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【北朝鮮拉致事件】

人道支援、利権も視野



拉致被害者の子どもから託された手紙が入った封筒を手にする「レインボーブリッヂ」の小坂浩彰事務局長=8月1日、東京都内で、代表撮影

 9月9日、北朝鮮は建国55年記念の式典を平壌で催した。朝鮮人民軍による閲兵式を、金正日総書記ら要人が見つめる。広場の一角にある外国人招待者席に、非政府組織(NGO)「レインボーブリッヂ」の小坂浩彰(ひろゆき)事務局長(50)もいた。

 本人によると、自分の席から金総書記の姿も近くに見えたという。

 小坂氏は7月、拉致被害者の曽我ひとみさん、地村さん夫妻、蓮池さん夫妻の子ども6人と会って手紙を持ち帰り、一躍注目を集めた。

 この数年間の訪朝回数は17回。現地では北朝鮮の高官と会うことも多いという。その人脈はどうやって築かれたのか。

 「私を子どもたちに引き合わせたのは『北朝鮮の人道支援の最高責任者』。そうとしか知らない。式典の前日にもホテルで会った。拉致問題をどうするつもりか問うたが、日本語で『解決したいと思っている』とだけ答えた」

 三重県の高校を卒業後、食品輸入業などをしながら、政治家や警察関係者と付き合いを深めた。北朝鮮に関心を持ったのは、横田めぐみさん拉致疑惑が浮上した97年ごろだ。「政府は関知しないという立場。ならば自分が解決できないかと」

 そう言う一方で、「日朝の交流が活発になった後のビジネスも視野に入れている」と、将来への野心も隠さない。

 00年に発足させたレインボーブリッヂは、活動原資を主に企業から得ている。国交正常化後、北朝鮮進出を狙う企業は多いという。

 農産物輸入に関心のある食品会社は、キノコの粉末を550万円相当、提供してくれた。約6100万円相当の中古の土木重機を出した会社もあった。輸送費は約300万円かかったが、業者が負担したという。

 団体として供与した物資は、通関ベースで3億円分を超える。

 「どこの企業も深い思惑はないが、関係だけはつくっておきたいということだ」

 将来の利権をも視野に入れた支援。そんな微妙な立場に身を置きながら、小坂氏は昨年秋以来、拉致被害者の子どもについて「元気でいるか確認したい」と要求。今月初めの訪朝の際には「子どもを日本に早くかえすべきだ」と主張した。

 政府間交渉の行方が不透明な中、水面下で民間団体を通じたメッセージの応酬が続いているように見える。

 「政府間の交渉にまかせるべきだ」「北朝鮮のメッセンジャーではないか」

 こんな批判に小坂氏は反論する。

 「北朝鮮も政府ルートで出来ないことを民間の私に託す。拉致問題を訴えてきたから、信頼されたんだ」

    ◇

 現実にはNGOによる支援は細っている。

 新潟NGO人道支援連絡会の代表、川村邦彦さん(66)は、北朝鮮・元山周辺の未就学児童の施設にコメを送る支援活動を続けてきた。新潟と元山を結ぶ万景峰(マンギョンボン)号で、97年春からこれまでに約1100トンを送った。

 昨年秋以降、「子どもたちには罪はないが、北朝鮮には協力できない」と支援農家が激減した。コメの量は前年の4分の1になった。「日本人がなぜあんな国を助けるのか」と事務所への抗議電話も相次いだ。

 「拉致被害者や家族が戻ってくることを誰もが望んでいる。だが、万景峰号の入港や経済制裁とは別問題だ。日朝関係が難しい今だからこそ飢える子どもたちへの支援をやめるわけにはいかない」と川村さんは話した。

(朝日新聞2003年9月15日付朝刊)


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