米国:シリア反政府訓練を縮小…IS対策見直し

毎日新聞 2015年10月09日 23時37分(最終更新 10月10日 05時44分)

 【ワシントン及川正也】米国防総省は9日、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討のため実施してきたシリアの反政府勢力に対する訓練・武装計画を大幅修正すると発表した。従来の訓練を大幅縮小する一方、厳選した反政府勢力に武器や装備を供与することで戦闘能力を高める狙いだ。反政府勢力の育成は米軍の空爆と並ぶIS対策の柱だったが、成果を出せず1年余で見直しに追い込まれた。空爆もIS弱体化に効果をみせておらず、ロシアの軍事介入も加わってシリア情勢は一段と混迷しそうだ。

 国防総省のクック報道官は9日の声明で、武器や装備の提供を「厳密に審査された指導者とその部隊」に限定すると発表した。一方、同省によると、従来計画していた大規模な訓練を縮小する方針だ。カーター国防長官は声明で「今回の政策変更によってISに対する戦闘能力が高まる」と強調した。米軍は厳選した精鋭部隊の能力向上を監視し、実戦で空爆支援する。

 オバマ政権は、シリアでの空爆作戦を開始した昨年9月、シリア反政府勢力の兵士5000人(年間)への訓練実施を柱とする計画を策定。5億ドル(約600億円)の予算措置も行った。しかし、今年7月時点で訓練を終えた反政府勢力部隊は約60人にとどまり、最初の対テロ作戦も失敗。多くの兵士が拘束された。

 オバマ大統領は、訓練対象を「穏健な武装勢力」に限定し、アサド政権からの政権移行後に中心的な軍事的役割を期待したが、兵士の選出や、熟練度の向上が難航し、議会からも見直しを迫られていた。

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