トルコ:首都で爆破テロ クルド系デモ、86人死亡
毎日新聞 2015年10月10日 21時07分(最終更新 10月11日 01時01分)
【エルサレム大治朋子】トルコの首都アンカラで10日午前(日本時間同日午後)、連続して2回の爆発があり、保健省は少なくとも86人が死亡し、186人が負傷したと発表した。ロイター通信は、トルコのダウトオール首相が「2件の自爆テロを示す有力な証拠がある」と述べたと伝えた。日本人が巻き込まれたとの情報はない。エルドアン大統領は国の平和と団結を狙ったテロと断定した。
アンカラでのテロは極めてまれ。爆発があったのは、中心部のアンカラ駅に近い高架下付近。現場では、クルド人の人権保護を訴える団体や左派系組織が、7月以降に激化したトルコ軍による反政府武装組織クルド労働者党(PKK)への攻撃に抗議するデモ行進を計画し、数百人が集まっていた。
一方、ロイター通信によると、PKK傘下のクルド系メディアは爆発事件の数時間後、PKKがトルコ治安当局との戦闘について「一時停戦」を決めたと伝えた。
また、トルコ政府は事件後、国内メディアに「(国民が)パニックになる可能性がある」(報道官)として、爆発の瞬間を捉えた映像の放映を一時的に禁止した。AP通信によると、アンカラでは事件後、一部でツイッターなどソーシャルメディアへのアクセスが難しくなっている。政府による規制かどうかは分からないという。
トルコでは6月の総選挙を受けた連立交渉が不調に終わり、11月1日に再び総選挙が予定されている。左派系の少数民族クルド系政党、国民民主主義党(HDP)は6月の選挙で第3党に躍進。11月の選挙で勢いを維持するかが注目されている。
同じクルド系のPKKは一時停戦の理由について、選挙が「平等かつ公正に行われるため」としている。これに対しトルコ政権幹部はロイター通信の取材に「PKKの(トルコ治安当局を油断させる)戦術だ」との見方を示した。
トルコでは7月に南東部スルチで過激派組織「イスラム国」(IS)支持者とされる男による自爆テロがあり、クルド人ら32人が死亡。PKKは治安当局による取り締まりが不十分だったとして、警察官への報復攻撃を始めた。
これを受けて軍は、シリア国内のIS拠点とイラク北部のPKK拠点に対する空爆を開始。国内でも取り締まりを強化していた。