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【国際】

<ノーベル平和賞>ジャスミン散らせぬ 「民主化」標的テロ頻発

 ノーベル平和賞受賞が決まったチュニジアは二〇一一年にジャスミン革命を成し遂げ、「アラブの春」の先駆けとなった。中東の「民主化のモデル」と評価されたが、今年三月と六月にはイスラム過激派によるテロが起き、日本人観光客の死傷者が出た。社会不安を背景に過激派組織に加わる若者も後を絶たない。チュニジアは「民主国家」を守れるかの瀬戸際にある。 (パリ支局・渡辺泰之)

 今年三月十八日、観光客でにぎわう首都チュニスの博物館がテロの標的になった。その翌日に現場に入ると、物々しい警戒の中、血だまりが残る路上で人々が国旗を振りながら声を上げていた。「テロは出て行け」「暴力で民主主義は死なない」。テロの標的は、この国に根付きつつある「民主化」だった。

 ジャスミン革命以降、チュニジアは野党の指導者の暗殺が続くなど「生みの苦しみ」を味わった。それでも新憲法を制定させ、昨年末には新大統領も選んだ。中東で民主化の動きが次々と頓挫する中、チュニジアは民主化の「優等生」とも言われていた。

 一四年六月にチュニジアを訪れた際には、街で出会った二十代の男性二人が革命前の空気を語った。「ベンアリ時代は壁に耳があったんだ。批判なんてできなかった」。独裁政権は市民が参加した革命で倒れた。「今は政治的な主張でも何でも言える」。自らの手で国をつくる高揚感も口にした。相次ぐテロは国民の民主化への「熱」を冷ましかねない。革命前よりも悪化した20%近い失業率と地域間の経済格差を背景に、チュニジアでは今、過激思想が浸透。シリアで過激派組織「イスラム国」(IS)への参加者は約三千人に上るとされる。社会不安が民主化の後退につながる危険もはらむ。

<チュニジア> 北アフリカに位置。北海道の2倍に相当する16万4000平方キロメートルの国土に1100万人(2014年)が生活する。フランスの保護領だったが、1956年3月に独立。アラビア語が公用語だが、フランス語も通用する。国教はイスラム教で国民の大半はスンニ派だが、社会の宗教色は強くない。国民1人当たりの国内総生産(GDP)は日本の9分の1ほどの4400ドル(52万4000円)。観光業が盛んで、欧州では保養地として人気がある。

 

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