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2015-10-09 「日本おまたぢから協会」代表・立花杏衣加氏について
■[トンデモ]新生児へのビタミンK投与をデメリットとみなす「日本おまたぢから協会」代表・立花杏衣加氏

2009年に、山口県で、ビタミンKを投与されなかった新生児が硬膜下血腫により死亡した事件がありました。ビタミンKは血液を固める作用のある因子の合成に必要で、ビタミンKが不足すると出血しやすくなります。新生児はとくにビタミンKが不足しやすく、ビタミンKが与えられない母乳育児の新生児の約2000人に1人がビタミンK欠乏性出血症を発症していました。先進国ではほぼ全ての新生児に出血予防のため、ビタミンKが与えられます。日本ではシロップ(ケイツーシロップ)として経口投与されます。
2009年の山口県の事件においては、助産師を相手取り、死亡した新生児の母親が損害賠償請求訴訟を起こしました。訴状によれば、助産師は母子手帳にビタミンKシロップを投与したという嘘の記載を行い、その代わりにホメオパシーのレメディ(薬理学的にはただの砂糖玉)を与えていました。助産師が所属していた「ホメオパシー医学協会」は、それまで、「ビタミンKの投与はよくない。代わりにレメディを使っていただきたい」と指導していたのです*1。
訴訟は助産師側が和解金を支払うことで決着しました。報道によれば和解金は数千万円とみられるそうです。ホメオパシー医学協会も「ホメオパシーのレメディーは、ビタミンK2のシロップの代用にはなりません」というコメントを出しました。勇気を持って訴訟を起こした母親のおかげです。ホメオパシー医学協会は今でも医学的に見て問題のある主張を続けているものの、少なくともビタミンKが与えられないせいで頭蓋内出血を起こし、亡くなったり、後遺症を残したりする赤ちゃんは今後はいなくなると私は思っていました。しかし、その考えは甘かったようです。
トップページに「子宮温暖化&冷え撲滅 全ての女性をHappyに おまたぢから・生理トレーニング 立花杏衣加 キレイと健康は内側から」と掲げているブログの「病院で産むメリットデメリット」というエントリーにおいて、ケイツーシロップがデメリットの一つに挙がっています。
予防という大義名分を掲げて当たり前に与えるケイツーシロップ
自然派で生み育てたい母にはこれを回避する交渉が必要
なぜケイツーシロップがデメリットなのでしょうか。どうしてケイツーシロップ投与を回避する必要があるのでしょう。ビタミンK欠乏性出血症によって死亡するかもしれないリスクをとってでも、「自然派で生み育てたい」と希望する母親はいるのでしょうか。ビタミンKを与えないリスクについて、このブログを書いた立花杏衣加氏はきちんと理解しているのでしょうか。なんとなく人工的な感じがするから避けたほうがいいと曖昧に考えているだけではないですか。
そもそも、病院でなくても、まともな助産師であれば、ケイツーシロップは当たり前に与えます。日本助産師会による助産業務ガイドライン*2には「これらの出血症はビタミンK製剤(ケイツーシロップ®)を新生児に予防投与することで発症を防ぐことが可能である。この予防効果の科学的根拠は高く、全ての新生児にガイドラインに従い必ず実施すべきである」と明記されています。すべての助産院において、ケイツーシロップが当たり前であるべきです。ところが、立花杏衣加氏は、
かといっても高齢出産初産で受け入れてくれる助産院も少ないですし
助産院でもケイツーシロップやミルクは当たり前のとこもあります
と書いています。立花杏衣加氏は、病院での出産だけでなく、日本助産師会による助産業務ガイドラインを守っている助産院での出産も、デメリットであると考えているのでしょう。日本助産師会は、ケイツーシロップが当たり前でない助産院がないかどうか、調査をしたほうがいいかもしれません。
「あいかのブログ」が一個人のブログであれば、わざわざエントリーを立ててまで言及しません。しかし、そうもいかない事情がありました。「あいかのブログ」には、「日本おまたぢから協会」へのリンクが張ってあります。ケイツーシロップ投与をデメリットとしたエントリーが放置されるのは望ましくないと考えた私は、「日本おまたぢから協会」に対して、「あなたのところの協会員がケイツーシロップに否定的なブログを書いているが、それは協会の見解なのか?放置すると協会の信頼が落ちるのでは?」と注意を促そうと思いました。日本おまたぢから協会のページには、いろいろと医学的な根拠に乏しいことが書いてありましたが、さすがにケイツーシロップの有用性ぐらいは理解できるだろうと期待したのです。当初私は、立花杏衣加氏は、日本おまたぢから協会の会員の一人に過ぎないとと思っていました。
違いました。立花杏衣加氏は日本おまたぢから協会の代表でした。日本おまたぢから協会は、代表がケイツーシロップの有用性について、また新生児が亡くなるかもしれないほどの危険な誤解をしているような団体です。「生理トレーニング」やら「冷えのメカニズム」やらに、まともな医学的根拠があるとは思えませんが、まあ勝手にやっていいと思います。しかし、ケイツーシロップについての誤解を拡散するのはダメです。断固、批判いたします。
日本おまたぢから協会では、何千円とか十何万円とかの受講料を取って、認定資格講座を開いています。民間資格にいくら払おうと個人の自由ですが、私にはお金をドブに捨てるより無駄だと思えます。驚くべきことに、「おまたマスター」を名乗っている助産師すらいます。自ら、助産業務ガイドラインを軽視していることを宣伝しているようなものです。私の家族が出産することになったとして、日本おまたぢから協会の資格を持っている助産師がいる施設は危険なので絶対に勧めません。
メディアのみなさんにも注意を促しておきます。日本おまたぢから協会のウェブページは、パッと見ていい感じにつくってあります。しかし、取材する場合は、その内容をよく吟味してからにしてください。できれば、信頼できる専門家の意見を聞いてください。そうでなくも、日本おまたぢから協会に対しては懐疑的な意見があるということは知っておいてください。いつのまにかニセ医学の片棒を担がされている、なんてことにならないように。
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それ見たことかという態度をとる人も居て、余計そうなのだと思います。
出来れば被害を受けた人に寄り添って、訴訟しやすい雰囲気を作れたら良いなと思います。
あと講師育成と題したセミナーで200名の方がその資格とやらを得たそうです
なかなかトンデモぷりが面白くて見ていたのですが最近は明らかに危険だし女の私が見ていてはらわた煮えくりかえるような文を平気で書く率が増えました
彼女の子供が心配です
最近、知り合いでこの方ほど大々的ではありませんし、押しつけもしてないのですが、
標準医療を否定し、放置していた方が重篤な状態になり、
本来でしたらお見舞い等するのですが、どう行動すべきか迷っています。
(押しつけ自体はなかったのですが、私が受けている標準医療の否定等をされていたので素直にお見舞いする気になれず、自業自得だろと思ってしまう自分がいます…。)
ご参考までにお伺いできれば幸いです。
西洋医学ではなく私達のやり方が正しい、って言って騙して金儲けをする良くあるタイプ。
この人ワクチン否定とかもやってそうですよね。
なんというか、西洋医学否定がまず通る道と言うか。真っ当な知識があればワクチン否定なんて普通はしないはずだし。
ただ、こういう主張をする医者はだいぶ減ったほうだと思いますよ。助産師界隈は結構いますけど。
今の医学教育は何よりEBMなので、EBMがない諸説やトンデモ科学は全く相手にしません。
今後、内海聡、近藤誠etcと言ったガチのトンデモさんが出てくる可能性は低そうですし、それが正しい医学教育なのだと思います。
医療のド素人ならまだしも、看護師でいながらあの内容とは、本当にガックリきます。
特にワクチン否定はすごいですね。立花氏によるとワクチンの効果は捏造とのことです。公衆衛生を専門とした獣医師としては泣きたくなります…
>先生は、もしこのように標準医療を否定される方がそのことが原因で重篤な状況ななった場合、コメントを求められたらなんと答えますか??
すでに「重篤な状況」に陥っている場合は、基本的には、その方が選んだ医療について否定的なことは言いません。「標準医療を選んでも悪くなる人もいるからね」とか、「過去はともかく、現在できることを考えよう」とか、そんなことを言うでしょう。
医師ではなく、一般の方であれば、「よくわからない」「あなたが選んだ治療で良かったのではないか」でよい、と思います。お見舞いであるのなら、標準医療の是非ではなく、普通に共感や励ましの会話でいいのではないかと。