噂の副教材はまるで「おままごと」 〜どうすれば自治体と教育現場はホンモノの若者参画プログラムを創れるのか

2015年10月07日(水) 高橋 亮平
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政策課題に取り組むアクティブ・ラーニング「自治体版PBL」

9月26日、私が特任准教授を務める中央大学で、高大連携の体験学習プログラムとして、高校1年生約40名を対象に『自治体版PBL(Project-Based Learning 課題解決型学習)』を実施した。

以前、『若者の政治教育には、若者自身が主体的に取り組む、より実戦的なプログラムが必要だ!』と題して紹介したが、大学教育も転換が叫ばれるようになり、中央大学でも生徒が主体的に学ぶアクティブ・ラーニングを導入しようと、大学1年生を対象に『ビジネス・プロジェクト講座1』を行っている。

通常は、オリエンタルランドやサントリー、キッコーマン、JAXAといった企業からもらった課題を解決しているのだが、今回は、千葉市と連携し、千葉市における「こども若者参画政策を提案する」というミッションをもらい、その課題解決を行った。

そもそも今回は、アクティブ・ラーニングやグループワークなどもほとんど体験したことのない高校1年生が対象。これまで、「政策」どころか、自分たちのまちについてすら考えたことなどなく、しかも千葉市在住でもないという逆境の中で、「そもそも『参画』ってなんだ?」から始まった。

しかし、こうした取り組みは、時間が経つにつれ、状況は大きく変わってくる。終了後の感想を見ると、休憩なしで3時間ディスカションを続けるプログラムにもかかわらず、参加者全員が「面白かった」とコメントしていたのだ。

「自分から意見を言うのは難しいと思ったけど、楽しかった」、「今まで役所とか市の取り組みなどに目を向けることをしなかったが、この機会を機にもう少しそのような取り組みに関心を持とうかなと思った」といった意見などが目立った。

この日の最後には、生徒全員がグループごとにパワーポイントを使い「千葉市のこども若者参画政策」についてプレゼンした。

参加した千葉市の職員たちからもフィードバックをもらった。「学生だけの学生市役所を作ってみてはどうか」といった斬新な提案から、参画のためにわざわざ市の事業に参加するのはハードルが高いので、各学校に「市に提案するための委員会」を作ってみてはどうかといった、学校活動に参画を埋め込んでいくアイデアが出た。

また、そもそも情報が共有できていないことが問題だとして、高校生に情報を伝えるためにSNSを使ったり、高校生同士で情報を発信させたりするべきなど、当事者ならではの声も聞かれた。

こうしたPBLプログラムは、通常、フレームワークの設定から、実施計画の立案、プロジェクト実行まで、すべてを学生たちが自ら行う。その過程で、学生たちが課題解決に向かって積極的、主体的に取り組むことにより、学習意欲を強く持つとともに、通常の講義では得られないロジカルシンキング、課題解決能力、プレゼンテーション能力、デザイン力などといった実践的な力を身に付け、目覚ましい成長を遂げるなど、その効果は大きい。

今回の場合は、1日のプログラムであるため、こうしたところまで実施することは出来なかったが、大学での実施はもちろん、さらに低年齢の高校レベルでも、通常通りの15回、あるいは短縮版の3~5回程度のプログラムとして実施できるのであれば、より質の高いものにすることができる。

今回、ミッションを提供してくれた千葉市でも、今後、さらに色々な学校で実施してもらい、こうした授業での提案から声を吸い上げ、実際の政策に活かしてもらえたらと思っている。

千葉市に限らず、こうした取り組みを行いたいという自治体があれば、是非、ご連絡いただきたい。

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