阿蘇山噴火:60キロ先で降灰 けが人なし
毎日新聞 2015年09月15日 00時24分(最終更新 09月15日 03時35分)
14日午前9時43分ごろ、熊本県の阿蘇山で噴火が発生した。噴火したのは阿蘇山・中岳第1火口で、噴煙は2000メートルまで達した。これを受け、気象庁は阿蘇山の噴火警戒レベルを「2」(火口周辺規制)から「3」(入山規制)へ引き上げた。噴火警戒レベルの導入後、阿蘇山で「3」に引き上げられるのは初めて。県によると、人的被害は確認されていない。
気象庁は噴石が火口から2キロの範囲に飛散する可能性があるとして、警戒レベルを引き上げた。噴火直前に火山性地震の増加や、顕著な地殻変動などの前兆現象は観測されなかった。噴石の飛散と、約60キロ離れた福岡県筑後市など広い範囲での降灰が確認された。火砕流が発生した可能性もあり、今後詳しく調べる。
警戒レベル引き上げを受け、地元自治体などで作る阿蘇火山防災会議協議会は、中岳第1火口周辺の入山規制を半径1キロから2キロに拡大した。また、中岳に通じる主要3ルートについて、いったんは火口から約3.5〜4.7キロの地点で通行止めを実施。その後、2ルートは通行止めを火口から約2.5キロの地点に緩和した。観光地の「草千里ケ浜」までは通行できる。住宅があるのは火口から最短で約5キロ。
気象庁によると、中岳第1火口は、火山活動が高まると火口湖「湯だまり」の温度が上昇して干上がり、火口底が露出した後に噴火を繰り返し、沈静化する活動サイクルが見られる。今回の活動では、昨年7月以降、湯だまりが消失し、同8月に噴火警戒レベルが「2」に引き上げられた。
同11月に小規模なマグマ噴火が起き、今年6月以降は火山活動が鈍化していた一方、今月も小規模噴火を繰り返していた。小泉岳司・火山対策官は「今回の噴火は活動サイクル終盤のものとみられ、今後は活動が徐々に収束する可能性が高い」と説明した。
阿蘇山では、中岳第1火口の西約3キロにある「草千里」の地下4〜12キロ程度にマグマだまりがあるとされる。気象庁が地下のマグマ供給量を試算した結果、今回より大きな噴火の発生は考えにくいという。ただし、同程度の噴火が起きて火口から2キロの範囲で火砕流や噴石の飛散が起きる恐れはあり、注意を呼び掛けている。
阿蘇山では、1979年9月に観光客ら3人が噴石で死亡する噴火があった。噴石が火口から1キロの範囲で飛散する噴火は、90年4月の噴火以来。【久野華代、取違剛】