中東の国々に、荒涼たる光景が広がっている。激しい内戦と弾圧、難民の波。…[続きを読む]
運動会の花形といえば組み体操。なかでも盛り上がるのが巨大なピラミッドや…
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運動会の花形といえば組み体操。なかでも盛り上がるのが巨大なピラミッドやタワー。そんな学校も多いのではないか。
だが組み体操でのけがが後を絶たない。子どもの安全あっての運動会だということを、学校は肝に銘じるべきだ。
日本スポーツ振興センターによると、小中高校での組み体操中の事故は毎年8500件前後起きている。骨折やねんざなどで、小学校では跳び箱、バスケットボール、サッカーに次いで多い。組み体操は運動会シーズンに限られることを考えれば、相当に高い確率だ。
大阪府八尾市の中学校では、この3年間で7人が骨折した。校長によると、一昨年2人が骨折したが、生徒の希望を受け、昨年からピラミッドを9段から10段に引き上げた。この年はピラミッドで2人、別の組み体操で2人が骨折。今年は「ピラミッドの段数を減らすべきだ」と複数の教員が主張したが、校長判断で「補助員を増やせばできる」と10段でやった。だが本番で崩れ、また1人が骨折した。
学校は地域の伝統を大事にしたかったという。危ないとの声はなぜ顧みられなかったのか、保護者や地域へのアピールのため安全への配慮がおろそかになっていなかったか、学校や教育委員会は検証すべきだ。
組み体操の巨大化はこの10年ほどで進んだという。
確かに大きなピラミッドは迫力がある。達成感や団結力を養えるという教員もいる。だとしても、子どもを危険にさらしてまでやる理由にはならない。
10段のピラミッドは高さ約7メートルに達する。中学生だと、土台部分の子にかかる負荷は最大200キロ近いともいう。首や腰などを痛めやすく、一歩間違えば深刻な事故につながる。
もともと運動としてというより、集団の統一美を表現する意味合いが強い。他校の様子をインターネットでみて挑戦する教員もいるといい、専門知識が十分でなければなお危険だ。
大阪市教委は先月、「タワーは3段、ピラミッドは5段まで」とする通知を市立学校に出した。本来は子どもがやりたいといっても、危険性を説いて納得させるのが教師の役目だ。
かけっこや跳び箱でけがをする子もいる。「危ないから」と競技種目から排除していけば運動会は成り立たないだろう。だが、巨大なピラミッドやタワーの危険性は桁違いだ。感動と引き換えにはできない。
誰のための運動会か。
学校は、原点に立ち返って考えてもらいたい。
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