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【記憶遺産】
「これで戦友たちも浮かばれる」 シベリア抑留経験の原田さん
「これで死んでいった戦友たちも浮かばれる」
舞鶴引揚記念館(京都府舞鶴市)でボランティアガイドを務めるシベリア抑留経験者の原田二郎さん(90)=同府綾部市=は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)がシベリア抑留資料を世界記憶遺産に登録したことを、ほっとした様子で受け止めた。
原田さんは陸軍の衛生兵として従軍。昭和20年10月にロシアのハバロフスクの収容所に送られ、その後約4年間をすごした。
「次々と仲間が死に、いつ自分の番かと不安で仕方なかった。引き揚げ船が舞鶴に着くまでは安心できなかった」
原田さんは戦後約50年にわたり抑留体験について口をつぐんでいた。「捕虜となって生き延びたことは恥ずかしいこと」という思いがあったからだ。だが、地元の人たちに請われて徐々に体験を語りはじめ、今は記念館を訪れる小中学生らに、当時の体験を語るようになった。
心境の変化があったのは、仲間への思いからだ。抑留生活では多くの仲間が死んでいったが、自分が生き残ることができたのはシベリア抑留の経験を語り継いでいく役割を託された、と思うようになったのだという。