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採点実感を見ながら考える司法試験答案の書き方
ここに投稿した記事の中では閲覧数が一番多かったものです。そろそろブログを消そうかと思って他の記事は全部非公開にしたのですが、せっかくなので最後に今年の資料も補充して、これだけもうしばらく残しておこうと思います。
自分では予備校等を利用しなかったし、学校も答案指導はあまりしなかったので、答案は自由に書いていました。しかし、最低限の作法のために採点実感は参考にしました。結局、成績は論文も総合も90~100位の間というよく分からないところでしたが、参考程度になるかもしれません。といっても、採点実感を踏まえて答案を書くのは普通でしょうから、内容はどこでもいわれるようなことだろうと思います。
ただ、答案の書き方は一度自分で考えておくといい問題です。自分の手順を持っていれば場当たり的に答案を書くよりも構成が安定してかつ速くなるし、その手順の意味を考えておけば自分の手順が使えないような非常事態でも落ち着いて対処できます。経験上、ちょっとは成績にも影響しました。とっくにやってるかもしれませんが、まだの人は試してみてください。
採点実感を見ながら考える司法試験答案の書き方1.目標
司法試験の満点は、今年までは短答式(7科目各50点)と論文式(8科目各100点)の総合評価で、傾斜配分の結果1575点(短答175点、論文1400点)満点になっていました。来年から短答が三科目になりますが、配分はどうやら変わらないようです。
合格者が減少しそうなので、目標は最近で一番合格点が高かった780点(平成25年)を基準に、少し余裕を見るなら850点(1000番相当)で考えます。短答試験で7割強くらい取るとすれば、論文試験では合格に660点、1000番なら730点ほど必要です。100点満点でいうと47~52点、司法試験委員会のいう「一応の水準」の範囲内で、52点はやや「良好」よりです。
[追記]平成27年度の合格最低点は835点と、50点以上の上昇を見せています。しかし合格人数や得点分布をみると、受験生の実力が上がったというよりは、政策的に点数分布を動かしたという見方が妥当ではないかと思います。つまり、短答の科目減少により高得点を狙うことが容易になった(論文採点対象者平均点121.6→133.6)ことに伴い、短答逃げ切りを防止するために論文の採点を意図的に動かして影響を相殺したのではないでしょうか。実質的な論文の比重はより上がったといえます。2.答案の意義
ここから本題です。司法試験の答案には、制限時間内で解答用紙に日本語による文章を手書きで作成するという形式的条件と、限られた資料のみ参照できる、問題に対する解答としての法律論であるという実質的条件があります。
(1)日本語による文章
要するに日本語を解する採点者に意図が伝わるものでないといけません。文面が意味ある日本語の文章として成立していること、自分の意図と文面が一致していることが必要です。採点者は文面以外に受験生の考えを知る資料を持たないからです。
意味ある文章かどうかは国語の問題ですが、少なくとも文面上矛盾すると文章として意味が通じなくなります。答案全体で「論理的に矛盾する構成をするなど積極的なミスが著しいものについては、低く評価」(平成22年度民法採点実感)されるわけです。
矛盾する大きな原因は、複数の法規定の関連性を誤解することでしょう。法規定や解釈論は孤立してはいないので、ある問題について立場を決めると別の問題についても立場が決まることがよくあります。各論点に関する記述としては成り立つ見解も、食い合わせが悪いと文章全体として整合しないことがあるわけです。「一つの主張の中で論理的一貫性を欠く答案(例えば、審査基準の厳格さと結論が理由なく逆転しているものなど)……(は)厳しい評価」(平成26年度憲法採点実感)となりますし、「設問1の前段において、みなし承認の効力を否定し、EのFに対する株式譲渡が甲社に対して効力を生じていないという結論を採りつつ、設問1の後段(※会社がFを株主として扱うことができるか、という問題)において、単に、名義書換は会社の事務処理の便宜のための制度であるという理由により、会社側から株主として取り扱うことは可能であると論ずる答案については、前段と後段との論理的関係に関する理解が不足するものと評価」(平成25年度商法採点実感)されます。
受験生の意図と文面上の意味が一致しないのは、省略し過ぎ、書き間違い、接続詞の誤用、誤字等のせいです。読み取れない文字は書かれていないのと同じです。これは大体、時間への対応を失敗することによって起きます。この点に関しては試験委員の指摘が多数あります。
「容易に判読できない悪字、筆圧が弱く薄すぎる字などが散見される点については、大いなる反省を求めたい」(平成22年度民訴法採点実感)、「字が小さすぎて、かつ潰れたように記されているため判読が困難であるものも、まれに見られる……裁判所や準備書面は……自分が手控えとして残しておくメモとは異なるものであり、答案も、それらと同じであるべきであるから……「債ム」などという略記や略字、時的因子を示す際に「平成」を示す記号であると見られる「H」という略記などは、いずれも自分のみが読むメモであるならばあり得ることであるが、答案などにおいては好ましくない」(平成24年度民法採点実感)、「各行の幅の半分にも満たないサイズの字を書いているのでは小さすぎ、逆に、全ての行を文字で埋め尽くしている答案も読みづらい」(平成24年度民訴法採点実感)、「誤字が多いもの,必要以上にひらがな・カタカナを多用しているもの、主語と述語が呼応していないもの、表現が極端な口語調であるなど稚拙なもの、冗長で言いたいことが分かりづらいものなど、文書作成能力自体に疑問を抱かざるを得ない」(平成25年度行政法採点実感)……。
採点者は人間ですから、実際には脱字等があっても文脈から推測して受験生の意図を知り得るかもしれません。しかし、それを期待するのは危険な橋を渡ることです。受験生としては、当然、たとえそのような推測を一切しない機械によって採点されたとしても、合格点を得られる答案を作成するよう心掛けるべきだと思います。「受験生は、答案の読み手の立場に立って、分かりやすく記載することを肝に銘じることが必要であり、文脈から記載内容を推測することを読み手に期待することは許されない」(平成22年度民訴法採点実感)のです。
日本語としての正誤とは別に、文章表現について注意を促されることがあります。
「接続表現が、譲歩でなく単に逆説である場面で見られる「そうであっても」、「そうとしても」という言葉や、仮定でなく単に順接である場面で用いられる「とすると」「そうであれば」という表現の頻用は、不自然である。……裁判所や準備書面は、「しかし」、「したがって」、「そこで」などの……表現で書かれることが望まれるし、答案も、そうであってほしい」「字の巧拙は別として、「蓋し」「思うに」など一般に使われていない用語や略字……などが散見される点については、大いなる反省を求めたい」(平成22年度民訴法採点実感)、「あしき答案の象徴となってしまっている「当てはめ」という言葉を使うこと自体をやめて……ほしい」「常に多くの文字数分も行頭を開けていて(さらには行末も空けている答案もある。)、1行すべてを使っていない答案が、多く見受けられた。……判決原文……と同様に、答案も、1行の行頭から行末まできちんと書く。行頭を開けるのは改行した場合だけであり、その場合でも開けるのは1文字分だけである」(平成23年度憲法採点実感)……。
意地を張って採点者の機嫌を損ねてもいいことはないので、従った方がいいでしょうね。(2)解答
答案は試験問題に対する解答を論述するものですから、問題に対応する解答、論述全体の結論部分が必要です。問題に対応するために、解答の形式は問題の要求に従います。当然、「全体として、「本件認可は適法か」と問われている……(場合に)単に「適法とする法律論」と「違法とする法律論」を併記しただけで、自らの見解を示さない答案」(平成25年度行政法採点実感)とか、「Gのなすべき主張について問われている……(場合に、問題文に掲げられていた)【参考】判例に従えば、Dの主張が妥当であり、Gの主張は認められない、とする答案」のようなものは、「問いに答えていると評価することはできない」(平成25年度民法採点実感)「問われていることに正面から答えていなければ、点数を付与することはしていない」(平成24年度民訴法採点実感)ということになります。
解答は答案の本質的部分ですから、結論に達しない途中答案は答案と呼べないと思います。
(3)参照できる資料と論述の論拠
試験中に参照できるのは基本的に貸与される試験用六法だけです。逆にいえば六法は必ず参照するよう求められているはずですから、条文は論拠として最大限尊重されるべきでしょう。常に条文を出発点とし、どの法律のどの条文についての問題なのか意識する必要があります。
例えば、「条文を条・項・号まで適格に挙げているか、すなわち法文を踏まえているか否かも、評価に当たって考慮」(平成21年度行政法採点実感)されることがあるし、文中で摘示された法律(例えば公職選挙法)については、資料として配られなくとも「司法試験用法文で参照した上で検討することが求められる」(平成22年度憲法採点実感)わけです。
条文は解釈しなければ利用できません。その場で解釈を考えると、時間を使う上に学説のどれかの劣化版になるので、主要な条文について解釈学説の内容を知っておくことは必要です。
実務家登用試験なので判例も重要でしょうが、その取扱い方は科目によって温度差があるようです。特に憲法と商法は判例を重視しているように見えます。判例の結論だけ挙げて同旨としたり、「判例であること」自体を論拠とすることは危険だと思います。しかし、判例の存在、結論及び理由付けに言及することは必要です。「関連する判例それぞれを外在的にではなく、内在的に理解し、判例の動向を的確に捉えた上で、それらを主体的に検討して判断枠組みを構築し、事案の内容に即して個別的・具体的に検討することが求められている」(平成26年度憲法出題趣旨)のです。その場では判例を参照できないので、覚えておくしかありません。
採点実感では、「関連する先例がきちんと挙げられて、検討されていない(本問では、岐阜県青少年保護育成条例事件判決、第三者所有物没収事件判決等)」(平成20年度憲法採点実感)、「判例があるような問題点であるにもかかわらず、判例に言及するものも少なく、丁寧さが十分とは言い難い」(平成20年度商法採点実感)「判例を引用して解答すべきであるが……言及している答案はほとんどなかった」(平成22年度商法採点実感)「判例の言及、引用がなされない(少なくともそれを想起したり、念頭に置いたりしていない)答案が多いことに驚かされる。……基本判例……を上手に持ち込み、論述ないし主張することができないとしたら、判例を学んでいる意味・意義が失われてしまう」(平成23年度憲法採点実感)「判例に対する意識が……ない答案は、厳しい評価とならざるを得なかった。……判例と異なる立場を採ること自体は問題ないが、その場合にも、判例の問題点をきちんと指摘した上で主張を組み立てていくことが求められる」(平成26年度憲法採点実感)といった指摘があります。
事案の違いを理由に判例と異なる結論を主張する必要があれば、「判例の事案におけるどのような特徴が判旨の示すルールの前提となっているのか……、その特徴がどのように変化すれば、ルールがどのように変化するのか……そして、本問の事案においては、どのようなルールが適用され」(平成25年度民法採点実感)るのかを明らかにする必要があります。(4)法律論であること(法的三段論法)
法律科目の試験なので、解答の結論を導く理由の部分は法律論である必要があります。つまり実定法の解釈及び適用です。立法論の出題は稀[1]です。法律論では、「法律条文の趣旨を踏まえて、その解釈を示し、具体的な事実関係を当てはめて結論を出すという、法的三段論法に沿った論述」(平成21年度行政法採点実感)が求められています。
三段論法といえば、大前提(AはBである)と小前提(CはAである)から結論(CはBである)を導く方法です。法的三段論法では、法規が大前提、事実が小前提、適用が結論になります。普通の法律は要件効果の形で規定されているので、「法律要件、法律効果及び根拠条文」が大前提の要素です。小前提は、法律要件該当事実(要件事実)の存否の判断なので、「具体的事実、要件該当性の判断、その根拠となる事実の評価」が小前提の要素です。大前提と小前提が定まると自動的に結論が決まります。普通は問題が複数の法律効果に関わるものなので、解答のために法的三段論法を繰り返すことになります。
・大前提「B(法律効果)が生ずるためにはA(法律要件)が必要である(○○法○条)。」
・小前提「本件ではC(事実)であり、これは……(評価)だからAに当たる(判断)。」
・結論「したがって、本件事案においてはBが生ずる。」ところで、法的三段論法については、「問題点につき、問題解決に必要な法解釈をした上で、法解釈・適用に必要不可欠な具体的事実を抽出・分析し、これに法解釈により導かれた規範の当てはめを行い、一定の結論を筋道立てて説得的に論述することを求め」(平成21年度刑訴法採点実感。同旨、平成23年度倒産法採点実感、平成24年度刑法採点実感)られるとも説明されています。ここで示された手順によれば、①問題点を発見し、②法解釈によって規範を導き、③必要な事実を抽出・分析し、④その事実に規範を適用して、⑤一定の結論を導くということになります。法的三段論法に即していえば、①は準備段階、②が大前提、③④が小前提、⑤が結論の部分に当たるのだろうと思います。
①問題点の発見は、法的三段論法を始めるためにどの条文を出発点とするかというところに関わります。このために、出発点が明らかでない漠然とした出題がされたときは、問題を複数の単純な法律問題に分析します。例えば「甲乙の罪責を論ぜよ」という出題がされたとき、まず「甲の罪責」と「乙の罪責」に、次に前者を「丙に対する殺人罪」「丁に対する傷害罪」に分析する……といった感じです。これによって検討すべき問題の所在が明らかになります。
分析に必要な字数が多くなるときは、答案冒頭に「問題の所在」の項を設けてもいいと思います。「答案を書く上で、適度に項を分け、それぞれに適切な見出しを付けることは望ましいと言えるが、内容的に区分する意味がないにもかかわらず、過度に細かく項目を分けている答案がかなり見られる」(平成24年度憲法採点実感)ことには注意が必要です。なお、「問題意識を読み手に的確に伝えるために、例えば、冒頭部分にこれから論じるテーマを提示するなどの工夫が望ましい」(平成26年度行政法採点実感)ということですから、項を分けるときは項目番号を振るだけではなく表題を示すべきでしょう。私の場合、大体少なくとも10行(300字程度)以上になる問題点は独立の項を立て、逆に3行(100字程度)~5行程度の問題点には独立の項を立てず、3行以下だと段落も分けないといった感じでした。
当然、分析・枚挙・総合がセットなので、枚挙して分析に漏れがないようにします。後は知識さえあれば一通りの処理はできるので、ここで必要な問題点を拾いきれるかどうかは目標達成に大きく影響します。問題点を見つけるためには、どんな事実からどんな法律問題が想定されるかという条文・判例・学説の総合的な知識が必要です。次に問題点を全て検討し、最後に解答を出題に対応させるためにそれらを総合します。時間があれば「結論」の項目も作るとよいでしょう。構成要件を検討する前に正当防衛を論ずる答案があったという笑い話を聞いたことがありますが、「相互の関係性を明らかにしないで複数の論点を羅列する答案」(平成26年度民訴法採点実感)は低く評価されるので、検討は最低でも体系的順序に従って行います。
②法解釈は、答案上では、大前提の法律要件をより適用しやすい形に分析ないし変形するために行います。条文を素直に読む文理解釈なら条文を挙げるだけで解釈論は終わりです。反対解釈、勿論解釈も、そういう解釈をしたといえば終わりです。
類推解釈とか合目的的解釈は、文言以外の根拠を挟むので、条文から出発して順に根拠を説明します。特に条文本来の適用範囲から遠いところにあるルールを導こうとする場合はこの手順が必要です。類推なら類推の理由、合目的なら法の目的と文理解釈がその目的に反することを説明します。「まず関係条文を形式的に当てはめた場合の帰結が妥当性に欠けることを示した上、制度趣旨に遡って解釈をし、妥当な結論を導いていくという手順を踏んでほしい」(平成24年度民訴法採点実感)といわれることに従いましょう。
③事案の抽出・分析とは、つまり解釈された法律要件が満たされるか否かを判断するために、問題文の事実からその要件に該当しそうなものを選ぶことでしょう。事実は既に与えられています。ここでも現れている事実を見逃さないよう、枚挙が必要です。「資料で示された本問に特有の具体的な事情について全く触れていない答案」(平成20年度憲法採点実感)とかいうのは論外で、逆に勝手に事情を付け加えるのも厳禁です。
「各種の考慮要素について、適法又は違法とする立場のいずれか一方についての論拠と割り振ってしまい、その結果、各要素の持つ両面性について積極的に分析・検討していない答案が多く見られた」(平成24年度行政法採点実感)、「(原告・被告・自分のどの立場から立論する場合も)(意図的であるか否かを問わず)自己に有利な事実のみを取り上げ、自己に不利な事実には目をつぶって主張・見解を展開するような答案は……厳しい評価とならざるを得なかった」(平成26年度憲法採点実感)という指摘にも注意しましょう。とはいえ、試験本番は時間に追われるので、一つの事実を多角的に分析するのは目標以上の高等技術に属します。
事実の分析を恣意的にすることには、あっさり問題を解決してしまえるという危険な誘惑がありますが、「直感的に一定の結論を思い定め、その結論に結びつけようとする余り、具体的事情の抽出が恣意的であったり、その分析がいささか非常識ではないかと感じさせたりする」(平成26年度刑訴法採点実感)のは自分の評価を下げます。
④適用では、その事実が解釈された法律要件に該当し、法律効果が発生するかどうかの判断を行います。この該当性の判断とその基礎になる事実の評価には(法律上の推定等を除いて)基準がなく、自分の社会通念を使うので自由な操作ができそうに見えますが、「事実関係のとらえ方が強引な答案」(平成20年度刑法採点実感)は低く評価されるので注意が必要です。各事実は法律家の常識を踏まえて評価します。たとえば、「(共謀)共同正犯を認定する積極的な事情を多く取り上げて論述しながら、乙の分け前が少ない点のみを論拠として乙は幇助犯にとどまるとの結論を導き出す」(平成20年度刑法採点実感)ことはやってはいけません。
また、「既知の判例や典型事例等の結論を、それが前提とする事実関係や本問の事実関係との相違を十分検討せずに本問に当てはめたり、逆に、自ら是とする見解に適合しやすいよう恣意的に事実をわい曲して評価したりすることも不適当」(平成21年度刑法出題趣旨)です。この点については、「「当てはめ」とは、具体的事例に合わせて抽象的な法理論を柔軟に具体化する作業を指す。しかし、答案で「当てはめ」として書かれていることを見ると、暗記している抽象的理論を絶対視していて、具体的事例にそのまま「当てはめ」れば自動的に解答が出てくるかのように誤解しているのではないかと思われる。その結果、具体的事例の個性が暗記してきた抽象的理論に収まらないときは,それ以上の思考を巡らせることなく、具体的事例の個性の方を切り捨ててしまうことになる」(平成20年度憲法採点実感)という指摘もあります。実際の問題を解くと、条文や判例法理の直接適用で解決できる問題は少ない気がします。
⑤結論には上記の手順の結果たどりつきます。「評論家風な解答ではなく,「自己の見解」が示され」(平成20年度行政法採点実感)たものでなければなりません。評論家風の解答とは、複数の解釈適用の利点と欠点を述べて終わるようなものでしょう。裁判の公平のために同じ事実があれば同じ結論が導かれる必要があるので、結論は一つでないと困ります。
答案末尾に「以上」と書く必要があるかという議論がありますが、答案が完成したことは出題に対応する明確な結論さえ出ていれば分かるので不要でしょう。書くとすれば途中答案と誤解されそうな場合です。私は、「この事案に含まれる○○法的問題点について論ぜよ」のような抽象的出題で、時間的に「問題の所在」の項で問題点を列挙することも「結論」の項で検討の結果をまとめることもできなかった(しかも答案後半の論述が雑になった)とき、「全ての考察を終えた、これは完成稿だ」とあえて示すために「以上」と書いていました。(5)時間と文字数の制限
答案の作成に時間と解答用紙の制限があるので、答案の分量も自ずと決まります。その結果、間接的に記述内容の配分にも影響を及ぼします。
解答用紙は23行×8頁です。紙幅は、私が普通に書いて一行平均32文字分程度でした。多くの科目の試験時間は120分で、書く速さは大体分速40~50文字ぐらいだと思います。ただし答案構成をしてから書くなら構成の時間が必要です(答案構成せずに書くと、途中で訂正の必要が生じて余計な時間を使う危険が高まります[2]。だから、「問題文をよく読み、答案構成を十分に行ってから、答案を書き始めるべきである」(平成24年度民訴法採点実感)といわれます)。構成した内容は書き切らないと意味がないので、答案構成に使う時間と書く時間は大体比例するはずです。私の場合、試験時間の2割~3割ほどで答案構成をしていました。書く時間は90分ほどなので、字数は4000字前後、答案用紙でいうと6枚程度になります。年によっては「答案の分量としては5枚程度でも必要かつ十分な論述ができていた」(平成25年度民訴法採点実感)とされることも参考になります。
このような予想は、答案構成で各論点への分量配分に見通しをつけるときに役立ちます。司法試験論文試験は「上位何%にどの程度の得点を与えるか」という目安がある[3]ので実質的には相対評価で、他の受験生と比較して高い評価を受けることが重要です。方向性や配分を間違えなければ分量が多い方が論拠を補強できて有利でしょうから、5分ほどの余裕を残して時間の限界まで書いてちょうど終わるように、最適な比率で部分ごとの字数分量を配分します。
問題は配分の方法で、思いついたことの中から取捨選択して、答案の分量の限界内で最も高い評価を受けられる配分が必要です。答案として絶対に必要な事項、つまり解答部分とそこに至る法的三段論法の骨格(法律要件、要件該当事実、法律効果、根拠条文)は削れません。
それ以外、つまり法律の解釈論と事実に対する評価は、結論に与える影響の有無によって必要性を判断します。「結論に関係しないにもかかわらず自分の知っている諸論点を広く浅く書き連ねる答案に対しては……厳しい姿勢で採点に臨んでいる」(平成24年度民訴法採点実感)とされるからです。ある論点が結論に影響を与えるということは、その論点で自分と違う立場を採れば最終的な結論も自分と違ってくるということです。理論的対立がある論点でも、問題の具体的事例ではどちらの理論からも同じ結論になることがよくあります。「解釈上の論点に関する……問題点については、自らの採る結論のみならず、それが正当であるとする論拠を……飽くまでも本問の事実関係を前提に、結論を導くのに必要な点を中心に論ずるべきであって、本問の事実関係からかけ離れた一般論や結論を左右しない論点に関する理論的対立の検討に力を注ぐのは、出題意図に適うものとは言えない」(平成21年度刑法出題趣旨)ということです。論点の存在に気づくためにもその論点の結論への影響を判断するためにも、対立する学説の知識が必要になります。「対象外の論述を展開している答案……も見られたが、当然ながら、その部分には点数は与えられない」(平成21年度行政法採点実感)。バッサリです。
相対評価なので、一般的受験生の知識も結論に影響する複数の論点の取捨選択ないし分量配分のための考慮要素になり得ます。考慮の方向性は、有利な評価を得るために他の受験生の弱い部分を厚く書く攻めの態度と、不利な評価を避けるために他の受験生が強い部分を厚く書く守りの態度が考えられます。不合格者の方が多い試験なのでいずれも一般的な受験生より知識が多いことが前提ですが、経験的には、前者はトップクラス合格を狙う人向けだと思います。3.100点満点中47点、52点の評価の意味
先ほど挙げた法務省の資料によると、57点から42点の答案が「一応の水準」です。目標となる47~52点がここに入ることは最初に確認しました。「おおまかな分布の目安」によれば「一応の水準」は上から31%~70%に分布するので、52点は上位45%といったところでしょう。
各科目で(採点対象者の)上位50%程度の答案を揃えても合格点である(全体の)上位20%程度になるわけですから、受験生は一般的に得意科目と不得意科目の差がかなり大きいと予想されます。試験勉強するときは自分の弱点科目を優先的に潰すのが有効でしょう。「良好」の判断基準について採点実感を一覧すると、「具体的検討」が重視されていることに気が付きます。例えば、「『良好』な水準に達している答案とは、検討すべき重要かつ必要な事項の全てに関して言及できているわけではないものの、おおよその点について、判断枠組みと事案 に即した個別的・具体的検討がそれなりに行われている答案である」(平成25年度憲法採点実感)といった例があります。他方で、「主要な論点で論じられていないものが若干ある」(平成25年度商法採点実感)答案や、一部の解釈論が「不正確ないし不十分」「努力はしているものの説得力が十分ではない」(平成25年度民法採点実感)答案も「良好」の水準にあると判断されています。
これに対して、「一応の水準」の判断基準として目につくのは、根拠条文と要件を示し、「最低限押さえるべき」問題点とその解釈論が示されていること、答案に整合性・一貫性があることです。例えば、「『一応の水準』の答案は、最低限押さえるべき論点……が、問題文にある事実を適切に当てはめながら論じられていて、議論の筋がある程度通っている答案である」(平成25年度商法採点実感)といった例があり、同じ趣旨のことが述べられていることは多いと思います。要するに、これらを自分の軸にすればよいわけです。
4.反省として
この部分は追記です。元の本文を書いた時はまだ成績も帰ってきていませんでしたし、今年(平成26年)の採点実感も公表されていませんでした。
まず、採点実感の要求水準は実際の採点より高かったと思います。成績からすると私の答案の多くは良好~優秀の評価が付いたようですが、採点実感の基準を満たしているとは思えません。根本的な構成からして違っていたものもあります。過去問を解いて答案が採点実感に合致しなくても、過度に悲観する必要はありません。結果から見ると、100位程度なら特別なこと(「通説」や「近時の有力説」を作った本、そこで参照される本のどれにも載っていないようなこと)を知っておく必要はありません。答案技術的にも上述のようなところで十分でした。
もう一つ、今更ですが試験終了後に某所での議論に気力を費やすのは無駄です。自分が予備試験組で多くの同期と違う時期に受けた(予備に受かりそうな奴はもっといたが、面倒などの理由で受けなかった)こともあり、感想戦がしたくて某所を覗いたりしました。しかし掲示板では少数派だというだけで間違っているような気になります。私は一度も法律の模試を受けませんでしたが、自分の位置が分かっていればこの不安は防げたかもしれないので、割引が効くなら一度くらい模試を受けてもいいかもしれません。
私の考えは以上です。これから受験を控えているみなさん、頑張ってください。[1] 例として、平成23年度公法系科目第2問設問3。
[2] 答案構成せずに書き始めることには、途中で誤らなければ最大限の筆記時間を使えるという利点がある。筆者の友人はこのような方法を「リスクを取って勝負している」と表現する。
[3] 『司法試験における採点及び成績評価等の方法・基準について』(法務省HP)
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