村上春樹さん、ノーベル文学賞“10連敗”

2015年10月9日7時52分  スポーツ報知
  • 村上さんが山陽堂書店に贈った色紙。大切にレジカウンターに飾られている

 スウェーデン・アカデミーは8日午後1時(日本時間同午後8時)、2015年のノーベル文学賞をベラルーシのスベトラーナ・アレクシエービッチさん(67)に授与すると発表した。英ブックメーカーで有力候補に挙げられていた日本の作家・村上春樹さん(66)はまたしても受賞を逸した。2006年に初めて名前が挙がってから10年連続の落選となり、列島各地でため息が漏れた。ファンとして知られるヤクルトの14年ぶりリーグ制覇という吉兆はあったが「アベックV」はならなかった。

 またしても「ハルキ・ムラカミ」の名が読み上げられることはなかった。毎年10月になる度に繰り返される風物詩「ノーベル春樹フィーバー」に、今年も終止符は打たれなかった。

 2006年、過去に多数のノーベル賞作家を輩出しているフランツ・カフカ賞を受賞して以来、村上さんは英ブックメーカーで有力候補として名前が挙がり、今年は2番人気に付けていた。世界中のハルキストたちが寄せる期待の中、受賞に至らない現実。もはや既視感として染み付いたサイクルは、ついに大台の「10連敗」に到達した。

 今年は、ファンとして知られるヤクルトが14年ぶりのリーグ制覇を果たす「吉兆」があった。球界関係者によると、村上さんは2日のリーグ優勝決定試合を神宮球場のスタンドから生観戦していたという。

 翌3日朝、神宮球場に近い東京都港区の表参道交差点にある老舗書店「山陽堂書店」に一通の封筒が届いた。同書店取締役の遠山秀子さんは振り返る。「何だろう…と思ったんですけど、本当にビックリしました」。中を開けると「祝 ヤクルト・スワローズ優勝! 村上春樹 2015秋」と書かれた色紙が入っていた。手紙などは添えられず、色紙一枚きり。「本当に驚きました。なぜ送って下さったのか分かりません。きっと『町の本屋さんガンバレ』と言って下さったんじゃないかと思っています」(遠山さん)。1980~90年代、同書店に度々足を運んだ村上さんからの小粋なプレゼントだった。

 ただ、愛する球団の優勝という幸福感に、ノーベル文学賞受賞を上乗せすることは出来なかった。毎年多くの人が落胆していることは村上さんにとって愉快なことではないようで、今年7月に出版した読者との対話集「村上さんのところ」では「ノーベル賞と騒がれることについてどうお考えなのか」との問い掛けに対し「正直なところ、わりに迷惑です。だって正式な最終候補になっているわけじゃなくて、ただ民間のブックメーカーが賭け率を決めているだけですからね。競馬じゃあるまいし」と胸中を吐露している。

 来年もまた確実に繰り返されるフィーバー。果たして「11度目の正直」はなるだろうか。

 ◆ノーベル文学賞 ノーベル賞の6部門のうちの1つとして、1901年に創設。文学に対して顕著な貢献をした人物に与えられ、特定の作品に対して贈られる賞ではない。日本人では過去に川端康成が68年に、大江健三郎が94年に受賞。過去の主な受賞者には「武器よさらば」で知られるアーネスト・ヘミングウェー(54年)、「異邦人」のアルベール・カミュ(57年)ら。候補者名や選考過程は50年間非公開とされており、今年1月、64年の候補に谷崎潤一郎や三島由紀夫が挙がっていたことが明らかになった。

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