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<仙台いじめ自殺>自殺説明は再発防ぐ出発点

 仙台市泉区の館中1年の男子生徒=当時(12)=がいじめを受け、自ら命を絶って約1年。市教委と学校は7日、在校生と保護者に事実を伝え終えた。大きな節目だが、再発防止に向けた遅すぎるスタート地点に立ったにすぎない。
 市教委が8月21日、いじめ自殺が仙台市内であったと発表して以降、呪文のように唱えたのが「遺族の意向」だった。
 愛する息子を突然、失った父親は確かに、いじめ自殺を「公表しないでほしい」と願った。残された家族を守りたい一心を責めることはできない。
 問題は市教委と学校の対応だ。「公表が原則」と位置付けながら、遺族を本気で説得しようと試みた形跡はない。再発防止に向けた在校生への教育は置き去りにされた。
 教師から「転校した」と虚偽の説明を受けた生徒たちは、友の死に向き合えず、命日も知らされなかった。うわさだけが先行した。
 父親は「息子の死を教訓に」と託していた。「遺族の意向」を尊重するなら、市教委は粘り強く公表を働き掛けるべきだった。
 父親は取材に「加害生徒は反省しているのか」と揺れる心情も吐露した。学校近くの公園に献花台が設けられると「息子の死を悼む人の存在を知り、(公表に向け)前に進もうと突き動かされた」と告白した。
 市教委は「新聞で気持ちの変化を知った」(大越裕光教育長)と受け身のまま。「遺族のケア」「在校生の教育」「加害生徒への指導」という本分を果たそうとしたのか疑問が残る。
 12歳の死を受け止め、再出発するには徹底した真相究明が不可欠だ。「本当のことを教えて」。遺族の願いに応えるためにも「失われた1年」の先延ばしは許されない。(報道部・吉江圭介、河添結日)


関連ページ: 宮城 社会 いじめ自殺

2015年10月08日木曜日

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