Borussia Dortmund Magazine

ドルトムントを中心にドイツサッカーなどを紹介します

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ユルゲン・クロップとこれから旅を共にしていく、リヴァプールファンへ捧ぐ。

   

クロップ リヴァプール
「みんな。俺たちは変わらなくてはいけない。成功を疑う者から、信じる者に変わらなくてはいけない。今この瞬間からだ!」赤いシャツを身にまとったユルゲン・クロップは、アンフィールドの曇り空の下にいるファンに対して高らかに宣言し、早くも気持ちをがっちり掴んだようだ。「フルスロットル」「エモーショナル」これは典型的なユルゲン・クロップ監督の台詞である。

南スタンドを見つめるクロップ

感情的な別れ

誰もがクロップ監督を引きとめたが、彼はドルトムントでのキャリアに自ら幕を下ろした。そしてそのさよならは非常に辛く、クラブに関わる全ての人間にとって感情的な出来事であった。ジグナル・イドゥナ・パルクでの最終戦を勝利で飾った後、彼はビデオメッセージで感謝の言葉をファンに贈り、そしてファンは鳴りやまない拍手と大歓声でクロップ監督へ感謝の意を伝える。フットボールが紡ぐことのできる美しい光景であり、最後に少し雨粒がスタジアムに降り注ぐ。まるで我々の別れを悲しむ涙のように。

「私のバッグの中にはポジティブな思い出で一杯なんだ。あなたも私と同じならいいな」とクロップ監督は述べ、最後に「私はあなた方が新しい監督と比較しないように勧めたい。比較してしまったら、素晴らしい思い出が減ってしまうし、素晴らしい将来がより難しいものになってしまう」と忠告して去って行った。

ユルゲン・クロップ 最後のパーティ

ベルリンでの決勝に敗れ、クロップ監督の紡いだ「おとぎ話」のフィナーレをハッピーエンドで終えることが出来なかったが、「最後に今回のDFBポカールで優勝していれば、あまりにも出来すぎたエンディングだった人は言うだろう。少しアメリカ的すぎるというか…本当に現実味のある形になって満足している。その方がいいんだ」と彼らしいコメントを残した。そして「重要なのは、やって来たときにどう思われるかではない。いなくなったあとにどう思われるかが極めて重要だ。」と続ける。確かに今、リヴァプールでは彼の就任に対して好意的に受け入れられているが、大事なことはアンフィールドを去る時だと考えているのかもしれない。

ワッケ社長 ツォルク クロップ

ユルゲンの「盾」

クロップ監督は、ドルトムントで成功をおさめ、そしていくつかの苦い敗北も経験している。その傍らには、いつもワッケ社長、ツォルクSDが付いており、どんな時もクロップ監督の背中を押し続け、そして励まし続け、「信頼と友情」で繋がりあっていた。この三者が強力なパートナーシップを結んでいたからこそ、今日の彼の成功がある。

1つ印象的なエピソードを紹介したい。2013/14シーズンのチャンピオンズリーグ・グループステージ。ドルトムントは負ければグループステージ敗退が決定する第5節のナポリ戦の前。そして公式戦3連敗中、クロップ監督にも危機が訪れ、チームや監督に対して様々な批判が渦巻いていた。そんな状況で迎えた年次総会。ワッケ社長は観客の前に立つと以下のように叫んだ。

「ユルゲン、あなたは最も美しいというわけではなく、最もリッチではないけれど、あなたは私たちにとって最もふさわしい花嫁だ!」

ワッケ社長が壇上でそう叫ぶと、クロップ監督は拍手してにっこりと笑った。彼への大喝采が会場を包む。このスピーチは大きな話題を生み、クロップ監督は再び奮起しグループステージを見事首位で突破することに成功。ワッケ社長とツォルクSDは、クロップ監督の最も堅い「盾」として最後まで彼と共に闘い続けた。

ユルゲン・クロップと最後まで共に闘いつづける覚悟が、果たしてリヴァプールのフロントにはあるのだろうか。彼は超一流のモチベーターで、困難に向かうことを愛しているが、やはり彼を守る「盾」は必要だ。ビジネスライクの関係のままではクロップ監督のクオリティーを引き出すことはできないだろう。だからこそ彼と共に闘い抜いてほしい。矢面に立って批判を浴びても、どうかユルゲン・クロップを守り抜いて欲しい。

クロップ監督 ホッフェンハイム戦

「フルスロットル・フットボール」

彼は英語をかねてから学んでおり、そして就任会見では英語で答えた。しかしクロップ監督は初の国外挑戦、世界一激しいプレミアリーグに順応するには少し時間がかかるだろう。そして彼は手作りでじっくりチームを作り上げていく為、結果における速効性はない。彼が標榜する情熱的で魅力的なフットボールが見られるのは少し先のことになるはずだ。

クロップ監督はファンに対して「俺達がまずファンと話し合わなくちゃいけないのは、何を期待するのかってこと。それは最も大事なことだし、失敗すればすると重荷になる。私は無論成功を収めたいが、成功とはどういう意味なんだ?」と問いかけた。リヴァプールファンの忍耐がどこまで続くのかは分からないが、例えタイトルを獲得できなかったとしても、クロップ監督ならば何か情熱的でドラマティックなものをファンに提供できるはずだ。我々はドルトムントが最下位に沈んでさえ、「クロップと共にこの苦境を脱しよう」と彼の下で団結して見せた。

野心溢れる若い選手、チームに対して全力を尽くす選手、何よりも相手に食らいついて闘うことを恐れない選手。そういった選手が揃って、クロップ監督の下で一つになれば、おそらく面白いところまで辿りつくことができるだろう。後は少しの運が必要になってくるが。

「フルスロットル・フットボール」これはユルゲン・クロップがこれからも繰り返し発言していく台詞である。アンフィールドで彼はあふれ出る感情を爆発させ、歓喜、激怒、悲しみ、そして幸福。身体全体で彼は表現し、その情熱はがスタジアムと選手たちに拡がっていく。もうすでに彼の魔法にかかっているのかもしれない。アンフィールドの観衆は、すぐにユルゲン・クロップに恋に落ちていくだろう。

プレミアリーグでのユルゲン・クロップの新たな旅の幸運を祈っている。そして俺たちのユルゲンをどうぞよろしく。

香川 クロップ2

 - 15/16シーズン, プレミアリーグ ,

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