プルトニウム使用の大間原発建設に函館市が国を提訴! その行方は!?

 国が原子炉設置許可を出し、電源開発(Jパワー)が建設を進める大間原発(青森県大間町)をめぐり、北海道函館市が建設差し止めを求めて提訴している。津軽海峡を挟んだ23km対岸に大間原発を望む函館市にとって、東電原発事故のような大規模な事故は自治体の消滅にも直結するからだ。

想定しているのは「最大の揺れ」ではなく「地震の平均像」?


津軽海峡を挟み、函館市役所側から見える大間原発。函館市は原発から30~50km圏内に位置する、原発周辺で最大の都市だ(函館市ウェブサイトから引用)

 函館市が国とJパワーを相手取り起こした建設差し止め裁判で、原告側による6回目の口頭弁論が今年10月6日、東京地裁で開かれた。この日、原告側が指摘したのは、設定された「基準地震動」の問題点だ。

 Jパワーは昨年12月、大間原発の基準地震動を従来の450ガルから650ガルに引き上げた。基準地震動とは、原発施設の耐震設計の基準となる揺れのことで「原発を襲うと想定される最も大きな揺れ」とされる。すなわち大間原発に照らせば、想定される最大の揺れは650ガルというわけだ。

 ところが、基準地震動の想定手法における第一人者の入倉孝次郎氏は「そうではない」と否定する。昨年3月に愛媛新聞が掲載したインタビュー記事で、入倉氏は基準地震動について「地震の平均像を求めるもの。平均からずれた地震はいくらでもある」と説明しているのだ。

 これを大間原発に置き換えれば、650ガルを上回る揺れが襲う可能性は十分にある、ということになる。さらに入倉氏は同記事で「(基準地震動の設定は)経営判断だ」とまで言う。原告側はこの日提出した準備書面(陳述書)で「これでは、原発の耐震設計の根本は、完全に崩れ去ってしまう」「このような耐震設計で、原発の安全性が担保されるわけがない」と厳しく批判した。

 大間原発北側の近海(津軽海峡)には、長さ300km・断層面積1000k㎡の断層がある可能性が指摘されている。

国側は「函館市には原告になる資格はない」と否定


 一方、国側は「原子炉等規制法に自治体の権利は含まれない」などとして、函館市の原告適格(訴える資格)を否定する。これに対しても原告側は同日、函館市に原告適格があるとする学者4人の意見を載せた陳述書を提出している。

 この中で原告は「改正後原子炉等規制法では『財産の保護』が明確に規定されており、原告が原告適格を有することは明白」と反論。神戸大学の阿部泰隆名誉教授は「明文の規定がなければ救済しないとすれば、それは(中略)包括的な権利救済を求める行訴法に反する。自治体が壊滅しても、司法の保護範囲内ではないとすれば、それは法治国家とは言えず、放置国家であろう」とまで指摘している。

 これについて原告側の中野宏典弁護士は「国はさまざまな理屈をこねているが『当たり前に考えれば函館市に原告適格がある』ということを各教授は言ってくれた」と説明する。

 大間原発は完成すれば、ウランとプルトニウムを混合したMOX燃料だけを使う世界初の「フルMOX原子炉」となる。フルMOX炉はウラン原子炉と比べて「異常発生時の圧力上昇が大きくなる」などの特徴がある。国は同原発を核燃料サイクルの要と位置づけるが、建設に反対する函館市民の署名は、市の人口の半数を超える14万6000人分に達した。次回口頭弁論は来年1月19日に東京地裁で開かれる。

<取材・文/斉藤円華>


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