分の抱えている問題について「相談」をしているとき、これに解決策を提供するという対応は、相手の無意識レベルにに「馬鹿にされた」「自分にはできないと思われている」「強要された」という印象をあたえてしまう。


たとえその意見が、意識の同意を得たとしても、無意識では違和感を感じているので、行動に移すことはしない。


むしろ、反発を招き、信頼関係に遺恨を残すかたちとなってしまう。 



②判断をくだす

 
「お前がBに対してあまりいい感情をもってないから、そう感じるんだよ」非難

「Bがそんなことを言わないように、リーダーなんだから頭をつかいなよ」中傷

「Bがそんなことを言うなんて、お前の行動にも問題があるんだと思う」分析

このような表現は、相手がどれくらい悪いかというあなたの考えを披露しているに過ぎない。


批判的判断
は、相手の無意識に「恥ずかしい」「バカにされた」「傷ついた」「頭に来る」という感覚をもたらす。



③否定する


「心配しなくて大丈夫、最終的にはいつもお前がうまくまとめてるじゃない」ほめる


「気にするなよ、Bだって悪気があって言ってるわけじゃないんだから、大丈夫だって」安心させる


「そんなこと言うなよ、Bだって良かれと思って言ってるんだから、それも前向きにとらえようよ」気を紛らわせる


このような態度は、相手に「誤解された」と感じさせるか、自分が感じていることを「叱られた」と感じさせてしまう。けっして、真剣に聞いてくれているとは思わない。

 


④問いただす

 
どうしてBがそんなこと言うようになったの?」理由を問いただす


「そのことについてBとうまく話し合えないのか?」可能性を問いただす


「みんなとBのことについて話し合った?行動を問いただす


このような質問は、相手に自分が責任を追及されているような心境に追い込んでしまう。


内面をあらわにされるような、話そうとしていることを妨げられたような気持ちになり、保身的な説明を話しだす。    


この「禁断の話し方」相談を受けた多くの人が、普通におこなっている行為ではないだろうか?


それでは、これらの話し方が、まったくNGだとしたら、我々はどのように「相談」相手と会話をすればいいのだろうか?


相手がこのように問題を抱えていて、「相談」を持ちかけてくる場合、 正しいのは、本人が行動にうつす解決策を自分で選ぶように力添えをすることだと言われている。


つまり、解決策を提示せず、相手が「どうしたらいいか」と自分で解決策に気づくように話につきあうことである。


人は何かを言い渡されるより、尊重され、理解されているときにうまく解決策を見つけると言われている。


「相談」に来る場合の多くは、相手はすでに問題に対する解決策を自らの「こころ」の中に持っているということを前提に話をすることが重要だ。


「相談」とは相手の問題解決のプロセスであり、こちらの考えを伝えることではなく、相手の答えを引き出すことである。

 

それでは具体的にどのようにすればいいのだろうか?


リフレクティブ・リスニング
というテクニックがある。


それは、相手の話を自分の言葉に置き換えて返すという方法である。


A:「ベースのBが言っていることが、最近おかしい。なんでも反対意見を言ってみんな困らせるんだ。」


マネジャー:「そうなんだ…Bのあらゆる発言で、メンバー全員嫌な気分になってるんだね?」


相手の言葉を自分の言葉に翻訳して、投げ返す。


ここで言いかえたのは「何でも反対意見⇒あらゆる発言」「みんな⇒メンバー全員」「困らせる⇒嫌な気分」


このように相手の言葉を変換しながら、会話を聞いて行くことは相手に自分の意見を押し付けたり、判断をしたり、非難をしたり、否定したり、尋問をするということにはならない。


この聴き方を繰り返すうちに、相談者自らが問題の解決を見出すことができるとトマス・ゴードンは語っている。



A:「ベースのBが言っていることが、最近おかしい。なんでも反対意見を言ってみんな困らせるんだ。」


マネジャー:「そうなんだ…Bのあらゆる発言で、メンバー全員嫌な気分になってるんだね?」


A:「いや、メンバー全員ではないな…俺とドラムのDモチベーションがさがるようなことを言われたんだ」


マネジャー:「AとDに対してやる気をなくすようなことを言うんだね?」


A:「やる気をなくすというか、頭に来て曲作りとか手につかないというか…」


マネジャー:「怒りで何もやる気にならない?」


A:「まぁ、確かにいつまでも怒っていてもしょうがないから、Bが納得するものをつくらないとしょうがないんだけどね」



会話の進行の中で、Bの発言で「嫌な気分」になってるのは「みんな」ではなくAとDの二人だけであるということがわかり、「嫌な気分」というのがBに対する「怒り」であることに気づく、そして「Bが納得するものをつくらないと」という自分がするべき行動に気づくというようなプロセスである。


実際にはこの例のように、すんなりといくとは限らないが、重要なことは自分の意見や判断を脇にやり、相手の話を理解しようとするマネージャーサイドの姿勢である。


リフレクティブ・リスニングは相手に自分の言動が受け入れられているという感覚を与える、そして相手はこの人に大切にされていると感じ、「自己重要感」を高めることができる。


「自己重要感」とは「自分を大切だと思う」「自己をかけがいのない存在と認める」「自分を価値のある存在だと認める」という「こころ」の働き方で、これが人間の生きるための重要なエネルギーとなる。


言葉を置き換えるという作業は、一見難しいようにみえるが、置き換える言葉が思い浮かばなければ、相手の言葉をそのままフィードバックしても構わない。


重要なのは、「私はあなたの言動を無条件に受容しています」ということを相手に伝えることなのである。


いきなり、提案したり、批判したり、判断をすることは避ける。


なぜなら、その「不満」を述べている人間は、自分の中にすでにその問題を解決する方法論を持っているからだ。


彼らは「相談」と称して、自分の「こころ」の深い部分に眠る解決策を認めて欲しいだけなのである。


つまり「相談」とは相手を受け入れるプロセスであり、信頼関係を強めるチャンスである。


エンタテインメント・ビジネス成功のセオリー⑬「問題」の答えは「相談者」がすでに持っていると心得よ。


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水戸黄門

「水戸黄門」「暴れん坊将軍」「遠山の金さん」「大岡越前」といったテレビ番組がある。


町人同士のたわいもない諍いごとや、時には国家を揺るがす陰謀から家庭内の問題にいたるまで、庶民、町民、浪人レベルが抱える様々な問題に、「将軍家」「武家」レベルのケタ違いに偉い人が口を挟んで事件を解決するという強引なストーリーである。


しかしながら、この荒唐無稽な設定に、バンド内部の揉め事を丸く治める秘訣があるとしたらどうだろう…。



さて、我々マネージメントが心を悩ますことのひとつに、バンド内部でのメンバー間の意見の衝突がある。


バンドのコンポーザーであるギタリストと、フロントマンであるボーカリストの意見の対立…ああ、よくある光景だ。


長らくバンドをやっていると、小さなほころびがだんだん大きな溝に発展することがある。


時間の経過とともに、成長、発展して行く中で様々な事件や出来事を経験し、エゴが生まれ、価値観は多様化し、方向性のズレも大きくなっていく。


そして、それが原因となって意見の対立を生んでしまう。


このように、バンド内の意見の対立が起こったときどのように修正するか。


事務所の意向でどちらかの意見を取り上げれば、反対意見を持つ者との信頼関係を失うことになる。


いずれにせよ、どこかになんらかの遺恨を残す…ああ、困った。


たとえば、こんな場面を想像してもらいたい。


ツアーはこまめに地方を回ることが必要だと主張するギターのAに対して、あまりお客さんが入らないようなところでやることに否定的なボーカリストのB。


ドラマーは黙り込み、ベースは当たり障りのない意見しか言わない。


ミーティングは停滞し、話は一行に進まない。


沈黙が続き、ムードはどんどん険悪になっていく…。


こんな経験は誰にでもある。



解決方法として、「庶民レベル」の目標を「将軍家レベル」の思考で考える


もしくは、「武家レベル」の問題を「町民レベル」の思考に置き換える


なぜならば、その「問題」が生じた時と同じ思考レベルで考えていても、その「問題」は解決しないからだ


まずはAの意見に対して質問をしてみる。


私:「さて、Aはなんのためにツアーを細かく廻りたいんだい?」


A:「なぜって、少しでも多くの人にうちのバンドを見てもらうためだよ。」


私:「多くの人にみてもらうことで、バンドはなにを得ることができるんだろう?


A:「一人でも多くの人に見てもらえることでより俺たちの魅力が伝わるでしょう」


私:「魅力を伝えることが目的なのだね」


A:「まぁ、そうだね。」


私:「じゃあ、Bは細かいツアーには否定的な具体的な理由は?


B:「お客さんが集まらないような場所でやっても経費的にキツいし、モチベも上がんないから、いいライブができる自信がない。」


私:「じゃあ、お客さんが集まったとしたらどう?」


B:「それなら問題ないよ」


私:「それじゃあ、ライブを見たことがない地方の人にも魅力を伝えることができて、今後の集客につながるような方法があれば納得できるだろうか?」


B:「そりゃあ確かに一石二鳥だよね。」


ここで、何が起こっているかというとAの話とBの話はツアーをやりたい、やりたくないというところで葛藤をしていた。


そこで、まずAの話の抽象度をあげて、その目的を明らかにした


抽象度を上げる際の質問は「~をするのは何のためか?」「~すると何を得ることができるか?」


そしてBには、その反対する理由をより具体的に述べてもらうための質問をした「~具体的にどんな?」それによって反対理由が具体化され、Bがなぜ反対しているかということを理解することができた。


Aの意見の抽象度を上げることで、AとBに共通した合意形成が生じる。

前提として具体化された問題点をクリアにすることで、Bは納得することができる。


あとはAの「目的」を達成させるための具体的なアイデアと、Bの問題点をクリアにする解決方法について議論を深めることになった。


停滞していた会議だったが、とても有意義な活動目標が生まれ、AとBの関係性も修復することができた。


我々の意見は、「目的」に向かって行こうとする方向性と、「問題」を避けようとする方向性のいずれかのベクトルをとる。


だから、同じレベルでこれを協議しても停滞してしまうか、より力のある方の意見に引きずられてしまうのである。


引きずられた方は、そのことに不満を抱いたまま活動をすることになり、ストレスを抱える。


一方、強引に進めた方も、成果があらわれなかった場合にその責任を負うことになる。


いずれにせよメンバー間に不信感や不満が生まれる


そのような問題を解消するために、思考の階層を変換する方法がある。


「目的」となる意見は、同意形成できるレベルまで抽象度をあげる。


「問題」となる意見を具体化し、問題点を明らかにする。


「目的」となる意見は「なんのためにそれを行うのか?」という理由を明確にしつつ、対立者との同意形成が得られるまで抽象度をあげることがポイント。


あとは同意形成を保ったまま具体案を探す。


また、「問題」となる意見はより具体化させることで、「解決すべき具体的な問題点はなにか?」ということを明確化させ、解決のためのアイデアを出しやすくさせる。


時に、本人達でさえ、目的を明確にしないまま自分の意見を押し通したり、具体的な問題点を明らかにしないまま反対意見を述べる傾向がある。

そんな時、会議は紛糾し、メンバー感の意見は対立する。


「目的」の理由を抽象化し概念を広げて受け入れやすいものにする一方で、「問題点」をより具体化し限定的なものにすることで、相互の意見を受容しやすくする。


それぞれの思考のレベルを変えることで、解決の糸口は見えてくる。


エンターテイメントビジネス成功のセオリー⑫「メンバー間の葛藤は、思考のレベルを変えてみるべし」





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春の高校野球、2回戦で母校が敗退した。

今となっては、甲子園の常連校となったが、私が在籍していた30年前は甲子園出場は悲願であった。

なんとか、夢の甲子園出場を果たして、有名校入りしたい…甲子園出場は、生徒集客のために必要な最重要課題であった。

当時、我が母校ときたら試験用紙に名前さえ書くことができれば合格できるほどの名門校で、行き場のない不良達と10代にして人生をあきらめた生徒達の吹きだまりだった。

そんな世間から注目を集めることが難しい学校にとって、浮上するための最も有効な手段のひとつが高校野球なのだ。
 
つまり、これはブランディングの一つである。
 
ブランディングに欠かせない要素にドラマ性がある。

1度負けたら終わってしまう高校野球は、それだけでドラマティックである。

そこに、いくつもストーリーを重ねる。

「1年生ピッチャーの○○君…」
「昨年お母さんを失くした、センターの○○君…」
「下町の高校で、商店街の人たちが大応援団を作って駆けつけました…。」
9回の裏、すでに泣き崩れる女子生徒の映像…。

そこには、さまざまなドラマがあり、多くの人がそこに青春の1ページを重ねる。
 
さて、同じようなブランディングを、バンドやアーティストであればどうすればいいのだろうか?
 
①バンドのコンセプトにストーリー性を持たす。
② 活動そのものにストーリー性を持たす。
③生い立ちやプライベートをストーリー化する。
④その他
 

いずれにせよ聴衆のこころをくすぐるようなストーリーが必要になる。

 そのために必要なことのひとつに、自己開示がある。

自己開示とは自分自身が抱えている問題や悩み他人に打ち明けるか、自分のこころを開くか…とうことである。 
 
例えば、X-JapanのYOSHIKIは、自分の持病を開示することで感動の起爆剤として昇華させる。

  ドクターストップがかかるほどの椎間板ヘルニアであるにもかかわらず、全力疾走でドラムを叩き続け、ショウの最後にはセットに倒れ込む…。

彼の身体を心配するファンは、それが演出なのかどうかわからぬまま、YOSHIKIの自らの肉体を投げ出すプレイに感動し興奮する。

彼が腰に爆弾を抱えていることを開示していなければこのストーリーは成り立たない。
 
バンド活動をするうえで、どれだけ苦しみ、どれだけ辛い思いを乗り越えてきたか…それが共感を呼ぶストーリーとなってファンのこころを掴む。
 
ANVILというカナダのメタルバンドが、自分たちのドキュメンタリー映画によって再びシーンに返り咲いたように、我々はストーリーが好きなのだ。
 
記憶には短期記憶と長期記憶がある。
 
長期記憶の多くはエピソード記憶と呼ばれるもので、感情をともなう出来事を人間は長期に渡って記憶すると言われている。

それは、脳の中の扁桃体とよばれる情動に関する部分が、海馬という記憶に関連する部分を刺激するからだと言われている。

たとえば車の性能を語るより、開発秘話にこそストーリー性があり、そこにはブランディングが伴う。

スペックを憶えるのは難しいが、ストーリーなら他の人に伝えることができる。
 

アーティストを紹介する時に、我々マネージメントはバイオグラフィー(アーティストのヒストリー紹介文)を作るが、そこに感動するストーリーが展開されていたら深く印象づけることができる。
 
時には、音楽の善し悪しよりも、ストーリーが重視されてしまうこともある。
世間はこの手法にすっかり騙されてしまうということを、「佐村河内守」の例を今更持ち出すまでもない。
 
感動という体験は、人から人に伝染する。

バンドのヒストリーを、感情を込めたストーリーで伝えることができたとしたら、それは一つのブランディングになるかもしれない。

優れたインタヴューは、そのアーティストからドラマを引き出し、感情に作用する。

 同様に、アーティストを紹介するためのバイオグラフィーも、読み手の感情に触れられるようなものであったら、そのバンドの魅力を伝染させるより重要なツールとなる。

エンターテイメントの成功は、すべてが感情に働きかける連鎖反応の結果なのである。
 

先日、結成25周年にして初来日をはたしたGWARというメタル・バンドがある。

そもそも、美術大学の卒業制作として作られたバンドだが、あまりの面白さに一生の仕事になってしまった。

彼らのショウは、会場の床に溜まるほどの量の血糊をぶちまけ、観客を全身ずぶぬれにさせる演出が最大の売りだ。

そして、彼らのバイオグラフィーには、遥か彼方の宇宙からやってきた宇宙海賊で、人類を滅ぼすためにやってきたというストーリーしか書いていない。

日本でのショーも、大量の血糊をぶちまけ、観客を頭の先から鮮血のシャワーに浸して喝采をあびた。
誰もが怒ることもなく、満面の笑顔で帰っていった。

この日集まった人たちは、必ず彼らの再来日を望んだことだろう…。
 
このように、バンドのブランディングはどのような感動を、どのように観客や聴衆にあたえるかということが必要な要素となる。

そのためには、バンドやアーティストの理念や、情熱を言語化していくことも重要な要素かもしれない。

そして、そこに多くのアイデアやテーマを織り込んで行くことは、マネージメントやプロデューサーの大切な仕事かもしれない。
 
エンターテイメントビジネス成功のセオリー⑪「ストーリーに情熱をそそげ!!」
 
前出のGWARだが、ボーカリストオーデラス・ウランガスことデイヴ・ブロッキーは日本公演から帰国した直後、自宅で急逝してしまった。

世界で最もバカバカしいステージを最後に見せてくれたことに感謝…ご冥福をお祈りします。


copy rights 2114 Howling Bull photo by Takumi Nakajima




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ああ、曲が生まれない!!

そんな時は、「耳の不自由な作曲家」じゃなくてもゴーストライターがいてくれたら…という誘惑に駆られる。

夜、寝ている間に素晴らしい楽曲が完成していたとしたら…朝起きたら枕元に素晴らしいメロディーが残っていたら…。

もし「こころ」のなかにゴーストライターがいてくれたら…?

さて、レコーディングのスケジュールが迫っている

アーティストの曲作りが難航しているようだ…、

果たしてこのままスケジュール通りにレコーディングを押し切って良いのだろうか?

判断が難しい局面だ。


レコーディングのスケジュールが迫ってきているのに良い曲が書けない。


楽曲のアイデアが
思ったように生まれてこない


こんな悩みや、プレッシャーによる苦しみは、多くのアーティストが経験している。


一日中楽曲のことを考えていても、良い曲ができるとは限らない。


その逆に、ふとした拍子に素晴らしいアイデアが浮かぶことがある。


子どもの頃…明日は楽しみにしていた遠足だ…朝が早いから早く寝なきゃ…と思っていると余計に寝れない…どんどん目が冴えてしまう…こんな経験はだれにでもあるはずだ。


歌詞を書こうとすればするほど、曲を考えようとすればするほど、行き詰まる…。

こんな経験は、誰にでもあるはずだ。


それはフランスの心理学者エミール・クーエが提唱した、「努力逆転の法則」に他ならない。


それは、「意志」と「イメージ」が対立した場合、「意志の力」は「イメージの力(想像力)」にかなわない。

「イメージの力」は「意志の力」の2乗もの力を発揮して、その行為を阻害するというものだ。

作らなければいけないという「意志」の力は同時に、努力することの煩わしさを「イメージ」させてしまうことがある。

「曲ができないなんて努力不足だ」「アーティストとしての自覚がたりない」「プロとしての責任感がない」「俺はもうダメなのだろうか…」こんな否定的な言葉が頭を遮ったとしたら、すでに「曲を作るのは面倒な作業だ」というネガティブなイメージ「こころ」が支配されている証拠だ。

しかし、イメージは誘導することが可能だ。


だから、「曲をつくらなければいけない」という心理状態を、より楽曲を作りやすい心理状態に変更することでこの状況に打ち勝つことができる。

そこで、「この曲が完成したらどうなるか」ということをイメージするのだ。

そして、それがいかに素晴らしいことかを想像する



具体的には以下の手順を試すことをオススメする。


①聴く人の感情をどのように変化させるかイメージする。
たとえば、感動させる、怒りを感じさせる、興奮させる、楽しくさせる、悲しませる等。
どのように「こころ」を動かすか方向性を定める。
これがこの曲のざっくりとしたテーマになる。


②その曲を「作りたい」と「こころ」の中で強くイメージする。
その曲が自分で作れることを「こころ」のなかで確信する。
その曲が完成したらどんなポジティブな影響が自分や周囲に起こるかを想像する。「
つくらなきゃ」という気持ちが「つくりたい」という気持ちに変化するまで、その想像を繰り返す。


③そして、最後の仕上げは「イメージ」できたらほったらかす、…つまり、あとは無意識にすべてを任せ、アイデアが浮上するまで寝かせておくのだ。


なぜなら、無意識はすべてのクリエイティビティの源泉だからである。

脳は、問いかけに対して毎秒A4サイズの紙30枚分の情報を検索することができるといわれている。


意識の作り出したイメージに対する答えを、無意識は必死になって検索を開始するのだ。


つまり、意識がもたらした課題に対して、無意識はつねにネットワーク内を検索し、有効な情報をリンクさせて行くのだ。


感情に基づいた記憶と、素晴らしいメロディーのエレメント、感銘をうけた「ことば」の配列、それらを探し、新しい意味付けをして、意識の上に浮上させる。


無意識は感情をコントロールし、すべての記憶を貯蔵している。


感情に作用する作品は、それぞれのパーツがバラバラの状態で無意識の中に眠っている


それらをネットワーク化させることで、新たな作品として構成される。

これがクリエイティビティの構造だ。


つまり、意識のうち出したテーマやイメージをもとに、無意識がすべてのリソースをつかって作品を生み出してくれるのだ。

アーティストがすることは至ってシンプル、自分の力を信じることだ。

感情、感覚、脳の機能をフルに発揮するには、リラックスしてイマジネーションの世界を堪能することだ。

意識と無意識がつながり
、アーティストとしてリソースフルな状態となることが重要だ。

必死になって考えるのではない、自分の能力を信じるだけで、無意識の中に混在しているすべてのリソースがネットワーク化され新しい作品が生み出される。


意識は曲のテーマと、その曲ができたらどれだけ嬉しいか、どれほど自分に良い結果を与えるかをイメージするだけでいい。


無意識の中には、そのアーティストがもっている、すべての音楽の要素が貯蔵されている


いままでに聴いた曲、感動したメロディー、好きな曲、好きなアーティスト、感情をうごかすような出来事、信念、経験、学んだこと、すべての要素がリソースとして無意識の中に貯蔵されている。


その中からテーマに沿ったリソースが新しいネットワークを結んで、一つの作品のアイデアとなって意識に浮かんでくる。


ばらばらに貯蔵されている音楽感情を刺激するリソースリンクし、素晴らしい作品となって意識上に浮上してくるのだ。

「引き出し」の多さは音楽性の幅をもたらし、「感受性」の豊かさが作品に深みを与える。

アーティストの才能に優劣があるとしたら、どれだけ無意識にリソースがあるかということに他ならない。


言葉であろうと、メロディーであろうと、私たちの頭の中に浮かぶものすべて無意識の貯蔵庫にあるものなのだ。


アーティストマネジメント成功のセオリー⑩無意識の中に潜む、ゴーストライターを呼び覚ませ!!



アーティストが行き詰まりを感じていたら、迷わず気分転換をすすめよう。


なぜならば、無理なスケジューリングは、過度のストレスを与え、駄作の温床となりかねない。


楽曲ができないのは、アーティストだけの責任ではない。


楽曲作りに必要な、精神的、時間的、経済的な環境を提供するのもマネジメントの仕事である。


スケジュール管理は、決められた時間や日程通りに消化すればいいというものではない。


アーティストマネジメントにおけるスケジュール管理とは、心理状態と時間軸をいかに適切に調節するかということである。

そこではアーティストの健全な心理状態にフォーカスした、時間の使い方が求められる。







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探偵

エドガー・アラン・ポーの小説『盗まれた手紙」で主人公の探偵のセリフに、人生の成功の秘密が隠されているとしたらどうだろう?


「僕はある人が、どれほど賢いか、どれほど愚かか、どれほど善人か、どれほど悪人か、あるいはその人が今何を考えているかを知りたいとき、自分の表情をできるだけその人の表情とそっくりに作る。
そうすると、やがてその表情と釣り合うような、一致するような考えやら感情やらが、頭だか心だかに浮かんでくるから、それが見えるのを待っているのさ…」


不思議なような話だが、相手の身体の動きや、表情をまねていると、その人の「こころ」が見えてくる。

それには科学的根拠がある。


ある人を徹底的にまねることで、その人の心をうつしとり、成功まで手に入れた人もいる。


『僕は少年の頃からハンフリー・ボガードの熱烈なファンだった。彼にあこがれて、ずっとボガードになることが僕の目標だった。
だから僕は、煙草の吸い方や帽子のかぶり方、話し方まで彼の真似をした。
そしてボガードと同じ俳優の道を志した。
つまり僕は、ボガードになろうと、真似して真似してダスティン・ホフマンになったんだ』


人間の脳は、真似ることで学習する。



世の中で、どうも苦手だと感じる人がいる。


その人の嫌なところを挙げて見る。


それはすべて、自分にもあてはまる。


我々は他人に自分を投影する。


気が合う人、好きな人とはなんと共通項が多いことか。


それは、その人を通して自分のポジティブな点をピックアップしているからだ。


無意識の中に貯蔵されたイメージは、すべて個人が持っているものだ。


人間は自分にとって必要な情報だけを、言葉で意味をつけて無意識の領域に保存していく。


つまり、人間は自分の脳の中の引き出しにあるストーリーから、相手の行動や感情を推測する


自分の引き出しにないものは、相手の中にあっても認識することができない。


長年一緒に連れ添った夫婦は、行動や顔つきまでも似てくると言われている。


そして、考え方もにてくる。


環境が与える影響もあるだろうが、それ以上にお互いの精神が同調することにより、肉体と行動に変化を与える。



このはたらきは、脳の中にあるミラーニューロンという細胞に関係している。


この脳細胞は1996年にイタリアで、偶然猿の脳で発見された。


他の猿が餌をたべている様子を見た時に反応した神経細胞が、実際に自分が餌を食べるときに同じような反応をした


他人の動作を自分の頭の中に映し出す鏡のような反応を示すことから、ミラーニューロンと名付けられた。


つまり、人間はミラーニューロンの働きによって、相手の行動を自分に置き換え、相手の感情を推測することができる。


エッチな映像を見た時に、興奮したことは男性なら誰でもあることだ。


脳の中で、相手を模倣することで、いったん自分の脳の中でその人の行動をうつしとり、その時におこった感情をその行動から引き出す


幼児が成長の過程において、周囲の人間の動作をまねながら感情を育てて行くことからもこの脳細胞が人間を形成する上で必要なものであることが理解できる。


相手と同じ言葉で話したり、動作をシンクロさせると相手に親近感与え、会話がよりスムーズになるのもこのためだ。


無意識レベルでは人間は「他者との同調をもとめ」それが安心感をあたえるのだ。


ところが、誰もが意識の上では「他者との違い」を求める。


自分は特別な人間だ思うことで、「自己重要感」をえることができる。


人間は他者との違いを求めつつも、無意識では他者との同調を求めるいきものなのだ。



かつて、「自分たちのファンが一番カッコいい」と言っていたアーティストがいた。


彼らは本気でそう思っていた。


一方、ファンは彼らをどう思っていたか。


「このバンドが最高だ!」


お互いの思いは反映し合うのだ。


バンドに対して生意気な奴だと思っていたとしたら、相手もあなたを理解のないマネージャーだと思っているかもしれない。


相手を通して、自分を顧みることができる。

「知覚は投影」まさにあなたが見ているのはあなたのシャドウなのだ。


ファンに対して、アーティストが文句を言い出した時は注意が必要だ。


そこがそのアーティストの人気のピークかもしれない。





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