南京登録「中立性欠く」=記憶遺産事業の見直し要求—日本政府

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に中国が申請した南京事件の資料が登録されたことを受け、日本政府は10日、川村泰久外務報道官の談話を発表、「中立・公平であるべき国際機関として問題であり、極めて遺憾だ」と厳しく非難した。政府は、記憶遺産事業が中国に「政治利用」されたとみており、今後、事業の見直しを求めていく方針だ。

 川村報道官は談話で、(1)南京事件をめぐっては日中間で見解の相違がある(2)中国の一方的主張に基づく申請で、資料の真正性に問題がある—と指摘。その上で、「重要なユネスコの事業が政治利用されることがないよう、本件事業の制度改革を求めていく」と表明した。

 南京事件の犠牲者数について、中国側は「30万人が殺害された」(習近平国家主席)と主張している。これに対し、日本は「諸説あり、正しい数を認定するのは困難」(外務省)との立場だ。日本政府関係者は「記憶遺産は歴史事実を認定する場ではない」とけん制しているが、「対日戦勝70周年」をアピールする中国が今回の登録を自らの主張の補強材料とし、発信を強める事態が予想される。

 外務省幹部は「日中関係を改善しようとしているときに日本の『負の歴史』にいたずらに焦点を当てるべきでない」と不快感を示した。 

[時事通信社]

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