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 歴史的に貴重な文書や絵などを対象としたユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界記憶遺産」に、中世の寺院運営について記した「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」(申請・政府)と、「舞鶴への生還―1945~1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録―」(同・京都府舞鶴市)が登録された。政府関係者が10日未明、明らかにした。

 国宝の東寺百合文書は、奈良~江戸時代の約2万5千通もの古文書群。平安時代以来一貫して京都の東寺に収められ、千年以上にわたって守り伝えられてきた。名前の由来は、江戸前期の加賀藩主・前田綱紀(つなのり)が寄進した百合(100個)の桐箱(きりばこ)にあり、保存に大きく貢献した。

 「舞鶴への生還」は、シベリアに抑留された後、舞鶴港に引き揚げた抑留者らの570点にのぼる記録。抑留生活の様子を約200の和歌にしたため白樺(しらかば)の樹皮につづった「白樺日誌」や、靴の中に隠して持ち帰ったメモ帳などが含まれ、舞鶴引揚(ひきあげ)記念館に所蔵されている。

 戦争によって引き起こされた過酷な歴史を扱っているが、国内選考時には「舞鶴市と姉妹都市であるロシア・ナホトカ市の理解と協力があるなど、広い視点から世界的な重要性が説明されている」と評価された。

 アラブ首長国連邦のアブダビで6日まで開かれていた国際諮問委員会が、約90件の候補から新たに登録するものを審査。その結果を受け、ユネスコ事務局長が決定した。

 国内からは、2011年の「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」、13年の藤原道長の日記「御堂関白記」と「慶長遣欧使節関係資料」に次ぐ登録となる。